広葉樹(白)   
          

ホ−ム > 医学トピックス > バックナンバ−メニュ− > 2009年5月



2009年5月 文献タイトル
屋外プールスタッフの日焼けリスクに施設の予防方針が影響
携帯電話のカメラで8か月児の腫瘍発見 フラッシュで網膜芽細胞腫に気づく
あらゆる運動に結腸がん予防効果
喫煙が結腸直腸がんの発症と死亡に関連 メタアナリシスで確認
お酒弱いのに飲酒・喫煙 食道がんのリスクは190倍
睡眠障害で心筋梗塞やがんの発症リスクが上昇 フィールド医学調査の分析で明らかに
前がん病変段階で検出 膵がんの早期発見に新技術
排卵誘発薬で卵巣がんリスクは増加しない
血清イオン化カルシウム濃度で前立腺がんの予後を予測
英国/屋内ラドン濃度の対策改善で肺がん死抑制の可能性
カルシウム摂取量の多い女性でがん発症リスクが低い

屋外プールスタッフの日焼けリスクに施設の予防方針が影響
 エモリー大学(ジョージア州)ロリンズ公衆衛生学部のDawn M. Hall氏らは,屋外スイミングプール施設の日焼け対策の在り方が,プールで働く救助員やインストラクターらスタッフの日光曝露に対する安全性に影響すると発表した。

子供への日焼け予防指導が自身の日焼け対策に

 米国では,すべてのがん診断件数のほぼ半数が皮膚がんと推算されている。また,日光曝露が皮膚がんを引き起こしうるとの直接的および間接的エビデンスがある。屋外スイミングプール施設で働く救助員やインストラクターは若年であることが多く,屋外労働であるため,特に過度の日光にさらされるリスクがある。また,高校生や大学生では予防の習慣が浸透していないため日焼けしやすい傾向にある。プール施設で働くスタッフの約50%が重篤な日焼けを経験しており,ほぼ80%が前年夏に日焼けしていたとの報告もある。

 Hall氏らは「職場での介入は屋外労働者の日光への曝露を軽減し,日焼け予防行動を改善するうえで有効と考えられる。しかし,職場環境での日焼け予防対策についての研究はわずかであるうえ,結果にもばらつきがある」としている。
 同氏らは今回,2001年および2002年にPool Cool皮膚がん予防プログラムに参加した屋外プールで働く救助員およびインストラクターを対象に,屋外スイミングプール施設の日焼け予防に関する方針,これらスタッフにおける社会規範の捉え方,日焼け予防習慣と,実際の日焼けとの関連を分析した。また,人口統計学的情報も考慮された。

 回答者の80%強は常にサングラスをかけ,60%強は常に日焼け止めを使用していたが,必ず袖付きシャツを着たり,日陰にいることを心がけたり,日なたで帽子を着用したりしていたのは半数に満たなかった。また,それぞれの年に子供の水泳指導の一環としてPool Coolプログラムの日焼け予防指導を行っていた被験者は60%強であった。

 スタッフの社会規範の捉え方,日焼けに関する施設の方針,日焼け予防指導を実施したか否かは日焼けと関連することがわかった。

 今回の結果について,同氏らは「仲間同士で日焼け予防対策を行えば,個人の習慣にもよい影響が及ぶ。さらに,プール施設の日焼け予防方針によって,従業員も就業中に日焼け予防対策を行うようになり,予防習慣を発展させる環境が整えられるだろう」と結論している。

Medical Tribune 2009-5-7
携帯電話のカメラで8か月児の腫瘍発見 フラッシュで網膜芽細胞腫に気づく
 近年は携帯電話の電磁波による健康影響が注目されており,国際がん研究所(IARC)ではわが国を含む13か国が参加する共同疫学調査の結果を解析中。わが国の研究では脳腫瘍などの発症率に関連が見られなかったものの,スウェーデンの研究で聴神経鞘腫の発症率が3.8倍になるなど,欧州の研究ではリスクを高めるという結果が出ている。こうして携帯電話の悪影響が取りざたされるなかで,逆に携帯電話が腫瘍発見に役立った事例を英紙Daily Mail などが報じている。母親が携帯電話のカメラで生後8か月の息子を撮影し,フラッシュの反射で眼の異常に気づいたという。

