広葉樹(白)     
         

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2009年10月 文献タイトル
非ウイルス遺伝子導入技術を開発 新トランスポゾン技術
メトホルミンが2型糖尿病患者の癌を予防する
ホルモン療法が卵巣がんリスク上昇に関連
ラジオ波焼灼治療のナビゲーションシステムを考案 第28回日本医用画像工学会
授乳で乳がんリスクが低下 乳がん家族歴のある女性
1日5杯以上の緑茶摂取が女性の胃がん予防に有効な可能性
陰茎がんの半数にHPV感染が関与
脂肪肝はいわば“時限爆弾” 肝細胞がん発症リスクを懸念
「警告症状」の裏に重篤疾患の可能性
H. pylori と胃がんのAsian paradoxに新説

非ウイルス遺伝子導入技術を開発 新トランスポゾン技術
 フランダース大学(ベルギー)のMarinee K. L. Chuah博士らは,新しい非ウイルス遺伝子導入技術を開発したと発表した。この方法は,現在のウイルスベクター技術に伴う炎症やがんの発生などの副作用を克服できる可能性を秘めており,遺伝性疾患やがんの根治をも可能にする遺伝子治療になりうるものとして期待される。

遺伝子治療技術のネック克服

 近年,患者の細胞へ外来遺伝子を導入する遺伝子治療は,有望な代替療法がない致命的疾患に対する治療法として期待されており,根治さえ望める技術とされてきた。遺伝子治療は,遺伝病だけでなく心臓や脳の疾患あるいはがんにも使用可能だ。事実,最新の研究結果では致命的な悪性脳腫瘍の患者に遺伝子治療が有益であることが示されている。

 遺伝子治療は全般的に進歩してきてはいるが,細胞に遺伝子を伝達するうえで,より安全性の高い方法の開発が求められている。遺伝子治療の成功は,究極的にはこれらの遺伝子デリバリービークルまたはベクターが機能するか否かにかかっている。

 これまで,ほとんどのベクターは各患者の細胞に治療遺伝子を届けるためのテーラーメード可能なウイルスに由来していた。しかし,これらのウイルスベクターの一部は,発がんや炎症などの副作用を誘発する可能性があった。

ウイルスベクターの限界を克服

 Chuah博士らは今回の研究で,ウイルスを使わない安全な遺伝子デリバリー技術を開発した。同博士らはチャールズ・ダーウィンの進化論にヒントを得て,トランスポゾンを利用することでウイルスベクターの限界を克服することに成功した。

 トランスポゾンは染色体上を転移することのできるDNA分子で,「カット・アンド・ペースト」機序によって,別のDNAに組み込むことができる。ある意味で天然の遺伝子デリバリービークルである。しかし,これまでのトランスポゾン・システムでは遺伝子導入の効率が悪く,発現も不安定なことがネックとなっていた。

 同博士らは,哺乳類細胞の大規模遺伝子スクリーニングで,第1世代トランスポザーゼをはるかに上回る効率化に成功した。

Medical Tribune 2009-10-1
メトホルミンが2型糖尿病患者の癌を予防する
 メトホルミンが2型糖尿病患者の膵臓癌と結腸癌のリスクを低下させることが、欧州糖尿病学会の第45回年次総会(ウィーン)で発表された。

 「我々の観察研究は、インスリンおよびメトホルミンを使用した5年間に癌が発現するリスクを示している。インスリン投与患者は結腸癌を発現する可能性がメトホルミン投与患者の2倍も高かったことが明らかになった。膵臓癌については群間に大きな差が認められ、インスリン単独投与患者のリスクは4.5倍であった。これらは非常に大きな差であり、特に致命的な種類の癌である膵臓癌に関してメトホルミンが重大な役割を果たしている可能性があったことを示唆する」と、研究の共著者であるブリストル大学(英国)の糖尿病治療部門、および臨床科学部門の長であるEdwin Gale, MDは述べた。

