広葉樹(白)    

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2007年1月-2007年3月文献タイトル
鳥インフル感染を迅速診断 大阪府立公衆衛生研が開発
インフルエンザワクチンの接種で市中肺炎患者の死亡率が減少
世界初の体外受精児が出産
東京・大阪の公立病院の半数、診療縮小
「食卓の安全」危機に 中国、卵や魚に発がん物質
混濁タイプのリンゴジュースに明らかな利点
運動後の筋肉痛をカフェインが緩和 コーヒー飲用により運動後の筋肉痛が軽減する可能性
タバコのニコチン濃度が増加
単剤化学療法で胃癌の生存率が改善
コレステロール判断基準、変更へ 「悪玉」に標的絞る 日本動脈硬化学会が指針
「延命治療」希望を文書化 高齢者の意思、事前に把握 国立長寿医療センター
食道癌発生率の大きな増加は肥満が原因
高齢者の運動と膝関節炎のリスク 運動は膝損傷の原因にならないとの研究結果
1304人で過去最多更新 06年の新規エイズ報告
「尊厳ある死は4割以下」 全国1500病院の53% がん患者の終末医療 厚労省研究班が調査
運動は大腸がん予防に有効 男性で危険度が30%低下
煙の立たないタバコに切り替えても解決にはならない
病院の勤務医9割が医師不足実感 妊娠時に異常、6割経験
睡眠の量と質は血糖管理に影響 2 型糖尿病リスクと重症度の予測因子に
乳がん:早い初潮/出産経験なし/高身長…高率に 日本人で初の裏付け----厚労省調査
ビタミンCは白内障を予防 食生活で発症に差
中年女性の脳卒中有病率は中年男性の2倍以上
パイロットの飛行能力は、年齢ではなく熟練で決まる
大腸がんインスリンも関係 分泌多いと高リスク
生ニンニクとニンニクサプリメントには脂質への効果はない
CT定期診断、肺がんの死亡率低下に無効果?
がん細胞自滅させる酵素、東京医歯大チーム発見
肥満のカップルで妊娠率低下のリスク
不眠症を治療しない方が医療財源で高くつく
人工リンパ節で免疫力20倍 理研、マウスに移植
不眠症治療薬によって脳機能が改善する可能性あり
大腸がん治療薬開発へ前進 拡大の仕組み解明
トランス脂肪と心疾患リスクには「強い」関連性

鳥インフル感染を迅速診断 大阪府立公衆衛生研が開発
 新型インフルエンザの原因になることが懸念されている鳥インフルエンザウイルスを迅速に検出する新しい診断法を、大阪府立公衆衛生研究所が開発した。同研究所によると、世界で初めてという。
 鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスを区別するのは難しく、従来の遺伝子診断法は、技術的に高度なため各都道府県の公衆衛生研究所など特別な機関でしか診断できず、結果判明まで半日から2日かかっていた。
 新しい診断法は鳥インフルエンザウイルスの核タンパク質だけに結びつく抗体を用いることで約10分で簡単に区別できる。
m3.com 2007-1-9
インフルエンザワクチンの接種で市中肺炎患者の死亡率が減少
 インフルエンザ流行期における市中肺炎入院患者の生存率が、インフルエンザワクチン接種で改善され、インフルエンザワクチンの適用を拡大することでベネフィットが増すことが示された
 「インフルエンザ予防のためのインフルエンザワクチン接種によって、易罹患者の罹患率と全死因死亡率が減少することが明らかにされている」と、ドレクセル大学のKimberly A. Spaude, MPHらが記述している。
 「今回の研究では、市中肺炎で入院した患者による大規模研究において、現在のインフルエンザワクチン接種の記録があると、入院中の生存率に向上が見られた」と、著者らは記述している。
m3.com 2007-1-11
世界初の体外受精児が出産
 世界初の体外受精児として1978年に生まれた英国のルイーズ・ブラウンさん(28)が自然妊娠の後、昨年12月20日に英南部ブリストルで、2700グラムの男の子を出産していたことが分かった。
 ブラウンさんは78年7月25日に生まれ、当時は「奇跡の赤ちゃん」と呼ばれた。2004年に結婚し、自然妊娠を望んでいたという。
 ブラウンさんと同じく体外受精で生まれた、妹のナタリーさんも、1999年に出産を経験している。
 英国では04年3月までの1年間に1万242人の体外受精児が誕生しているという。
m3.com 2007-1-17
東京・大阪の公立病院の半数、診療縮小
◇常勤医285人不足
 医師不足などのため、東京都と大阪府内の計54の公立病院のうち、公立忠岡病院(大阪府忠岡町、83床)が3月末に閉院するほか、半数近い26病院で計46診療科が診療の休止・縮小に追い込まれていることが、毎日新聞の調査で分かった。常勤医で定員を満たせない病院は45病院あり、不足する常勤医は計285人に上る。非常勤医で穴埋めできていない病院もあり、医師不足によって病院の診療に支障が出る「医療崩壊」が、地方だけでなく2大都市にも広がり始めている実情が浮かんだ。

