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2009年3月 文献タイトル
食生活改善などでがんを大幅に予防 世界がん研究基金などがリポート
がん 転移時に免疫制御
乳がん患者の生存率を高める介入プログラム
ビタミンC,E 前立腺がんなどでリスク低減効果ない
喫煙は結腸直腸がんの発症と死亡リスク増加に関連
乳がん治療後のフォローアップ 外来診察より電話を好む人が多い
糖尿病併発のがん患者で総死亡率高い
乳製品とCaの摂取が大腸がんに保護的作用
肥満手術にがん予防の可能性
進行前立腺がんのホルモン療法 放射線療法との併用で死亡率半減
高インスリン値で閉経後女性の乳がんリスクが上昇

食生活改善などでがんを大幅に予防 世界がん研究基金などがリポート
 世界がん研究基金と米国がん研究所が発表した研究リポート「がん予防の方法と活動」は、英国における大腸がん症例の43%と乳がん症例の42%が上記の方法で予防できたはずであるとしている。

 このリポートの全体的なメッセージは、政府から家庭に至るまであらゆるセクションが公衆衛生、とりわけがん予防を最優先にすべきであるとしている。リポートは食生活、身体活動、体重管理を通じて予防できるがんの割合を推定しており、この問題がいかに重要であるかを強調している。

 米国については大腸がん症例の45%と乳がん症例の38%がこの方法で予防できるとしている。リポートはまた低所得、中所得の国として中国、ブラジルにおけるがんの予防推定率をあげている。

 全体としての推定は、高所得国で最も一般的ながんの3分の1、低所得国では4分の1が予防可能としている。これらの数字にはそれだけでがんの3分の1の原因とされる喫煙は含まれていない。

 この実証的リポートの一環として世界的に著名な23人の専門家によるパネルは社会のそれぞれのグループ全体にまたがる48の勧告を行っている。これには以下が含まれている。

 *学校では身体活動を積極的に推奨し児童には健康的な食事を提供する。

 *学校、職場、公共機関では自動販売機で不健康な食品を扱ってはならない。

 *政府は身体活動を奨励するためウォーキングやサイクリング用のルートを広範に設けるべきである。

 *食品・飲料業界は生産段階で明確に公衆衛生を優先させなければならない。

m3.com 2009-3-2
がん 転移時に免疫制御
 がん細胞が他の臓器に転移する際、全身の免疫を担う細胞の働きを自在にコントロールし、体内を移動しやすくしていることが、慶応大の研究で明らかになった。

 その際に作られるたんぱく質の働きを抑える薬剤ができれば、がん転移とがん細胞による免疫抑制の両方を防げる可能性がある。

 河上裕教授(腫瘍免疫学)ら研究チームは、転移能力を持つがん細胞の多くが「スネイル」というたんぱく質を作っていることに注目。詳しく調べたところ、スネイルが、転移に重要なだけでなく、全身の免疫反応を抑える細胞を増やすことが分かった。

 一方、スネイルの働きを抑えると、転移能力が抑えられ、がん細胞への攻撃をやめていた免疫反応もほぼ正常に戻った。

m3.com 2009-3-3
乳がん患者の生存率を高める介入プログラム
 乳がん患者用心理学的介入プログラムが患者の健康を改善するだけでなく,生存率も上げることを示すこれまでで最良のエビデンスが,オハイオ州立大学総合がんセンター心理学のBarbara Andersen教授らの研究から得られた。

第II / III期患者を延命

 今回の研究は,オハイオ州の長期間にわたる「ストレスと免疫・乳がんプロジェクト」の一部として実施されたものである。対象は手術を受けた第II期またはIII期の乳がん患者227例で,全例が通常の治療を継続した。そのうち半数(114例)を今回の介入プログラムに登録(介入群)し,残り半数(113例)には定期診察のみ(非介入群)を行った。

 介入群では12か月にわたり,最初の4か月間は毎週,その後8か月間は月1回臨床心理士によるセッションが行われた。介入群は8〜12例ずつの小さなグループに分けられ,各グループごとに2人の臨床心理士が担当した。セッションは4週間続けられ,被験者はストレスを軽減するための漸進的筋肉リラクゼーション,一般障害(疲労感など)対策,家族や友人からの援助の受け方,運動と食事のヒント,治療による副作用への対処法,治療および検査を継続することの重要性などについて学んだ。

