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2013年12月 文献タイトル
MRIの騒音小さく 会話OK、関西大が開発
毎日コーヒー、肝機能改善 ドリップ限定、大阪市大
12年のがん死820万人 新規患者は1410万人
体によくておいしい レシピ本が人気 料理教室も 「暮らしアイ」病院食
ニキビ菌、悪性黒色腫を抑制 三重大グループ発見
がん細胞のエネルギー源、アミノ酸増加の仕組み解明
陽子線、ピンポイント照射 がん治療で国内初
還元型コエンザイムQ10 「老化抑制の仕組み判明」 信大研究グループとカネカ
医療に3Dプリンター…人工骨や臓器模型作製

MRIの騒音小さく 会話OK、関西大が開発
 騒音が出る磁気共鳴画像装置(MRI)を使った手術中に、普通の会話ができるようにしてほしい―。体内の臓器や血管を撮影できるMRIを、脳血管の検査やがんの手術に使っている医療現場の切実な声に応えて、関西大システム理工学部(大阪府吹田市)のチームが音を小さくする装置を開発した。

 逆の性質を持つ音をぶつけて、騒音だけを打ち消す仕組み。企業との連携で実用化を目指している。

 関西大の梶川嘉延(かじかわ・よしのぶ)教授らは、MRIで撮影した画像を見ながら肝臓がんなどの手術をしている滋賀医大の谷徹(たに・とおる)教授らからの要望で開発に乗り出した。

 MRIの騒音は電車が通るガード下と同じぐらいの100デシベル以上。患者は耳栓やヘッドホンをつけるが、手術中の意思疎通が必要な医師や看護師は、人の声も聞こえなくなるため、騒音対策は困難。これまでは、大声で呼び掛けたり、話したい人のそばに近づいて話したりしていた。

 装置はマイクでMRIの音を捉え、スピーカーで逆の波形を持つ音を出し、騒音を打ち消す。

 マイクとスピーカーは耳にかけられる形状で、有線でつないだ箱形の機器で音を解析する。人の声は、音の性質が異なるため、消えにくい。

 実験では、MRIの騒音が20〜30デシベル小さくなり、言葉が聞き取りやすくなった。

 装置の小型化やワイヤレス化が課題で、MRI本体に装置を組み込むことも検討中。梶川教授は「工場の騒音対策にも応用できるかも」と話す。

m3.com 2013年12月9日

毎日コーヒー、肝機能改善 ドリップ限定、大阪市大
 肝炎や肝硬変といったC型慢性肝疾患の患者で毎日1杯以上のドリップコーヒーを飲む人は、肝臓の機能が改善するとの研究結果を大阪市立大のチームがまとめ、11日付の米オンライン科学誌プロスワンに発表した。

 肝硬変への移行を減らし、肝がんの発生を予防する効果も期待できる。

 大阪市立大病院を受診した20〜80代の患者376人で、肝細胞が壊れると上昇する「アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)」という酵素量の変化と、コーヒーを飲む頻度を比較した。

 ドリップコーヒーを1杯以上飲んでいた人は、飲んでいない人に比べ、1年後のALT値が正常値を維持していたり、低下したりした人が多かった。量を飲めば飲むほど、効果が上がっていた。

 理由は不明だが、缶コーヒーや、インスタント、カフェインが入っていないコーヒーを飲んでいた人では、効果があまりなかった。

 研究チームの佐々木八千代 教授(老年看護学)は「肝炎は10〜20年で肝硬変に移行するとされており、さらに長期的な調査をしたい」と話した。これまでに、同じチームの大藤(おおふじ)さとこ講師(公衆衛生学)がコーヒーに肝がんの発生を抑える効果があるとの研究成果を発表していた。

m3.com 2013年12月12日

12年のがん死820万人 新規患者は1410万人
 世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(本部フランス・リヨン、IARC)は12日、2012年の世界の新規がん患者は推定1410万人に上り、がん関連の死亡者は820万人との統計を発表した。

 08年は新たながん患者が1270万人、死亡者が760万人で、いずれも増加した。

 IARCは世界的な人口増加や高齢化に伴い、25年までには年間の新たながん患者が1930万人に増えると予測している。

 がんの死亡例で最も多いのは肺がんで、全体の19・4%を占めた。女性の乳がんが急増しているとも指摘している。

m3.com 2013年12月13日

体によくておいしい レシピ本が人気 料理教室も
「暮らしアイ」病院食
 病院の管理栄養士が入院患者のために考えた食事が注目を集めている。塩分控えめ、低カロリーなど健康に配慮するだけでなく、おいしく食べられる工夫をしているのが特徴。書店にはさまざまな病院のレシピ本が並ぶ。家族向けの料理教室や、患者用の献立を用意したレストランも人気だ。

 「サンマはきつね色になるまで。揚げ物が苦手ならかば焼きでもいいです」。10月、国立がん研究センター東病院の「がん患者・家族総合支援センター」(千葉県柏市)で開かれた料理教室。落合由美(おちあい・ゆみ)さんら管理栄養士2人と参加者が、この日の献立「変わり麦飯のさんま竜田揚丼」など5品をつくった。

