広葉樹(白) 
          
 

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2010年2月 文献タイトル
自覚症状の確認は子宮頸がん早期発見の手がかりにならない
紫外線による皮膚老化を早める因子 皮膚がん既往や過体重などが関与
大豆食品で肺がんリスク低 非喫煙男性、厚労省研究班
炭酸飲料を多く飲むと膵癌リスクが高まる
たばこの煙の残留物による“三次喫煙”が新たな問題に
国際疫学会西太平洋地域学会兼第20回日本疫学会 緑茶摂取が肝がんリスク減少を示唆
非転移性結腸直腸がんの男性 身体活動で死亡リスク半減
小児期の肥満,耐糖能異常,高血圧は成人期の早期死亡の危険因子 小児期からの介入の重要性を示唆
HPVワクチンによる子宮頸がんの予防接種は何歳まで有効?
アスピリンにより乳癌生存率が高まる
長時間のTV視聴が心血管疾患関連死リスクに
がん患者の睡眠障害は持続的でQOLに大きく影響
小児がん生存小児は心疾患を発症しやすい
高齢者では太りぎみが最も長寿
利益強調型アドバイスが禁煙に有効 クイットラインの効果調査
早期肺がん診断後に禁煙した場合でも予後改善効果あり
千葉大・山本氏らがセコムと死亡時画像病理診断サービスで業務提携
料理人は気を付けよう! 高温油の調理による煙でナフタレン類
座ったままの生活は命取りに
アーミッシュ(近代文明を拒否して生活する新教徒)で低いがん罹患率 ライフスタイルがもたらすリスク低減効果
胃潰瘍の既往歴が膵がんの危険因子である可能性
世界初,凍結自家卵巣移植により2人目の子供を出産
伊藤園、緑茶が口腔癌の予防剤として有望であることを確認

自覚症状の確認は子宮頸がん早期発見の手がかりにならない
 米フレッドハッチンソンがん研究センターのMary Anne Rossing氏らは,子宮頸がんで早期に生じるとされる自覚症状が早期発見の手がかりとならないとの検討結果を米国立がんセンター機関誌(JNCI)1月28日オンライン版に報告した。

がん診断群,一般人口の多くで腹部,尿路の自覚症状を経験

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンや検診で予防が可能とされる一方,早期発見が難しいサイレントキラーとも表現されるがんの 1つだ。その原因の1つに早期の自覚症状の少なさが挙げられているが,最近では腹部膨満感や痛み,食思不振,頻尿といった症状を早期発見の手がかりとして推奨する動きが広まっている〔米国がん協会(ACS)ウェブサイト「子宮頸がんの診断について」〕。

 Rossing氏らは,これらの子宮頸がん早期に見られるとされる症状群の診断能を,ケースコントロール研究により検討した。

 2002年1月〜05年12月31日に子宮上皮頸がんと診断された35〜74歳の女性812例と一般人口の1,313人の女性をコントロールとして,個別に聞き取り調査を行った。

 質問内容は子宮頸がんと診断される,あるいは調査日(コントロール群)以前の12か月以内のうち,腹部または骨盤痛,あるいは腹部膨満感,食思不振のいずれかが,少なくとも1週間連続で続くことがあったという点が陽性指数とされた。また,診断あるいは調査前の少なくとも1か月以内に生じた尿意切迫感や頻尿も判断基準として考慮された。

 その結果,診断・調査前の5か月にほとんどの女性が陽性指数あるいは判断基準のいずれかを経験していた。同氏らによると,悪心を除くこれらの症状は病期が進行した子宮頸がんの女性に比べ,より早期の患者で若干少ない傾向にあったという。また,これらの陽性指数ならびに判断基準の予測陽性的中率は,全体で0.6〜1.1%,早期子宮頸がん患者で0.5%以下であった。

 同氏らは,自覚症状の診断的価値は,同様の症状を有する100人の女性から1人の子宮頸がん患者を見つけるにすぎないものと評価。「特に,早期の段階で子宮頸がんを発見するには低い陽性的中率と言わざるをえない」とし,今後こうした自覚症状を診断に用いるに当たっては,慎重なアプローチが求められると述べている。

Medical Tribune 2010-2-1
紫外線による皮膚老化を早める因子
皮膚がん既往や過体重などが関与
 ケースウェスタンリザーブ大学(オハイオ州)のKathryn J. Martires博士らは喫煙,過体重,日焼け止めの不使用,皮膚がんの既往などで,紫外線による顔面皮膚の損傷や老化が起こりやすくなると発表した。
 
65組130例の双生児を調査

 長期間の日光曝露により,皮膚には物理的・構造的変化が生じ,その結果,光損傷が起こる。典型的な皮膚の老化は小じわや皮膚腫瘍の発生を特徴とするが,光損傷では顔面に見られる大きなしわ,色素の過剰沈着または脱失,血管の拡張などが特徴的である。日光による損傷は,がん性の腫瘍の発生との関連も指摘されている。

 以前の研究から,老化に関連した変化の最大40%は非遺伝的因子によるとされている。Martires博士らは,これらの環境因子を明らかにするため,オハイオ州ツインズバーグで開かれた2002年度“双生児の日”の祭り(Twins Days Festival)に参加していた65組(130人)の双生児を調査した。参加者は肌質,皮膚がんの既往,喫煙・飲酒の習慣,体重について回答。臨床医が,しわや色素沈着などの特徴から各参加者の光損傷スコアを算出した。

 その結果,光損傷スコアは一卵性,二卵性のいずれの場合でも,双生児同士で強い関連を示した。また光損傷スコアは皮膚がんの既往,過体重,喫煙で高く,飲酒で低くなる傾向が見られた。

 同博士らは「今回の研究では,多数の双生児を調査したことにより,遺伝的因子を考慮したうえで環境因子を特定することができた。遺伝的共通性を持つ群で,皮膚がんの既往歴と光損傷に強い関連が見られたことは,最も重要な成果の1つである」と述べ,「喫煙,過体重,日焼け止めの不使用,皮膚がんの既往が,遺伝的因子とは独立して光損傷と関連していることがわかった。これは,リスクのある行動を減らす動機付けになるだろう」と結論している。

