広葉樹(白) 
          

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2011年2月 文献タイトル
乳がん家族歴のある50歳未満女性 年1回のマンモグラフィ検査で死亡率が低下
イスラム教徒の患者には宗教的な配慮を
示指が薬指よりも長いと前立腺がんリスクが低い
大腸3D-CTの国内での確立を目指して
〜マンモグラフィスクリーニング〜乳がんリスクより便益上回る
父方の家族歴も忘れずに 家族性乳がん・卵巣がんリスクの評価
〜放射線被ばく〜中年層でもがんリスク増加
がん不死化抑える遺伝子 鳥取大、治療や再生医療に
血液がんの増殖機構解明 京大、ウイルス遺伝子特定
20歳で脱毛があった男性は前立腺がんリスクが2倍 30歳,40歳時の脱毛は関連なし
コーラ着色料はがんの原因 米団体が禁止求める
一部の腫瘍細胞が胸腺に潜伏 化学療法を逃れて生存
センチネルリンパ節転移の少ない早期乳がんではSLNDとALNDの生存率に差はない
第14回日本統合医療学会 漢方薬の併用でがんや糖尿病の症状,QOLが改善
男性乳がんは予後不良 5年生存率は60%
男性の2型糖尿病が大腸がんに関連
がん放射線療法個別化への道開くバイオマーカーを同定

乳がん家族歴のある50歳未満女性
年1回のマンモグラフィ検査で死亡率が低下
 ロンドン大学のStephen W. Duffy教授らは「乳がん家族歴がある50歳未満の女性に対する年1回のマンモグラフィ検査は,乳がんの発見率向上と乳がんによる死亡の減少に有効である」との研究結果を発表した。
 
76施設から6,710例を登録

 血縁者に乳がん患者が複数いる女性や若年期に乳がんと診断された血縁者のいる女性では,そうでない女性と比べて,乳がんリスクが3倍超高くなる可能性がある。英国保健サービス(NHS)の乳房スクリーニング計画では現在,50〜70歳の全女性に対し,3年ごとのマンモグラフィ検査を実施しているが,家族歴のある女性では,同検査の回数を同計画の推奨よりも増やす,開始時期を早めることから得られる便益があるかもしれない。

 そこでDuffy教授らはFH01(Family History 01)試験を実施し,顕著な乳がん家族歴のある50歳未満の女性への年1回のマンモグラフィ検査が診断時病期と死亡率に及ぼす影響を検討した。

スクリーニング1万回で乳がん死亡2例減少

 解析の結果,年1回スクリーニングを受けた集団(FH01群)では,英国年齢試験の集団より,診断時の腫瘍が有意に小さく,リンパ節転移陽性の可能性が低く,悪性度も低かった。またオランダ試験の集団と比べて,リンパ節転移陽性の割合が有意に低かった。

 腫瘍の大きさ,リンパ節の状態,悪性度は,将来の乳がん死と強く相関するが,今回の試験では,FH01群における診断時の腫瘍はこれらの特徴が他の2 データより有意に好ましいことが分かった。Duffy教授らによると,浸潤性乳がんの診断後の10年生存率が,FH01群では他の2試験のデータより有意に高いと推定された。

 乳がんの診断から10年以内に死亡する女性を介入で何例減らすことができるか比較した。その結果,英国加齢試験では7〜9年の間に1万回スクリーニングを実施して0.56例にとどまったのに対し,FH01群ではスクリーニング1万回ごとに2例減少すると推定された。

 同教授らは「今回の結果から,家族性リスクが中等度以上の50歳未満の女性に対する年1回のマンモグラフィ検査は,従来の検査と比べてがん発見率を向上させ,進行がんリスクと推定死亡率を低下させることが示された」と結論付けている。

Medical Tribune  2011年2月3日

イスラム教徒の患者には宗教的な配慮を
 多くの医師で,さまざまな社会経済的地位や宗教的および文化的背景を持つ患者の診療に当たる機会が増えているが,このような患者の多様性が質の確保された医療を提供する際の障壁となる可能性が指摘されている。ミシガン大学保健システムの救急医でロバートウッドジョンソン財団の臨床研究者であるAasim I. Padela博士らは,米国で信者数が急増しているイスラム教におけるジェンダー(性別)の考え方,イスラム法の概要を紹介した上で,イスラム教徒の患者の診療で医師が配慮すべき宗教的,文化的事項についてまとめ発表した。
 
