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2011年11月 文献タイトル
34歳以下の若年性乳がん〜35歳以上より予後が悪く特に授乳期乳がんは予後不良
世界の女性の乳がんは30年間で2.5倍以上増加
プラチナダブレットは70歳超の肺がん患者にも有効 全生存期間を延長
子宮頸がんスクリーニング HPV遺伝子検査が細胞診よりも精度高い
糖尿病合併肺がん患者は非合併患者より生存期間が長い
ナースプラクティショナーら専門スタッフ がん診療の人手不足解消の鍵に
腫瘍マーカーと超音波内視鏡の併用でステージT膵がんの検出率が改善
少量の飲酒でも乳がんリスクを高める
缶詰スープ摂取で尿中ビスフェノールA濃度が20倍以上増加 米・ランダム化クロスオーバー試験
ABO血液型に新たな意義〜 疾患との関連示す報告相次ぐ

34歳以下の若年性乳がん〜35歳以上より予後が悪く特に授乳期乳がんは予後不良
第19回日本乳癌学会 2009年度班研究課題最終報告

 34歳以下の若年性乳がんは35歳以上の乳がんと比べ予後が悪く,中でも授乳期に発症した乳がんは特に予後不良であることが,2009年度日本乳癌学会班研究「若年性乳癌の特徴とサバイバーシップに関する研究」で明らかになった。

早期発見で予後改善の可能性

 今回の班研究には,日本乳癌学会の全国乳がん患者登録調査データベースが用いられた。2004〜09年のデータベースには10万9,617例が登録され,34歳以下の若年性乳がん患者は2,982例で全体の2.7%だった。若年性乳がんには(1)家族歴がある(2)自己発見が多いために腫瘤が大きい(3)炎症性乳がんが多い(4)リンパ節転移が多い(5)術前化学療法を行うことにより乳房温存療法を受ける割合が高い〜などの特徴が見られた。

 さらに,1975〜2000年のデータベース(14万6,690例)を用いて予後解析と妊娠期乳がんの検討を行った。女性で初回登録の患者のうち若年性乳がんは3,081例(6.0%)だった。予後の観察期間中央値は8.6年と長かった。解析の結果,49歳までの閉経前乳がんの中で,若年性乳がんの予後は有意に不良であることが確認された。

 一方,若年性乳がんでもリンパ節転移がない場合は,35歳以上の乳がんと生存率に有意差はなかった。また,ステージが低いほど生存率が高かった。この結果を踏まえ,片岡氏は「若年性乳がんのすべてが予後不良というわけではなく,早期発見により予後が改善される可能性がある」と指摘した。

Medical Tribune 2011年11月3日

世界の女性の乳がんは30年間で2.5倍以上増加
 世界の女性の乳がんと子宮頸がんの発症はこの30年間増加を続けており,特に乳がんの発症は2.5倍以上増加していると,米ワシントン大学(シアトル)のグループが発表した。

 同グループは,世界187カ国の1980〜2010年の死亡率,発症率,人口動態登録,臨床的死因推定に関するがん登録データを系統的に収集し,30年間の乳がんと子宮頸がんの発症および死亡動向を調べた。

 世界の乳がんの発症は1980年の64万1,000例から2010年には164万3,000例に増加し,年間増加率は3.1%だった。子宮頸がんは80年の37万8,000例から2010年には45万4,000例に増加,年間増加率は0.6%であった。

 2010年の乳がんによる死亡は42万5,000例で,うち6万8,000例が発展途上国の15〜49歳の女性だった。乳がんによる死亡は国や地域により著しい変動があった。一方,子宮頸がんによる死亡は減少していたが,2010年の死亡は20万例を数え,そのうち4万6,000例が発展途上国の15〜49歳の女性だった。

Medical Tribune 2011年11月3日

プラチナダブレットは70歳超の肺がん患者にも有効 全生存期間を延長
 ストラスブール大学病院(仏)胸部疾患科のElisabeth Quoix教授らが「白金製剤を含む2剤併用療法(プラチナダブレット)は,高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対しても全生存期間を延長させた」との研究結果を発表した。現在,70歳超のNSCLC患者に対しては単剤療法が推奨されているが,今回の知見はこのような治療戦略の見直しを迫るものとなるかもしれない。

1年生存率は45%対25%

 肺がんは男性において世界のがん関連死の第1の原因で,米国では女性でも1987年以降,がん死の原因の1位である。一般人口の平均余命が大幅に延びたことに伴い,がんリスクも増大し,高齢者の肺がん発症率も著しく上昇している。その結果,先進諸国では肺がん診断時の年齢(中央値)は現在63〜70歳である。