左眼の中心視力失うも早期発見で右眼に影響なし

 英ハリファクス在住のエリザベス・ヘイルさんは,今年(2009年)3月4日に自身の携帯電話を機種変更した。以前のものにもカメラが付いていたが,新機種はフラッシュ付き。ヘイルさんは新しい機能を試すため,フラッシュを使って家族の写真を撮影していた。すると,生後8か月の息子トーマスちゃんの瞳孔だけに,異常な反射が見られたという。

 カメラのフラッシュを使うと眼球の奥にある血管が反射で赤く写ることがあるが,トーマスちゃんの眼の反射は白っぽく,サイズも大きなものだった。不安を抱いたヘイルさんがトーマスちゃんの症状をインターネットで検索すると,出てくるのはがんの情報ばかり。恐怖に駆られたヘイルさんは,英シェフィールド小児病院の腫瘍学専門医師の診察を受けたところ,トーマスちゃんの右眼に3つ,左眼に1つの珍しい形をした網膜芽細胞腫が発見。トーマスちゃんは左眼の中心視力を失ったが,幸いにも左眼の周辺視力と右眼の視力への影響はなかった。医師によると,発見が2か月遅ければ右眼の中心視力も失うところだったという。

 写真による乳児の網膜芽細胞腫発見は,昨年(2008年)8月にも米オンラインメディアTODAY などで紹介された。

Medical Tribune 2009-5-12
あらゆる運動に結腸がん予防効果
 ワシントン大学外科学のKathleen Y. Wolin博士らは,運動量が多いと結腸がんに罹患しにくいとするこれまでの知見を支持するメタアナリシスの結果を発表した。

どのような身体活動にも効果

 運動が結腸がんリスクに及ぼす影響を調べた数十年のデータを活用した今回のメタアナリシスで,運動量が最も多い人の結腸がん発症リスクは,運動量が最も少ない人に比べて24%低いことが明らかになった。

 運動の種類は重要でないことも明らかになった。ジョギング,サイクリング,水泳などのスポーツによる身体活動や,歩行,荷揚げ作業,採掘作業などの仕事中に行われる身体活動といったどのような種類でも,それがもたらす好ましい効果は同等であった。また,この効果には男女差は認められなかった。

 同博士は「結腸がんは米国で3番目に多いがんであることから,これらの知見は重要だ」と指摘。米国では毎年,約10万人が結腸がんと診断されるが,今回の研究では,米国人が身体的により活動的になれば,結腸がん患者数は年間2万4,000人減少すると推算している。

Medical Tribune 2009-5-14
喫煙が結腸直腸がんの発症と死亡に関連 メタアナリシスで確認
 欧州腫瘍学研究所(伊)のEdoardo Botteri氏らが106件の観察研究を対象にメタアナリシスを行った結果,喫煙が結腸直腸がん(CRC)の発症と死亡に関連することが認められた。

長期喫煙者で喫煙本数が関連

 喫煙は,これまで結腸直腸がんスクリーニング受診者の層別化因子とは考えられていなかった。しかし,数件の先行研究では特に大量喫煙者で結腸直腸がんが早期に発症することが示されており,Botteri氏らの新旧の研究結果からも喫煙が腺腫性ポリープや結腸直腸がんを誘発するとのエビデンスが得られている。同氏らは「喫煙は結腸直腸がんスクリーニング開始年齢を決定する際に考慮すべき重要な要因になりうる。つまり,喫煙者ではスクリーニング開始年齢を下げる,非喫煙者では開始年齢を上げることができる」と述べている。

 喫煙年数10年以上では,発がん率は年間喫煙パック数または1日喫煙本数の増加とともに上昇し,喫煙年数が30年を超えると,統計学的に有意となった。

 喫煙と発がんおよび死亡との関連は,結腸がんより直腸がんで強かった。また,喫煙関連リスクは,遠位結腸がんより近位結腸がんで高かった。

Medical Tribune 2009-5-14
お酒弱いのに飲酒・喫煙 食道がんのリスクは190倍
 顔がすぐに赤くなるお酒に弱い体質の人が飲酒と喫煙をすると、食道がんになるリスクが、飲酒も喫煙もしない人に比べ、最大190倍も高くなることが、東京大学の中村祐輔教授と松田浩一助教の研究でわかった。