Medical Tribune 2010-2-4
大豆食品で肺がんリスク低 非喫煙男性、厚労省研究班
 たばこを吸わない男性では、豆腐や納豆などの大豆食品に含まれるイソフラボンの摂取量が多い人が肺がんになるリスクは、摂取量が少ない人の半分以下だとの研究結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター)がまとめ公表した。

 研究班は岩手、秋田など8県に住む45〜74歳の男女約7万6千人を平均約11年間、追跡調査。男性481人、女性178人が肺がんになった。食事内容のアンケートからイソフラボンの摂取量を算出し、男女をそれぞれ4グループに分け、肺がんの発症率を比較した。

 男性のうち、非喫煙者では、イソフラボン摂取量が最も多いグループ(豆腐換算で1日約203グラム)の発症率は、最も少ないグループ(同約37グラム)の43%だった。男性全体では関連は出なかった。喫煙の影響があまりに大きいためとみられる。豆腐1丁は300〜400グラム程度とされる。

 女性でも、統計学的に意味のある差はなかったが、同様の傾向だった。

 研究班によると、肺がんと女性ホルモンの関係を指摘する報告があり、女性ホルモンと構造が似ているイソフラボンの摂取が肺がん発症に影響するか注目され、今回と同じようにイソフラボンの摂取で肺がんリスクが下がることを示唆する海外の報告があるという。

 ただ同センター予防研究部の島津太一研究員は「肺がんの最大の原因はやはりたばこだ」と話している。

m3.com 2010-2-5
炭酸飲料を多く飲むと膵癌リスクが高まる
 炭酸飲料(ソフトドリンク)を多く飲む人は膵癌の発症リスクが増大する可能性のあることが、アジア人を対象とした研究で示された。

 今回の研究は、米ミネソタ大学とシンガポール国立大学が共同して実施したもの。中高年以上の中国系シンガポール人6万人強を対象に、果汁および炭酸飲料の平均摂取量を算出するとともに、被験者を14年間追跡して膵癌の発症数を調べた。その結果、週に2回以上炭酸飲料を飲む人は、全く飲まない人に比べ膵癌の発症リスクが87%高いことが判明。果汁の摂取と癌リスクとの間には関連はみられなかった。

 研究を率いた元ミネソタ大学研究員のNoel Mueller氏は、中国系シンガポール人は遺伝的には西洋人と大きく異なるが、成人の生活習慣には西洋と同じ傾向があるため、この知見は西洋諸国にも一般化できるものだと述べている。なお、今回の研究では通常の炭酸飲料とダイエット炭酸飲料の区別はしていないが、シンガポールで消費される炭酸飲料のほとんどは通常のものだという。

 研究グループは、炭酸飲料による血糖値の上昇とそれによるインスリンの増大が、膵臓細胞の異常な分裂を促進するのではないかと推測している。米国癌協会(ACS)のEric Jacobs氏によると、砂糖入り炭酸飲料の摂取は体重増加、肥満および糖尿病とも関連があるとされており、いずれも膵癌のリスク増大の原因となるものだという。

NIKKEI NET いきいき健康 2010-2-8
たばこの煙の残留物による“三次喫煙”が新たな問題に
 室内表面に残るたばこの煙の残留物、いわゆる“三次喫煙”が空気中の物質と反応することにより、新たな発癌(がん)物質が形成される可能性のあることが示された。ただし、この三次喫煙による健康リスクの有無はまだ不明だという。

 研究共著者の一人である米バークレー国立研究所(カリフォルニア州)のHugo Destaillats氏は「ここで問題にしているのは、たばこから元来発生する物質ではなく、喫煙後に室内に残った残留物と室内の化学物質が混じり合ってできる物資。喫煙後の部屋や車の中で容易に感じることのできる臭いの元が残留煙で、これがたばこ以外の物質と反応して新たな汚染物質となることが判明した」と述べている。

 米国癌協会(ACS)によると、三次喫煙は比較的新しい研究分野であり、その曝露と癌リスクにどのような関連があるのかは不明だが、二次喫煙(受動喫煙)に比べればリスクは小さいと考えられるという。しかしDestaillats氏らは、非喫煙者(特に乳幼児)が汚染された壁面やほこりに接触して、たばこの残留物を吸入すれば、健康にリスクが生じる可能性もあると指摘している。

 今回の研究では、たばこ由来の残留ニコチンと室内に一般的にみられる亜硝酸(HONO)が接触するとどうなるかを試験するとともに、ヘビースモーカーが日常使用している軽トラックのステンレス製のグローブボックスの表面を調べた。3日間で、トラック内では34本のたばこが吸われた。

 その結果、ニコチンとHONOが相互に作用し、発癌物質として知られるニトロサミンが生成することが判明。また、研究を実施した環境下では、生成したニトロサミンの半分以上が、たばこの煙が完全に消散してから2時間以上残ることもわかった。ただし、ニトロサミンが健康にもたらす影響は今回の研究では明らかにされていない。

 ACSのThomas J. Glynn氏は「三次喫煙の危険性について調べることは、たばこの影響を研究する上で理論的な次のステップである」と述べるとともに、煙の残留物と室内の化学物質から発癌物質が作られるとの考えは生物学的に妥当なものだと指摘。「ACSとしては、最終的な健康への害の可能性を調べる研究はどのようなものでも称賛する」と述べている。

NIKKEI NET いきいき健康 2010-2-8
国際疫学会西太平洋地域学会兼第20回日本疫学会
緑茶摂取が肝がんリスク減少を示唆
 肝がんに対する緑茶の効果は細胞レベルや動物実験で複数の報告はあるが,ヒトが対象の研究は十分な数がないのが実情という。東北大学大学院公衆衛生学分野の栗山進一准教授は,越谷市で開かれた国際疫学会西太平洋地域学会兼第20回日本疫学会で,緑茶摂取が罹患リスク低下との関連を示す結果が得られたと報告した。

