広葉樹(白) 
          

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2010年3月 文献タイトル
高ビタミンD濃度で大腸がんリスクが低下
予想以上に高い発がんリスク CT検査による放射線被曝に警鐘
禁煙治療の保険適用拡大を
〜乳がん診療〜医療の質基準を満たしている外科医は少数
大腸3D-CT検査の多施設共同臨床試験JANCTが始動 新しい大腸がん検査法の確立を目指す
仁科亜季子さん,子宮頸がんの予防を呼びかけ “女性の健康週間”イベント
片頭痛の病歴がある女性は閉経後乳がんのリスクが低い
検体の自己採取キットによる子宮頸がん検診の有用性 オランダからの報告
がんに関するマスコミ報道は楽観的情報に偏向
運動は加齢を遅らせる 高齢者の身体活動で4件の報告
喫煙は依然として心疾患やがん死の強力な危険因子
前立腺がん 診断早期に自殺・心血管死リスクが上昇
EPAにも多面的作用? 大腸ポリープの減少が確認
ビタミンB6の摂取が大腸がんを抑制 前向き研究のメタ解析で
乳がん死が減ったのはスクリーニングのお陰…ではない デンマーク国内の検討
蛋白のリン酸化状態で肺がんを検出

高ビタミンD濃度で大腸がんリスクが低下
 世界保健機関(WHO)国際がん研究機構(IARC,仏)のMazda Jenab博士らは,血中ビタミンD濃度が高いと大腸がんリスクが低下するとの研究結果をに発表した。同博士らによると,血中ビタミンD濃度が最も高かった患者では低い患者に比べ40%もリスクが低減したという。

中等度未満の濃度でリスク上昇

 これまでにもビタミンDと結腸直腸がんとの関係を示唆する報告はあったが,データが少なかったため,最終的な結論には至っていなかった。

 そこで欧州の研究医が集まり,西欧人口における血中ビタミンD濃度および食事由来のビタミンDやカルシウム摂取と結腸直腸がんとの関係を検討した。

 同研究では1992〜98年,参加者に食事とライフスタイルに関する詳細な質問票に回答してもらい,血液サンプルを収集した。その後数年間追跡し,結腸直腸がんと診断された1,248例を,健康人1,248例と背景因子を一致させて比較検討した。

 その結果,最も血中ビタミンD濃度が高かった者では,最も低かった者に比べ,結腸直腸がんの発症リスクが約40%低いことが明らかとなった。

新たな臨床試験が必要

 Jenab博士らは「今回の研究においても,ビタミンDは結腸直腸がんの発症に関与していることが示されているが,ビタミンDの他のがんとのかかわりについてはほとんど知られていない。そのことに加え,血中ビタミンD濃度をサプリメントまたは一般に普及している栄養強化食品などできわめて高いレベルに維持することが,長期的な健康にどのような影響を及ぼすかについても,まだ十分な研究が行われていない」と指摘している。

 さらに,同博士らは「結腸直腸がんの予防については,血中ビタミンD濃度をサプリメントで上昇させることが,バランスの取れた食事と日常的に中等度の日光を浴びて得られる平均的なビタミンD濃度に比べてよいか否か明らかではない。これまでのランダム化試験の結果も一貫性を欠いており,今後,血中ビタミンD濃度を上昇させて,深刻な副作用を誘発することなく,効果的に結腸直腸がんリスクを下げることが可能であるかどうか検討が必要だ」と結論付けている。

 現在,結腸直腸がんのリスク低下に最も推奨されているのは,(1)禁煙(2)身体活動度の増加(3)肥満・腹部脂肪の改善(4)アルコールと赤身,加工肉の摂取量を控える―である。

Medical Tribune 2010-3-4
予想以上に高い発がんリスク CT検査による放射線被曝に警鐘
 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)放射線学・生物医学・画像学のRebecca Smith-Bindman博士と米国立がん研究所(NCI)のAmy Berrington de Gonzlez博士は「通常使用されるCT検査からの放射線量は,施設内や施設間で大きく異なるものの一般的に考えられているより多く,今後数万例の新規がん発症に影響する可能性が高い」とする研究結果を発表した。

被曝線量はX線より多い

 米国ではCT検査がますます一般的になり,実施数は1980年の300万件から2007年には約7,000万件と大幅に上昇した。Smith- Bindman博士らは「CT検査から大きな医学的な便益を得ることができる一方,受診者は通常のX線診断と比べて大幅に多い放射線量に被曝するため,将来的ながんリスクが懸念される」と述べている。

 例えば,胸部CT検査を受けた患者は通常の胸部X線検査を受けた患者に比べて,100倍を超える放射線量に被曝する。同博士らは「個々のリスクは小さいが,年間の被曝者数が多いため,小さなリスクであっても将来的に発がん数はかなりのものになる可能性が高い」としている。