 同じ体質の人でも、飲酒・喫煙をしないと、リスクは7倍程度に下がった。体質を理解して生活習慣に気を配ることで、予防したり、早期発見したりできると期待される。

 研究チームは、食道がんの患者1070人と健常者2832人で、約55万か所の遺伝情報の違いを比較。発がん性が指摘されているアセトアルデヒドをアルコールから作る酵素と、アセトアルデヒドを分解する酵素の二つが、食道がんのリスクに関連していることを突き止めた。

 アセトアルデヒドはお酒で気分が悪くなる原因物質で、たばこの煙にも含まれる。顔が赤くなるのは、アセトアルデヒドの分解能力が弱いためで、日本人の4割がこのタイプ。アセトアルデヒドを作る働きが弱いと、気分が悪くなる前に、ついつい余分に飲んでアセトアルデヒドが増える。

 飲酒・喫煙の影響についても調べたところ、お酒に弱く二つの酵素の働きが弱い人が、1日缶ビール1本以上の飲酒と喫煙をすると、相乗効果が働き、お酒に強く飲酒・喫煙をしない人に比べ、食道がんのリスクが190倍も高くなっていた。

m3.com 2009-5-15
睡眠障害で心筋梗塞やがんの発症リスクが上昇 フィールド医学調査の分析で明らかに
 5月8日,東京都内で睡眠障害セミナー「睡眠と疾患リスク」が開催され,東京女子医科大学(内科)教授・東医療センター病院長の大塚邦明氏は,フィールド医学調査の結果,不眠と高血圧,脂質異常症,インスリン抵抗性,発がんとの関連性が高いことを紹介した。

住民調査の不眠群で,疾病発症の相対リスクが3.17倍に

 大塚氏は,まず,時間医学について概説し,視床下部視交叉上核,臓器や血管など,体内に時計のような機能を有する時計細胞,時計遺伝子,時計蛋白などがあり,光,音,気温,芳香,社会,ストレスに応答しながら,心拍,血圧,心拍数など24時間の生体リズムを守っていることを紹介した。

 しかし,睡眠覚醒リズム,摂食リズムが乱れたり,あるいは外界の環境因子などに対する影響で,この生体リズムが崩れると,高血圧や動脈硬化を招いたり,生活習慣病の発症や肥満に影響するという。

 同氏らは,地域に直接出向き,そこで生活する患者に医学的な対応をしていくという,地域に見合った医学(フィールド医学)の研究に取り組んでおり,その活動を通じて得られた睡眠障害と生活習慣病の関連性を示す知見を報告した。

 北海道U町における24〜79歳の住民217人に対し,睡眠と血圧日内変動との関連性について調査を行い,5年間の追跡を行ったところ,睡眠時間が長すぎる住民では,(1)起床後の疲労感が大きい,(2)朝の収縮期家庭血圧が有意に高い(r=0.2958,P<0.01),(3)夜間の血圧下降度が10%未満であるnon-dipperを呈する傾向が観察されたという。

 同様に,住民184人を対象に睡眠と疾病の発症リスクについて検討したところ,アンケートの「昨日はよく眠られましたか」という質問に対し「十分でなかった」と回答した群は,睡眠良好であった群に比べ,心血管イベントとがんを合わせた疾病発症の相対リスクが3.17倍有意に高かった。同様に「いいえ」と回答した住民では,発がんの相対リスクが4.67倍有意に高かった。

 また,寝付くまでの時間が長い(30分),いびきの期間が長い(3年),むずむず脚症候群がある,起床時に疲労感が残っている―といった人ほど,発がんの危険性が高いことが示された。

 大塚氏は,生体リズムを守るための養生訓として,(1)朝の時間帯に光を浴びること,(2)朝食の時刻を一定にすること,(3)適切な睡眠時間の確保と,起床時間を一定にすること,(4)朝の,おいしい緑茶,コーヒー,グレープフルーツなどの摂取や散歩など,適度な交感神経の緊張,(5)リタイアした後も社会活動など続けるなど,なんらかの社会的な接触を持つこと,(6)ときどき時計を見て,時刻を確認すること,(7)昼夜に適度な寒暖のメリハリや騒音・静寂リズムなどをつくることなど,日常生活の見直しを挙げた。

Medical Tribune 2009-5-19
前がん病変段階で検出 膵がんの早期発見に新技術
 ノースウェスタン大学のVadim Backman教授らは,膵がんの検出だけでなく,前がん病変の段階で検出可能な新しい検査法を開発した。