 後ろ向きコホート研究では、英国の300の一般診療施設の記録から、糖尿病患者の治療に関連する情報を引き出した。癌の既往があった患者は除外し、2000 年より後に治療を受けた患者のデータのみを収集した。インスリン曝露は1年間に交付された処方箋の数(<7、7 - 10、11 - 15、または>15に分類)によって推定した。研究者らは、インスリン単独投与患者4829例(11,415患者・年)、インスリンとメトホルミンの併用投与患者5035例(15,725患者・年)、およびメトホルミン単独投与患者30,421例(71,261患者・年)のデータを解析した。主要アウトカム評価項目は最初の固形癌の診断であった。

 未調整の癌発現率は、インスリンとメトホルミンの併用群においては1000 患者・年あたり34件の癌事象であったのに対して、最高量のインスリン単独治療に曝露された群では1000患者・年あたり60件という注目に値する癌事象が発現した。年齢、性別、および喫煙状態について調整した後の、インスリンとメトホルミンの併用療法と、インスリン単独療法の比較でも同様の比が得られた(5.73 vs 3.20)。

 研究の共著者であるカーディフ大学(ウェールズ)の医学疫学者Craig Currie, PhDは次のように述べた。

 「インスリン単独群においては明確な用量・反応関係が認められ、最高用量群ではメトホルミン単独治療群と比較してすべての種類の癌が6倍に増加した。最終的な答えを得るにはさらに研究を行う必要があるが、この用量・反応関係は因果関係の示唆へと一歩近づくものである。これにひきかえメトホルミンは癌リスクを低下させるようにみえる重要な特性をもっており、これらのリスクをさらに分析する必要がある」と、博士は語った。

m3.com 2009-10-7
ホルモン療法が卵巣がんリスク上昇に関連
 コペンハーゲン大学病院Rigshospitalet(デンマーク)産科クリニックのLina Steinrud Mrch氏らは,ホルモン補充療法(HRT)を現在受けているか,過去に受けた女性では,HRTを受けたことがない女性に比べ,治療期間や製剤,エストロゲン用量,レジメン,投与経路を問わず卵巣がんリスクが増大すると発表した。

相対リスクが約40%上昇

 卵巣がんの原因についてはほとんどわかっていないため,その一次予防は困難な課題である。閉経後にHRTを受けた女性で卵巣がんリスクが高まることは先行研究で示唆されているが,それらのデータは個々の製剤の効果,レジメン,投与経路に限定されたものであった。

 Mrch氏らは,デンマーク国民登録を通じて1995〜2005年に50〜79歳のすべてのデンマーク人女性を対象に,HRTに関連する卵巣がんリスクを検討した。HRTに関する最新の個人情報は全国医薬品統計登録の処方データから,卵巣がん発生率は全国がん登録と全国病理登録から収集した。

 平均8年のフォローアップ期間中,3,068例で卵巣がんが発見され,このうち2,681例は上皮がんであった。未経験群に比べ,現在HRT群では卵巣がんリスクが38%高かった。卵巣上皮がんに限定して分析すると,相対リスクは未経験群に比べて現在HRT群で44%高く,過去HRT群では15%高かった。卵巣がんと卵巣上皮がんのリスクは,HRTの期間が長くても有意な上昇は見られなかった。

 Mrch氏らは「HRTの施行を検討する際には,このリスクを考慮すべきである」と述べている。

Medical Tribune 2009-10-8
ラジオ波焼灼治療のナビゲーションシステムを考案 第28回日本医用画像工学会
 がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)では治療中の患部の確認が重要となり,4次元超音波監視下での施行が有用とされているが,依然として穿刺中の呼吸移動などの問題が起こる。

 岡山理科大学工学部生体医工学科の木原朝彦教授は,術者が観察断面を決定した時点のボリュームデータに,順次得られるデータを加えて,逐次位置を合わせるシステムを考案。有効性評価では良好な結果を得ていると紹介した。