 しかし,実際には,医師や患者とその家族が治療や薬剤に関連した副作用に関して悲観的な見方をし過ぎるため,高齢者の多くが最適な治療を受けていない可能性がある。プラチナダブレットは,体力のある非高齢の進行NSCLC患者に推奨されている化学療法レジメンで,70歳超の高齢患者には単剤療法が推奨されている。

 今回の試験でQuoix教授らは,高齢の進行NSCLC患者を対象に,カルボプラチン+パクリタキセルの2剤併用化学療法レジメンと単剤療法を比較検討した。このランダム化第V相試験には451例が登録され,226例が単剤療法群に,225例がプラチナダブレット群にランダムに割り付けられた。年齢(中央値)は77歳,追跡期間(中央値)は30カ月だった。

 その結果,全生存期間(中央値)は単剤療法群の6.2カ月に対しプラチナダブレット群では10.3カ月であった。また,1年生存率(中央値)はそれぞれ25.4%,44.5%だった。副作用の発現率は単剤療法群よりもプラチナダブレット群で高かった。最も頻回に現れた副作用は,白血球減少(プラチナダブレット群48%,単剤療法群12%)と衰弱感(同10%,6%)だった。

 同教授らは,高齢の進行NSCLC患者を対象としたこれまでのランダム化試験では,2004年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドラインで示された通り,高齢患者には単剤療法を行うべきというエビデンスしか得られていない事実を挙げている。しかし,同教授らは「年齢の上限を設けない臨床試験に登録された高齢患者を対象として実施された事後サブグループ解析のほとんどで,体力のある高齢患者は若年患者と同等の便益をプラチナダブレットから得られる可能性が示唆されていた」と指摘。

「カルボプラチン+パクリタキセルのプラチナダブレットを,ゲムシタビンないしはビノレルビンの単剤療法と比較した今回の試験で,プラチナダブレット群の全生存期間が延長されることが示された。高齢の進行NSCLC患者に対する現行の治療パラダイムは,再考されるべきだ」と結論付けている。

Medical Tribune 2011年11月3日

子宮頸がんスクリーニング
HPV遺伝子検査が細胞診よりも精度高い
 米国臨床病理学会(ASCP)研究所(ワシントン)のPhilip E. Castle博士らは「子宮頸がんのスクリーニングにおいて,高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)型であるHPV16型または18型の遺伝子検査は,現行の液状検体による細胞診のみのスクリーニングに比べて子宮頸がんに進行する可能性の高い高悪性度前がん病変をより多く発見できる可能性がある」とする結果を発表した。

 この結果を踏まえ,同博士らは「HPV遺伝子検査を1次スクリーニングに用いて高悪性度病変を有する可能性のない女性を除外し,細胞診はHPV陽性女性に対してコルポスコープ診の必要性を判断するためのトリアージ(優先順位設定)にのみ行う戦略が有用である」としている。
 
第2世代の検査法と細胞診を比較

 子宮頸がんの1次スクリーニングにはHPV遺伝子検査が細胞診よりも有効であることが示されているが,HPV陽性者に対する至適な管理法は明らかにされていない。HPV型の中でもHPV16型および18型は浸潤性子宮頸がんの約70%で検出される高リスク型として知られる。これまでに,これらのHPV型を検出する遺伝子検査が,直ちにコルポスコープ診が必要とされる子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)分類で3以上の病変を有する女性のトリアージに有効であることが示唆されていた。

 試験では,21歳以上の米国人女性を対象に,子宮頸がんスクリーニングにおけるHPV検査およびHPV16,18型の遺伝子検査と,液状検体法による細胞診の精度が比較検討された。

HPV陽性女性で感度92%

 コルポスコープ診を受けた女性について検討したところ,CIN3以上の高悪性度病変が発見される割合は,細胞診で異常が認められた女性(53.3%)に比べてHPV遺伝子検査でHPV陽性であった女性(92.0%)でより高かった。

 また重要な知見として,HPV遺伝子検査と細胞診の併用は,HPV検査のみの場合と比べて4.7%の感度上昇しか得られない半面,スクリーニング陽性者が3分の1超増加し,ほとんど利点がないことが分かった。

 これに対し,HPV16型または18型のいずれかを検出する遺伝子検査をトリアージに用い,HPV陽性者に対して細胞診により低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)または高悪性度扁平上皮内病変(HSIL)よりも悪性度の高い病変を確認する戦略は, ASC-US以上の病変を調べる細胞診のみの戦略に比べて悪性度CIN3以上の病変を検出する能力と信頼度(検査室間の一致度)が高いことが分かった。