 同博士らは「便益とリスクのバランスを取るには,画像診断検査によりいかに多くの放射線被曝を受けるかを理解することが重要だ」と述べている。今回の研究では,2008年に地域の4病院で最も一般的な11種類の診断CT検査を受けた患者1,119例について検討を行った。同博士らは病院記録を用いて,各検査で照射された放射線量を算出した後,それらの検査に起因するがんの生涯リスクを推算した。

 1例にがんを発症させる推定CT検査数も,CT検査の種類,各患者の年齢や性による差が見られた。例えば,40歳で冠動脈造影(心臓検査)を受けた患者の場合,女性では270例に1例,男性では600例に1例ががんを発症すると推定される。同年齢で通常の頭部CT検査を受けた患者の場合,女性は 8,100例に1例,男性は1万1,080例に1例ががんを発症する可能性がある。

 Smith-Bindman博士らは「20歳の患者ではこのリスクはおよそ2倍で,60歳の患者では約50%低かった。過去20年間にCT関連の放射線被曝は大幅に増加しているが,CTに由来する放射線被曝を最小限に抑えるためには,(1)不必要な検査を減らす(2)1検査当たりの線量を低下させる(3)患者や施設間での線量の差を縮小させる―などの対策が必要だ」と指摘。さらに「どのような場合にCTから最大の便益が得られるか,これらの検査の影響が少なくなるか,また放射線リスクが便益を上回るのかなどの点を明らかにするために,患者の転帰を調べることが必要だ。臨床で実施される検査を通じて実際に照射される医療用放射線の被曝量を理解することが,不必要な被曝を最小限にとどめる妥当な検査法の開発に向けた重要な第1歩だ」と述べている。

Medical Tribune 2010-3-4
禁煙治療の保険適用拡大を
 東京都で開かれたプレスセミナー「薬物依存症のメカニズムと早期禁煙治療の重要性」(主催=ファイザー(株))では,12学会※禁煙推進学術ネットワークの委員長を務める兵庫県立尼崎病院の藤原久義院長が,わが国の喫煙状況と禁煙治療の現状を解説するとともに,同社が行ったインターネット調査の結果を報告。現在の禁煙治療の保険適用を若年者と入院中の患者に拡大する必要性を強調し,「禁煙の日」制定の意義を述べた。

保険診療による禁煙治療の問題点

 まず,藤原院長は,欧米では人口10万人当たりの肺がん死亡者数がここ10数年で大きく低下しているのに対し,わが国では依然として増加している事実を示し,「わが国は禁煙後進国であり,医療従事者を含めて,喫煙による健康被害を国民全体で十分に認識することが重要だ」とあらためて強調した。

 では,禁煙は簡単に行えるものなのか。長期禁煙成功率は,専門的治療で30〜40%,保険禁煙治療では32%だが,喫煙者本人の努力だけでは 5〜10%と低率だ。そのため,同院長は「喫煙はニコチン依存症と心理的依存症が合併した難治性の喫煙依存症である。医師が介入する禁煙治療が重要な役割を担う」と述べた。

 わが国では,2006年に禁煙外来での保険禁煙治療が開始され,ニコチンパッチも保険適用となっている。また,2008年には新しい禁煙治療薬のバレニクリンが登場し(保険適用),喫煙はニコチン依存症という疾患名で保険治療が行える環境が整っている。さらに,2008年4月の改正により,外来で禁煙治療を開始して入院した場合,保険診療で継続治療できるようになった。しかし,この保険診療には重大な問題点があるという。

 まず,適用条件をブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)200以上の者のみとしており,若年者は適用とならない。例えば20歳で保険適用となるには,1日100本以上吸う計算になる。また,入院中に禁煙治療を開始できない。同院長は「適用条件を撤廃して依存症があれば治療できるようにすべき。また入院中から禁煙治療を開始できるように適用拡大すべきだ」と強く訴えた。

Medical Tribune 2010-3-4
〜乳がん診療〜医療の質基準を満たしている外科医は少数
 ミシガン大学総合がんセンター社会行動プログラムの共同責任者で同大学内科と公衆衛生学部健康管理・政策学科のSteven J. Katz教授らは「大半の乳腺外科医は乳がんに対する最良の医療を行うための基準を満たしていない」とする研究結果を発表した。これらの基準には,他領域の専門医と相談すること,治療の選択に役立つような教育や資料を患者に提供することなどが含まれる。

外科医318人を調査

 Katz教授らは背景情報として「意思決定にはさまざまな専門家からの意見を参考にすること,また,患者に重きを置いた医療提供を行うよう推奨されているにもかかわらず,乳腺外科医が診療でこれらを実践しているとの報告はあまり聞かない」と述べている。

 同教授らはデトロイトとロサンゼルス大都市圏に勤務し,乳がん患者を治療した外科医318人について調査した。外科医に対し,診療施設で実施可能な以下の処置とサービスに関する質問を行った。