"治癒"可能な段階で検出

 今回,Backman教授らが用いた技術は,試料に光を当て,生じた後方散乱を利用するもの。同教授らは,膵臓に隣接する十二指腸粘膜の試料を用いて解析を行うことで,がんと前がん病変の同定を試みた。

 過去の研究では,この方法により生検なしでがん組織と非がん組織を鑑別できることが示されている。今回の研究では,さまざまなステージのがんを同定することが可能なだけでなく,膵がん家族歴を有する高リスク集団や,膵炎患者に対するスクリーニングとして利用できる可能性が示唆された。

 今回の研究では,悪性組織と良性組織の鑑別の感度は95%で,特異度は71%であった。膵がんをまだ治癒可能な段階で発見する方法としては,これまでで最良の方法と考えられる。

Medical Tribune 2009-5-21
排卵誘発薬で卵巣がんリスクは増加しない
 デンマークがん学会がん疫学科のAllan Jensen助教授らは大規模な研究から,排卵誘発薬の投与は不妊症の女性の卵巣がんリスクを増加させないことがわかったと発表した。

便益と有害リスクの比較検討を

 過去30年間にわたり,排卵誘発薬の使用が女性の卵巣がんリスクを増加させるか否かについて活発な議論が行われてきた。過去の研究結果は互いに矛盾しており,特に複数回の治療サイクルを受けている女性と,過去に妊娠に成功したことがない女性に対するリスクの懸念が解消されていなかった。

 このためJensen助教授らは,過去最大規模の不妊症の女性に対する集団データを用い,排卵誘発薬が卵巣がんに与える影響を調べた。

 今回の研究には,不妊症で1963〜98年にデンマーク全国の不妊治療クリニックに紹介された5万4,362例の女性が含まれた。このうち156例は卵巣がんに罹患した。複数の危険因子に対する調整を行った後,平均16年間にわたり4グループの排卵誘発薬の影響を評価した。

 その結果,いずれの排卵誘発薬も卵巣がんの総体的リスクを増加させないことがわかった。また,10回以上の治療サイクルを経験した女性と妊娠に成功しなかった女性はいずれもリスクが増加しなかった。
 
Medical Tribune 2009-5-21
血清イオン化カルシウム濃度で前立腺がんの予後を予測
 前立腺がんを発症した患者の大半はそれにより死亡するが,非致命的な患者もいる。ウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州)内科のGary G. Schwartz准教授らは,血中のカルシウム(Ca)濃度を調べることで,致死的前立腺がんか否かを予測できる可能性があると発表した。

最高三分位では死亡リスクが3倍

 これまで,この問題に真正面から取り組んだ研究はなかった。今回Schwartz准教授らは,診断前のイオン化Caの血清濃度と予後との関係を調べたところ,この値が最高三分位の患者では,最も低値の患者に比べて,前立腺がんによる死亡リスクが3倍強高いことが判明した。

 同准教授の説明によると,血清中の総Caの約2分の1は生理的に不活性で,イオン化Caのみが生理作用を示す。

 筆頭研究者でウィスコンシン大学(ウィスコンシン州マディソン)のHalcyon G. Skinner博士は「現状では治療すべき患者とそうでない患者の鑑別ができていないため,多くが不必要な治療を受けている。今後,今回の知見が確認されれば,血清イオン化Ca濃度が正規分布の下位に属する患者が前立腺がんにより死亡するリスクは,上位に属する患者の3分の1ということになる」とコメントしている。

 さらに「このような患者では治療開始を遅らせたり,あるいは治療を完全に中止することができるかもしれない。また,薬剤治療によってイオン化Ca濃度を下げ,前立腺がんによる死亡リスクを減少させることが可能になるかもしれない」と述べている。

Medical Tribune 2009-5-21

英国/屋内ラドン濃度の対策改善で肺がん死抑制の可能性
 オックスフォード大学保健経済研究所保健経済学のAlastair Gray教授らは,英国の肺がん死に屋内ラドンが及ぼす影響を調査した結果,毎年約1,100例が屋内ラドンによる肺がんで死亡しているが,現在の政府の対策はラドン濃度の高い少数の世帯のみを対象としたもので,全体の95%を占める低濃度ラドンによる死亡は見過ごされていると発表した。新築家屋のすべてに簡単かつ安価な方法で費用効果の高いラドン対策を講じることができ,肺がん死を減少させることができるとしている。