順次得られるデータを最初のデータに位置合わせ可能

 2次元超音波断層像を用いたRFA施行時に問題とされていた術者操作によるプローブの位置ずれは,4次元超音波画像を用いた多面観察により解消されつつあるが,穿刺中の呼吸移動で「治療対象域」と「観察領域・穿刺針・焼灼対象域」の位置が変化するという問題が残されている。

 そこで木原教授は,術者が施術に最適な観察断面を決定した時点のボリュームデータに,それ以後順次得られるボリュームデータを空間的に回転・平行移動して位置を合わせ,治療対象域を表示する方法を考案し,その有効性を検討した。

 評価のために使用したデータは,健康人ボランティア3例と共同研究施設で過去に行った6例の計9例。臨床データについてはプローブ移動に配慮していないが,健康人ではプローブを意図的に動かし,目標部位が視野から適度に外れるようにしたという。

 同教授は今回,位置合わせに使用する類似度指標計算領域(VOI)を,最初のボリュームデータ上の解剖学的特徴が表れている部位にマニュアルで設定した。しかし,9例の実験結果からはVOIを複数個設定することで位置合わせは改善し,位置合わせ精度の経時的変化を見た一致指標も良好なことが認められ,施術中のプローブ保持位置の変化が追跡可能なことが確認できた。

 この結果から,同教授は「今後,実機評価のためには,処理速度やVOIの自動設定などの改善が必要だが,この方法によるナビゲーション情報の提供により,術者は視野外の病変を自分で探す必要がなくなり,効果的な治療が可能になる」と報告した。

Medical Tribune 2009-10-8
授乳で乳がんリスクが低下 乳がん家族歴のある女性
 Brigham and Women's病院とハーバード大学のAlison M. Stuebe博士らは,乳がんの家族歴を持つ女性が授乳を経験すると,閉経前に乳がんを発症するリスクが低下するとの研究結果を発表した。

乳房組織の異常な退縮の関与を示唆

 今回の研究の背景情報によると,世界的に女性の悪性腫瘍のなかでは乳がんが最も多い。乳がんの確立された危険因子としては,(1)家族歴(2)初潮の早期発来(3)非出産(4)高齢で第1子を出産―などが挙げられる。

 現在はノースカロライナ大学母体・胎児医学に所属するStuebe博士らは,1997〜2005年に女性看護師保健研究に参加した経産婦6万75例のデータを分析した。

 参加者には,(1)人口学的特性(2)身体測定値(3)ライフスタイル―について詳細な質問票に回答してもらい,2年ごとのフォローアップ時にも質問票が配布された。授乳歴については1997年の質問票で詳細に評価し,その後の追跡調査で乳がんの診断を受けた場合には,報告するよう要請した。

 その結果,2005年6月の研究終了時点までに閉経前に乳がんを発症した女性は608例(平均年齢46.2歳)であった。

 第1度親族に乳がん歴があって授乳を経験した女性では,授乳経験のない女性に比べ,乳がんの発症リスクが低かった。この授乳と乳がん発症リスク低下との関連は授乳期間,完全母乳であったか否か,無月経の経験の有無で変化することはなかった。

 一方,乳がんの家族歴のない女性では,授乳と乳がん発症リスクとの間に関連は認められなかった。

Medical Tribune 2009-10-15
1日5杯以上の緑茶摂取が女性の胃がん予防に有効な可能性
 1日5杯以上の緑茶の摂取が女性の胃がん予防に有効な可能性があると,日本の共同研究グループが発表した。

 先行実験研究で緑茶の抗がん作用が示唆されているが,胃がんのリスクに対する緑茶摂取の疫学的エビデンスは一致していない。同グループは,登録時に緑茶の摂取状況を調べた6件の研究データを解析し,緑茶の摂取と胃がんとの関係を検討した。

 対象は計21万9,080例で,228万5,968人年の追跡により3,577例に胃がんの発症が確認された。解析の結果,男性では喫煙と部位を層別化しても,1日1杯未満の緑茶摂取と比べ摂取増加による胃がんリスクの有意な低下は見られなかった。一方,女性では1日5杯以上の摂取により有意なリスク低下が観察され,特に遠位部胃がんのリスク低下が顕著であった。