肝疾患の非既往歴群は顕著に

 わが国では緑茶と肝がんリスクに関する前向きコホート研究は数件あるが「明確な結論は得られていない」とされる。栗山准教授と共同研究者の宇井あかね氏らは,宮城県北部大崎保健所管内で国民健康保険に加入する40〜79歳の4万1,761人(男性1万9,748人,女性2万2,013人)を解析。 1995〜2003年の追跡調査によると,肝がん罹患は247例(男性164例,女性83例)であった。

 対象者は緑茶の1日摂取量で1杯未満(A群),1〜2杯(B群),3〜4杯(C群),5杯以上(D群)に分けた。統計解析はCox比例ハザードモデルを用い,A群を基準とし,他群のハザード比との95%信頼区間を計算。傾向性の検定に関するP値は,摂取頻度カテゴリーを連続変数として算出した。

 男性の罹患リスクに対する多変量補正相対危険度はB群0.83,C群1.12,D群0.72で,女性ではそれぞれ0.61,0.78,0.50となり,D群で有意に減少していた。肝疾患既往症の影響については,ない群の5杯以上が有意に低かった。

 栗山准教授は,緑茶摂取頻度の調査はベースライン時にのみ行い,B・C型肝炎ウイルスの感染を把握できていないことが今後の課題とした。そのうえで「緑茶摂取頻度が高いと肝がんの罹患リスクは有意に減少する。その傾向は肝疾患既往歴のない人で,より顕著になる」と述べた。

Medical Tribune 2010-2-11
非転移性結腸直腸がんの男性 身体活動で死亡リスク半減
 ダナ・ファーバーがん研究所(ボストン)内科腫瘍学のJeffrey A. Meyerhardt博士らは,非転移性の結腸直腸がんの既往歴を有する男性では,身体活動を増やすことでこのがんに特異的な死亡リスクを低減させることが可能だと発表した。

高リスク患者でも検討予定

 研究の背景情報によると,米国では毎年約15万人が新たに結腸直腸がんと診断され,年間5万人近くが同疾患で死亡している。身体活動が結腸直腸がんの予防に寄与することは知られているが,結腸直腸がんの生存者でその効果を調べた研究はほとんどない。

 Meyerhardt博士らは,ステージ I 〜IIIの非転移性の結腸直腸がんの既往歴を有する男性668例を対象に,身体活動とこのがんに特異的な死亡および全死亡との関連性を検討した。フォローアップ期間の中央値は,がんの診断を受けてから8.6年であった。

 フォローアップ期間中,被験者には2年ごとに,(1)新たながんまたは疾患の診断を受けたか否か(2)ウオーキングやサイクリングなどの有酸素運動,ヨガやストレッチなど強度の低い運動,他の自主的な身体活動の実施状況−について回答してもらった。各身体活動には代謝当量(MET)スコアを用いた。

 フォローアップの結果,被験者のうち258例が死亡し,うち88例は結腸直腸がんによるものだった。非転移性の結腸直腸がんと診断された後に身体活動を多く行った男性では,同疾患に伴う死亡リスクと全死亡リスクが有意に減少。1週当たりの活動量が27MET時間を超える男性では,3MET時間以下の男性に比べて結腸直腸がんに伴う死亡リスクが50%強低下した。この関連性は年齢,病期,BMI,診断年,腫瘍の位置と診断前の身体活動に関係なく一貫して認められた。

 同博士らは「結腸直腸がん診断後の身体活動によって,同疾患による死亡リスクが低下するとの知見をさらに補強する結果が得られた」と結論。「近く開始されるランダム化試験で,リスクの高いステージII〜IIIの結腸直腸がん生存者を対象に,身体活動の指導と行動補助を含めた3年間の教育プログラムを検討する。1次エンドポイントは,無再発生存とする予定である。今回の研究知見は,その取り組みの妥当性を支持するものである」と述べている。

Medical Tribune 2010-2-11
小児期の肥満,耐糖能異常,高血圧は成人期の早期死亡の危険因子
小児期からの介入の重要性を示唆
兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人

 肥満,糖尿病,高血圧,脂質異常症は心血管イベントの予測因子であるが,小児期から見られるこのような危険因子が成人期における55歳以前の,心血管死を含む早期死亡と関連するかどうかはよく知られていない。今回,小児肥満の多い米国先住民を対象にした解析結果が発表された(N Engl J Med 2010; 362: 485-493)。

小児期BMI最高値群の内因性死亡のリスクは最低値群の2.3倍

 1945〜1984年に生まれ,4,857例の糖尿病を合併しないアリゾナ州の米国先住民の小児(平均年齢11.3歳)を対象に,BMI,耐糖能,血圧,コレステロール値が55歳までの早期死亡と関連するかを検討した。平均23.9年の期間中,166例の内因性死亡が見られた。内訳は,アルコール性肝障害59例,心血管疾患22例,感染症21例,がん12例,糖尿病または糖尿病性腎症10例,急性アルコール中毒または薬物乱用9例,その他33例であった。

 その結果,小児期のBMIが上昇するにつれて,成人期に内因性死亡する割合は上昇した〔ベースラインの年齢(5〜9歳,10〜14歳,15〜19 歳)別に検討したが同様の傾向であった〕。

小児期からの健全な食生活が重要

 佐藤 幸人氏は,「個人の考えでは,やはり健全な食生活と生活習慣を小児期から勧めたい。しかし,低所得階層では安くてカロリーが多いものを消費する傾向にあるために,低所得階層を根本的になくさない限り,ジャンクフード志向が改善されないとも考えられ,医学だけでなく,社会的,政治的取り組みが必要である」という。

Medical Tribune 2010-2-16

HPVワクチンによる子宮頸がんの予防接種は何歳まで有効?
 コスタリカINCIENSA FoundationのAna Cecilia Rodrguez氏らは,2月15日発行の米国立がんセンター研究所機関誌(JNCI)に,34歳以上では子宮頸がんの予防接種ならびにヒトパピローマウイルス(HPV)の新規感染スクリーニングの便益性が低下することを報告した。