慣習の理解で医療の質が向上

 イスラム教は信者の増加率が世界で最も高い宗教で,米国の信者は約700万人に上る。米国のイスラム教徒の女性では,乳がんや卵巣がんの罹患率が全米平均を上回るとの報告があり,慎み深い女性信者に対しては,同性の医師によるがんの早期診断を目指すなど,特別な配慮が必要とされている。

 Padela博士らは「イスラム教徒におけるジェンダーに関する倫理観は,文化よりもイスラム教の教義に深く根差したものである。医療従事者は,患者が求める医療,受ける医療にこのような宗教的な倫理や価値観がどのように影響するのかについて,十分に理解しておく必要がある。われわれ医療従事者が患者の宗教的慣習に対応することで,よりホリスティックな質の高い医療を提供することができる」と説明している。

 同博士らは「患者の宗教的な価値観や慣習に対応する第一段階として,まずは患者の背景を知り,どの程度強い信念体系を持っているかを理解しなくてはならない」と指摘。イスラム教徒の患者を診療する上での実践的なアドバイスとして,(1)服装に関する対応策(イスラム教徒は患者衣に着替えることに抵抗を感じる)(2)女性隔離への対応策(内診時には付き添い者を同伴させるか,ドアをわずかに開けておけば,イスラム法の要件を満たすことができる)(3)ジェンダーの問題に関する対応策(可能であれば患者と同性かつイスラム教徒の医師が診療に当たる)などを挙げている。

Medical Tribune 2011年2月3日

示指が薬指よりも長いと前立腺がんリスクが低い
 ワーウィック大学(英)のKen Muir教授らは,示指が薬指よりも長い男性では前立腺がんリスクが低いとする研究結果を発表した。
 
発症リスクが3分の1低い

 今回の研究はProstate Actionと英国がん研究会の助成を受けたもので,解析の結果,示指が薬指より長い男性では,その逆の男性と比べ前立腺がん発症リスクが3分の1低いことが分かった。

 共同研究責任者で,英国がん研究所にも所属するEeles教授は「今回の研究結果は,特に60歳未満の男性において,相対的な指の長さを基に前立腺がんリスクを簡便に判別できることを示しており,指の長さのパターンと,家族歴や遺伝子検査といった他の因子を組み合わせることなどにより,スクリーニングに適したリスクを有する男性をふるい分けられる可能性を示唆している」と述べている。

 今回の研究では,1994〜2009年の15年間に,前立腺がん患者1,500例超と健康な対照群3,000例超に指の長さの組み合わせが異なる複数の絵を提示し,自身の右手指に最も近いものを選ばせ,結果を解析した。

 最も一般的な指の長さのパターンは示指が薬指よりも短いもので,対象男性の半数超で認められ,示指と薬指が同じ長さの男性は約19%であった。これらの群の前立腺がんリスクは同等であったが,示指が薬指よりも長い群では,前立腺がん発症リスクが33%低かった。60歳未満で示指が長い男性では,前立腺がんリスク低下率は87%と,さらに著明であった。

子宮内の性ホルモンレベルが関与

 示指と薬指の相対的な長さは出生前に決まり,胎児が子宮内で曝露された性ホルモンのレベルが関係すると考えられている。テストステロン曝露が少ないと示指は長くなることから,Muir教授は「出生前のテストステロン曝露が少ないことが,後の人生における前立腺がん発症リスクの低下に寄与するのではないか」と指摘している。こうした現象は,HOXAとHOXDという遺伝子が,指の長さと性器の発育の両方に関係しているために起こると考えられる。

Medical Tribune 2011年2月3日

大腸3D-CTの国内での確立を目指して
 第65回日本大腸肛門病学会では,大腸3次元CT研究会による「大腸3次元CTハンズオントレーニングコース」が日本の消化器系の学会で初めて開催された。参加者は,大腸3次元(3D)-CT検査(CT colonography;CTC)の画像を実践に即した形で読影した。
 
病変拾い上げから診断までを経験

 今回の共催は,日本の消化器科医に大腸3D-CTの意義と手技への理解を深めてもらいたいとする大腸3次元CT研究会と,この検査の今後の発展に期待を寄せる同学会の松田会長らの意向が一致し,実現した。世界的に高い内視鏡技術を持つ日本の消化器科医が大腸3D-CTの手技と読影技術を習得すれば,2つのスキルを組み合わせたスクリーニングが可能になる。