 便秘の人が食物繊維をたっぷり取れるよう、麦飯には切り干し大根やレンコンをまぜた。下痢の人向けには、消化に良いニンジンや大根と鶏肉のささ身を使った汁物も紹介された。料理教室はがん患者や家族向けに2008年9月から始まり、毎月第2、第4木曜日に開いている。

 これまで作った献立をまとめた「がん患者さんのための国がん東病院レシピ」(法研)を9月に出版。吐き気や味覚の変化など症状に応じた計215品を盛り込んだ。簡単に作れる「一口おにぎり」や「ほうじ茶ゼリー」などデザートもある。

 落合さんは「食べたいのに食べられない」と苦しむ患者や「元気になってほしくて料理を作ったのに食べてもらえない」と嘆く家族から何度も相談を受けた。「ちょっとした工夫で食べられることはある」と落合さん。

 約3年前に胃がんの手術を受け、退院1カ月後から料理教室に通い始めた埼玉県三郷市の大竹恵美子さん(64)は「以前は一口食べるたびに吐き気がしてトイレに駆け込んでいた」と振り返る。最近は教室で試食したものを自宅で作り、娘(42)やカラオケ教室の仲間に振る舞っている。

 せんぽ東京高輪病院(東京)2階のレストランでは12年11月から日替わりの「糖尿ダイエット定食」など、健康に配慮した入院患者と同じ献立を加えた。例えば「ぶりと大根のステーキ定食」には、ユズで味付けして塩分を抑えたサラダと豆乳スープが付く。

 「病院の食事はまずい、という印象を変えたくて」栄養管理室長の足立香代子 さんらが献立を考えた。だしのうま味や香草、スパイスなど病院であまり使わないもので味付けをした。患者にも好評という。

 高輪病院で高血圧の通院治療をしている山木高志 さん(51)は毎日昼、会社から食べに来る。「社員食堂でカロリーや塩分を控えようとすると、同じようなおかずになってつまらない。薬を飲まなくても血圧は安定している。この食事を続けるのが私の治療」と笑顔を浮かべた。

m3.com 2013年12月17日

ニキビ菌、悪性黒色腫を抑制 三重大グループ発見
 ニキビの原因となる「アクネ菌」に皮膚がんの一種「メラノーマ(悪性黒色腫)」のがん細胞の増殖を抑える効果があることを、三重大の山中恵一講師らの研究グループが発見した。研究成果は米科学誌「プロスワン」電子版に22日、掲載された。

 山中講師らは、アクネ菌がマウスのアトピーの症状を抑える効果があることを確認したため、メラノーマに対しても効果があるかどうか探る実験を実施。

 メラノーマを発症させたマウスについて、「アクネ菌を2回注射」「1回注射」「注射しない」の三つのグループに分け、経過を観察した。その結果、2回注射したグループに、がん細胞が減少する効果が最も表れていた。アクネ菌を殺すため、皮膚の下に集まった白血球の働きによるものという。

 メラノーマは、国内では毎年、10万人に2人程度発症するといい、山中講師は、「人間の治療に応用できる方法を研究し、新薬開発につなげたい」と話している。

m3.com 12月23日

がん細胞のエネルギー源、アミノ酸増加の仕組み解明
 奈良県立医大と味の素の研究チームは、がんになると血液中のアミノ酸の濃度が変化する仕組みをマウスの実験で解明し、米医学誌「キャンサー・リサーチ」(電子版)に発表した。

 がん細胞が分泌する特定のたんぱく質が正常細胞の分解を促し、アミノ酸を作り出していた。がん細胞のエネルギー源にもなるアミノ酸が増える仕組みを明らかにしたのは世界初という。

 がん患者は、血液中の一部のアミノ酸の濃度が上がるなど、アミノ酸のバランスが崩れることが知られる。

 チームは、大腸がんのマウスを使い、がん細胞からできるたんぱく質の働きを調べた。その結果、たんぱく質によって筋肉の細胞が分解されてアミノ酸ができ、血液中のアミノ酸濃度が高まっていた。筋肉でできたアミノ酸は、がん細胞に取り込まれてエネルギー源となっていた。チームは「他のアミノ酸の変化についても研究を進め、がんの仕組みを解明したい」と話している。

m3.com 2013年12月26日

陽子線、ピンポイント照射 がん治療で国内初
 名古屋市の名古屋陽子線治療センターは25日、陽子線によるがん治療で、患部をピンポイントで照射できる最先端機器を国内で初めて治療に導入するとして、報道陣に公開した。来年1月から治療を開始する。

 導入したのは「スポットスキャニング照射」と呼ばれ、直径5〜15ミリの陽子線を塗りつぶすようにしながら患部に当て、がん細胞を死滅させる。精密な照射が可能で、周辺の正常な細胞の損傷を減らせるのが特徴だ。

