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英国 食事内容の改善で地域の死亡率の差が縮小 |
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オックスフォード大学公衆衛生学のPeter Scarborough博士らは,英国全土で,飽和脂肪酸と塩分を減らして,食物繊維や果物を多く摂取するイングランドの平均的な食事に改善すれば,年間で約4,000人の死亡例を予防できる可能性があることを発表した。 英国4地域で死亡率と食事内容の関連を調査 スコットランドおよびウェールズ,北アイルランドでは,イングランドに比べて心血管疾患とがんによる死亡率が高い。これらの疾患が,飽和脂肪酸と塩分を多く含み,食物繊維や果物,野菜の少ない不健康な食事内容と関連していることはよく知られている。 そこでScarborough博士らは,2007〜09年にこれら4地域の冠動脈疾患および脳卒中,食道・大腸・胃がんなど食事との関連が強い10種類のがんによる死亡データを検討した。さらに,英国家庭の食事調査(Family Food Survey)から,各地域におけるエネルギー摂取量を含む10項目の食品成分の平均摂取量を推計して,死亡率との関連性を検討した。 その結果,スコットランドと北アイルランドでは,イングランドに比べて3年間一貫して,飽和脂肪酸と塩分が多く,果物と野菜が少ない食事が日常的に摂取されていたが,ウェールズとイングランドでは一貫した差は見られなかった。 4地域全体で推計すると,冠動脈疾患および脳卒中,がんによる死亡数の約半数に相当する年間3,700人の死亡を予防できることが分かった。こうした死亡率の差は,総エネルギー摂取量と果物・野菜の摂取量の差で説明できたという。 Scarborough博士らは「食事内容の変更だけでは死亡率の差を完全に縮められず,喫煙や飲酒,運動不足といった行動危険因子の影響を考慮しなければならない」と指摘した上で,「それでも,食事内容は冠動脈疾患や脳卒中,がんによる死亡の地域差に重大な影響を及ぼしている」と結論付けている。 Medical Tribune 2012年2月2日 ![]() |
〜乳がん患者へのMRI検査〜 施行増加も恩恵少ない可能性 |
スローン・ケタリング記念がんセンター(ニューヨーク)外科のMonica Morrow教授らは「乳がんのスクリーニングや治療方針決定の指標としてMRI検査の施行頻度が増加しているが,その有益性を示すエビデンスはほとんどない」と発表した。 MRIは遺伝的に乳がんリスクが高い女性のスクリーニングに有用であるが,乳房温存術施行前のルーチン使用によって患者選定の精度が向上して外科手術の件数が減少し,局所再発リスクが低下することを裏付けるエビデンスは限られており,一般女性のスクリーニング検査としては推奨されないことが示された。 予後改善示すエビデンスが不十分 MRIは,家族歴や遺伝子変異など遺伝的に乳がんリスクが高い女性のスクリーニングに有用な検査法であり,またマンモグラフィや超音波検査に比べてがん検出感度が高いとされ,ここ数年,臨床現場で広く導入されている。しかし,この検出感度の向上が,患者の生存率など臨床アウトカムに及ぼす影響については十分に検討されていなかった。そこでMorrow教授らは今回,MRIの有用性を検討するため,PubMedやコクランなどのデータベースを用いて,過去10年間に発表された関連論文(アブストラクト262件,論文87件)のレビューを行った。 その結果,乳房温存術施行前の女性の評価にMRIを使用しても,乳がんの検出感度の高さが手術成績の向上や良好な予後につながるとするエビデンスは得られなかった。同教授らは「MRIによって,乳房温存術を施行する患者の選定精度が向上したり,初回の外科的切除で断端陰性が得られる可能性が高まることを支持するデータはない」と述べている。 Medical Tribune 2012年2月2日 ![]() |