 同研究会の代表者でハーバード大学マサチューセッツ総合病院放射線科3D画像研究所の吉田広行准教授は「優れた内視鏡技術を持つ日本の消化器科医に大腸3D-CT読影技術も習得してもらい,世界的に高い水準の大腸がんスクリーニングを可能にしたい」と述べた。

 大腸3D-CTは,米国の大腸がん検診ガイドラインで内視鏡検査と並ぶスクリーニング法として推奨されている。一方,日本の大腸がん検診では内視鏡検査が主導で,大腸3D-CTの導入は,精度検証の遅れや読影に熟練した医師の不足などから欧米に大きく遅れている。こうした状況の中,日本の消化器科医と放射線科医によるJapanese National CTC Trial(JANCT)が昨年10月から始動。目的は,大腸3D-CTの大腸ポリープと大腸がんの診断能を大腸内視鏡と比較評価することだ。現在16施設が参加し,対象は世界第2位の規模となる1,500例を予定している。

 当日は講義とハンズオントレーニングが行われ,講義では世界と日本の現状が紹介された後,経口造影剤で便を標識するタギングなどの前処置,撮影方法,読影方法が説明された。読影方法を解説した同研究会の共同代表者の永田浩一氏は「2Dと3Dの画像を自由に行き来して,見落としなく拾い上げることが重要」と強調した。読影トレーニングは2種類のワークステーション((株)AZE製,GEヘルスケア・ジャパン(株)製)を使用して行われた。参加者は,便潜血陽性症例について,病変が疑われる部位の形状の観察,サイズ・距離・CT値の計測,体位別の比較,2Dと3Dの画像の比較などの機能を用いて,隆起性病変の拾い上げから詳細診断を行うまでの過程を実際に経験した。

 同研究会日本事務局代表で昭和大学横浜市北部病院消化器センターの遠藤俊吾准教授は「この経験を日本の大腸がんの罹患率と死亡率の低下につなげてもらいたい」として,トレーニングコースを締めくくった。

Medical Tribune 2011年2月3日

〜マンモグラフィスクリーニング〜
乳がんリスクより便益上回る
 トロント大学(カナダ)医療生物物理学・医療画像のMartin J. Yaffe教授らは「マンモグラフィスクリーニングによる被ばくによって乳がんを発症するリスクは,それによる救命の便益に比べれば小さい」との研究結果を発表した。
 
女性10万例で検討

 Yaffe教授らは,さまざまなマンモグラフィスクリーニングのシナリオから,電離放射線の胸への曝露による放射線誘発性乳がんリスクを予測するモデルを開発し,乳がんの潜在的な数,致命的な乳がんの数,マンモグラフィスクリーニングにより失われた生存年数を推定した。

 同教授は,放射線量の推定値をデジタルマンモグラフィの典型的な線量である3.7mGyとし,女性10万例の集団を使用して,放射線誘発性乳がんリスクを予測するモデルを検査の開始と終了年齢の異なるさまざまなスクリーニングのシナリオに適用した。

 その結果,女性10万人に対して左右の乳房に3.7mGyの放射線を受けるスクリーニングを44〜55歳は年1回,その後74歳まで2年に1回行った場合,86の放射線誘発性乳がんが生じ,そのうち11が致死的で,136生存年が失われると推定された。一方,同じ集団において早期発見により,497 人の生命が救われ,1万670生存年が失われずに済むと推定されている。

 同教授は「マンモグラフィ検診による放射線誘発性乳がんの予測リスクは,誘発されるがんの数,潜在的な死亡者数,失われた生存年数という点では低い。しかし,40歳以上の女性では,ルーチンのスクリーニングで得られる早期発見に伴う便益は,スクリーニングに伴うリスクを大きく凌駕する。これらの年代の女性は放射線リスクを理由にスクリーニングを避けるべきではない」と述べている。

Medical Tribune  2011年2月10日

父方の家族歴も忘れずに
家族性乳がん・卵巣がんリスクの評価
 プリンセスマーガレット病院(カナダ)のJeanna McCuaig博士らは「乳がんまたは卵巣がんの家族歴があるため来院した患者の来院理由を調べたところ,父方の家族歴は危険因子としてとらえられていないことが明らかになった」と発表した。
 