 さらに,Castle博士らは「今回検討したHPV遺伝子検査法はHPV16,18型だけでなく,発がんの原因となる複数のHPVの遺伝子型を1回の検査で同定できるため,HPV陽性女性のトリアージ法として極めて効率が良く,細胞診と比べて検査に要するマンパワーが少なくて済む可能性がある」との見解を示している。

 これらの結果を踏まえ,同博士らは「HPV16型または18型のいずれか,あるいは両方の遺伝子型検査を含むHPV検査を単独,または細胞診と併せて合理的に使用することにより,費用効果が高く,安全な子宮頸がんスクリーニングを実施することが可能である」と結論付けている。

Medical Tribune 2011年11月3日

糖尿病合併肺がん患者は非合併患者より生存期間が長い
 糖尿病を合併した肺がん患者は非合併肺がん患者と比べ生存期間が長いと,ノルウェーのグループが発表した。

 肺がん患者は併存症の頻度が高いが,糖尿病の肺がんの予後への影響に関するデータは一貫していない。同グループは,糖尿病の合併が肺がん患者の生存にどのような影響を与えるかを検討した。

 ノルウェーがん登録とリンクさせたNord-Trndelag Health Study(HUNT試験)のコホートデータを解析し,2件の肺がん試験(Pemetrexed Gemcitabine試験とNorwegian Lung Cancer Biobank試験)を用いて結果をコントロールした。3試験を統合し,糖尿病合併と非合併肺がん患者の生存を比較した。

 解析対象はHUNT試験から1,031例,Pemetrexed Gemcitabine試験から436例,Norwegian Lung Cancer Biobank試験から210例の計1,677例の肺がん患者。うち77例が糖尿病合併患者だった。

 解析の結果,糖尿病合併肺がん患者は非合併肺がん患者と比べ生存期間が有意に長く,1年,2年,3年生存率はそれぞれ43%対28%,19%対11%,3%対1%だった。

Medical Tribune 2011年11月3日

ナースプラクティショナーら専門スタッフ
がん診療の人手不足解消の鍵に
 米国臨床腫瘍学会(ASCO)のStudy of Collaborative Practice Arrangements(SPCA)で,ナースプラクティショナー(NP)やフィジシャンアシスタント(PA)のがん診療での役割を広げることが,予想される人手不足の解消に役立つことが示された。
 
2020年には腫瘍専門医4,000人が不足に

 ASCOのMichael P. Link会長は「ASCOはがん治療の在り方を変えるだけでなく,高い医療レベルを維持できるように,予想される人手不足の解決策を模索し続けている。今回の研究では,NPやPAとの協働診療の促進により,腫瘍科での医療サービスが改善されていることが明らかになった。特に小児腫瘍科では,NPは既に重要な臨床スタッフとしての役割を果たしており,欠かせない存在である」と述べている。

 2007年のASCOの研究によると,2020年までにがん患者の受診率は48%増加するのに対し,腫瘍専門医の増加率はわずか14%と推算されている。そのため,同年には約4,000人の腫瘍専門医が不足すると予想されている。また,米国の65歳以上の人口は2030年までに現在の2倍となり,がん患者やがんサバイバーは81%増加すると見込まれている。

 ASCOは,がん診療におけるNPやPAといった医師以外の医療従事者(non-physician practitioner ; NPP)の役割を広げることにより,医療サービスの需給のバランスが取れる可能性があると考え,2009年にSPCAの実施をAltos Solutions社に委託した。同社のOncology Metrics部門が地域ベースまたは病院を母体とする腫瘍科226施設を対象に全国調査を行った。この調査結果からさまざまなタイプの臨床業務を行っている腫瘍科33施設を同定し,医師,NPPと患者を対象に,より詳細な2回目の調査を行った。その後,NPPを対象にグループおよび個別のインタビューを行い,さらに情報を収集した。

患者,スタッフとも満足度高い

 2回の調査では,医師は常駐しているが,NPPが単独で日常的に患者を診察する診療モデルが最も多いことが分かった。2回目の調査対象となった33施設では,患者の98%が医師ではなくNPPの診察を受けていることを認識しており,全体的な満足度は92.5%であった。