長期追跡でPSA検診による前立腺がん死亡の減少認められず |
長期間の追跡で前立腺特異抗原(PSA)検診による前立腺がんの死亡の減少は認められなかったとするデータが,米ワシントン大学などのグループにより発表された。 今回の報告は,前立腺・肺・大腸・卵巣(PLCO)がん検診試験におけるPSA検査と直腸診による前立腺がん検診の13年間の追跡結果に基づくものである。 PLCOの前立腺がん検診では,1993?2001年に10カ所の検診センターで55?74歳の男性7万6,685例を登録。毎年6年間のPSA検査と毎年4年間の直腸診を行う介入群に3万8,340例,特別な介入を行わないコントロール群に3万8,345例をランダムに割り付けた。コントロール群には任意でPSA検査を受けた参加者が含まれている。 試験は2006年10月に終了し,追跡7?10年間の結果は既に報告されている。今回は13年間の追跡中または2009年までの前立腺がんの発症と前立腺がんによる死亡を検討した。追跡率は10年目までが約92%,13年目までが57%であった。 その結果,13年間の追跡期間中に介入群の4,250例,コントロール群の3,815例が前立腺がんと診断された。1万人年当たりの前立腺がん累積発症率は介入群108.4,コントロール群97.1で,介入群の相対増加率は12%だった。 1万人年当たりの累積前立腺がん死亡率は介入群3.7,コントロール群3.4で(介入群の相対増加率9%),有意差はなかった。前立腺がんによる死亡と年齢,登録時の併存症,試験前のPSA検査との相互作用は見られなかった。 Medical Tribune 2012年2月2日 ![]() |
緑茶の摂取頻度が高いほど高齢者の要介護リスク低下 |
高齢者において,緑茶の摂取頻度が高いほど要介護の発生リスクが低減するという大崎コホート2006研究の結果を,東北大学大学院公衆衛生学教授の辻一郎氏,同大学院の遠又靖丈氏らのグループが発表した。ウーロン茶,紅茶,コーヒーでは統計学的に有意な関連はなかった。 1日5杯以上で33%減 辻氏らは2006年,宮城県大崎市在住の65歳以上の調査に同意し,機能障害のない1万3,988人を3年間前向きに追跡し,緑茶の摂取頻度と機能障害の関連についてCox比例ハザードモデルを用いて解析した。緑茶摂取は健康行動や社会要因と関連していることから,年齢,性,脳卒中,心筋梗塞,高血圧,関節炎,骨粗鬆症,骨折の既往,教育レベル,喫煙,飲酒,BMI,認知活動,精神的苦痛,歩行時間,ご飯,みそ汁,肉,魚,緑黄色野菜,イモ類,大豆製品,果物,菓子類の消費,社会支援の認識度,地域活動への参加といった因子を調整した。 緑茶の摂取頻度が高いグループは,男性,精神的苦痛,教育レベルが16歳未満,過去1年間に2kg以上の体重減少,現在の喫煙,現在の飲酒,脳卒中,心筋梗塞,肝疾患の既往が有意に少なかった。緑茶の消費頻度が高いグループは,肉,魚,緑黄色野菜,大豆製品,果物,菓子類の消費量が多く,エネルギーと蛋白質の摂取が多く,認知活動が良好だったが,関節炎が多く,1日1時間以上歩行する割合は少なかった。 緑茶と機能障害の関連は,食物や社会支援の認識度,地域活動への参加を調整後も変化せず,辻氏らは,緑茶の脳卒中や認知障害,骨粗鬆症への予防効果が機能障害のリスク低減に関与しているのではないかと考察している。また,ウーロン茶,紅茶,コーヒーでは有意な関連はなかったことから,水分摂取のみの効果ではないことも指摘している。ただし,メカニズムについて今回の研究で結論を出すことはできず,今後の検討課題だという。 なお,抗酸化作用による疾病予防効果が期待される緑茶だが,最近では,緑茶のポリフェノールが脚力を改善させることも報告されているという。 Medical Tribune 2012年2月8日 ![]() |
悪性黒子にCO2レーザーが有効 |