遺伝確率は父母とも同じ

 乳がんと卵巣がんの約5〜10%が遺伝的素因により生じており,ほとんどがBRCA1かBRCA2の遺伝子変異による。これらの遺伝子変異は男女ともにがんリスクを上昇させるが,女性の場合は特に乳がんの生涯リスクが55〜87%増,卵巣がんが20〜44%増となる。しかし,これらの遺伝子変異が親から子に遺伝する率は50%である。

 McCuaig博士らは,医療従事者のほとんどはこれらの遺伝子変異が乳がんと卵巣がんリスクを上昇させることを認識しているが「このような遺伝子変異を有する女性が変異遺伝子を父親から受け継いだか否か確認することが少ないため,親の家族歴を正確に把握していない可能性がある」と言う。患者は父方のがんの家族歴も危険因子となることを知らないことから,医師に報告しない場合がある。

 同博士は「医療従事者にBRCA1とBRCA2の遺伝パターンについての知識が欠けていることから,父方にがんの家族歴がある人が遺伝子検査を受けたり,がんの予防策を講じたりする機会が失われる可能性がある」と危惧している。

 そこで同博士らは同院の患者記録を用いて,父方または母方の乳がん・卵巣がんの家族歴のため来院した患者の数を比較した。

 その結果,母方の家族歴のため来院した患者は,父方の5倍であることが明らかになった。

 今回の研究結果は,医療従事者が父方と母方の家族歴の両方を把握し,評価する必要があることを示している。

 同博士らは「BRCA1とBRCA2の変異が,父親からも遺伝する可能性があることを医療従事者が認識し,正しいリスク評価を行うことができれば,がんを予防できる患者が増えるだろう」と述べている。

Medical Tribune 2011年2月10日

〜放射線被ばく〜中年層でもがんリスク増加
 コロンビア大学放射線研究センター放射線腫瘍学のDavid J. Brenner博士らは「若年層と比べた中年層の放射線被ばくによるがんリスクは,これまで考えられてきたほど低くない」との研究結果を発表した。
 
原爆被ばく者のデータを再分析

 小児では成人に比べて放射線に対する感受性が高く,被ばくによる発がんリスクも高い。一般に被ばく時の年齢が高いほど,放射線誘発がんリスクは低いとのデータもある。

 一方,日本の原爆被ばく生存者を対象とした長期研究の結果から,被ばく時の年齢が30歳前後からそれ以降になると放射線誘発がんリスクは低下しなくなることが分かっている。

 Brenner博士らは,放射線被ばくによるがんリスクと被ばく時の年齢との関係を明らかにするため,放射線の被ばくから発がんに至るには2つのプロセスがあるという想定で,日本の原爆被ばく生存者のデータを再分析した。

 第1のプロセスは,正常な幹細胞を前がん細胞に転換する遺伝子変異が起こるイニシエーションプロセスで,第2のプロセスは体内に既存する前がん細胞を増幅させるプロモーションプロセスである。

 同博士らによると,小児ではイニシエーションプロセスの影響が優位で,既に前がん細胞を多く有する中年期の成人ではプロモーションプロセスの影響が優位と考えられる。

 同博士らは,こうした生物学的な作用に基づくモデルを開発し,日本の原爆被ばく生存者のデータに応用した。その結果,このモデルによって同生存者における被ばく時の年齢に関連したがんリスクのパターンが再現できた。

 また,米国人のデータを用いて同モデルでのがんリスクを予測したところ,30〜60歳の年齢層で予測がんリスクとデータとの一致が確認された。
低線量被ばくの重要性を示唆

 Brenner博士らは「中年期以降の放射線被ばくによるがんリスクが従来の考え方とは異なり,いくつかの腫瘍については増加する可能性がある」と指摘。また,「今回の研究結果は,中年期の成人を対象に普及しているX線診断や,同じく中年期の成人が多く従事する放射線を取り扱う職業に関して,重要な情報を提示している」と述べている。

Medical Tribune 2011年2月10日

がん不死化抑える遺伝子 鳥取大、治療や再生医療に
 がん細胞が不死化し増殖し続けるのに必要なテロメラーゼという酵素の働きを抑制する遺伝子「PITX1」を発見したと、鳥取大の久郷裕之(くごう・ひろゆき)准教授らのチームが10日、発表した。

