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2009年4月 文献タイトル
血液型が膵がん発症リスクと関係
熱いお茶の摂取は食道癌リスクの上昇と関連
ゴム製品製造者で高い発がんリスク
BMI 22.5〜25を上回っても下回っても死亡リスクが上昇
大腸がんスクリーニング受検率が向上
がん生存者で高い失業率
毎日昼寝をする高齢女性は死亡リスクが高い
尿中サルコシン/前立腺がんの進行・浸潤マーカーとして有用

血液型が膵がん発症リスクと関係
 大規模疫学研究で血液型が膵がんの発症リスクと関係していることが明らかになったと,米ダナ・ファーバーがん研究所などのグループが発表した。

 孤発性膵がんの遺伝的な危険因子についてはほとんどわかっていない。同グループは,米国の男女医療従事者10万7,503例について血液型のデータを集めた2件の前向きコホート研究で,血液型と膵がん発症リスクとの関係を検討した。

 92万7,995人年の追跡で316例が膵がんを発症した。年齢,BMI,喫煙,身体活動,糖尿病歴を含む既知の危険因子を調整した結果,血液型と膵がん発症リスクとの間に有意な関連が認められた。O型と比べて他の血液型は膵がんの発症リスクが高く,ハザード(危険)比はA型が1.32,AB型が1.51,B型が1.72であった。血液型と膵がんのリスクとの関係は2つのコホートでほぼ同じであった。

 全体として,膵がん発症例の17%がO型以外の血液型を引き継いだことによるものと考えられた。10万人年当たりの年齢調整ずみ膵がん発症率はO型が27例,A型が36例,AB型が41例,B型が46例であった。

Medical Tribune 2009-4-2
熱いお茶の摂取は食道癌リスクの上昇と関連
 熱いお茶の摂取が食道癌リスクの上昇と強く関連することを示すイラン北部の地域集団に基づく症例対照研究の結果が発表された。

 「熱い飲み物の摂取と食道癌リスクとの関連は、いくつかの研究で世界各地から報告されている」とテヘラン医科大学のFarhad Islami, MDらは記している。「ゴレスタン州で一般に飲まれている飲料はお茶と水だけであり、平均摂取量はほぼ同じである。ある生態学的研究によると、食道癌発生率が低い近隣地方の住民に比べ、ゴレスタン州の住民はより多量かつより高温のお茶を飲んでいた」

 本研究の目的は、食道扁平上皮癌の発生率が高いイラン北部ゴレスタン州におけるお茶の摂取習慣の特徴と食道扁平上皮癌リスクとの関連を評価することであった。お茶の摂取パターンと通常飲むお茶の温度は、研究に登録された健常被験者でも評価した。

 「熱いお茶を飲むというゴレスタン州で一般的な習慣は、食道癌リスクの上昇と強く関連していた」と本研究の著者らは記している。「ゴレスタン州住民の大部分が熱いお茶を飲んでいるため、本集団における食道癌症例のかなりの割合がこの習慣で説明できる可能性がある」と本研究の著者らは記している。「ゴレスタン州および同様の習慣が一般的にみられる他の高リスク集団で食道癌発生率を下げるためには、熱いお茶を飲むことの危険性を人々に知らせることが有効かもしれない」

 王立ブリスベン病院クイーンズランド医学研究所(オーストラリア)のDavid C, Whiteman博士は、お茶を飲む前に5分間冷ますことを推奨している。

 「熱が腫瘍の発生を促進する機序についてはさらに調査する必要があり、今回の知見に基づいて新たな弾みが得られるかもしれない」とWhiteman博士は記している。「しかし、今回の知見はお茶を警戒する理由とはならず、お茶を飲むという昔ながらの習慣に対する人々の熱意がそがれるべきではない。むしろ我々は、お茶を作ってからカップに注ぐまでの間に5-10分間の間隔をおくというアドバイスに従うべきである。この間にお茶の風味を十分に引き出し、熱傷の危険性を下げることができるであろう」

m3.com 2009-4-9
ゴム製品製造者で高い発がんリスク
 バーミンガム大学のTom Sorahan教授らは,ゴム製品の製造に使用されている化学物質に日常的に曝露されている作業員では発がんリスクが高いと発表した。