ウェスタンオンタリオ大学(カナダ)外科のHaemi Lee博士らは「二酸化炭素(CO2)レーザーアブレーションが,外科手術や放射線療法の適用が困難な悪性黒子(LM)患者に対する有効な代替療法となりうる」と発表した。 美容的に慎重を要する部位に Lee博士らによると,LMは慢性的に太陽光によるダメージを受けた高齢者で多く見られる皮膚の前がん病変で,頭頸部に発生することが多い。またLMは,悪性黒子型メラノーマ(LMM)に進行する可能性がある。 同博士らは今回,1991年7月2日〜2010年6月29日にオンタリオ州で原発性LMと診断され,治療を受けた患者73例(39〜93歳)を後ろ向きに検討。外科的切除,放射線療法,CO2レーザーアブレーションの治療アウトカムについて評価した。CO2レーザーは,細胞内の水分を蒸発させることにより,組織に作用を及ぼす。 患者の内訳は,外科的切除27例,放射線療法31例, CO2レーザーアブレーション15例。平均追跡期間は,外科的切除群で16.6カ月,放射線療法群で46.3カ月,CO2レーザーアブレーション群で77.8カ月であった。 同博士は「外科的切除群とCO2レーザーアブレーション群で再発率が低い傾向が認められたが,統計学的に有意ではなかった」と述べている。再発率は,外科的切除群で4.2%,放射線療法群で29%,CO2レーザーアブレーション群で6.7%であった。 同博士は「外科的切除はLMとLMMにおける治療のゴールドスタンダードとして確立されているが,頭頸部の広範な病変に対しては常に適用できるわけではない。非浸潤性疾患であるLMに対して完全切除を選択する際には,その侵襲に勝る有益性がなければならない」とした上で,「CO2レーザーアブレーションは,頭頸部など美容的に慎重を要する部位に対して広範な病変を短期間で治療できるため,有益性が高い」と結論付けている。 Medical Tribune 2012年2月9日 ![]() |
頭頸部がん 2年生存者の死亡リスクに痛みや喫煙の有無が関与 |
アイオワ大学病院(アイオワ州)のTrisha L. Thompson博士らは「頭頸部がんの診断から2年経過した患者を対象に,死亡率を高める因子を調べた結果,総合的QOLの低さ,痛み,喫煙が関与していることが分かった」と発表した。 1割以上が喫煙継続 条件付き生存率とは,ある一定期間生存した後の生存確率である。Thompson博士らは,背景情報の中で「この確率を知ることは,頭頸部がん治療では重要となる。というのも,頭頸部がんでは通常,診断から長期経過するほど死亡率や再発率が低くなると考えられているからだ」と説明している。 同博士らは今回,頭頸部(上部気道消化管)がんと診断されてから2年以上生存した患者276例を抽出し,2年経過時点の条件付き生存率を算出した。同プロジェクトでは,がんと診断された患者のQOLが治療開始前から15年にわたって追跡されている。この276例のうち,59.9%は過去に喫煙歴があり,11.4%は診断から2年経過した現在も喫煙を続けていた。また, 86%で食事は十分に取れており,80.5%では痛みの報告がなかった。 その結果,全患者を含めた5年生存率は61.1%で,2年生存した患者の条件付き生存率は90.8%であった。また,がん特異的5年生存率については,全患者の生存率は69.8%,条件付き生存率は94.8%であった 条件付き生存率では,死因が頭頸部がんか否かにかかわらず,高齢であることと,がんの進行が生存率の低さと関連していた。さらに痛みがあるか,総合的なQOLが低いと全死亡率が高かった。診断から2年後も喫煙している患者では頭頸部がんによる死亡率が高かった。 総合的なQOLが低いと回答した患者に比べ,高いと回答した患者では死亡リスクが約4分の1であった。痛みがないと回答した患者に比べ,あると回答した患者では,死亡リスクが2倍高かった。禁煙した患者もしくは喫煙歴のない患者に比べ,喫煙を続けている患者では,がんによる死亡リスクが4倍高かった。 Medical Tribune 2012年2月9日 ![]() |