 対照的に,緑茶摂取による近位部胃がんのリスク低下は男女を通じて観察されなかった。

Medical Tribune 2009-10-15
陰茎がんの半数にHPV感染が関与
 カタラン腫瘍研究所(スペイン)がん疫学研究プログラムのSilvia de Sanjos博士らは,陰茎がん全体の約半数に性感染症のなかで最多とされるヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関与していることがわかったと発表した。同博士によると,既に使用されているHPVワクチンが陰茎がんの予防にも有効な可能性がある。

国際研究で標本を大量収集中

 HPVは,女性では子宮頸がん,外陰がん,腟がん,肛門がんを,男性では肛門と陰茎のがんの原因となる。欧米の陰茎がん発症率は低く,成人男性のがん全体の1%未満であるが,アフリカとアジアでは10%を占めており,全世界では毎年約2万6,300人が新規に発症している。発がんにはいくつかの危険因子が関与していると考えられており,具体的には真性包茎,包皮の未切除,衛生不良,喫煙,複数のパートナーとの性行為,性器疣贅,その他の性感染症の既往などが指摘されている。

 今回の研究では,1986〜2008年6月に発表された陰茎がんに関する研究31件をレビューし,陰茎がん患者のHPV感染率を検討した。

 データが得られた計1,466例の患者のHPV感染率は46.9%であったが,南米の40.7%から北米の57.6%まで地域差が認められた。HPVは100タイプ超存在するが,今回,最も多かったのはHPV-16の61.5%で,次いでHPV-18の13.2%であった。

 de Sanjos博士は「HPV-16と18を根絶することで,毎年約7,000件の陰茎がんを予防できる」と指摘している。

Medical Tribune 2009-10-15
脂肪肝はいわば“時限爆弾” 肝細胞がん発症リスクを懸念
 脂肪肝は,いわば“腹部に仕かけられた時限爆弾”で,脂肪性肝炎が肝細胞がんの最多原因となる日もそう遠くないと見られている。ハノーバー医科大学消化器科のHeiner Wedemeyer講師は「超音波検査では患者の30%で肝臓が白っぽく描出されるが,こうした脂肪肝は特に若年層において深刻なリスクとなる」と報告した。

脂肪性肝炎でGPT正常の場合も

 脂肪肝患者の約10例に1例は10年以内に脂肪性肝炎に移行し,さらに,脂肪性肝炎の10〜15%が10年以内に肝硬変へと移行する。肝硬変患者の約10〜20%はその後の10年間で急性非代償性の肝硬変へと移行するか,肝がんの発症に至る。非アルコール性脂肪性肝炎患者は,未治療のまま放置されたC型肝炎患者の場合と同程度の短期間で,肝がんの発症に至ると考えられている。

 脂肪肝患者の臨床検査値を見ると,通常はγGTPが高値で,GPTの軽度の上昇を伴っていることもあるが,アルカリホスファターゼ(AlP)は正常域におさまっている。また,脂肪性肝炎であってもGPTが正常域内ということもある。

 診断に際しては,まず他の肝疾患を除外する必要がある。脂肪肝であれば超音波検査により脂肪蓄積が確認できる。既に炎症または線維化を生じているか否かを確認するには,組織生検が欠かせない。

 Wedemeyer講師は,特にGPTが何年にもわたって80〜120U/Lと高値の患者では穿刺生検を実施するよう勧めている。これは,特に自己免疫性肝炎との鑑別に有用である。

Medical Tribune 2009-10-22
「警告症状」の裏に重篤疾患の可能性
 キングスカレッジ一般内科・プライマリケア部門のRoger Jones教授らは,多くの患者が,食物が飲み込みにくくなったり,あるいは下血(直腸出血)の症状を臨床医に訴えても,時宜を得た早期診断を受けている患者は少ないと発表した。