34歳を境にHPV新規感染率が大幅に低下

 現在,子宮頸がん予防接種としてのHPVワクチンの接種開始年齢は10歳からとされている。若年期からの持続感染が子宮頸がんのおもな発症機序となることは知られているためだが,上限の年齢,適切な検診間隔は明らかになっていない。

 Rodrguez氏らはコスタリカのグアナカステ地区における住民ベースの縦断研究を実施,HPV新規感染と,子宮頸がんリスクの変化を年齢別に検討した。

 子宮頸部の検査対象となる18歳以上,9,466例の女性が登録され,9,175例にHPV感染ならびに子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelia neoplasia;CIN)検査によるスクリーニングが行われた。

 同氏らは年齢を問わず,追跡期間中に確認されたHPV新規感染とCINの進展に関連はなかったほか,HPV新規感染率は年齢とともに低下したと結論。一方,子宮頸がんリスクに関連するHPV持続感染者の割合は42歳以上の女性で高く,CIN進展のほとんどは持続感染と関連していたとまとめている。

 以上の結果から,同氏らはHPVワクチンによる子宮頸がんの予防接種,ならびに頻繁なHPVスクリーニングの便益性は34歳以上の女性では低下するのではないかとの見解を示した。

 日本産科婦人科学会,日本小児科学会,日本婦人科腫瘍学会が昨年(2009年)10月に出した合同声明では,「11〜14歳の女子に対して優先的にHPVワクチンを接種することを強く推奨する」ほか,この年齢でワクチンを受けられなかった15〜45歳の女性への接種も推奨することとされている。また,ワクチン接種後の検診体制については,日本だけでなく,この数年で接種を開始した諸外国の課題となっているようだ。

Medical Tribune 2010-2-16
アスピリンにより乳癌生存率が高まる
 乳癌の診断を受けた女性を対象とした研究で、アスピリンを使用すると生存率が有意に上昇し、再発リスクが低減することが示された。

 研究著者で米ハーバード大学医学部および公衆衛生学部准教授のMichelle Holmes氏によると、アスピリンを使用する女性は使用しない女性に比べ、乳癌による死亡率が全体で50%低く、統計学的にみて週当たりのアスピリン使用日数が多いほどリスク低減が大きいことが判明したという。

 例えば、アスピリン使用が週6〜7日の場合、死亡率は64%減少した。なお、理由は不明だが、週2〜5日使用の場合、死亡率は71%減少とさらに低かったという。アスピリンの使用により癌の再発率の低減も認められた。ただし、この研究は明確な因果関係を示すものではなく、アスピリンがリスク低減をもたらす機序も不明だという。

 米国癌協会(ACS)のEric Jacobs氏は、今回の研究を興味深いものであるとする一方、「Holmes氏も指摘するとおり、因果関係を裏付けるものではない」と述べている。両氏とも、乳癌患者にアスピリンの使用を勧めるのは時期尚早であるとし、最善の治療については医師に相談するよう勧めている。

NIKKEI NET いきいき健康 2010-2-16
長時間のTV視聴が心血管疾患関連死リスクに
 ベーカーIDI心臓・糖尿病研究所(オーストラリア・メルボルン)代謝・肥満部門身体活動研究室のDavid W. Dunstan室長らは,1日のTV視聴時間が1時間増加するごとに心血管疾患(CVD)関連死リスクが増大するという研究結果を発表した。
 
1時間ごとにCVD関連死リスクは18%増大

 今回の研究では,1999〜2000年に25歳以上の男性3,846例と女性4,954例を登録し,面接と経口糖負荷試験,血中コレステロール値や血糖値などの生物マーカーの評価を行い,2006年まで追跡した。面接では,過去7日間のTV視聴状況を聞き,1日2時間未満,2〜4時間,4時間を超える群に分類した。CVD既往者は解析から除外した。

 6年以上の追跡期間中に284例が死亡し,うち87例はCVD,125例はがんが原因であった。

 研究の結果,がんとTV視聴との間の関連は弱かったが,TV視聴時間とCVD死の増加や全死亡増加との間には,典型的なCVD危険因子とライフスタイル因子の調整後も直接的な関連が認められた。

 また,1日のTV視聴時間が1時間増すごとに,全死亡リスクが11%,がん死亡リスクが9%,CVD関連死亡リスクが18%,それぞれ増大することが確認された。

 さらに,1日のTV視聴時間が2時間未満の人と比べ,4時間を超える人では全死亡リスクが46%,CVD関連死亡リスクが80%増大することがわかった。この関連は喫煙,高血圧,脂質異常症,不健康な食事,ウエスト周囲径の増大,余暇時間における運動不足など他の独立した古典的CVD危険因子と関係なく認められた。

 今回の研究はTV視聴に焦点を合わせているが,この結果はデスクワークやパソコン使用などの長時間動かない生活が,総じて健康に悪影響を及ぼすことを示唆している。

 Dunstan室長は「ヒトの身体は動くようにつくられており,長時間座るようにはできていない。人は日常生活のなかで身体の筋肉を動かしていたが,そうした生活のなかの大部分を座って過ごすようになってしまった。技術,社会,経済の変化により,昔ほど筋肉を動かさなくなり,その結果,生活のなかでのカロリー消費は減少している」と指摘している。

Medical Tribune 2010-2-18
がん患者の睡眠障害は持続的でQOLに大きく影響
 がんと診断された患者は生涯多くの問題に直面することになる。デューク大学(ダーラム)臨床研究所精神科学・行動科学・心理学・神経科学科のKevin P. Weinfurt准教授らは「なかでも睡眠不足は最も持続的でQOLに大きく影響する」と発表した。