 また,NPPがすべての医師と協働してさまざまな患者の診察を行っている施設では,NPPが特定の医師と組んで診療に当たっている施設より生産性が19%高かった。

 今回の研究の指導に当たったASCOのWorkforce Advisory GroupのDean Bajorinグループ長は「医療サービスに対する患者の満足度の高さや,そのサービスを提供する医療スタッフの満足度の高さは,腫瘍専門医とNPPの双方が統合的なサービスを提供するシステムが極めて優れたモデルであることを示している。全国的にがん患者の増加が予測される中,NPやPAに正式な腫瘍学トレーニングの機会を提供することで,診療の効率化が進み,患者の満足度が向上するだろう」と述べている。

Medical Tribune 2011年11月3日

腫瘍マーカーと超音波内視鏡の併用でステージT膵がんの検出率が改善
 バーモント大学(UVM)フレッチャーアレン保健センター(バーモント州)のRichard Zubarik准教授らは「膵がん高リスク患者に対して血清CA19-9の上昇に基づき超音波内視鏡検査(EUS)を施行することにより,標準的ながん検出法に比べてステージTの膵がんの検出率が改善されることが分かった」と発表した。
 
高リスク群での早期発見に焦点

 米国ではがん死の中で膵がんが4番目に多い。これは,同がんが進行してから発見されることが多いことにも起因している。膵がんでは腹痛や黄疸,体重減少などの症状はがんが局所進行するか転移するまで発現しないことが多く,これらが発現するころには,治療選択肢はかなり限定されている。しかしその一方で,がんがまだ膵に限局している時点(ステージT)で検出し切除した場合,全生存率は改善する。したがって,腫瘍を初期ステージで検出できる有効なスクリーニングプロトコルが早急に必要とされている。これまで,膵がんスクリーニングには, EUS,CT,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP),MRI/磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)などの画像診断技術が用いられてきた。

 筆頭研究者のZubarik准教授は今回,年齢と第1度近親者に1人以上膵がん患者がいるといった条件により選んだ高リスク群のCA19-9を測定。高値を示した者にEUSを施行することにより膵腫瘍を初期の段階で検出できるか否か検討した。さらに,このプロトコルの方が標準的な検出方法よりも初期ステージの膵がん検出に優れるかどうかについても検証した。その結果,このスクリーニングプロトコルにより治癒可能性のある膵がんを検出することができた。また,標準的な検出方法と比べて,同プロトコルでは,ステージTの膵がん検出率が優れていた。

実用に耐えうる診断率と費用

 今回の知見は,CA19-9を用いて対象を絞り込んだ後EUSを施行することにより,治癒可能性のある膵がんを検出できることを示している。Zubarik准教授らは「ステージTの膵がんに対してはこうしたスクリーニングプロトコルを用いた方が,標準的な検出法と比べ検出率が高いことが分かった。同スクリーニングプロトコルの利点としては,がん診断率と除外率,さらに費用が許容範囲であることが挙げられる」と強調。膵腫瘍1例の検出に伴う費用は8,431ドル,膵がんでは4万1,133ドルであったと報告している。

 また,今回のプロトコルにより膵がんが検出された患者は,外科的摘出から3年間,再発のエビデンスなく生存し続けており,これまでに公表されているスクリーニングプロトコルを用いて膵がんが発見された患者の中で最も長期に生存している。さらに,今回の研究でスクリーニング結果が陰性であった患者では,少なくとも短期追跡期間中に膵がんのエビデンスは認められていないという。

Medical Tribune 2011年11月10日

少量の飲酒でも乳がんリスクを高める
 少量であっても飲酒は乳がんの危険因子であると,米ハーバード大学のグループが発表した。

 多くの研究でアルコール摂取と乳がんのリスクが関連付けられているが,飲酒量が少ない場合や飲酒頻度,飲酒開始時期と乳がんリスクとの関係は明らかではない。同グループは,1980〜2008年のNurses' Health Studyに参加した女性10万5,986例を対象にアルコール摂取量,摂取頻度,飲酒開始年齢と乳がんとの関係を評価した。

 240万人年の追跡で7,690例が浸潤性乳がんと診断された。解析の結果,週3〜6杯に相当する1日5.0〜9.9gの少量のアルコール摂取でも乳がんのリスクと関係し(相対リスク1.15,333例/10万人年),摂取量の増加とともにリスクが高まった。