(1)腫瘍内科医,放射線腫瘍専門医,形成外科医との相談

(2)生検標本の採取またはマンモグラムの撮像およびその評価

(3)患者教育用のビデオまたはプレゼンテーションの提供

(4)支援グループなどを介した患者同士のピアカウンセリングの実施

 調査の結果,患者の治療計画において日常的に腫瘍内科医または放射線腫瘍専門医と協議していると報告した外科医は約4分の1から3分の1で,形成外科医と日常的に相談している者は13%にすぎなかった。自分の患者がビデオ視聴,ウェブ版の資料,またはピアサポートプログラムなどの治療選択支援活動に参加していると報告した外科医は約3分の1にとどまった。

 乳がんを専門にしている外科医は,乳がん患者をあまり受け持たない外科医に比べてこれらのサービスを利用する割合が多かった。また,診療施設のがんプログラムが米国立がん研究所(NCI)や米国外科医学会(ACS)の基準を満たしているからといって,医療の質基準をより多く満たしているわけではなかった。

 Katz教授は基準を満たさない理由として,医師がこれらの基準の重要性を認識していない場合と,医療資源の制約により日常診療でこれらの実践が困難な場合について説明。さらに,この事態が患者に与える影響について「外科医の乳がん診療例数が多いほど患者は総合的な診療を受けられることが結果として示唆されるが,患者の治療選択,QOLと医療の満足度に重要な関係があるか否かについては不明である」と述べている。

Medical Tribune 2010-3-4
大腸3D-CT検査の多施設共同臨床試験JANCTが始動
新しい大腸がん検査法の確立を目指す
 内視鏡を挿入せずに,マルチスライスCTを用いることにより大腸の検査を可能にする大腸3次元(3D)-CT検査(CT colonography;CTC)に対する注目が高まっている。

 大腸3次元CT研究会の代表者の1人である米ハーバード大学マサチューセッツ総合病院放射線科3次元画像研究所の吉田広行氏は,東京都で開かれた第3回同研究会において,昨年末より症例登録を進めているわが国初の大腸CTCの多施設共同臨床試験「大腸3D-CT検査(CT colonography)と大腸内視鏡検査による大腸腫瘍検出能の精度比較に関する検討−コンピュータ支援診断を活用した多施設共同臨床試験−〔JApanese National CT Colonography Trial(JANCT)〕」(http://janct.org/)の概要について報告した。同試験の最終結果は2011年初めに公表予定という。

米国で急速に普及が進む大腸CTC検査

 米国は大腸がん先進国とも言われるが,実は大腸がんの死亡率・死亡数は年々減少している。一方,わが国では大腸がん死亡率は年々上昇の一途をたどっており,日米の大腸がんによる死亡数を人口比で比較すると,日本の大腸がん死亡数は米国の倍近く多い状況になっている。

 同時に,わが国における大腸の精密検査としては全大腸内視鏡検査または注腸X線検査が多く行われているが,大腸がん検診の受診率は20%程度で,さらに精検受診率は50%台と低く,受診率向上につながる検査法が求められている。

 そのようななか,米国では15施設での約2,500例(無症状の患者のみ)を対象としたNational CTC Trial(ACRIN 6664)において,CTCの有効性が示された結果を受け,米国がん協会(ACS)は2008年3月に大腸がん検診ガイドラインを改訂。CTC検査を初めて大腸内視鏡検査と並ぶ有効な大腸スクリーニング法として同ガイドラインに掲載した。そのため米国では,CTC検査による大腸がんスクリーニングが急速に普及し始めているという。

 また欧州でも,イタリアでのIMPACT StudyやドイツでのMunich Trialでは同様に良好な結果が得られている。現在,英国ではSIGGAR,イタリアではIMPACT2,米国ではlaxative-free CTCが実施中である。

 一方,わが国ではいくつかの施設がCTCをおもに術前検査として実施している状況で,精度検証に基づく検診目的のためのCTC導入・普及は欧米に比べて大きく遅れており,大規模臨床試験は全く行われていなかった。

試験規模は世界第2位

 大腸3次元CT研究会の共同代表者の永田浩一氏は「わが国では,世界をリードする内視鏡検査が大腸検査を主導していることが,ある意味でCTC導入の足かせになっていた。そのため,CTC検査の読影に熟練した医師がなかなか育たず不足している」と指摘。こうした現状を踏まえ同氏らは,わが国でも CTCのエビデンスを確立しスクリーニングも含めた臨床応用の実現を目指すべく,13施設が参加するわが国初の多施設共同試験JANCTを,消化器科医と放射線科医がともに読影に参加する形で計画したという。

 同試験は前述の米国におけるACRIN 6664の日本版というべきもので,大腸CTC検査の大腸ポリープおよび大腸がんの診断能を大腸内視鏡検査を対象に比較評価することを目的としており,同時に,読影トレーニングを受けた放射線科医および消化器科医による診断能の評価と,コンピュータ支援診断(CAD)の有無による診断精度の違いの評価も行われる予定である。