低濃度ラドンへの対策が必須

 ラドンは地中のウラン崩壊により生じる天然の大気汚染物質で,ラドンガスは住宅の基礎に生じた亀裂や穴から室内に入る。ラドンが崩壊すると粒子状物質が生じ,肺に入ると放射線曝露が生じる。現在の英国の政策は,ラドン濃度の高い世帯を特定し,世帯主に対して自費負担で対策を施すよう推奨することを柱としている。

 Gray教授らは英国の肺がん死に屋内ラドンが及ぼす影響を調査し,ラドン曝露に対する規制策の費用効率を検討した。欧州各地の肺がん患者7,000例と肺がんではない2万1,000例以上のデータに基づいて得られた,屋内ラドンによる肺がんリスクの最新エビデンスを用い,さまざまなラドン規制法施行前後の生涯肺がん死リスクを求め,費用を算出した。

 同教授らは,英国では毎年1,100例の死亡がラドンに起因したものと推定。これは肺がん死全体の約3.3%を占めている。しかし,ラドンによる全死亡例のうち現在の対策レベルを超える濃度での曝露による死亡例は5%に満たない。また,世帯主の多くはラドン検査やラドン対策に費用を投じたがらない。その結果,対策は高く付き,ラドン関連死への抑制効果はほとんどない。

 これに対し,新築の家屋に簡単な予防措置を施す方法は費用効果が高い。しかし,そのような対策は現時点では国内のごく一部の地域でしか行われていない。同教授らは「全国規模で対策を講じるべきであり,建築規制法の改正が必要である。住宅の基礎部分にガスを通さないシートを用いればラドンを約50%低減でき,その費用はわずか約100ポンドである」と述べている。

 Gray教授らは,英国に比べてラドン濃度の高い国は多いため,今回の知見は他の多くの国々にも当てはまるとしている。英国の家屋内のラドン濃度は平均21ベクレル(Bq)/m3であるが,EUでは55Bq/m3であることを考慮すると,EU内の肺がん死の約8%,つまり毎年1万8,000例はラドンによる肺がんで死亡していることが示唆される。

Medical Tribune 2009-5-28
カルシウム摂取量の多い女性でがん発症リスクが低い
 米国立がん研究所(NCI)がん疫学部のYikyung Park博士らは,カルシウム(Ca)摂取量の多い女性では全がん発症リスクが低く,またCa摂取量が多い男女では結腸直腸がんなど消化器系がんの発症リスクが低いと発表した。

消化器系がんで逆相関

 米国医学研究所(ワシントン)は50歳以上の成人に1日1,200mgのCa摂取を推奨しており,また2005年の米国人向け食事ガイドラインは1日3杯の低脂肪または無脂肪乳製品の摂取を推奨している。乳製品およびCaの摂取とがん発症との関連を調べた研究では,さまざまな部位のがんに対する結果が示されてきた。

 Park博士らは,米国立衛生研究所(NIH)のAARP Diet and Health Studyに参加した男性29万3,907人と女性19万8,903人から得られたデータを分析。参加者は1995〜96年の研究登録時にアンケートを通じて,乳製品などの食物の摂取量と頻度,またサプリメント摂取の有無について回答した。その記録を州のがん登録と照合し,2003年までの新規がん症例を同定した。

 平均7年間の追跡期間中,新がん症例が男性の3万6,965例(12.6%),女性の1万6,605例(8.3%)で同定された。Ca摂取量は,男性では総発がん数と関連していなかった。一方,女性では1,300mg/日までのCa摂取はリスク低下と関連していたが,それ以上の摂取ではリスク低下は認められなかった。

 また,男女ともに乳製品およびCaの摂取量と消化器系がんの発症とは逆相関していた。食事とサプリメントによってCaを最も多く摂取した最高五分位(約1,530mg/日)の男性では,最も摂取量の少ない最低五分位(526mg/日)の男性と比べて発がんリスクが16%低下していた。女性では,Ca摂取量が最高五分位(1,881mg/日)では,最低五分位(494mg/日)に比べてリスクが23%低かった。リスク低下は結腸直腸がんで著明であった。Caと乳製品の摂取量は前立腺がん,乳がん,消化器系以外のがんとは関連していなかった。

Medical Tribune 2009-5-28