 がんの新しい治療法や診断法の開発のほか、再生医療で注目される人工多能性幹細胞(iPS細胞)を利用する際に懸念されるがん化を防ぐのにも役立つと期待される。

 遺伝子の集合体である染色体の末端には、テロメアという部分がある。正常な細胞では分裂のたびに短くなり、細胞は老化、死滅する。がん細胞ではテロメラーゼがテロメアの短縮を防ぐため、がん細胞は増殖し続ける。

 チームは、マウスのがん細胞にヒトの染色体を1本ずつ導入し、培養。5番染色体を導入した細胞では、テロメラーゼの働きが抑えられた。

 准教授らは5番染色体からテロメラーゼを抑制する遺伝子PITX1を特定、PITX1だけをマウスのがん細胞に導入したところ、テロメラーゼの抑制が確認された。

m3.com 2011年2月14日

血液がんの増殖機構解明 京大、ウイルス遺伝子特定
 血液のがん「成人T細胞白血病」(ATL)の原因ウイルスHTLV1の特定の遺伝子が、がん細胞を増殖させるメカニズムを、京都大ウイルス研究所の松岡雅雄教授らのチームが15日までに解明した。

 HTLV1は主に母乳を通じて母親から赤ちゃんに感染し、成長してからATLやHTLV1関連脊髄症(HAM)を発症することがある。国内感染者は約108万人とされる。

 チームはこれまでにATL患者で働いていた「HBZ」という遺伝子が、がん細胞を増加させていることを確認。

 今回、マウス実験でHBZ遺伝子を強制的に働かせたところ、正常のマウスと比べ約5倍の数のマウスががんになった。HBZは別のタンパク質を介して、過剰な免疫反応を抑制する「制御性T細胞」を異常増殖させ、免疫不全を引き起こした。また制御性T細胞ががん化しており、これがATLにつながると考えられるという。

 松岡教授は「この遺伝子の働きを抑えられれば、感染しても発症抑制などの治療につながる」と話した。

m3.com 2011年2月16日

20歳で脱毛があった男性は前立腺がんリスクが2倍
30歳,40歳時の脱毛は関連なし
 生涯において約半数の男性が経験する男性型脱毛症。男性型脱毛症と前立腺がんの発症には,男性ホルモンのアンドロゲンが深くかかわっているが,両疾患の関係について近年の研究結果は一致していない。

 ジョルジュ・ポンピドゥー欧州病院(パリ)のM. Yassa氏らは,早期の男性型脱毛症発症と後の前立腺がんリスクについて調査。20歳で脱毛があった場合,後の前立腺がんリスクが2倍に高まる可能性を明らかにした。30歳,40歳時の脱毛とは関連がなかった。

脱毛のパターンは前立腺がんの予測因子ではない

 Yassa氏らは,前立腺がん388人(症例群)と非前立腺がん281人(対照群)を登録し,20,30,40歳時の脱毛のパターンを聞いた。ハミルトン・ノーウッドの分類を改変し,脱毛のパターンを,脱毛がない(ステージ1),前頭部が抜ける(ステージ2),頭頂部が抜ける(ステージ3),前頭部と頭頂部が抜ける(ステージ4)に分類した。

 参加者の平均年齢は,症例群67.2歳,対照群66.4歳で,前立腺がんの診断年齢は46〜84歳(平均64.4歳)だった。

 分析の結果,対照群と比較して,症例群では20歳時の男性型脱毛症の場合,リスクは2倍に上った。30歳,40歳時の男性型脱毛症の場合,有意差はなかった。

Medical Tribune 2011年2月16日

コーラ着色料はがんの原因 米団体が禁止求める
 米消費者団体、公益科学センター(CSPI)は16日、着色料としてコーラ飲料やソースなど幅広い食品に使われる特定のカラメル色素が、がんの原因になるとして、米食品医薬品局(FDA)に禁止を求める請願書を提出した。

 請願書によると、米政府による動物実験で、アンモニウム化合物を加えて製造されるカラメル色素に発がん性があると報告されている。

 CSPIは、コーラ飲料などに含まれる糖分の方が肥満などにつながる「より大きな健康リスク」と指摘。その上で、カラメル色素が「何千人もの米国民のがんを引き起こしている可能性がある」と訴えている。

m3.com 2011年2月17日

一部の腫瘍細胞が胸腺に潜伏 化学療法を逃れて生存
 マサチューセッツ工科大学生物学のMichael Hemann助教授らは,バーキットリンパ腫マウスを用いた研究で,胸腺中に潜伏して化学療法の影響を逃れるがん細胞が少数ながら存在することを見いだしたと発表した。
 