がん死が国家統計の2倍

 Sorahan教授らは,英国の北ウェールズ地方にあるゴム製品工場に勤務していた男性作業員に,特定のがんとがん死亡発生率が予想よりも高いことを見出した。

 今回の研究では,潜在的な発がん物質とされている化学物質2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)への曝露に注目した。

 同教授らは,1955〜84年に同工場で6か月間以上勤務していた作業員の死亡率と,1971〜2005年のがんの診断記録を調査した。

 英国の予想死亡率の国家統計と比較すると,MBTに曝露された作業員では大腸がんまたは膀胱がんによる死亡率が2倍であった。

 また,予想される新規発がん症例に関する国家統計と比較すると,MBTに曝露された作業員では膀胱がんと診断される確率が2倍になっており,多発性骨髄腫の診断率は4倍に達していた。

 雇用期間中にMBTに曝露された作業員は曝露されなかった作業員1,797例と比べて,大腸がんまたは多発性骨髄腫に罹患するリスクがMBTの曝露量依存的に有意に増加していることが明らかになった。

 同教授は「同様の傾向が一般に認められるか否かを解明するには,MBTに曝露された別の集団を対象に追加研究を実施しなければならない」としているが,「MBTはヒトに対し発がん性を示す可能性があるため,取り扱いには十分な注意が必要である」と結論している。

Medical Tribune 2009-4-9
BMI 22.5〜25を上回っても下回っても死亡リスクが上昇
 BMI 22.5〜25が最も死亡率が低く,この範囲を上回っても下回っても死亡リスクが高くなることを示すデータが発表された。

 今回の報告は,西欧州と北米で行われた57件の前向き研究(参加者計89万4,576例)における登録時BMIと追跡中の死亡との関係を解析した結果に基づくもの。解析では追跡の最初の5年間を除外した。その後の平均8年間の追跡における死因が明らかな死亡は6万6,552例で,内訳は心血管疾患(心血管疾患)3万416例,糖尿病・腎または肝疾患2,070例,がん2万2,592例,呼吸器疾患3,770例,その他7,704例であった。

 年齢,性,喫煙状態で調整した結果,男女ともBMI 22.5〜25が最も死亡率が低かった。この範囲を超えると,BMIが5単位大きくなるごとに全死亡率が約30%高くなった。BMI 5単位増加ごとの疾患別の死亡率上昇は心血管疾患が41%,糖尿病が116%,腎疾患が59%,肝疾患が82%,がんが10%,呼吸器疾患とその他がそれぞれ20%であった。

 BMI 22.5未満ではBMIが小さいほど全死亡率が高い負の相関が見られ,おもに呼吸器疾患と肺がんとの強い負の相関によるものだった。喫煙者のたばこの本数にはBMIによる違いはほとんどなかったにもかかわらず,この負の相関は非喫煙者より喫煙者で強く認められた。

 解析実施グループは「BMI 25を上回る場合の過剰死亡はおもに心血管疾患によるもので,生存期間中央値はBMI 30〜35で2〜4年,40〜45では8〜10年短くなる(喫煙の影響に相当)。一方,BMI 22.5未満の過剰死亡はおもに喫煙関連疾患によるが,完全には説明しきれない」としている。

Medical Tribune 2009-4-9
大腸がんスクリーニング受検率が向上
 ハーバード大学のThomas D. Sequist博士らは,患者への郵送による案内で大腸がんスクリーニングの受検率が向上すると発表した。

簡単な方法で効果

 米国では,大腸がんはがん死亡原因の第2位である。便潜血検査,S状結腸鏡検査,大腸内視鏡検査を含むスクリーニング・プログラムは,前がん腺腫の除去を通じて大腸がんの発生率を低下させ,治癒が望める早期段階でがんを発見し,死亡率を低下させる。

 Sequist博士らは,2006年4月?07年6月に,プライマリケア医110人の患者2万1,860例(50〜80歳)を対象に大腸がんスクリーニングの受検率と大腸腺腫(腫瘍)検出率を追跡した。

 患者の半数(1万930人)は,教育パンフレット,便潜血検査キット,S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査を直接予約する方法についての指示書を郵送で受け取る群(郵便群)にランダムに割り付けられた。