がん患者に「絶対」と言わないわけ |
笹子 三津留 兵庫医科大学上部消化管外科主任教授 がん医療に本格的に関わり25年。その間に時代は大きく変化し,真実の告知は当たり前となったが,1987年に私が国立がんセンター病院(現国立がん研究センター中央病院)に赴任した頃は,まだまだ微妙な説明が患者になされていた時代であった。胃がんで開腹してみると播種があり,試験開腹に終わった場合にも「とりあえず切除したが,がんが残っている」と言ってみたり,切除不能のがん患者に「とりあえず抗がん剤治療をやっていきましょう。結果がいいと次の手を考えましょう」など…。患者の中には治ると信じ込んで懸命に化学療法を受けるも,その効果は限られているため,生への執着が仇となり,もがき苦しむような終末期を過ごす方も少なくはなかった。 しかしながら時代も変わり,今では「抗がん剤治療をすることが現時点での最良の治療ですが,残念ながらあなたのがんが治る見込みはありません。がんとの共存時間を長く,有意義にすることを目標に考えています」といった説明がしばしばされるようになった。間違いではない。このニュアンスを伝えることは必須であるが,一言「でもがんには絶対ということはないんですね。今まで,何度か絶対がんで亡くなると思っていた方が治ったり,逆に絶対治ると思っていた人が再発することも経験しています」と付け加えるようにしている。 その男性は60代でジャーナリストとして多忙な生活を送っていて,どうにも食事がとれないようなひどい幽門狭窄により,がりがりにやせて,低栄養状態で私のところに紹介されてきた。高度の進行胃がんであったが,最低バイパス手術は必要と考え,予約順を無視して早期に手術を行った。胃がんは肝にも,腹膜にも転移していなかったが,膵頭部に明らかに浸潤していた。 このようながんの大半は,丁寧なぎりぎりの剥離で膵頭部から剥離できたが,この男性の場合は無理であった。彼の全身状態が良ければ膵頭十二指腸切除の適応であったが,とても実施できる全身状態ではなく,一部のがんを膵頭部に残して幽門側胃切除を行った。さらっとD2郭清も行った。術後は順調に経過し,すぐに退院したが,評価病変がない彼は外科でUFTの経口投与程度の治療を受けながら経過観察されていた。 数ヶ月後にまさに腫瘍のあった部位に一致して局所再発し,それはゴルフボール大の腫瘤を形成した。CTでは遠隔転移は一切なく,腹部についてはそこ以外は柔らかかったことから,まず放射線科に相談し,局所への照射が開始された。当時の放射線科では温熱併用の照射が行われることがしばしばあり,この患者も局所に針を挿入して加温する温熱併用照射が行われていた。 照射を続けて累積量が30グレーを超えた頃に,患者は右腋下の3cm大のしこりを訴えて放射線治療中に外科を訪れた。私はそれを見て一目で事態を理解した。腹壁に浸潤した腫瘍が右腋下リンパ節に転移していたのである。もはや局所疾患ではない。放射線科に連絡をして,以後の照射を中止し,腫瘍内科へ化学療法をお願いした。内科へ送り出すときに,「もう治ることはまずないでしょう。がんは今や全身化し,これからの抗がん剤治療はあくまでQOLのいい時間を稼ぐためのものです。やり残すことがないように考えながら治療を継続してください」と状況を説明した。 内科では順調に治療が進められ,当時の一般的な治療であったFP療法を受け始めて3〜4ヶ月経った頃,外科にやってきた患者の腋下リンパ節はもはや触れることはできなかった。今でこそ,時にCRを経験する時代となったが,その当時はきわめてまれなことであった。信じられなかった私は腋下リンパ節生検を実施したが,生存する残存がん細胞はなく見事にヒアリナイゼーションしていた。 FP療法をCDDPの限界量まで継続したが,終わりの頃には腹部の腫瘍も徐々に縮小し始め,治療を終了して数ヶ月後にはCTでも触診でも全く確認できなくなっていた。