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身体活動は部位に関係なく結腸がんの予防に有効 |
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定期的な身体活動は部位に関係なく結腸がんのリスクを軽減すると,オーストラリアのグループがJournal of the National Cancer Instituteの10月17日号に発表した。 身体活動が結腸がんのリスク軽減と関係することを示す疫学的エビデンスがあるが,部位(近位または遠位)による違いがあるかどうかは明らかではない。同グループは,電子医学データベースから身体活動と近位および遠位結腸がんとの関係を検討したコホートまたは症例対照研究を抽出し,メタ解析を行った。 該当した21研究を解析した結果,最も身体活動度が低い群と比べ最も身体活動度が高い群では,近位結腸がんのリスクが27%低かった。同様の関係が遠位結腸がんでも認められた。 同グループは「今後は,座りがちな生活や無酸素運動と結腸がんリスクとの関係などを検討する必要がある」としている。 Medical Tribune 2012年11月1日 ![]() |
ビタミンEに肝がん予防効果の可能性 |
上海交通大学上海がん研究所仁濟病院(中国・上海)のWei Zhang博士らは,上海の疫学研究データを検討し,「食事やサプリメントからのビタミンE摂取により,肝がんリスクが低下する可能性が示唆された」とJournal of the National Cancer Institute(2012; 104: 1173-1181)に発表した。 摂取状況別に肝がんリスクを検討 肝がんはがん死の原因として世界で3番目に多く,がん種別の罹患率でも男性で5番目,女性で7番目に位置付けられている。肝がんの約85%は発展途上国で発生しており,中国だけで54%を占めている。 B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染による慢性肝炎が進行して肝がんが発生することは知られており,先行研究から食事やサプリメントからのビタミンの摂取と肝がんリスクの低下との関連が示唆されている。しかし,この関連を検討した疫学研究は数少ない。 Zhang博士らは今回,上海女性健康研究(SWHS,参加者の登録1997〜2000年)と上海男性健康研究(SMHS,同2002〜06年)の参加者13万2,837例のデータを用いてビタミンEの摂取と肝がんリスクとの関係を検討した。SWHSとSMHSは上海がん研究所とバンダービルト大学(米テネシー州)が共同で行った住民対象コホート研究である。 試験開始後2年間を除き,それ以降のフォローアップ期間中(SWHSでは10.9年,SMHSでは5.5年)に肝がんと診断された267例(女性118例,男性149例)を解析した結果,食事またはサプリメントからのビタミンE摂取は,いずれも肝がんリスクの低下と関連していた。この関連は,自己報告による肝疾患の既往歴または肝がんの家族歴の有無に関係なく認められた。 同博士らは「ビタミンEの摂取と肝がんリスクとの間に明らかな負の用量反応関係が認められた」と述べた上で,男性と女性ではリスク推定値に若干の差があったが,その理由としてSMHSのフォローアップ期間が短いことが考えられると指摘している。 Medical Tribune 2012年11月1日 ![]() |
診断前のスタチン使用でがん関連死亡リスクが低下 デンマーク研究 |
デンマーク・コペンハーゲン大学病院臨床生化学部のSune F. Nielsen氏らは「がんと診断される前からのスタチン(高脂血症治療薬)の定期的使用は,がん関連死亡リスクの低下と関連する」との自らの仮説を検証すべく,デンマーク国内のがん患者のデータを解析。「診断確定前からのスタチン使用は,がん関連死亡リスクの低下と関連していることが実際に示された」とN