多くの患者が予後や再発に不安

 これまでの研究で,がん患者の約半数がなんらかの睡眠障害を訴え,睡眠障害の一部はがん治療終了後も継続することが示されている。

 Weinfurt准教授は同科のKathryn E. Flynn助教授と共同で,同大学で登録されている腫瘍患者のうち67例を10のグループに分けた。

 各グループの参加者数は6〜12例で,7グループは治療中の患者,3グループは治療後の患者で構成された。

 がん診断後の睡眠状況について,(1)睡眠の意義と重要性(2)がんが睡眠に及ぼす影響(3)睡眠障害が日中の精神・身体機能とQOLに及ぼす影響(4)睡眠障害の対処方法―の4つの話題に絞り,各グループで話し合ってもらった。

 その結果,以下のことが明らかとなった。

 (1)睡眠障害は重大な問題である

 (2)のぼせと寝汗が睡眠障害のおもな原因である

 (3)眠気と疲労感が日中の覚醒度と正常機能の全般的低下につながる

 (4)患者の多くが予後や再発に関して不安を感じている

 (5)多くの患者が,がんの治癒のために健康的な睡眠は不可欠と考えている
睡眠障害スクリーニングが必要

 患者は手術部位の圧痛や放射線による熱傷または留置カテーテルと接続するポートやチューブ,人工肛門が睡眠を妨げるなどの理由で,快適な睡眠が得られないと指摘している。

 また,疾患そのものが睡眠に影響することもある。特にがん患者では,ホルモン療法や化学療法などの治療が不眠・疲労と関連する生理学的な副作用の誘因になる可能性があり,睡眠障害を来しやすい。不眠と免疫機能低下との関連性も複数の研究で示されている。

 Weinfurt准教授は「がん患者では手術や放射線,化学療法などへの対応が優先されるため,睡眠問題はしばしば見過ごされる。今回の研究では,睡眠障害が総合的なQOLに大きく影響することが明らかになった」と述べている。

 Flynn助教授は「がん患者を治療する医療従事者は,がんが影響する睡眠障害に多くの種類があることを忘れてはならない。また,患者はがんと闘ううえで,良質の睡眠が重要だと感じていることも認識しておくべきだ」と指摘。

 さらに「今回の結果から,がん患者における睡眠障害と日中の眠気に対するスクリーニングが必要であることがわかった。睡眠障害がある場合,行動療法や心理療法,薬物療法を検討すべきである。がんに関連した疲労に対する治療の有効性を検討した研究は増えているが,がん患者における睡眠障害を管理するためのエビデンスは乏しい。医療従事者はこれまで以上に睡眠障害に注目し,治療することが重要だ」と述べている。

Medical Tribune 2010-2-18
小児がん生存小児は心疾患を発症しやすい
 ミネソタ大学(米ミネソタ州)小児科のDaniel A. Mulrooney助教授らは,がん生存小児や青少年では成人早期に心疾患を発症するリスクが有意に高いことが,これまでで最大規模の研究で示されたと報告した。
 
30年後も合併症発症リスク

 研究グループは,がん発症から5年生存し,小児患者研究(Childhood Cancer Survivor Study)に参加した患者1万4,358例のデータを,その兄弟姉妹3,899例のデータと比較検討した。

 がん生存患者は,21歳になる前の1970〜86年にがんと診断されていた。がんの種類は白血病,脳腫瘍,ホジキンリンパ腫,非ホジキンリンパ腫,腎がん,神経芽細胞腫,軟組織肉腫,骨がんのいずれかであった。

 患者本人またはその親には,健康上の習慣,病状,診断後の外科的治療などに関する質問票に回答してもらった。

 その結果,幼少期にがんを発症した若年層の成人は治療による影響で,がん治癒から30年経過しても心不全,心筋梗塞,心臓の炎症性疾患,心臓弁の異常など心血管系の合併症を発症するリスクが高いことが明らかになった。また,低用量のアントラサイクリン系薬や放射線治療の曝露で明らかにリスクが高まることがわかった。

 Mulrooney助教授らは今回の結果を受けて,「小児がん生存患者では心血管疾患リスクが高まっているため,このような患者を治療する医療従事者は注意が必要だ」と指摘。「小児期や青年期にがんを発症した若年層の成人では,通常同年齢層には発症しない心疾患の罹患率や死亡率リスクが明らかに高まっている。これらの患者には臨床モニタリングを継続的に行う必要があり,特に心血管疾患の発症率が高くなる年齢に近付くにつれ,より注意が必要となる」と述べている。

Medical Tribune 2010-2-18
高齢者では太りぎみが最も長寿
 高齢者では太りぎみの人が最も長生きするとの調査結果が,オーストラリアのグループにより発表された。

 同グループは,1996年に70〜75歳の男性4,677例と女性4,563例を登録し,10年間追跡。BMIにより低体重(BMI 18.5未満),正常体重(同18.5〜24.9),過体重(同25.0〜29.9),肥満(同30.0以上)の4群に分け,全死亡と疾患別(心血管疾患,がん,慢性呼吸器疾患)の死亡リスクを検討した。

 その結果,死亡リスクが最も低かったのは過体重群で,正常体重群と比べ13%のリスク低下が認められた。肥満群の死亡リスクは正常体重群と同等であった。

 座っていることが多い生活は,女性では4群を通じて死亡リスクの2倍上昇と関係していた。一方,男性ではそれほど大きな影響は見られなかった。

Medical Tribune 2010-2-18
利益強調型アドバイスが禁煙に有効 クイットラインの効果調査
 エール大学(米コネティカット州)精神医学のBenjamin A. Toll助教授らは,クイットライン(禁煙電話相談窓口)を調査した結果,禁煙することで得られる利益について強調したアドバイスが有効で,通常のアドバイスと比べ禁煙アウトカムが若干良好であったと発表した。また,クイットラインの専門家は,訓練により利益強調型のアドバイスを忠実に提供できるようになることも示された。
 
カウンセリングに改善余地

 ニューヨーク州禁煙電話相談窓口では,これまで専門家が喫煙による弊害と禁煙による利益をアドバイスしてきた。今回の研究ではクイットライン利用者を,禁煙によって得られる利益について強調するよう訓練を受けた専門家が応対する群(利益強調群)と,これまで通りのアドバイスを受ける群(対照群)の2群にランダムに割り付けた。