 被験者は,2007年10月時点で7〜13年間(中央値11年)にわたり定期的に追跡診療を受けた。その結果,ストレス軽減,気分改善,健康管理法の改変などの方法を教えられた介入群では,乳がんによる死亡リスクが56%,乳がん再発リスクが45%減少した。

 Andersen教授は「この結果は乳がん患者が前向きになる手助けをすることで余命を延ばし再発を防止できることを示唆している。心理学的介入プログラムが乳がん患者のストレス管理,身体機能の効率化,健康改善に役立つことは知られていたが,今回の研究によってこのプログラムにはそれ以上の効果があることがわかった」と述べている。

Medical Tribune 2009-3-5
ビタミンC,E 前立腺がんなどでリスク低減効果ない
 ハーバード大学内科のJ. Michael Gaziano准教授らは,約1万5,000例の医師を対象とした大規模がん予防研究を行い,ビタミンEまたはCのサプリメントを長期間摂取しても,前立腺がんやそのほかのがんのリスクは低下しないと発表した。

男性医師を対象に検討

 これまで,いくつかの観察研究では,ビタミンEとCの摂取量の増加または血中レベルの上昇はがんリスクの低下と関連することが示されている。しかし,Gaziano准教授らは「ビタミンEとCが全がんリスクまたは特定のがんリスクを減らすという決定的証拠は,大規模ランダム化試験で検証しなければならない。いくつかの試験は,がん予防におけるビタミンの潜在的役割の解明を目的としているが,これらの試験で一致した結果は得られていない」と指摘している。

 研究の背景情報によると,長期的な健康維持効果は確認されていないにもかかわらず,米国の成人の半数以上はビタミンサプリメントを摂取しており,なかでもビタミンEとCが最も普及している。

 同准教授らは,前立腺がん発症リスクおよび全がん発症リスクに対するビタミンEおよびCの効果を検討するため,ランダム化プラセボ対照試験Physicians' Health Study IIを行った。この研究には,登録時点で50歳以上の米国男性医師1万4,641例が組み入れられ,うち1,307例にがんの既往があった。対象は,プラセボを摂取する群,400IUのビタミンEサプリメントを1日おきに摂取する群,500mgのビタミンCサプリメントを毎日摂取する群にランダムに割り付けられた。

 平均8.0年の追跡期間中,1,943例になんらかのがんが確認され,そのうち1,008例は前立腺がんであった。ビタミンE群,C群とも,プラセボ群と比べて前立腺がんおよび全がん発症に対する予防効果は認められなかった。また,両ビタミン群とも,結腸直腸,肺,膀胱,膵臓を含む特定部位のがんへの有意な予防効果も認められなかった。

 以上から,同准教授らは「中高年男性のがん予防を目的としたこれらのサプリメントの使用は支持できない」と結論している。

Medical Tribune 2009-3-5
喫煙は結腸直腸がんの発症と死亡リスク増加に関連
 欧州腫瘍学研究所(伊ミラノ)のEdoardo Botteri氏らは,これまでの研究のメタアナリシスを行った結果,喫煙は結腸直腸がんの発症と死亡リスクの増加と有意に関連していると発表した。

発症リスクが18%増加

 全世界で喫煙者は13億人にのぼると推計されているが,2005年の調査報告によると,たばこは540万人の死亡原因となっている。しかし,喫煙と結腸直腸がんの関連については,これまでの研究では一致した結論が得られていない。喫煙習慣は個人レベルまたは集団レベルで管理できるため,結腸直腸がんと喫煙の関連を突き止めれば,年間50万人以上の死因となっている世界で3番目に多いがんである,結腸直腸がんによる負担を軽減できる可能性がある。なお,2008年の結腸直腸がんによる死亡数は米国だけでも約5万人と推計されている。

 今回,Botteri氏らは,喫煙と結腸直腸がん発症および死亡との関連を調べた過去の研究のレビューとメタアナリシスを行った。

 まず,106件の結腸直腸がんの新規症例を対象とした観察研究を調べ,合計約4万例のメタアナリシスを行ったところ,発症率に関する分析では,喫煙は結腸直腸がんリスクの18%増加と関連していたほか,pack-years(1日に喫煙するたばこのパック数×喫煙年数)および1日の喫煙本数の増加と結腸直腸がんリスクとの間に統計学的に有意な用量相関が認められた。しかし,この相関性が統計学上有意であったのは30年間喫煙した後に限られた。