がん以外の疾患の可能性

 血尿や喀血,嚥下困難,直腸出血は,その陰に重篤な疾患が隠れている可能性があることから「警告症状」とされている。こうした症状の訴えがあった場合,臨床医は正しい早期診断につなげるために,直ちに原因の究明に当たる必要がある。

 Jones教授らが以前行った研究では,プライマリケアの場で血尿や喀血などの警告症状に遭遇した場合,特に男性や高齢者ではその後にがんと診断されるケースが少なくないことが明らかになるなど,がんに関する警告症状の的中率については確立されつつある。その一方で,患者の健康に重大な影響を及ぼす可能性のある,がん以外の疾患に関する警告症状の的中率については,ほとんどわかっていない。

 同教授らは,一般医を受診した患者の1994〜2000年の診察記録のデータをもとに,がんと診断されたことがなく,血尿や喀血,嚥下困難,直腸出血の初回症状を訴えた患者76万2,325例(15歳以上)のデータを解析。さらに,例えば血尿の場合には,腎結石や尿路感染といった,これら4つの警告症状に関連する疾患リストを作成し,初回の警告症状の発現から90日後と3年後の時点での診断記録と比較した。

 その結果,警告症状を訴えた患者のうち約5例に1例は,90日以内にリストアップされた関連疾患の診断を受けていた。しかし3年後の時点では,直腸出血の症状を訴えた患者の4分の3以上(嚥下困難では約67%,血尿では64%,喀血では46%)が,確定診断を受けていなかった。

 同教授らは,血尿や喀血,嚥下困難,直腸出血の症状を訴えて受診する患者のうち,4〜7例に1例が90日以内に関連疾患の診断を受けると推計している。また,この比率は複数の症状を訴える患者ではより高くなるだろうと指摘。「これらの警告症状を示す患者に対しては静観するのではなく,がんおよびそれ以外の疾患の可能性について,適宜,検討していく必要がある」と述べている。

Medical Tribune 2009-10-29

H. pylori と胃がんのAsian paradoxに新説
 インドネシア大学のMurdani Abdullah氏らが日本人とインドネシア人では胃幽門・体部のHelicobacter pylori(H. pylori )感染率が同等にもかかわらず,胃粘膜所見に明らかな違いが見られたことを報告した。同研究は山梨大学第一内科大塚博之氏らとの共同研究。

日本人の胃がんにはH. pylori 以外の危険因子が関与か

 日本や中国,インドネシア,タイといったアジア系人種の国々ではH. pylori の感染率が同程度にもかかわらず,胃がんの発症率が異なることがAsian paradoxとして知られている。しかし,その原因については未解明な部分も多い。

 Abdullah氏らは,1998〜99年にかけて上部消化管内視鏡治療を受けたインドネシア人125例,日本人42例から胃粘膜細胞の提供を受けた。全167例はdyspepsiaのない人たちであった。

 胃幽門部あるいは体部におけるH. pylori 感染率はインドネシア人,日本人の間で有意な差は認められなかった(68% vs. 59.5%,P=0.316)。しかし,胃幽門部の感染率で両者の間に差はなかったものの(68% vs. 52.4%,P=0.068),体部の感染率には明らかな違いがあった(4% vs. 47.6%,P<0.000)。

 H. pylori 陽性例の比較から,日本人では,胃がんの危険因子または前がん病変とされる多形核細胞(P=0.001),単核細胞(P=0.013),腺萎縮(P=0.000),腸上皮化生(P=0.011)がインドネシア人に比べ有意に多かった。

 今回の試験は来院者を対象としており,必ずしも日本,インドネシアの一般人口の実態を表したものではないが,初めての比較検討と同氏らは述べている。また,日本人ではH. pylori 感染そのものより,遺伝など別の危険因子が胃がんの進展に関連している可能性を指摘。ほかにも亜硝酸塩の豊富な漬け物や干魚を摂る食行動の一方,新鮮なフルーツや生野菜の摂取量が少ないことが胃がんの発症率の高さに相乗的な影響を与えているのではないかとしている。

Medical Tribune 2009-10-29