 今回の研究では,(1)訓練によって専門家が喫煙者に対し,常に利益を強調したアドバイスが伝えられるようになるか否か(2)それぞれのアドバイスを受けた者で禁煙アウトカムが変化するか否か−が評価された。

 Toll助教授らは,2008年3〜6月に寄せられた電話相談9,929件のうち基準を満たさない5,013件と,参加を拒否した2,877件を除く2,032件を対象とした。813例が利益強調型アドバイスを,1,222例が通常のアドバイスを受けた。

 2週間後に聞き取り調査を行ったところ,利益強調群では対照群に比べて禁煙試行率(31.1%対16.7%)と24時間禁煙達成率(23.3%対 12.6%)が有意に高かった。しかし,3か月後では両群に差は認められなかった。

 訓練の成果については,一貫して利益強調型アドバイスを伝えるようにクイットラインのスタッフを訓練できることも判明した。

 同助教授らは今回の研究を受けて「利益強調型のアドバイスは短期間の禁煙や禁煙試行および健康への期待など,副次評価項目については多少の改善が見られた。クイットラインの専門家に新しいカウンセリング方法を試すよう促すことで,禁煙率が高まり,ひいてはがん予防にもつながる可能性が示唆された」と述べている。

Medical Tribune 2010-2-18

早期肺がん診断後に禁煙した場合でも予後改善効果あり
 早期肺がん診断後に禁煙した場合でも予後の改善が得られると,英国のグループが発表した。

 同グループは,肺がん診断後の禁煙の予後への影響を検討したランダム化比較試験または経時的観察研究(1966〜2008年に報告)の系統的レビューとメタ解析を行った。

 対象となった10研究中9研究で,大部分の患者が早期肺がんと診断されていた。解析の結果,診断後の喫煙継続は早期非小細胞肺がん患者の全死亡と再発,限局期小細胞肺がん患者の全死亡,二次原発がん発生および再発の有意なリスク上昇と関係していた。禁煙のがん特異的死亡率への影響を検討した研究はなかった。

 得られたデータに基づく生命表では,65歳以上の早期非小細胞肺がん患者の5年生存率は喫煙継続群の33%に対し,禁煙群では70%と推定された。同様に,限局期小細胞肺がん患者の推定5年生存率は喫煙継続群が29%,禁煙群が63%であった。

 喫煙継続群と禁煙群の心疾患と呼吸器疾患による死亡率に有意差はなく,禁煙による死亡の減少にはがんの進行抑制の寄与が大きいと考えられた。

Medical Tribune 2010-2-18
千葉大・山本氏らがセコムと死亡時画像病理診断サービスで業務提携
 一般財団法人Ai情報センターとセコム医療システム(セコム)は,2月18日記者会見を行い,インターネットを利用した死亡時画像病理診断(Ai)サービスに関する業務提携を発表した。Aiセンターの死後画像診断のノウハウと,セコムの遠隔画像診断システムで培われた画像データ管理や情報管理セキュリティのノウハウを生かして新たな展開を打ち出していきたいと両者。

 同センター理事の山本正二氏(千葉大学大学院放射線医学講師)は,Aiの医療現場・一般社会の認知度が高まり,撮像件数も徐々に増加,より詳しい読影への潜在的なニーズが高まっているという。

年間1万件の需要を見込む,価格は生体画像診断より高め

 現在,Aiは救急医療の現場で用いられるなど,実施への気運が高まりつつあると言う山本氏。しかし,画像所見の正確な読影には生体画像と異なる作業や知識などが必要とされる。昨年(2009年)12月,同氏らはほかの放射線専門医数人とAi情報センターを設立。医療施設を対象に,死後画像の読影に関するセカンドオピニオンを第三者的立場から提供する事業を開始していた。

 一方,セコムは1994年から医療施設を対象とした遠隔画像診断支援サービスHospi-netを開始。Hospi-netは契約先の医療機関から送られてきたCTやMRI画像を転送,放射線専門医が読影し,報告書を作成するサービス。依頼に対しては翌営業日に依頼主へインターネットで報告が行われるという業務スピードのほか,セキュリティシステムを生かしたサーバ上でのデータの蓄積や保管に関するノウハウが既にあった。

 同サービスの契約施設数は現在280か所で,年間1万8,000件前後の画像診断を取り扱っている。同社によると,なかには例年20件程度の死後画像が含まれており,死後画像診断を専門としない放射線専門医が読影に苦労することも少なくなかったという。

 そのため,両者が提携することにより,互いのノウハウを利用できることで,Aiの普及にも貢献できることが最大のメリットとなるようだ。

 セコムは,現在,全国の医療施設で年間3万件の死後画像が撮影されていると試算されていることから,初年度にはその3分の1程度の依頼が来ると見込んでいる。

Medical Tribune 2010-2-18
料理人は気を付けよう! 高温油の調理による煙でナフタレン類
 肉を焼く煙や香りはしばしば食欲を増進させるものの1つにたとえられるが,職業的曝露を受ける人にとっては健康を害する可能性があるようだ。

 ノルウェー科学工科大学のAnn Kristin Sjaastad氏らは,肉を焼く際に出る煙に含まれるナフタレンなどの大気汚染物質が電気調理器(electric hob)よりもガスレンジで多く検出されたとの報告を2月18日のOccup Environ Medオンライン版で発表した。

防虫剤に次いでナフタレン曝露の主因となる可能性

 Sjaastad氏らによると,食材を焼く時に多く見られる調理時の煙(cooking fumes)が変異原性や発がん性を有し,肺がんの原因となりうることが指摘されているという。特に高温の油を使った調理から排出される煙については,数年前に国際がん研究機関(IARC)が「ヒトに対する発がん性の可能性あり」と分類している。