Medical Tribune 2010-3-4
仁科亜季子さん,子宮頸がんの予防を呼びかけ
“女性の健康週間”イベント
 日本人女性は世界一の長寿を誇る一方,若い世代のやせや高齢期の寝たきりの長期化,がん検診の受診率の低迷といった問題を抱えている。国は 2008年から3月1日〜3月8日を「女性の健康週間」と定め,女性が健康についての正しい知識を持ち,自分自身の健康を見つめ直せるよう啓発活動を行っている。

 最終日の昨日(3月8日)は,厚生労働省が東京都内で「“女性の健康週間”イベント〜生涯を通じた女性の健康づくりの取り組み〜」を開催。子宮頸がん手術の後遺症と闘いながら女優として活躍を続ける仁科亜季子氏も登壇し,「子宮頸がんワクチンは全世界の女性への神様の贈り物。ワクチン接種の大切さ,安全性など正しい情報を伝えていきたい」と述べた。

「娘にはワクチンを接種してほしい。きちんと検診を受けてほしい」

 仁科氏は,20年前に子宮頸がんにより子宮と卵巣の摘出手術を受け,その後,浮腫や更年期症状,排尿障害などに苦しめられてきた。その経験から,「娘にはがんになってほしくない。予防ワクチンを接種して欲しい。ずっときちんと検診を受けて欲しい」などと述べた。

 そして,「ワクチン後進国の日本。検診の受診率が低い日本。子宮頸がんは日本だけの病気,日本特有の風土病?」になってしまうのではないかと危惧。子宮頸がんワクチンの公費助成推進委員会を立ち上げ,現在署名集めを行っていることも明らかにした。

 また,がんから多くのことを学んだという仁科氏。「舞台では最後の台詞を“大詰め”といいます。人生の大詰めはまさにフィナーレを飾るにふさわしいものとし,最後の台詞は“今まで生きてきて良かった。生まれてきて良かった。楽しかった。ありがとう”と言いたいと思います」と力強く語った。

Medical Tribune 2010-3-9
片頭痛の病歴がある女性は閉経後乳がんのリスクが低い
 片頭痛の病歴の有無が閉経後乳がんのリスクと関係している可能性があると,米国の共同研究グループが発表した。

 片頭痛の病歴がある女性は乳がんのリスクが低いという仮説がある。同グループは,Women's Health Initiative Observational Studyに参加した50〜79歳の女性9万1,116例を対象に,この仮説を検証した。1993〜98年の登録から2005年9月までの乳がん診断は 4,006例であった。

 解析の結果,片頭痛の病歴がある女性は病歴がない女性と比べ乳がんのリスクが低かった。この関係は,非ステロイド抗炎症薬の使用によって変わることはなかった。片頭痛の病歴による乳がんのリスク低下は,エストロゲンとプロゲステロン受容体がともに陽性のがんで強かった。

Medical Tribune 2010-3-11
検体の自己採取キットによる子宮頸がん検診の有用性 オランダからの報告
 子宮頸がんの予防,早期発見にはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの普及だけでなく,検診受診率の向上が鍵とされる。オランダVU University Medical CenterのMurat Gok氏らは,定期検診未受診のハイリスク女性を対象に検体の自己採取法の有用性などを検証,報告した。自己採取法は,従来の検診を再度呼び掛けるよりもコンプライアンスが良好だったという。

検診未受診者では子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)進展リスクが2倍以上に

 Gok氏らは,欧米ではすでに子宮がん検診の受診に向けた取り組みが一定の成果をあげるとともに,未受診者への対応が大きな問題になっていると解説。

 オランダでは30〜60歳の女性に対し,5年に1度のスクリーニングが推奨されている。今回実施されたPROHTECT(protection by offering HPV testing on cervicovaginal specimens trial)では,2005年のスクリーニングを受診しなかった2万8,073人が対象となった。

 これらの女性に子宮頸管粘膜の自己採取キットを送り,HPVテストを受けてもらうグループ(2万7,792人)を自己採取群,もう一度近医で従来の検診を受けるよう書面で促すグループ(281人)をコントロール群に分けた。

 HPVテストに応じた女性の割合は自己採取群で有意に多かった。子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)2以上および3以上が発見された人の割合は自己採取群,コントロール群でそれぞれ99人(1.3%),76人(1.0%)であった。

 Gok氏らは「スクリーニング未受診の子宮頸がんハイリスク例に対する自己採取キットによる検体採取は実用的かつ効果的な方法」と評価,同法の反応率や検出力にも問題はないと述べている。