Engl J Med(2012; 367: 1792-1802)で報告した。 最近のメタ解析とは異なる結果に コレステロールは細胞膜構造だけでなく細胞増殖にも欠かせない物質で,蛋白質のプレニル化にも関わっている。スタチンによりコレステロール合成が阻害され,コレステロール利用能が低下した場合に,がん細胞の増殖が抑えられる可能性や,メバロン酸経路の下流生成物の産生が抑制されて抗がん作用につながる可能性なども指摘されている。 このように「理論上は,がんと診断される前後で定期的にスタチンを使用していれば,がん関連死亡の低減につながっても不思議はない」とNielsen氏。しかし,スタチン投与研究のメタ解析から得られた結果は期待外れの内容で,最近の研究では,スタチン使用はがん発症にもがん関連死亡にも影響を与えないとされている(Lancet 2012; 380: 581-590)。 しかし,今回の報告内容は上記のメタ解析結果とは,いささか異なるようだ。 同氏らは,デンマーク国内で1995〜2007年にがんと診断された40歳以上(診断時点)の患者を対象に,2009年末までの死亡(全死亡,死因別)およびスタチンの使用状況を検討した。追跡期間の中央値は2.6年であった(データベースとして,デンマークがん登録,デンマーク住民登録システム,デンマーク医薬品統計登録を使用)。 スタチン使用経験なし群との比較におけるスタチン使用群でのがん関連死亡の減少は,がん種別にかからわず認められた。 Nielsen氏は「今回の研究から,がん患者における診断確定前からのスタチン使用は,約15%のがん関連死亡リスクの減少と結び付いていることが示された」と指摘。「今後,前向き研究によってスタチン使用が生存期間を有意に延長させるかどうかを検証したい」と抱負を語っている。 Medical Tribune 2012年11月9日 ![]() |
膵がん早期発見に向け,腫瘍マーカー4種で診断精度99.6% |
膵がんは予後不良のがんとされ,stage Vの5年生存率は5%以下,stageWでは3%以下という。早期(stage
T,U)に発見できれば治療成績は飛躍的に上がるが,膵がん治療の難しさはその早期発見の難しさにあり,診断時に既に進行がん(stage
V,W)である患者が約7割に及ぶ。 第50回日本癌治療学会学術集会(10月25〜27日,横浜市)のシンポジウム「膵腫瘍治療の過去と未来」において,国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野分野長の山田哲司氏は「腫瘍マーカーによる膵がん早期発見の試み」と題し,開発中の膵がん診断法を紹介。必要とされる検体は少量の血液ながら,診断精度が高く,腫瘍マーカー3種の組み合わせで97〜98%,4種の組み合わせでは99.6%となり,臨床応用が実現されれば膵がんの早期発見,生存率向上が大きく見込めるとした。 有力な2つの膵がんマーカー,Apo CV-0とApo AU-2 近年の研究で,膵がんはKRAS遺伝子変異が認められる初期状態から遠隔臓器に転移するまでに,約15年の月日を要することが示されている(Nature 2010; 467: 1114-1117)。山田氏は「今皆さんが治療している60歳のstage W膵がん患者では,実は45歳からがん化が始まっているということになる。50歳,せめて55歳で診断できれば」と話す。 膵がんは,早期ではほぼ症状が認められず患者自らが気付く可能性は低いため,早期発見のためにはがん検診が望ましいが,検診方法自体が確立されていない。現在膵がんの診断の際に用いられているCA19-9やがん胎児性抗原(CEA),Dupan-2などの腫瘍マーカーは,いずれも感度が60〜70%程度,特異度が低く,偽陽性率20〜30%と診断精度が低いため,検診には適さない。 そこで同氏らは,より正確な診断が可能で,かつ簡便な診断法の開発を目的に,厚生労働省による第3次対がん総合戦略研究事業の研究課題「がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発」として研究を重ねてきた。 正確な診断には,より特異度の高い膵がんマーカーの同定が不可欠だ。同氏らが有力な膵がんマーカーとして用いている物質は,翻訳後修飾を受けたアポリポ蛋白CV(Apo CV)-0およびアポリポ蛋白AU(Apo AU)-2である。両者とも健常者と比べて膵がん患者で著しく減少しており,この2つの蛋白質を組み合わせることにより高い精度で診断しうることを既に報告している(Cancer Res 2005; 65: 10613-10622)。 さらに,CA19-9やDupan-2を組み合わせたところ,診断精度は3種の組み合わせで97〜98%,4種の組み合わせで99.6%となることが示された。 Medical Tribune 2012年11月13日 ![]() |