その後10年以上生存して他病死した彼と会うたびに私は「脚はついてるかな?」と微笑みながら質問し,彼は「もちろん。元気ですよ。先生,いつまで生きるんでしょうか?私は墓も建てたし,戒名までもらったんですけどね」と嬉しそうに私をからかうのであった。 この患者さんと同様な,絶対にがんが残っているはずの患者が治るという事例を数例経験するようになり,「絶対治らない」と言うのは間違いである,「絶対」という言葉を使うのはやめよう,と心に誓った。 わずかであっても心のどこかでそうした望みが持てるのは悪いことではない。このような希望に縛られてしまうとがん難民と化して,残り少ない時間を無駄にして世の中をさまようことになる。がん難民という言葉は医療体制のひずみにより生じた,行き場のない患者を意味するのであろうが,死からあくまで逃れようとする難民となってしまうと救われるすべはない。患者のスピリチュアルなケアを充実させていくことは,今後のがん医療の大きな課題の一つである。 Medical Tribune 2012年2月9日 ![]() |
電子たばこ〜禁煙手段になるも安全性は不明HPVワクチンによる子宮頸がんの予防接種は何歳まで有効? |
電子たばこは,有害物質が発生せず,肺に損傷を与えない「健康的な嗜好品」と宣伝されているが,実際はどうなのだろうか。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学病院(ミュンヘン)のDennis Nowak教授は「複数の先行研究から,禁煙を補助する手段として有用だとする結果が得られているが,疑似煙の安全性は不明で,ニコチン依存症や未成年者の喫煙を誘発する恐れもある」と2011年呼吸器科アップデートセミナーで報告した。 約半数で喫煙本数が半分以下に 電子たばこは,主にバッテリー,アトマイザー,香料やニコチンを含む液体が充填されたカートリッジで構成されている。カートリッジ部を口にくわえて吸うと,自動的に電源が入り,アトマイザーによりカートリッジ内の液体が加熱されて霧状の蒸気が吸い口から出てくる。さらに,先端にはLEDランプが付いており,吸うと明るく光る。こうした細工により,本当にたばこを吸っているかのような気分が味わえるとされる。 こうした電子たばこの使用について,あるパイロット研究から良好な結果が得られている。同研究では,禁煙の意思がない常習喫煙者40人に電子たばこ(交換用カートリッジは無制限に提供)を使用してもらい,24週間に5回のフォローアップを施行。アウトカムは「その間に喫煙した本物のたばこの本数」とした。 その結果,22人で喫煙本数が50%以上減少し,電子たばこによる影響を全く受けずに喫煙本数が従来通りであったのはわずか5人であった。さらに,5人は喫煙本数が80%以上も減少し,9人は完全に禁煙できたという。Nowak教授は,この結果を受けて「電子たばこが禁煙に役立つことは確か」と述べた。 発がん性,生殖毒性は不明 その一方で,Nowak教授は「カートリッジに充填された液体の主成分はプロピレングリコールで,一般に無害とされているが,それ以外に刺激性のある物質が発生する可能性があり,電子たばこを使用した室内における人体への影響は全く不明である」と指摘。突然変異誘発性はないとする研究結果が多く得られているものの,発がん性と生殖毒性に関してのデータはまだ十分にそろっていないと指摘した。 ドイツがん研究センター(DKFZ)も,「電子たばこの有害性は過小評価されている」と警告。ドイツの電子たばこは,ニコチンを含む液体が充填されていることがほとんどであるため,電子たばこであってもニコチン依存症を招くリスクがあるとしている。 同教授は,こうした有害性が軽視されることにより電子たばこが普及し,社交の場で「たばこを吸うこと」が再び正当化されたり,未成年者を喫煙に向かわせるきっかけとなることに危惧を示した。 Medical Tribune 2012年2月9日 ![]() |