 さらに,17件の研究を対象に結腸直腸がんによる死亡率と喫煙の関連を分析した結果,喫煙者では非喫煙者と比べて結腸直腸がん死亡リスクが25%上昇した。また,1日の喫煙本数が増加し喫煙期間が長期化するほど結腸直腸がん死亡リスクが上昇することも明らかになった。発症率と死亡率のいずれにおいても,この関連性は結腸がんよりも直腸がんで強かった。

Medical Tribune 2009-3-5
乳がん治療後のフォローアップ 外来診察より電話を好む人が多い
 マンチェスター大学看護学のKinta Beaver教授らは「乳がん治療後のフォローアップは,従来の外来診察よりも電話のほうが患者に受け入れられやすい」と発表した。また,電話によるフォローアップは多忙な病院の負担軽減効果もあると期待される。

電話での診察に高い満足度

 乳がん治療後のフォローアップとしては診察,コンサルテーション,ルーチンのマンモグラフィ乳房撮影が標準的であるが,英国の最近のガイドラインは,転移を発見するための集約的なフォローアップは効果的ではないと勧告している。

 Beaver教授らは,英国保健サービス(NHS)の英国北西部にある2病院において,乳がん治療を受けた再発リスクが低度〜中等度の374例を対象に調査を行った。被験者は,(1)従来の病院でのフォローアップ(病院での医師による10分の診察と乳腺検査)(2)電話によるフォローアップ(特別に訓練された看護師による臨床検査を伴わない20分間の診察)―の2群にランダムに割り付けられた。両群とも病院の方針に従ってマンモグラフィを受けた。

 その結果,電話を使用した群では,1対1のコンサルテーションによる過剰な不安を抱くことがなく,病院でフォローアップを受けた群と比べて満足度が高いことが明らかになった。指示された臨床検査の数も,再発を診断するために費やした時間も両群間に差はなかった。

 今回の研究では,乳がんケア専門看護師による電話でのフォローアップにより良好な結果が得られた。このフォローアップの仕方は,明らかな身体的および精神的ハンディキャップがなく,病院までの距離が遠い患者や移動が困難な患者に特に好まれた。電話によるフォローアップは他部位のがん患者やがん以外の患者にも広く適用可能で,病院の負担も軽減できるとしている。

Medical Tribune 2009-3-12
糖尿病併発のがん患者で総死亡率高い
 ジョンズホプキンス大学のBethany Barone氏らは,23件の試験を対象としたメタアナリシスの結果,がん診断時に糖尿病を併発していた患者の総死亡率は糖尿病を併発していない患者よりも高いと発表した。

 がんの種類別に総死亡率の上昇を見ると,子宮内膜がん,乳がん,結腸直腸がんと糖尿病との間に有意な相関が認められた。前立腺がん,胃がん,肝細胞がん,肺がん,膵がんと糖尿病との間にも,有意ではないものの同様の傾向が認められた。

 今回の知見から,同氏らは「今後の研究で,糖尿病に関連した死亡リスクの増大に関する経路を明らかにしなければならない。もし糖尿病とがんケアとの間に存在する臨床的あるいは生物学的な要因が確認されれば,次は新規がん患者の糖尿病ケアを改善することによって,長期の死亡率が低下するか否かを検討する臨床試験が必要となる」と結論付けている。

Medical Tribune 2009-3-19
乳製品とCaの摂取が大腸がんに保護的作用
 乳製品とカルシウム(Ca)の摂取が消化器がん,特に大腸がんのリスク低下と関係するようだと,米国立がん研究所などのグループが発表した。

 乳製品とCaの摂取はがんの部位によって異なる作用をしているという仮説があるが,エビデンスは限られ,また一致していない。さらに,がん全体への影響も明らかにされていない。

 今回の報告は米国立衛生研究所と旧米国退職者協会のDiet and Health Studyに基づくもので,乳製品およびCa摂取とがん(全体および部位別)との関係を検討した。乳製品および食品とサプリメントからのCa摂取を食物摂取頻度質問票により評価し,がん発症例を州のがん登録で確認した。

 平均7年間の追跡で,男性の3万6,965例と女性の1万6,605例にがんの発症が認められた。解析の結果,Ca摂取は男性の全がんのリスク低下とは関係していなかった。しかし,女性では1日約1,300mgまでのCa摂取は全がんのリスク低下と関係し,それ以上の摂取はリスク低下にはつながらないという非線形の関係を示した。

 乳製品とCa摂取は男女ともに消化器がんの発症と負の相関(摂取量が多いと発症が少ない)があり,このリスク低下は特に大腸がんで著しかった。また,サプリメントによるCa摂取においても,大腸がんリスクと負の相関が認められた。