 また,検診未受診の場合には子宮頸部の中等度〜高度異形成のリスクが高まっていたことから,未受診例への対策が早急に必要だと提言している。

Medical Tribune 2010-3-12
がんに関するマスコミ報道は楽観的情報に偏向
 米ペンシルバニア大学臨床疫学・生物統計学のJessica Fishman氏らは,マスメディアのがんに対する報道姿勢を検証,報告した。報道の多くはがん生存や積極的治療に関するものがほとんどで,死や終末期医療はあまり取り上げられていないようだ。

生存と死亡,治療と終末期医療の情報量に大きな差

 Fishman氏らは多くの発行部数を有する新聞8紙と雑誌5誌に取り上げられたがん治療ならびに予後に関する報道を調査した。対象にはNew York Times,NewsweekやTimeなどが選ばれた。2005〜07年の関連データベースにアクセス,がんを取り上げた記事全体に占めるキーワード別の記事の割合を調査した。


 436件のがんに関する記事のうち,140件が生存に関するもので,死亡などに関しての記事は33件と有意に少なかった。また,積極的治療の非奏効が取り上げられていたのは57件(13.1%,95%CI 10?17%)だったが,同治療の有害事象に関する記事は131件であった。

 過半数の記事(436件中249件)は積極的治療を全面的に取り上げていたが,終末期医療あるいはホスピスに関する報道は0.5%にすぎなかった(436件中2件)。

 同氏らは今回の調査結果から,マスメディアのこうした報道姿勢により患者ががん診療や予後に対し,不適当に楽観的なイメージを抱いている可能性があると指摘した。

Medical Tribune 2010-3-17
運動は加齢を遅らせる 高齢者の身体活動で4件の報告
 運動が関節炎や転倒・骨折,心疾患,肺疾患,がん,糖尿病,肥満に好ましい効果をもたらすことは以前から知られているが,運動は加齢による変化リスクを軽減し,進行を遅らせるほか高齢者の健康改善につながるとする4件の研究がArchives of Internal Medicineに発表された。

国のガイドライン作成を要望

 1件目の研究は,ハーバード大学公衆衛生学部,Brigham and Women's病院,ハーバード大学(いずれもボストン)栄養学科のQi Sun博士らが看護師保健研究(NHS)に参加した1万3,535例のデータを検討した結果である。

 被験者は1986年の60歳時(平均)に運動レベルを報告した。95〜2001年に70歳以上に達した者では,試験開始時の運動レベルが高かった例ほど慢性疾患の罹患率と心臓手術の実施率が低く,身体障害や認知障害,精神障害の罹患率も低かった。

 同博士らは「米国では高齢化が急速に進み,ほぼ4人に1人が余暇に運動していない現状から考えると,今回の研究結果は高齢者の健康増進のための運動について国がガイドラインを示し,高齢者の健康と福祉の向上に向けた活動をさらに高める必要があることを裏づける内容だ。運動が寿命をただ延長するだけでなく,充実した生活につながることは,運動を始める大きな動機となるだろう」と指摘している。

筋トレで問題解決能力が向上

 2件目の研究では,バンクーバー沿岸健康研究所とブリティッシュコロンビア大学(カナダ・バンクーバー)理学療法科のTeresa Liu-Ambrose博士らが,65〜75歳の女性155例の検討結果を報告している。

 同博士らは被験者を,(1)週1回の筋力トレーニングを行う群(54例)(2)同週2回行う群(52例)(3)柔軟運動を週2回行う対照群(49 例)―にランダムに割り付けた。1年後,筋力トレーニングを行った2群では,いずれも選択的注意と問題解決の検査成績が有意に改善し,同時に筋力も向上した。

 同博士らは「認知障害は健康上の大問題でありながら有効な薬物療法がなく,また筋力トレーニングは高齢者が通常行う運動ではないことからも,今回の研究結果の臨床的意義は大きい」と述べている。

運動強度と認知障害に関連

 3件目の研究は,ミュンヘン工科大学(独)精神科・心理療法科のThorleif Etgen博士らが2001〜03年に55歳超の参加者3,903例の運動と認知機能を検討した研究報告。試験開始時,418例(10.7%)が認知障害を呈していた。2年後,残る3,485例中207例(5.9%)に認知障害が発現した。

 同博士らは「試験開始時に運動について“しない,中等度,高度”を層別化したところ,各層の認知障害の新規発生率はそれぞれ 13.9%,6.7%,5.1%であった。認知機能の低下を予防し,進行を遅らせるために必要な運動の量と質を検討する大規模なランダム化比較試験をさらに行うことが望ましい」と述べている。
転倒発生率が低下

 4件目の研究では,フリードリヒ・アレクサンダー大学(独)医学物理学のWolfgang Kemmler博士らが,高齢女性246例を対象に検討した。被験者の半数は運動強度の高い運動を週4回行い,残り半数は対照群として快適な生活に主眼を置いた健康プログラムに参加した。試験を終了した227例のうち,運動を行った115例では脊椎と股関節の骨密度が高く,転倒発生率が66%減少した。運動群では転倒による骨折が対照群の半数であった(6件対12件)。フラミンガムリスク計算式で求めた心血管疾患の10年リスクは両群ともに低下し,2群間で差は認められなかった。