全粒穀物の摂取で大腸がんリスクが低下 |
インペリアルカレッジ公衆衛生学部(ロンドン)疫学・生物統計学のDagfinn Aune氏ら英国とオランダの共同研究チームは,食物繊維の摂取と大腸がんリスクとの関連についてシステマチックレビューとメタアナリシスで検討し,「食物繊維を多く含む食物,特に穀類あるいは全粒穀物の摂取は大腸がんリスクの低下に関連していた」との結果を発表した。 リスクとの関連性は不明確 食物繊維あるいは全粒穀物の摂取が心血管疾患の予防に有益であることは知られているが,大腸がんリスクとの関連性はそれほど明確ではない。また,1970年代の観察研究で,食物繊維の摂取により大腸がんリスクが低下する可能性が示唆されて以来,複数の研究でその関連性が検討されてきたが,これまで一貫した結果は得られていなかった。 今回の研究結果は,大腸がんの予防には繊維質,特に穀類あるいは全粒穀物を豊富に摂取すべきとした公衆衛生上の推奨を支持するものとなった。全粒穀物食品には全粒粉のパンやシリアル,オートミール,玄米,ポリッジ(オートミールなどを水や牛乳で煮たかゆ)などが含まれる。 ただし,Aune氏らは「さまざまな人口集団におけるライフスタイルや食事特性,繊維質の種類と大腸内での分子構造により結果を分類し考察することが必要だ」と強調している。 野菜や果物との関連性は認められず 全体的な大腸がんリスクの低下度は小さいものの,食物繊維の摂取量に応じたリスク低下が認められた。用量依存性について16件の研究データを解析したところ,食物繊維の総摂取量が10g/日増加するごとに,大腸がんリスクは10%低下した。また,全粒穀物を3サービング(90g/日に相当)摂取することは,同リスクの20%低下と関連することも分かった。 Medical Tribune 2012年2月16日 ![]() |
大腸がん検診〜CT colonographyで受診率向上 |
学術医療センター(AMC,アムステルダム)放射線学のJaap Stoker教授らは「CT colonography(CTC)を大腸がん検診の中心に据えることで,従来の大腸内視鏡検査と比べ受診者の大幅な増加が見込める」と発表した。 侵襲性低く麻酔も不要 大腸がんのほとんどはポリープから発生し,基本的には予防も治療も可能であるが,依然,欧州では2番目に多いがん死の原因となっている。大腸内視鏡検査では,ポリープががん化する前の段階で発見し切除できるため救命に有効だが,検診への参加率は低い。一方,CTCは標準的な大腸内視鏡検査と比べて侵襲性が低く,麻酔も不要であることから,より多くの人が受け入れやすいという利点があるとされる。 そこでStoker教授らは今回,両手技を検診に用いた場合の検診受診率や成績を評価,比較した。対象はアムステルダムとロッテルダム在住で,平均的なリスクを有する50?75歳のオランダ人。大腸内視鏡(5,924人)またはCTC(2,920人)による大腸がん検診のいずれかにランダムに割り付け,参加を呼びかけた。 検査の負担軽減が参加の動機に その結果,CTC群では,大腸内視鏡群に比べて検診受診率が有意に高かった(34%対22%)。Stoker教授らは,受診率にこのような差が生じた理由について「おそらく検査に対する負担感,あるいは手技に関連した合併症の差によるものと考えられる」と推測している。 また,検診受診者100人当たりの進行がんの発見数はCTC群よりも大腸内視鏡群で多かった。しかし,検診を受診しなかった者も含めた全体で算出したところ,1人当たりの進行がん発見数は,スクリーニングプログラム全体では両群で同等であることが明らかになった。 同教授らは「両手技とも,住民を対象とした大腸がん検診に使用可能である。ただし,いずれの手技が優位かどうか決める際には,費用効果や受診者への負担度といった他の因子も考慮に入れなければならない」と結論している。 Medical Tribune 2012年2月16日 ![]() |