胸腺で増殖因子と接触

 胸腺は免疫細胞の成熟をつかさどる器官で,がん細胞が胸腺に侵入すると,薬剤の影響から細胞を保護する増殖因子と接触することになる。Hemann助教授は「このようながん細胞ががん再発の原因となっている可能性が高い」と指摘している。

 同助教授らは,こうした保護的因子の1つに干渉する薬剤の研究を,マウスを用いて行う予定であるという。これらの薬剤は本来,関節炎治療薬として開発されたもので,現在その目的での臨床試験が行われている。

 同助教授は「このような薬剤を従来の化学療法に併用することにより,残存腫瘍細胞を排除してがんの再発を阻止できるかもしれない。がん治療を成功させるためには,腫瘍細胞を破壊する要素と,腫瘍細胞の生存を促進するシグナルを遮断する要素が必要であるが,現行のがん治療は後者の要素において成功しているとは言えない」と説明している。

 今回の知見によって,腫瘍が検出される前に体内の他の部位に拡散した場合,現行の化学療法に対して抵抗性が示される原因が説明できる。そうした腫瘍細胞は,既に保護的なサイトカイン系と接触しており,こうした系が薬剤の影響を逃れて生き延びるのを助けているものと考えられる。

Medical Tribune 2011年2月17日

センチネルリンパ節転移の少ない早期乳がんではSLNDとALNDの生存率に差はない
 早期乳がんでセンチネルリンパ節(SLN=見張りリンパ節=局所からのリンパ液が最初に流入するリンパ節)転移の数が少ない患者では,SLN郭清(SLND)のみの場合と完全な腋窩リンパ節郭清(ALND)を行った場合で生存率や再発率に差はないとする試験結果が,米国の共同研究グループにより発表された。

 SLN生検は早期乳がんのリンパ節転移を明らかにするが,さらなるリンパ節郭清の生存への影響は明らかにされていない。同グループは,SLN転移数の少ない乳がん患者の生存に,SLNDがALNDと非劣性であるかどうかを検討するランダム化比較試験を行った。

 対象は,1999〜2004年に115施設に登録された臨床的深達度T1〜T2,リンパ節腫脹がなく,SLN生検で1〜2個の転移があった早期乳がん患者891例。全例に腫瘍摘出術(乳房温存療法)と全乳房照射を施行し,SLND群(446例)とALND群(445例)に割り付けた。

 SLND群とALND群の臨床および腫瘍特性は同等だった。一方,リンパ節郭清数の中央値はSLND群が2個,ALND群が17個と大きな開きがあった。

 6.3年間追跡した結果,5年全生存率はSLND群が92.5%,ALND群が91.8%,5年無病生存率はそれぞれ83.9%,82.2%といずれも有意差はなかった。

Medical Tribune 2011年2月24日

第14回日本統合医療学会
漢方薬の併用でがんや糖尿病の症状,QOLが改善
 東洋医学や自然療法,心身療法などの代替医療を近代西洋医学に併用する統合医療に関して,厚生労働省のプロジェクトチームが科学的根拠を検証するための研究を開始するなど,本格的な取り組みが進められている。

 徳島市で開かれた第14回日本統合医療学会のシンポジウム「全人的医療に於ける漢方の役割」では,がんと糖尿病の治療に漢方薬を併用することで,西洋医学だけでは限界があった症状や患者のQOLが大幅に改善したとの報告が相次いだ。

放射線治療との併用でがん生存率が向上

 徳島大学の竹川佳宏名誉教授は,子宮頸がんに対する放射線治療に十全大補湯などの漢方治療を併用した結果,漢方を併用しない群より有意に生存率が上がったと報告。「進行がん,末期がんでも生存率が上がっており,漢方薬の併用に延命効果があることが示唆された」と述べた。

非投与群の3倍が生存

 竹川名誉教授は,1978年から子宮頸がんの放射線治療に漢方の併用治療を導入,全身倦怠感,造血機能低下,食欲不振,悪心,嘔吐,口腔粘膜炎など放射線によるがん治療に伴う有害事象の予防,軽減を行ってきた。その効果を客観的に調べるため,放射線治療に漢方薬を併用した群と併用しない群で5年生存率を比較した。