 同博士は「検討したトレーニングは他の施設や医療提供者にも取り入れやすいため,このプログラムを広く実施することは容易だ」としている。

 フロリダ大学のJeff Williamson,Marco Pahorの両博士は,4件の研究について同誌の付随論評で「定期的な運動は,最高齢層の人々にとっても,死亡ではなく長寿に関連することが明らかにされているが,今回発表された4件の研究は加齢の転帰に運動が及ぼす影響の理解に向けた科学研究をさらに前進させる内容だ」と述べている。

Medical Tribune 2010-3-18
喫煙は依然として心疾患やがん死の強力な危険因子
 退役軍人局ボストン保健医療システム(ボストン)のDeepak L. Bhatt博士らは心疾患患者を検討し,「良好な医療を受けていても,喫煙は依然として,心疾患やがんによる死亡リスクを大幅に高める」と発表した。

喫煙継続で死亡リスク上昇

 今回の研究は,国際研究CHARISMA*試験に参加し,心血管疾患を有する男女1万2,152例を,(1)現喫煙群(2)過去に喫煙したことのある喫煙経験群(3)喫煙経験のない非喫煙群―の3群に分類し,これらの喫煙状況に基づき分析を行った。

 対象は欧米人で,大半が白人。平均年齢は現喫煙群の60歳から非喫煙群の66歳までと,幅があった。また,被験者のうち20%が現喫煙者,51%が喫煙経験者,29%が非喫煙者だった。

 3年にわたる研究期間中,現喫煙群では非喫煙群と比べ,心疾患やがん死亡および全死亡リスクが大幅に上昇した。また,同群では心筋梗塞や脳卒中リスクも高かった。

 喫煙状況ごとのリスクに男女差は認められなかった。また,喫煙経験群と非喫煙群の間に,心血管疾患死亡または全死因死亡リスク上の有意差は認められなかった。

 喫煙経験群では非喫煙群と比べ,がん死亡リスクが高かったが,現喫煙群と比較すると,喫煙経験群のほうがかなり良好な成績を示したという。

 研究責任者のBhatt博士は,今回の結果を受けて「心疾患患者が喫煙を続けると,短期間に死亡するリスクが高まるという強固なエビデンスが得られた」と述べている。さらに「高齢で,疾患が重篤化してから禁煙を試みるよりも,直ちに禁煙することを勧める」と強調。「この研究は喫煙者の禁煙に弾みを付けるのが狙いである。禁煙すると,根強いがんリスクを有する患者でも比較的早期にリスク低下の恩恵が得られる」と指摘している。

Medical Tribune 2010-3-18
前立腺がん 診断早期に自殺・心血管死リスクが上昇
 Brig-ham and Women's病院(ボストン)チャニング研究所のFang Fang博士らは,前立腺がんと診断された男性では診断後1年間,自殺と心血管死リスクが上昇し,特に診断直後のリスクが高いと発表した。同博士らは,がん診断後の精神的支援の重要性を強調している。

PSA検査普及で自殺リスクは低下

 Fang博士らは,米国立がん研究所(NCI)のがん登録プログラムSurveillance, Epidemiology and End Results(SEER)データベースに,1979〜2004年に登録された34万例超の前立腺がん患者を対象とし,米国の一般男性と比較して,診断後 1年間の自殺と心血管死リスクを検討した。

 自殺した男性は148例(死亡率0.5/ 1,000人年)で,心血管疾患で死亡した男性は6,845例(同21.8/1,000人年)であった。前立腺がん診断後1年間の自殺リスクは一般男性と比べて上昇しており,特に診断後最初の3か月間のリスクが高かった。心血管死リスクは前立腺がん診断後の1年間,わずかに上昇しており,診断後1か月間のリスクはより高く,特に転移性前立腺がんの患者ではリスクの上昇度が大きかった。

 PSA検査の導入前(1979〜86年),導入初期(87〜92年)には,診断後の自殺リスクの上昇度が大きかったが,PSA検診が普及すると(93〜2004年),リスク上昇は認められなくなった。同博士らは,この経年的な自殺リスクの低下について,PSA検診の普及とともに低悪性度の前立腺がんの発見が増え,ストレスレベルがさほど上昇しない患者が増えたためと考察している。

 論文では,この研究の限界として,がんでない対照群との比較は行われなかったことと,前立腺がん診断時の身体的,精神的な健康状態,併存疾患に関するデータと,前立腺がんの治療データは参照できなかったことが挙げられている。