 陽子線治療は放射線治療の一種で、水素の原子核を加速してがん細胞に当てる。エックス線などと違い、陽子は体内である程度進むと止まるため、がん細胞を狙い撃ちしやすい。ただ、従来の「ブロードビーム照射」では陽子線を直径14〜25センチに広げて患部に当てるため、正常組織を傷つけないよう患部の型枠を作る必要があった。

 25日は「ガントリー照射室」と呼ばれる治療室で、陽子線をアクリル板にテスト照射する様子がモニターで公開された。

 センターは当面、前立腺がんの治療に用いる方針。将来的には骨肉腫などにも広げ、年間800人の治療を目標にする。保険医療とは認められていないため、先進医療として300万円近い費用がかかる。世界では米国やスイス、イタリアで使われている。

m3.com 2013年12月26日

還元型コエンザイムQ10 「老化抑制の仕組み判明」
 信大研究グループとカネカ
 信州大の研究グループは24日、カネカ(本社・大阪市)と共同で実施したマウスを使った研究により、還元型コエンザイムQ10が老化の進行などを遅らせるメカニズムを明らかにしたと発表した。

 報告をしたのは、大学院医学系研究科の樋口京一教授(疾患予防医科学)ら。内容は米国の学術雑誌「アンチオキシダンツ・アンド・レドックス・シグナリング」電子版に掲載された。

 研究では、老化しやすい体質のマウスに還元型コエンザイムQ10を0・3%混合した餌を与えたところ、投与しないマウスに比べて細胞内のリン酸化酵素やたんぱく質活性化遺伝子が増加。その効果で、加齢に伴う減少が老化と深く関わっているとされる細胞内のサーチュイン遺伝子(通称・長寿遺伝子)やミトコンドリアが非投与マウスより多く、活性酸素を消去する酵素の減り方も小さかった。

 人の培養がん細胞を使った実験でも、還元型コエンザイムQ10の投与でミトコンドリアが増加し、活性酸素発生量は減った。

 樋口教授によると、還元型コエンザイムQ10は生物の細胞にあるミトコンドリアに含まれるほか、健康食品として市販されている。これまでにマウスに摂取させると老化や加齢による聴力低下が抑制されるという研究成果を発表していたが、その仕組みははっきりしていなかった。

 樋口教授は「サプリメントとして用いられている物質の効果について、新しいメカニズムが明らかになった。今回はマウスによる基礎実験で、人体への影響についてはまだわからない」と説明した。

m3.com 2013年12月26日

医療に3Dプリンター…人工骨や臓器模型作製
 複雑な形の立体模型を手軽に作れる「3Dプリンター」を、医療現場に導入する動きが広がっている。関西の病院でも、人工骨を作って患者に移植したり、臓器の模型を手術の練習や患者への病状説明に使ったりしている。

 3Dプリンターは立体を細かく輪切りにしたデータに基づき、樹脂や金属を0・01〜0・1ミリ・メートルの厚さで積み重ねて形作っていく。近年、コンピューター断層撮影法(CT)の患者データを3Dプリンター用に変換できるソフトが登場し、医療応用に弾みがついた。

 今年7月、京都大病院で椎間板ヘルニアによる歩行困難などを訴える70代男性に対し、変形した椎間板を除去し、3Dプリンターで作った、厚さ1センチに満たない人工骨(チタン製)を埋め込む手術が、臨床研究として行われた。椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間でクッションの役割をする軟骨の椎間板が、老化や激しい運動などにより、外にはみ出して神経を圧迫し、激痛やしびれを引き起こす。

 従来は、患者自身の骨盤の一部を切り取り、医師らの手作業で形を整えてから椎間板の代わりに埋め込んでいた。「3Dプリンターを使うと、骨盤を切らずに済み、患者にピタリと合う人工骨を用意できる」と、同病院の藤林俊介講師はメリットを話す。

 男性は手術翌日から歩けるようになり、11日後には退院した。同病院ではこれまでに5件の手術を実施、経過はいずれも良好だ。

 神戸大病院の杉本真樹・特命講師は、平面では分かりづらい肝臓など内部で複雑に枝分かれする血管の様子やがんなどの病変部がわかる模型を作製することに成功した。

 手術前に模型で練習すれば、本番の手術で正確度が上がり、事故防止にもつながる。患者や家族へ病気の分かりやすい説明にも役立つ。国内約30の施設が導入しているという。

 国立循環器病研究センター研究所(大阪府吹田市)では、心臓弁を作る研究が進む。心臓弁膜症患者の皮膚の下に、3Dプリンターで作った樹脂製の心臓弁の「鋳型」を入れておくと、体内のコラーゲンが鋳型内に集まり、弁が出来上がる。弁を取り出して、患者の悪くなった弁と取り換える。

 同センターの中山泰秀室長らは、ヤギを使った数十回の実験で効果を確認。今後、心疾患のペット治療に乗り出す。「人間への応用も遠くない」と話す。

3Dプリンター 実用化は1980年代とされ、機械部品の試作などに使われていた。90年代後半から欧米を中心に技術開発が進んだ。医療用に使える高性能のプリンターは、独など欧米の製品が中心で、価格は数百万〜数千万円。

m3.com 2013年12月28日