男性は「ガーン」? 35種中32種のがんが女性より有意に多い 世界60カ国のがん登録システムの解析から |
がんは女性に比べ男性で多く見られるとされているが,がんの種類による差や実際どの程度の違いがあるのかについてはあまり知られていない。米ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)のGustaf Edgren氏らは世界60カ国を網羅するがん登録システムのデータを解析。35種のうち,32種のがんで女性より男性の発症率が有意に高かったことを報告している。 15種のがんで2倍,5種のがんでは4倍 HSPHのニュースレター2月号によると,がんが女性よりも男性に多く発症する背景として喫煙や飲酒,環境危険因子が考えられるとしている。しかし,これらの危険因子との関連が明らかになっていないがんも多い。 Edgren氏らは,国際がん研究機関(IARC)から60カ国分,およそ1,500万件のがんに関する情報を入手,性別とがん腫の関連を調べた。IARCは携帯電話と発がん性に関する研究なども行っている。 生殖器のがんおよび乳がんを除く35種のがんのうち,胃や直腸肛門がん,白血病など15種のがんで男性の発症率が女性の2倍に上っていたほか,喉頭がん,下咽頭がん,口腔がん,尿道・膀胱がん,カポジ肉腫の5種では,男性の発症率が女性の4倍に達していたという。女性で男性より多く見られたがんは甲状腺がんのみであった。男性のがん発症率が高い傾向はGDPや地域の違いに関係なく同様であったという。 同氏は「幅広い種類のがんで男性の発症率が女性より高いだけでなく,その超過リスクの大きさに強い興味を引かれる」と驚きのコメントを行っている。さらにこのリスク傾向は1960年代からほぼ一貫していることも大きな謎だとしている。 Medical Tribune 2012年2月17日 ![]() |
医療者も必携を『患者必携 もしも,がんが再発したら』 “science”のまとめではなく,再発がん患者の体験談を中心に編集 |
国立がん研究センターがん対策情報センターは,再発がん患者とともに,『患者必携 もしも,がんが再発したら』を作成し,3月5日に出版・公開することとなった。出版・公開に先立ち2月28日,作成の背景や主旨に関する記者発表会を開催。同センター理事長の嘉山孝正氏は,同書について「患者の言葉でつづられている。患者だけではなく医療者にとっても必携」と紹介した。 「再発の方がつらく,信頼できる情報も少ない」 『患者必携 もしも,がんが再発したら』作成のきっかけは,2011年3月に発行された『患者必携 がんになったら手にとるガイド』の作成当初にさかのぼる。がん対策情報センター副センター長の若尾文彦氏によると,「多くの患者さんから,『がんになったときは大変だったが,再発したときの方がつらかった』『信頼できる情報が非常に少ないので,再発患者向けの冊子をつくってほしい』という声が寄せられた」という。 作成の経緯に関して,がん対策情報センター医療情報サービス研究室長の高山智子氏は,「2009年秋に本センターの患者・市民パネルに呼びかけて再発がんの経験者など8人を集め,医療者を含むワーキンググループを設置。7回にわたる検討会や試作版の検証を経て作成した」と述べた。同院緩和医療科・精神腫瘍科長の的場元弘氏は「再発について患者に伝えなければならない医師も少なくないだろう」とし,「治療や緩和に携わる医療者にも読んでほしい」と話した。 同書『患者必携 もしも,がんが再発したら』は3月5日に発行し,見本書8万部をがん診療連携拠点病院や公立図書館,患者団体などへ配布の予定であり,同センターのwebサイト「がん情報サービス」でも全文ダウンロード可能となる。また将来的には,スマートフォンや書籍リーダーなどを通しての閲覧・購入も行えるよう検討中であるという。 Medical Tribune 2012年2月28日 ![]() |