 スクリーニング受検率と大腸腺腫(腫瘍)の検出率を,介入開始から15か月間追跡した。

 その結果,郵便群のスクリーニング受検率は,受け取らなかった群より有意に高かった(44.0%対38.1%)。郵便は高齢者ほど有効で,50歳代では3.7%,60歳代では7.3%,70〜80歳では10.1%受検率が向上した。

Medical Tribune 2009-4-23,30
がん生存者で高い失業率
 学術医療センター(アムステルダム)Coronel労働衛生研究所のAngela G.E.M. de Boer博士らが,雇用情勢は健康人にとっても厳しいが,がん生存者が就業機会を得るのはさらに厳しいと発表した。

失業リスクは健康人の1.37倍

 de Boer博士は,がん生存者の半数近くが65歳未満であるにもかかわらず,厳しい就業状況が存在する理由について「がん生存者の多くが再雇用を望んでいるが,(1)仕事上の差別(2)治療のためフルタイムの就業ができない(3)身体的あるいは精神的限界を有している(4)がん関連の症状がある―など不利な立場にある」と説明している。

 同博士らは,計2万366人のがん生存者群と15万7,603人の健康対照群を対象とした36件の研究を解析した。その結果,全体的にがん生存者の失業リスクは健康対照群より1.37倍高いことが判明した。

 がんの種類による失業率の差も認められた。両群の失業率をがんの種類別に検討したところ,乳がん生存者では35.6%対31.7%,消化器がんでは48.8%対33.4%,女性生殖器がんでは49.1%対38.3%であった。しかし,前立腺がん,精巣がん,白血病の生存者に関しては,失業リスクの上昇は著明ではなかった。

 同博士は「症状の管理,リハビリテーション,障害に対する便宜などの改善を目指した職場での介入が求められる」と指摘している。

Medical Tribune 2009-4-23,30
毎日昼寝をする高齢女性は死亡リスクが高い
 毎日昼寝をする習慣のある高齢女性は死亡リスクが高いことを示す研究結果が,米カリフォルニア大学などのグループにより発表された。

 今回の報告は,69歳以上(平均年齢77歳)の白人女性8,101人を7年間追跡し,骨粗鬆症と骨折との関係を調べた前向きコホート研究のサブ解析に基づくものである。

 多変量解析の結果,毎日昼寝をすると報告した女性は死亡リスクが高く,昼寝の習慣のない女性と比べてあらゆる原因による死亡率が44%,心血管疾患による死亡率が58%,心血管疾患とがん以外の原因による死亡率が59%高かった。この関係は比較的健康な女性でも認められた。

 さらに,1日の睡眠時間が9〜10時間の女性は8〜9時間の女性よりも心血管疾患や他の原因(心血管疾患とがん以外)による死亡リスクが高いことも明らかになった。

 同グループは,死亡リスク上昇の背景に睡眠障害が関係している可能性を示唆している。

Medical Tribune 2009-4-23,30
尿中サルコシン/前立腺がんの進行・浸潤マーカーとして有用
 ミシガン大学のArul M. Chinnaiyan博士らは,前立腺がん患者の尿中サルコシン濃度は,がんの進行と浸潤を示す新たな生物マーカーになりうると発表した。

1,000種類強の代謝産物を検討

 今回の実験では,前立腺がんの進行により前立腺細胞で発現亢進が見られる10種類の代謝産物が同定された。そのうちの1つサルコシンは,がん細胞の周辺組織浸潤の判定に有用であることがわかった。

 Chinnaiyan博士は「前立腺がんの発症および進行に際して,サルコシン濃度はがん細胞と尿中のいずれにおいても上昇するため,サルコシン測定を非侵襲的な前立腺がん診断に活用できる可能性が示唆された。また,サルコシン経路を標的とした薬剤の開発により,前立腺がんの進行を抑制できる可能性もある」と説明している。

 ヒトの腫瘍に発現する代謝産物1,000種類強の値を解析した研究は今回が初めてである。がんが発症・転移する際には細胞に複雑な変化が起こることが知られている。同博士の研究室では,これまでにも,前立腺がん関連遺伝子や蛋白質がこうした変化にどのようにかかわっているかを広範囲にわたり検討しており,同博士は「代謝産物の特徴を解明することで,起こっている分子的変化の全体像をさらに詳しく把握できるのではないかと考えた」と述べている。

Medical Tribune 2009-4-23,30