がん抑制 山形大チームが糖尿病治療薬で実証 |
糖尿病治療薬メトホルミンが、悪性脳腫瘍の再発原因とされる「がん幹細胞」を「再発しないがん細胞」に変えるメカニズムを山形大医学部と国立がん研究センターの共同研究チーム(代表・北中千史山形大教授)が初めて実証した。乳がんや肺がんの治療にも応用できる可能性があるという。論文は15日、米科学誌ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシン(電子版)に掲載された。 研究チームによると、がん幹細胞の維持に糖代謝がかかわっていることを発見。マウス実験を重ね、メトホルミンの一時的な投与で代謝調節遺伝子を活性化させると、がん幹細胞内の特定の分子が活性化し、ただのがん細胞に変化する仕組みが解明されたという。メトホルミンについては従来、がんの増殖を抑制する効果が経験的に示されていただけで、がん幹細胞への効果は知られていなかった。 手術でがん細胞を取り除いても、がん幹細胞が残っていれば再発するケースが多いうえ、がん幹細胞は放射線や抗がん剤が効きづらく、治療が困難とされてきた。このため研究チームは「再発しないがん細胞」に変化させることを目標に研究を続けた。 既承認薬であるメトホルミンのがん治療への応用は、新薬開発に比べ、時間を大幅に短縮できるという。 毎日jp 2012年11月16日 ![]() |
マンモグラフィ導入から30年,米国で年間5万人以上が過剰診断か 早期がんの発見倍増も進行がんの減少はわずか |
マンモグラフィの普及により,それ以前には診断が困難であった非浸潤性乳管がん(DCIS)も多く発見できるようになり,乳がんによる死亡率低下に大きく貢献しているはず―。 しかし,米オレゴン健康科学大学のArchie Bleyer氏らは「1976〜2008年の米国のデータを検討した結果,早期がん(early-stage cancer)の診断件数は予想通りマンモグラフィの普及により倍増していたが,進行がん(late-stage cancer)診断件数の減少はわずかにとどまっており,マンモグラフィによる過剰診断の懸念を払拭することができない」と11月22日発行のN Eng J Med(2012; 367: 1998-2005)で指摘した。過剰診断されていた米国人女性は年間5万人以上と推計されるという。 早期に診断されるようになった122例中8例のみが進行期に至る? 米国では40歳以上の女性を対象としたマンモグラフィ検診の普及から約30年が経過している。そこで,Bleyer氏らは病期(早期,進行期)別の乳がん発見率にマンモグラフィの普及が及ぼした影響を検討。 米国のがん登録プログラムであるSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)のデータを用い,1976〜2008年の40歳以上女性における病期別乳がん発見率の推移を解析した。 その結果,マンモグラフィ導入以来,早期乳がんの年間発見件数は女性10万人当たり112から234へとほぼ倍増していることが明らかになった。 その一方で,進行期に至って初めて診断が付けられるケースは,女性10万人対で102から94へと約8%減少したにすぎず,進行期乳がんの中でも5年生存率が25%と予後不良な遠隔転移症例に限ると,マンモグラフィ検診による影響を確認することができなかった。 また,マンモグラフィ検診の対象となっていない40歳未満女性における乳がん発症率を見ると,調査対象の全期間を通じ,早期,進行期ともにほとんど変化していないことも明らかになった。 「単純に考えると早期に診断が付けられるようになった122例中8例のみが(診断できなかったら)進行期にまで移行するとの見方も可能」と同氏。 Medical Tribune 2012年11月22日 ![]() |
〜スウェーデンの乳がん死亡率〜 低下続くもマンモグラフィ検診の影響は不明 |