 対象は,漢方併用群174例(年齢34〜92歳,平均67.2歳)と非併用群231例(同35〜87歳,66.7歳)。病期別では漢方併用群で進行症例の占める割合が多く,化学療法の併用率も高かった。

 併用する漢方薬は患者の証に基づいて処方。内訳は十全大補湯42.5%,八味地黄丸17.2%,人参養栄湯12.6%,柴苓湯11.5%,補中益気湯6.3%,小柴胡湯5.3%など。

 漢方併用群と非併用群の生存率曲線を比較した結果,有意差をもって漢方併用群に長期生存が見られた。

 さらに漢方併用群174例のうち,十全大補湯を服用した74例について再度詳しく検討した結果,V期,W期のいずれの群でも十全大補湯投与群で長期生存が見られた。

 また,治療後15〜20年の予後を検討した結果,漢方非併用群では生存率が約10%,子宮頸がん死亡率52%,他の疾患による死亡率29%。一方,十全大補湯投与群ではそれぞれ,約32%,約43%,約15%と,非併用群の約3倍の生存率であることが分かった。

 これらの結果について,同名誉教授は「がん治療における漢方の役割は,有害事象の軽減だけでなく,患者の生体防御機能の強化と自然治癒力を引き出すことで,再発・転移を抑え,ひいては延命につながることが示唆された」と結論付けた。

QOLを改善,がんを克服

 癌研究会有明病院(東京都)消化器内科の星野惠津夫部長は,同院の「漢方サポート外来」の5年間の取り組みから「がんの標準治療に漢方を加えると,患者のQOLが改善し,がん治療に有用」と報告。今後の戦略として「がん専門病院に隣接する“補完代替医療(CAM)モール”を設け,CAMの有用性を評価する必要がある」と述べた。

十全大補湯で肺転移巣が消失

 同院では2006年4月に「漢方サポート外来」を設立。毎月約30例の初診を含む200例の患者を診察,現在までに1,500例以上を治療してきた。

 星野部長は,がんの漢方治療では,気力や体力の低下した患者を元気にする「補剤」が基本であり,(1)精神ストレスや抑うつには補中益気湯(2)気力に加え体力も低下すれば十全大補湯(3)さらに消耗し咳や呼吸困難を呈すれば人参養栄湯(4)全身衰弱し冷えや下痢を伴えば茯苓四逆湯が有効な場合が多いと述べた。

 さらに「西洋医学は病原を直接攻撃するが,漢方医学では患者の栄養状態の改善と免疫機能の強化により間接的に病原を排除する。がん治療では両医学を併用して治療するのが理想的」との考えを示した。

 次に漢方薬が著効した代表的な6症例を紹介。がんとがん治療に伴う症状が緩和した例として,食道腺がん術後の肺転移による呼吸困難,中咽頭がん放射線治療後の口腔乾燥,胃切除術後の胃排出障害,乳がんホルモン療法によるホットフラッシュの症例を紹介した。

 さらに漢方薬ががん自体に作用した例として,C型肝硬変から肝細胞がんを発症し,多発肺転移を呈した64歳男性で,十全大補湯投与後に,αフェトプロテイン(FP)が激減し転移巣が消失した症例を報告した。

Medical Tribune 2011年2月24日

男性乳がんは予後不良 5年生存率は60%
 男性乳がんは極めて珍しく,西欧では男性が発症する悪性腫瘍のうち乳がんの占める割合は1%にも満たないが,ミュンヘンの泌尿器科プライマリケア医であるChristian Hofer博士らは「男性乳がんは近年増加傾向にある上,発見されたときには既に進行していることが多く,予後は不良である」と発表した。
 
発見の遅れが一因

 男性乳がんは60歳代に好発し,その約90%は浸潤性乳管がんである。男性乳がんリスクを上昇させる要因には,乳がんの家族歴のほか,女性と同様にホルモンバランスの乱れが挙げられる。

 統計によると,男性乳がんの5年生存率は60%,10年生存率は40%で,予後は一般的に女性より不良である。同博士らは,その理由として「統計データからも示されている通り,男性の方が乳がんの発症年齢が高く,男性患者の約半数が初回診断時に病期が既に進行しているため」と説明している。実際,性,年齢,病期を調整した群で転移リンパ節数と腫瘍径を予後因子としたところ,性差は示されなかったという。