 同博士は「前立腺がんの診断により,不安,気分障害などの精神障害,精神的苦痛が生じるが,自殺や心血管死はその氷山の一角にすぎないと考えられる。今回の研究では,がん診断直後の患者に対する精神的なカウンセリングと支援の重要性が示された」と指摘している。

Medical Tribune 2010-3-18
EPAにも多面的作用? 大腸ポリープの減少が確認
 英セントマークス病院のNicholas J. West氏らは,エイコサペンタエン酸(EPA)の腸溶錠投与で家族性ポリポーシス(FAP)患者の大腸ポリープの数や大きさが有意に減少したとの報告を行った。この検討は,同薬の有効性を確認するために二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)のデザインで実施された。スタチンでは既に脂質改善だけでなく炎症に対する作用など多面的効果が報告されているが,最近,EPAにおいても,こうした心血管疾患以外の領域の報告が増えているようだ。

COX-2阻害薬と同レベルの予防効果,安全性と忍容性も良好

 FAP患者のポリープ除去術後の化学予防(chemoprevention)として,従来非ステロイド抗炎症薬(NSAID)やシクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬などが有効であることが知られており,セレコキシブは既に欧米においてFAP患者の管理薬として承認されている。West氏らは,同薬の長期使用により比較的高齢の患者で有意な心毒性が報告されていることや若年者における使用の安全性が確立していないと解説。一方,EPAなどの ω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)においては大腸がんに対する有用性が非臨床的,小規模な試験などで強く示唆されていたことから,同氏らはEPAのFAP に対する有用性を確認することとした。

 対象となったのは,過去に大腸の部分切除術を受けた18歳以上のFAP患者。12か月以内の大腸部分切除術の既往,魚アレルギー,出血性障害,経口抗凝固薬やスタチンの服用,薬物療法を必要とする脂質異常症,PUFAサプリメントや魚油の摂取がある人などは除外された。また,試験期間中の NSAID定期服用は禁止,低用量アスピリンの定期服用は認められた。

 1日2gのEPA腸溶錠を投与した群28例,プラセボ群27例の計55例が解析の対象となった。試験期間6か月において,プラセボ群に比べEPA群で有意なポリープ数,ならびにポリープ径の合計の減少が認められた。

 また,プラセボ群ではポリープ症状の増悪 が認められたのに対し,EPA群では有意な改善が見られた。

 同氏らは,FAP患者のポリープに対するEPAの化学予防効果は従来のCOX-2阻害薬と同程度であったほか,安全性,忍容性の問題もほとんどないと評価。心疾患を合併することの多い高齢の患者においても好ましい効果が期待できるほか,家族性ではない一般的な大腸ポリープの予防にも有用性が期待できるとの見解を示している。

Medical Tribune 2010-3-19

ビタミンB6の摂取が大腸がんを抑制 前向き研究のメタ解析で
 ビタミンB6が欠乏するとDNAの統合や修復,メチル化に異常が生じ,大腸がんリスクが上昇する可能性が指摘されているが,ビタミンB6の摂取と大腸がんの関連についての過去の研究結果は必ずしも一致しない。そこで,スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らは,前向き研究のメタ解析を行い,大腸がんのリスクはビタミンB6の摂取量およびビタミンB6の活性型である血中PLP(pyridoxal 5'-phosphate)濃度が高い群で低く,血中PLP濃度との間には用量依存性が認められたと報告した。

血中PLP濃度が100pmol/mL増加するごとに大腸がんが49%減少

 Larsson氏らは,MEDLINEおよびEMBASEの今年(2010年2月)までのデータベースからビタミンB6の摂取や血中PLP濃度と結腸直腸がん,結腸がん,直腸がんの関係を調べた前向き研究とその文献リストを検索し,レビューした。

 ビタミンB6摂取については,米国の5研究,欧州の2研究,アジアの2研究の6,064例を分析。ビタミンB6は,食事,またはサプリメントと食事によって摂取されており,サプリメントのみの研究はなかった。ビタミンB6の高摂取者は,高齢で,身体活動量が多く,喫煙が少なく,アルコールの摂取が少ない傾向があった。

 ビタミンB6の摂取量が最も多い群と最も少ない群を比較したところ,最も少ない群に対する最も多い群の大腸がん発症の相対リスク(RR)は0.90〔95%信頼区間(CI)0.75〜1.07〕だった。高摂取群と低摂取群の摂取量の差が少ないなど(0.6〜0.7mg,その他の研究では>1.5mg)統計学的に異質性が認められた1研究を省略すると,RRは0.80(95%CI 0.69〜0.92)で,最も多い群で有意なリスク低下が認められた。

 Larsson氏らは,ビタミンB6の摂取は健康的な生活と関連する傾向があり,それが大腸がんの発生予防に働いている可能性もあるとしながらも,1研究をのぞけばすべて身体活動などの因子で調整されており,ビタミンB6の摂取および血中PLP濃度と大腸がんの発症は逆相関することがわかったとしている。また,ビタミンB6のサプリメントの高用量摂取(40mg/日)と大腸がんの発生を調べた近年のランダム化比較試験(RCT)で関連が見られなかったとする報告があるものの,大腸がんの症例数が少ないなどの問題があり,ビタミン B6の補充効果について大規模RCTによる今後の検証が必要だと指摘している。