国際予防研究所(iPRI,仏リヨン)のPhilippe Autier博士らは,マンモグラフィスクリーニング実施率と乳がん死亡率の推移をスウェーデンの全国統計データを用いて検討し,「40〜69歳の女性に対するスクリーニングが乳がん死亡率に与える影響は限定的あるいは皆無であった」とJournal of The National Cancer Institute(JNCI,2012; 104: 1080-1093)に発表した。 低下ペースに変化なし 1974年以降,スウェーデンの女性(40〜69歳)に対するマンモグラフィスクリーニングの実施頻度は増加し,全国の施行率は97年にピークを迎えた。そこで,Autier博士らは,こうしたスクリーニング施行率の変化が死亡率に及ぼす影響を検討した。 同博士らは,スウェーデン国立保健福祉評議会の1960〜2009年のデータを用いて,40歳以上の女性における乳がん死亡率の傾向を県別に解析し,実際の乳がん死亡率の傾向と,スクリーニングにより死亡率が,それぞれ10%,20%,30%低下した場合の理論的アウトカムモデルを比較した。 スウェーデンで実施された臨床試験と観察研究の中には,マンモグラフィスクリーニングにより乳がん死亡率が低下することを示したものもあることから,同博士らは,スクリーニングが死亡率減少と関連すると予測していた。しかし,解析の結果,乳がん死亡率の低下は,マンモグラフィ導入前の1972年から始まっており,その後も同等のペースで低下していた。 同博士は「スウェーデンの乳がん死亡率は,一定のペースで低下し続けた。今回の研究ではスウェーデンの乳がん死亡率の傾向は,スクリーニングが乳がん死亡率に対して限定的または全く影響を与えないことを示しており,既存研究の結果と一致している」と指摘。一方で,今回の研究の限界について「観察研究であったため,肥満などの乳がん危険因子の潜在的な影響を調整できず,スクリーニングが死亡率に与える影響が隠れてしまった可能性がある」と述べている。 Medical Tribune 2012年11月22,29日 ![]() |
50歳以上のアスピリン服用例で肝細胞がんリスクが減少 米・NIHコホート研究 |
非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のうち,アスピリンを服用していた者では,服用していなかった者に比べて肝細胞がん(HCC)の発症リスクおよび慢性肝疾患(CLD)による死亡リスクが有意に低いという新しい知見が発表された(J
Natl Cancer Inst 2012年11月28日オンライン版)。 米国立がん研究所(NCI)がん研究センターがん疫学・遺伝学部門のVikrant V. Sahasrabuddhe氏らが,50〜71歳の30万例超を対象とした「NIH(米国立衛生研究所)-AARP(米国退職者協会)食生活・健康調査」の中で明らかにした。NSAID服用によるがんのリスク低下は既に報告されているが,HCCの発症およびCLDに伴う死亡については明らかでなかった。 アスピリン単独でも非アスピリン系との併用でもリスク低下 in vtro(試験管内)や動物実験では,NSAIDにおけるHCC抑制効果が示唆されていた。ヒトでも検討が試みられたが,対象例数が限られているため,HCCの抑制効果がNSAIDによるものなのかは明らかではなかった。 今回の研究の対象は「NIH-AARP食生活・健康調査」の登録者(1995〜96年)のうち,12カ月以内のNSAID 服用情報が得られた30万504例〔年齢50〜71歳(平均62.8歳),男性58.4%〕。 追跡の結果,HCC発症は250例(2006年12月現在)に,CLDによる死亡は438例(2008年12月現在)に認められた。 アスピリン服用例(21万9,291例;非アスピリン系NSAIDとの併用例を含む)では,非服用例に比べてHCCの発症リスクは41%, CLDによる死亡リスクは45%,いずれも有意に低下した。 アスピリン単独服用例(8万9,585例)でも,HCC発症リスクおよびCLDによる死亡リスクは,非服用例に比べていずれも有意に低いことが分かった。 Medical Tribune 2012年11月30日 ![]() |