Medical Tribune 2009-3-19
肥満手術にがん予防の可能性
 バージニア大学のSusan C. Modesitt博士らは「病的肥満女性に対する肥満手術は,がん予防につながる可能性がある」と報告した。

 Modesitt博士らは,単一施設のデータベースから1990?2006年に肥満手術を受けた女性1,482例を後ろ向きに同定。バージニア州と大学病院の医療記録とがん登録から得た情報に基づいて,肥満手術を受けた病的肥満女性と同手術を受けなかった病的肥満女性でがん罹患率を比較した。

 肥満手術を選択しなかった病的肥満女性3,495例(対照群)と比べて,肥満手術を受けた女性の発がん率は低く(5.8%対3.6%,P=0.002),年齢も若かった(46.9歳対41.7歳,P<0.001)。対照群で多かったのは子宮内膜がん62.6%,卵巣がん9.9%,乳がん9.4%であった。

Medical Tribune 2009-3-26
進行前立腺がんのホルモン療法 放射線療法との併用で死亡率半減
 ウメオ 大学(スウェーデン)放射線科学・腫瘍学のAnders Widmark教授らの研究によると,高リスク前立腺がんである局所進行前立腺がん患者では,前立腺放射線療法と従来の内分泌(ホルモン)療法の組み合わせにより死亡率が半減できることから,両者の併用を新しい標準治療とすべきであるという。

 今回の第III相ランダム化試験では,局所進行前立腺がん患者を3か月間の抗アンドロゲン療法後,(1)フルタミドによるホルモン療法単独継続群(439例)(2)同ホルモン療法と放射線療法併用群(436例)―の2群に割り付けた。

 平均7.6年の追跡期間後,ホルモン療法単独群では79例,併用群では37例が前立腺がんで死亡した。10年間の前立腺がんの死亡率は,単独群では23.9%で,併用群(11.9%)の2倍であった。全死亡も,単独群(39.4%)に比べ併用群(29.6%)で低かった。

 前立腺特異抗原(PSA)陽性により判断した10年間の前立腺がん累積再発率は,併用群(26%)に比べ単独群(75%)では約3倍高かった。5年後の尿,直腸,性的問題の頻度は,単独群に比べ併用群でやや高かった。

 Widmark教授らは「今回の研究は,局所進行前立腺がん患者において,ホルモン療法単独よりも放射線療法との併用のほうがはるかに優れていることを示している。併用療法は,前立腺がんの死亡率を大幅に低減させた。この差は10年で12%に達したため,全生存率も9.8%改善された。QOLと放射線療法の副作用プロフィールは許容できる程度である。したがって,われわれはホルモン療法と放射線療法の併用を新たな標準治療にすべきだと提案する」と結論している。

Medical Tribune 2009-3-26
高インスリン値で閉経後女性の乳がんリスクが上昇
 アルバートアインシュタイン医科大学疫学・集団保健学のMarc Gunter助教授らは,インスリン値が正常値を上回る閉経後女性では乳がんリスクが高まると発表した。この知見は,インスリンとそのシグナル経路を標的とした介入が,閉経後女性の乳がんリスクを低下させる可能性があることを示唆している。

 乳がんは米国女性に最もよく見られるがんで,特に閉経年齢を過ぎた女性に好発する。

 肥満は閉経後乳がんの危険因子として実証されているが,肥満と乳がんとの正確な関係は解明されていない。しかし,肥満女性ではエストロゲン値が平均を上回ることから,多くの研究者はエストロゲンと乳がんが関連すると考えている。しかし,肥満女性では乳がんの発症に関与しうる他のホルモンバランスの異常も存在する。その一例がインスリン値の上昇で,組織培養において乳房組織の成長を促進する。今回の研究は,エストロゲン値について調整している乳がん患者に対し,インスリンの影響を前向きに検討した初めてのものである。

 Gunter助教授らは2004年,研究中に乳がんを発症した835例と女性健康イニシアチブ全体を代表する者としてランダムに抽出した816例から成る1,600例超について検討。登録時の血液サンプルから,空腹時インスリン値,自然に産生されるエストラジオール(エストロゲンの一種)値,BMIを評価した。

 被験者を空腹時インスリン値に基づき4群に分けてエストロゲン値で調整した結果,インスリン値が最も高いグループは最低値のグループに比べて乳がんの発症率が50%近く高いことが判明した。

Medical Tribune 2009-3-26