 調理時の煙には多環芳香族炭化水素 (polycyclic aromatic hydrocarbons;PAH)のほか,ヘテロサイクリックアミン(HCA)や高級アルデヒド類(higher aldehydes)などが含まれているという。

 同氏らは典型的な西洋料理店の厨房を実験室に再現し,ステーキ肉400gを17切れ用いてそれぞれ15分間の調理を行った。ステーキ肉は市中の店で購入したマーガリンならびに大豆油で焼いた。

 大豆油は2つの異なるメーカーのものを用いたほか,マーガリンには大豆,菜種,ココナツ油,やし油,ビタミンAとDが含まれ,硬化油(hydrogenated oil)は含まれないものが使われた。

 調理する人に取り付けたフィルターのPAH濃度を調査したところ,ナフタレンが17切れ中16切れのサンプル調理において,0.15〜0.27μg/m3airのレベルで検出された。同氏らによるとマーガリンでガスレンジを使った場合に最も高濃度を記録したという。

 また,全検体の調理で高級アルデヒドが検出されたほか,より毒性の強いアルデヒドもほとんどのサンプルで見られた。アルデヒド濃度は検出限界以下から61.80μg/m3airの幅で,最も高濃度となったのは,油の種類にかかわらずガスレンジによる調理であった。

 同氏らは電気調理器で生じる煙の粒子サイズが80〜100nmであるのに対し,ガスレンジ調理で生じる粒子が40〜60nmときわめて微細で,肺に吸収されやすいと解説。ガスによる炎が高温であることやガスの炎そのものによる影響も考えられるとしている。

 今回実験で検出されたPAH濃度は環境基準よりかなり低い(ノルウェーでの基準は40μg/m3)と同氏ら。しかし,ナフタレンを含む防虫剤の使用が禁止されている現在,調理時の煙がナフタレン曝露の新たな原因となりうるとし「可能な限り調理時の煙を減少させるべき」と警告している。

Medical Tribune 2010-2-18
座ったままの生活は命取りに
 スウェーデンスポーツ・保健科学大学内科のElin Ekblom-Bak博士らは,坐位の状態で長時間過ごすと健康に悪い影響を及ぼすため,定期的な運動不足よりもむしろ日々活動しないことで引き起こされる害に注目すべきだと発表した。
 
座ったままでは筋肉が無活動

 Ekblom-Bak博士らは「“座ったままでいる”状態は運動しないことを意味するが,より正確には“筋肉の無活動”を表す」と述べている。

 最近の研究によって長時間座ったままで全身の筋肉運動が不足すると,たとえ中等度〜強度の運動を行ったとしても,肥満,糖尿病,心疾患,がん,および全死亡のリスクの上昇と強く関連することが指摘されている。

 また,オーストラリアの研究から,中等度の運動を行っているにもかかわらず,女性がTVの前に座っている時間が1時間増えるごとに,糖尿病や心血管疾患の前兆であるメタボリックシンドロームのリスクが26%上昇することが示されている。

 既に運動不足の人の場合,常に座ったままでいると,健康に対する悪影響はさらに大きいこともわかっている。

 同博士らによると,これまでの研究から,常時,坐位でいることと不健康との関連性において,酵素の1つであるリポ蛋白リパーゼが主要な血中脂質の調節に重要な役割を果たしていることがわかっているという。

活動レベルを保つよう奨励する

 そこで,Ekblom-Bak博士らは,坐位のまま筋肉が無活動の状態は独立して不健康リスクを上昇させ,健康に悪影響を及ぼすという考え方を示している。常に座ったままでいることがもたらす結果は,運動不足がもたらす結果と同一ではないとされる。

 同博士らは「長時間,坐位でいるために引き起こされる身体の分子的および生理学的反応は,運動をすることで単純に相殺することはできない」と指摘している。

 同博士らは「将来的には,ガイドラインで運動を奨励したり,臨床診療のなかで運動のアドバイスを行っていくことが重要となる。また,日々,断続的に活動レベルを保つよう奨励することも必要だ。例えば,エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上ること,座ったままの作業中に5分間の体を動かす休憩を入れること,または車を使わず歩いて買い物に行くことなどが,運動と同様に重要となるだろう」と述べている。

Medical Tribune 2010-2-25
アーミッシュ(近代文明を拒否して生活する新教徒)で低いがん罹患率
ライフスタイルがもたらすリスク低減効果
 オハイオ州立大学総合がんセンターアーサー・G・ジェームズがん病院とリチャード・J・ソロブ研究所ヒト遺伝子学部のJudith A. Westman教授と疫学者のAmy K. Ferketich准教授は,アーミッシュではがんの罹患率が低いとの研究結果を発表した。
 
全国平均より44%低い

 今回,オハイオ州に住むアーミッシュの集団を対象にがんの罹患率を調べる研究を開始した時点で,Westman教授らはがんの罹患率は一般集団よりも高いと予想していた。これは,宗教的な信条や伝統により一般社会との接触が限定されているアーミッシュ特有のライフスタイルと,比較的小集団内での近親婚により,がんに関連する遺伝子変異の発生率が高いと考えたためである。

 しかし,今回の研究では全く逆の結果が得られ,アーミッシュの清廉厳格なライフスタイルが健康維持に貢献し,がんの罹患率の低減に寄与していることがわかった。

 同教授らがアーミッシュを研究対象としたのは,生活環境が与える影響とがんの発症に寄与する遺伝子を調査するためだった。オハイオ州には世界で最も多くのアーミッシュが住んでおり,ホルムズ郡には約2万6,000人が居住している。彼らは皆,200年前にこの地に移り住んだ100人のアーミッシュの子孫である。

 Ferketich准教授らは,横断的世帯調査の一部としてアーミッシュの92家族にインタビューし,少なくとも3世代前まで親族のがん家系図を作成した。祖父母へのインタビューでは,彼らの先祖や子孫の情報も得られた。

 対象は同郡在住のアーミッシュの成人9,992人で,同准教授らは死亡証明書とオハイオ州がん罹患率監視システムに報告されたがん照合例の情報も収集した。研究期間中に191人が,がんを発症した。