Medical Tribune 2010-3-19
乳がん死が減ったのはスクリーニングのお陰…ではない
デンマーク国内の検討
 デンマーク・コペンハーゲン大学のKarsten Jrgensen氏らは同国内のマンモグラフィによる乳がんスクリーニングの効果を検証,その結果を報告した。現在の同国のスクリーニング実施地域における乳がん死亡の減少率は非実施地域とほとんど差がないか,むしろ非実施地域で大きい傾向にあったという。

「スクリーニング開始後乳がん死が25%減少」の報告に反証

 同国内では1991年からコペンハーゲンを皮切りに乳がんスクリーニングが開始された。2005年,Olsen 氏らが,同国内でのスクリーニングにより,導入前より乳がん死が25%低下したと報告。Jrgensen氏らは,これに対し,スクリーニング導入以前から乳がん死の減少が始まっていた可能性があること,スクリーニングの便益性を享受できる年齢に達していないか,あるいは過ぎている女性における乳がん死亡率について言及されていないと反論。

 さらに,同検討はスクリーニングが導入されている2地域のうち,コペンハーゲンのみを対象としたものであり,スクリーニングにより乳がん死が減ったのであれば,もう1つの実施地域においても同じ結果が得られるだけでなく,その他の非実施地域では乳がん死が減っていないことになるはずだとして,今回の比較検討を実施。

 1971〜2006年にデンマークの死因登録・統計システムに記録された全デンマーク女性が対象となった。コペンハーゲンのほか,もう1か所のスクリーニング実施地域としてフューネン地区が加えられ,それ以外の地域(全女性人口の80%が含まれる)は非実施地域であった。

 調査の結果、同氏らはデンマーク国内の乳がんスクリーニングプログラムによる乳がん死の減少効果を見出すことができなかったと結論。乳がん死の減少にはマンモグラフィによるスクリーニングよりも危険因子や治療法の変化などによる要因が大きいと分析し,「スクリーニングが乳がん死を確実に減らすのか見直す時期に来ているのではないか」と提言している。

Medical Tribune 2010-3-24
蛋白のリン酸化状態で肺がんを検出
 ボストン大学医用生体工学部のSimon Kasif教授らは,蛋白のリン酸化状態によって,肺がん細胞と正常肺細胞を97%の精度で見分けられると発表した。さらに同教授らは,リン酸化状態のデータを用いて肺がんを分類することにも成功した。今回の研究では,これら蛋白質を標的とする薬剤開発につながる可能性が示された。

肺がん分類のためのシステムも開発

 同大学先進ゲノム技術センターの共同所長でもあるKasif教授らによると,がん細胞と正常細胞を隔てる特徴は少なくない。組織学的にも異なり,増殖・分裂の速度も異なる。がん細胞は正常細胞とは異なり不死で,近接細胞との伝達が行われることも少ない。また「利己的」で,ゲノムが不安定になると通常の細胞であれば行う自殺(プログラム細胞死)を拒否する。

 このような生物学的プロセスに関与する細胞機序の大半は,シグナル伝達と呼ばれる調節・伝達システムによって制御されている。シグナル伝達の大部分はリン酸化プロセスによって制御される。蛋白がリン酸化されると,その蛋白の機能に応じて活性化されたり抑制されたりする。

 同教授は「したがって,がん細胞と正常細胞において,蛋白のリン酸化状態を把握できれば,がん細胞の指令や管理を担っている中心的機序が把握でき,それに対し介入を行うことも可能かもしれない。がんで活性化している蛋白を攻撃できる薬剤こそ,最も高い効力を発揮する」と述べている。

 同教授は今回,肺がんでリン酸化が行われている部位を調べた。その結果,多数の部位が発見され,リン酸化が関与する機序は多種存在することが示唆された。さらに同教授らは,リン酸化に関する情報をもとに,肺がんを分類するコンピュータシステムも開発した。

 研究責任者で同大学プロテオミクスコア施設の所長で病理学・医学検査部のMartin Steffen准教授は,今回の研究について「リン酸化ペプチド・シグナチャーを用いれば,がんだけでなく,どのような疾患でも診断できることを統計学的に初めて証明したものとなる」と説明している。

 同大学では「がんの組織はきわめて多様であるが,このようなリン酸化蛋白を標的とする薬剤は,ほとんどの肺がんに有効である可能性がある」としている。現在,この研究結果に基づき,追跡研究で既存の抗がん薬を検討しており,どのようながんに効果があるかを明らかにする試みが実施されている。

Medical Tribune 2010-3-25