 累積アルコール摂取量を補正後,飲酒の頻度ではなく短時間の大量飲酒が乳がんリスクと関連した。アルコール摂取は飲酒開始年齢によらず乳がんの独立した危険因子だった。

Medical Tribune 2011年11月24日

缶詰スープ摂取で尿中ビスフェノールA濃度が20倍以上増加
米・ランダム化クロスオーバー試験
 食料品や飲料品の容器に広く使われるビスフェノールA(BPA)については,乳がんや前立腺がん,心疾患や神経疾患などとの関連を示す報告がある。米ハーバード大学公衆衛生学部のJenny L. Carwile氏らが行ったランダム化クロスオーバー試験によると,対象者を缶詰の野菜スープ摂取群と調理した野菜スープ群に分け,それぞれ1日当たり約350ccを5日連続で摂取させたところ,缶詰の野菜スープを摂取した後の尿中BPA濃度が20倍以上増えていたことが明らかになった。

缶詰野菜スープ摂取後の尿中BPA検出率は100%

 Carwile氏らは,2010年,ハーバード大学公衆衛生学部の生徒および職員からボランティアを募り,18歳以上の75人(平均年齢27歳,男性32.0%)を対象とした。対象者を,缶詰野菜スープ群(缶詰スープ群)と調理野菜スープ群(調理スープ群)にランダムに分けた。

 両群に対し,毎日午後12時15分〜2時の間に12オンス(354.84cc)の野菜スープを5日連続で摂取させ,摂取開始4および5日の午後3〜6時に尿を採取した。2日間のウオッシュアウト後,両群を入れ替えて同様のスケジュールで野菜スープを摂取させ,同じく尿を採取した。なお,対象者には同試験で摂取する野菜スープ以外に食事制限はしなかった。

 尿検査の結果,BPAは缶詰スープ群では100%(75人),調理スープ群では77%(58人)で検出された。尿比重補正後のBPA濃度は,缶詰スープ群は20.8μg/L,調理スープ群は1.1μg/Lであった。また,缶詰スープ群は調理スープ群に比べ平均22.5μg/L、有意に高値であり,20倍以上の増加を示した。

「エポキシ樹脂の代替品を考慮する上で重要な結果」

 今回の結果から,Carwile氏らは「5日連続で缶詰入りの野菜スープを摂取すると尿中BPA濃度が20倍以上増加することが明らかになった」と結論付けた。また,同試験で対象としたのは1つのメーカーのスープであったが,一般的に缶詰製品には同様にBPAが含まれている点を強調し,「たとえ尿中BPA濃度が高値を維持しなかったとしても,数値の上昇が認められたことは他の多くの缶詰食品の容器でもエポキシ樹脂材料の代替品を考慮する上で重要な結果だ」とまとめた。

Medical Tribune 2011年11月25日

ABO血液型に新たな意義〜 疾患との関連示す報告相次ぐ
 ABO血液型といえば,医療現場においては輸血を含む臓器移植などで重視されるものだが,一般社会では,性格との関連が引き合いに出されることが多い。また,それに対し「科学的な根拠はない」と否定意見が必ずといってよいほど出るのもお約束だ。裏返せば根拠がないからこそ,ネガティブなことでも面白半分に受け取れる「無難な」話題ともいえる。しかし,血液型が疾患リスクと関連するとなると話は別かもしれない。最近,ABO血液型の新たな意義を示唆する知見が報告されている。

 米国心臓協会学術集会(AHA 2011)でハーバード公衆衛生大学院のLu Qi氏らが報告した疫学研究。医療関係者を対象とした2つの長期かつ大規模研究のコホート(Nurses' Health Studyの女性看護師6万1,973例,Health Professionals Follow-up Studyの男性2万7,808例)を用いてABO血液型と脳卒中リスクとの関連を解析したという。

 2009年にワシントン大学のグループが観察研究を基に血液型の遺伝子多型と心筋梗塞,脳卒中,深部静脈血栓症の発症リスクを検討,B型のアレルと虚血性脳卒中に関連が見られたなどと報告を行っていた(J Thromb Haemost 2009: 7: 263-269)が,より大規模なコホートで脳卒中単独との関連を見た検討は今回が初めてのようだ。

 Qi氏らの解析の結果,B型の女性では他の血液型の女性に比べ脳卒中のリスクが17%高かったが,男性では差がなかった。AB型の場合,男女とも虚血性脳卒中のリスクが29%上昇していたという。

 さらにO型と比較した場合,AB型の女性の脳卒中リスクは28%,同男性では32%の上昇が示されたと同氏らは報告。「血液型を変えることはできないが,今回得られた結果は脳卒中リスクの層別化に役立つのではないか。特に高リスクが示唆される血液型の場合には他の危険因子を確認し,積極的な生活習慣改善を行うことが勧められる」と述べている。

Medical Tribune Medical Tribune 2011年11月30日