半数でリンパ節腫脹

 男性乳がんのほとんどが,乳頭直下の触知可能な無痛性腫瘍として発見される。診断時の平均径は3.0〜3.5cmで,乳頭の病変(陥没,固定,潰瘍化など)が見られ,患者の40〜55%でリンパ節腫脹が認められる。

 Hofer博士らは「乳がんが疑われる場合は,迷わず超音波検査とマンモグラフィ検査を行うべき。また,組織学的検査が必要と思われる場合には,針生検や穿刺吸引細胞診,外科的生検を施行するように」と強調。「また患者によっては,胸部X線検査,腹部の超音波検査,骨シンチグラフィを用いて転移の有無を確認しなければならないケースもある」と述べている。

 男性乳がんに対する標準治療は手術で,ほとんどの場合,胸筋温存乳房切除術(Modified Radical Mastectomy)を施行する。手術後に放射線治療を行う場合も多く,その際には女性の乳がん治療ガイドラインに準拠する。また男性乳がんの多くがホルモン受容体陽性であるため,タモキシフェンなどを用いた内分泌治療が有効なこともあるとしている。

Medical Tribune 2011年2月24日

男性の2型糖尿病が大腸がんに関連
 米国がん協会疫学研究グループのPeter T. Campbell博士らは,2型糖尿病の男性では大腸がんリスクがやや高いとする研究結果を発表した。
 
女性では関連認められず

 2型糖尿病に見られる高血糖と高インスリン血症は,大腸がんと2型糖尿病を結び付ける仲介者と考えられている。2型糖尿病が大腸がんリスクの増加に関連することは知られているが,この関連性が性または他の因子の影響を受けているか否かについては不明である。

 Campbell博士らは,がん予防試験の集団(18万4,194例)を対象に,2型糖尿病およびインスリン使用と大腸がんとの関連について検討した。1992〜93年に参加者に調査票に記入させ,97年とその後2年ごとに追跡調査票を郵送した。

 解析対象は15万4,975例(男性7万3,312例,女性8万1,663例)であった。2007年までに男性1,567例(うち2型糖尿病227例)と女性1,242例(同108例)が大腸がんと診断された。

 解析の結果,2型糖尿病男性は非糖尿病男性と比べ大腸がんのリスクがやや高かった。インスリンを使用している2型糖尿病男性は非使用の2型糖尿病男性と比べリスクが高かったが,大きな差ではなかった。

 女性では,2型糖尿病およびインスリン使用と大腸がんとの関連は認められなかった。

 同博士らは「今回の研究結果は,これまでに示唆されている2型糖尿病と大腸がんとの関連を支持するものである。一方,インスリン使用と大腸がんリスクの増加との関連は弱かった。

 今後の予防戦略としては,禁煙,体重管理,運動,早期発見のための検査など,一般に向けて作成されたガイドライン順守の重要性をあらためて強調することが考えられる」と述べている。

Medical Tribune 2011年2月24日

がん放射線療法個別化への道開くバイオマーカーを同定
 メイヨー・クリニックゲノム研究者のLiewei Wang博士らは,個々のがん患者で放射線療法の反応が異なることを説明しうる複数のバイオマーカーを同定したと発表した。この知見は放射線療法の個別化に向けた一歩となるものである。
 
反応の差に遺伝的要因

 Wang博士は「放射線療法への反応は患者によって異なるが,そのことを治療前に予測できれば,将来的にはがん患者のサブグループに対する新たな治療法を開発できるかもしれない」と説明している。

 がん患者のほぼ半数が放射線療法を受けるが,同療法への反応は患者により大幅にばらつきがある。この反応の差は,ほとんどの場合,遺伝的な要因によるものと考えられている。

 同博士らは今回,277の異なるヒトリンパ芽球様細胞株を用いたゲノムワイド関連研究を実施し,同療法への反応が患者ごとに異なる理由についてさらなる解明を試みた。

 同博士らは同研究で遺伝子発現と細胞毒性のアウトカム,一塩基多型130万個のデータを統合した。次いで,複数の細胞株中で考えられるバイオマーカーを検証し,放射線反応を確認した。最終的に,放射線反応に直接関連する5つの遺伝子を同定した。

 同博士らは「ヒトリンパ芽球様細胞株を用いた研究は,放射線療法への反応の差を解明する上で有効な手段となる可能性がある」と述べている。

Medical Tribune 2011年2月24日