 同准教授は「アーミッシュは閉ざされた小集団であるため,92家族をインタビューするだけで同郡の人口の90%をカバーすることができた」と述べている。

 アーミッシュの集団全体のがん罹患率は,オハイオ州の年齢調整がん罹患率と比べて40%低く,全国のがん罹患率と比べて44%低かった。アーミッシュの成人における喫煙に関連したがんの罹患率は,オハイオ州の成人に比べて63%低く,喫煙と関連性のないがんについては28%低かった。

 同准教授は「アーミッシュの集団では多くの遺伝性疾患の罹患リスクが高かった。しかし,喫煙と飲酒が非常に少なく,性交渉の相手が限られているライフスタイルと,がん感受性を低くする遺伝子の影響で,多くのがんの発症を予防できているようだ」と述べている。

 アーミッシュにおけるがんの罹患率を検討した試験はこれまでなく,1996〜2003年に行われた今回の研究は初めての試みだった。アーミッシュの集団における24種類のがんの罹患率について調査した結果,子宮頸がん,喉頭がん,肺がん,口腔または咽頭がん,黒色腫,乳がん,前立腺がんの罹患率がオハイオ州よりも低く,統計学的に有意差が認められた。

Medical Tribune 2010-2-25
胃潰瘍の既往歴が膵がんの危険因子である可能性
 胃潰瘍の既往歴が膵がんの危険因子の1つである可能性を示唆するデータが,米ハーバード大学のグループにより発表された。

 消化性潰瘍と膵がんとの関係を検討した研究の結果は一致していない。同グループは,大規模な前向きコホート研究に参加した男性医療従事者5万 1,529例を対象に,1986年の登録時と追跡中2年ごとに消化性潰瘍の病歴を調査。喫煙習慣,BMI,糖尿病,身体活動を調整して膵がん発症との関係を検討した。

 18年間の追跡で274例に膵がんの発症が確認された。解析の結果,消化性潰瘍の既往歴がない男性と比べ,胃潰瘍の既往歴がある男性では膵がん発症リスクが2倍近く高かった。リスクは膵がん診断前の近い時期に胃潰瘍が診断された群で最も高かったが,胃潰瘍の診断から10〜19年後も有意であった。

 対照的に,十二指腸潰瘍の既往歴は膵がんのリスクとは関連していなかった。

Medical Tribune 2010-2-25
世界初,凍結自家卵巣移植により2人目の子供を出産
 欧州ヒト生殖・胎生学会 (ESHRE)は,2月24日のプレスリリースで,病気の治療で卵巣機能を失ったデンマーク人女性が治療前に凍結保存していた自家卵巣移植によって,2人目の子供を無事出産していたことを発表した。凍結卵巣の移植は既に不妊治療として実用化されているが,2人の子供を別々に出産したのは世界初だという。

20歳代でがん化学療法,卵巣嚢腫により両側の卵巣機能を失う

 今回,凍結卵巣移植により2人の子供を出産したStinne Holm Bergholdtさんは,2004年当時,27歳でユーイング肉腫と診断された。化学療法の前に,将来の妊娠に備えて右側の卵巣をおよそ3分の1摘出,凍結保存した。左側の卵巣はその数年前に卵巣嚢腫(dermoid cyst)で切除されていた。化学療法は奏効したものの,閉経状態となってしまった彼女は,2005年に6つの自家卵巣切片(six thin strips)を再び右側卵巣に戻す手術を受けた。

 その後,体外受精(IVF)により,2007年2月に1人目の娘を出産することができた。2008年,さらにIVFを実施,妊娠が確認されたが,その後の検査により既に自然妊娠していたことが判明したという。2008年9月には2人目の娘を無事出産した。

 2月25日,世界初の症例としてHum Reprod2月25日オンライン版に報告を行ったBergholdtさんの主治医,Claus Yding Andersen氏(デンマーク・コペンハーゲン大学)は「今回のケースは自家移植片が4年以上も機能することを示したもので,驚くべきことだ」と述べている。現在,彼女は月経が再開しており,避妊も行っているという。

 現在も移植が可能な切片は保管されており,彼女が希望すれば卵巣機能を維持するための追加の移植は可能だと同氏。3分の1程度の卵巣部分切除後の再移植においては,長期間の卵巣機能が維持できることが示唆されたほか,現時点では液体窒素による組織の凍結保存が40年は可能であることから,今後こうした治療法がさらに発展する可能性が期待されるという。

Medical Tribune 2010-2-26
伊藤園、緑茶が口腔癌の予防剤として有望であることを確認
 株式会社伊藤園 の中央研究所はこのほど、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(米国テキサス州ヒューストン市)との共同研究で、緑茶エキスが口腔癌の予防剤として有望との試験結果を得たと表明した。

 同研究所によると、緑茶の飲用と癌との関連については、これまで多くの疫学研究が行われている。また、緑茶抽出物や緑茶の主要成分カテキンについては、実験モデルでさまざまなタイプの癌の発症や転移を抑制することが報告されている。しかし、発癌リスクの高い人々に緑茶成分を投与して癌予防効果を確認した報告は、ほとんどない。

 今回の研究は、同センターのWaun Ki Hong(ワン・キ・ホン)教授、Anne Tsao(アン・タオ)博士らとの共同研究。臨床試験では、口腔白板症として知られる、口腔癌の予備軍である前癌病変をもつ患者ら41人に対し、癌予防研究用に開発した緑茶エキスを投与し、有効性を調べた。

 その結果、最大用量(1000mg/平方メートル)およびその次の高用量(750mg/平方メートル)を摂取した被験者群では、58.8%で病変の縮小が見られ、臨床的な改善を確認。また癌の増殖に必要な血管新生に関するバイオマーカー(VEGF:血管内皮増殖因子)に関しても、緑茶エキス投与群で改善傾向が示されるなど、緑茶が口腔癌の予防剤として有望であることが確認された。

サーチナニュース 2010-2-26