◇「高額医療費」実は平均以下----OECDデータ
 地方だけでなく、大都市にも「医療崩壊」が広がり始めた背景には、日本の低医療費政策がある。医療費を巡る政策論議では長年、いかに抑制するかがメーンテーマとなってきたが、経済協力開発機構(OECD)の国際比較データからは、正反対の実情が浮かぶ。
 医療費を対国内総生産(GDP)比でみると、日本は1960年代半ばの一時期にOECD加盟国平均に達していた以外は、一貫して平均を下回っている。03年もGDP比8%で、平均の8・8%に届かない。
 特に、先進7カ国(G7)の水準には程遠く、差が広がるばかり。03年のG7平均は10・1%で、日本はG7平均に比べて医療費の支出が2割も少なく、先進国並みに医療にお金をかけているとは言えないのが現実だ。
m3.com 2007-1-23
「食卓の安全」危機に 中国、卵や魚に発がん物質
 中国各地で、卵の黄身の色を鮮やかにするため発がん性のある工業用染料を混ぜた飼料を家禽に与えたり、養殖魚の生存率を上げるため基準値を超える薬を投じたりする問題が頻発している。食品の安全管理システムが未整備なことが背景にあり、「食卓の安全」を守るための抜本的対策がないのが実情だ。中国誌などが報じた。
 中国誌は「拝金主義がまん延し、生産者の職業意識が低下している」と糾弾する一方、監督部門が細分化し過ぎて、統一管理ができないなど行政側の欠陥も深刻で「未然防止は極めて困難」と指摘した。
m3.com 2007-1-23
混濁タイプのリンゴジュースに明らかな利点
 疾患予防効果のある抗酸化物質に関しては、混濁タイプのリンゴジュースが、透明タイプのジュースより明らかに勝っているものとみられる。
 新規研究によると、混濁タイプ、すなわち清澄化していないリンゴジュースには、透明タイプのリンゴジュースの最大4倍のポリフェノールが含まれているという。
 研究を行ったブロツラフ農業大学(ポーランド)のJan Oszmianski博士らは、透明タイプのリンゴジュースの製造過程での清澄化処理によって、固形物およびポリフェノールを多く含むその他の化合物が除去される可能性があると述べている。
m3.com 2007-1-23
運動後の筋肉痛をカフェインが緩和 コーヒー飲用により運動後の筋肉痛が軽減する可能性
 スポーツ飲料のボトルにコーヒーを入れようと思う人はあまりいないが、運動前にコーヒーを2杯飲むと、その後の筋肉痛を50%近く減らすことができることが新規の研究で示唆された。
 研究者らは、コーヒーの筋肉痛緩和効果はアスピリンのような鎮痛薬で一般にみられる鎮痛効果より高いという。
 しかし、カフェインの疼痛緩和作用は、日頃からコーヒーやカフェイン飲料を飲んでいる人には表れないようである。研究者らによれば、カフェインが最も効きやすいのは普段カフェインを摂らない人や運動しない人のようである。
 また、摂り過ぎは神経過敏、動悸、睡眠障害などの副作用を起こすおそれがあるため、運動前にカフェインを摂る際は注意するよう呼びかけている。
m3.com 2007-1-24
タバコのニコチン濃度が増加
 タバコのニコチン濃度が1998年から2005年の間に11%増加したことが、ハーバード大学公衆衛生学部の解析で明らかにされた。
 ニコチンはタバコに含まれる習慣性成分で中心的なものである。
 このハーバード大学の解析によって、以前にマサチューセッツ州の保健当局から報告されていたことが確認された。
 タバコ業界関係者は、タバコ製品のニコチン含量が毎年不規則に変動することに触れながら、タバコのニコチン濃度を操作するような意図的な企みはなかったと述べている。
 しかし、このハーバード大学の研究の筆頭著者は、こうしたニコチン濃度の増加傾向は不規則な製品のばらつきでは説明がつかないと言う。
m3.com 2007-1-29
単剤化学療法で胃癌の生存率が改善
 日本発の最新の単剤化学療法で胃癌手術後の生存率に有効性が見られた。従来の補助療法よりも安価で毒性が少ない代替治療となる可能性がある。
 この製剤は大鵬薬品工業のS-1といい、胃癌の大規模な第3相試験において生存率に有効性が見られたことが、最近の消化器癌シンポジウム(GCS)で報告された。続く臨床試験が現在進行中であり、Sanofi-Aventis社が日本以外に向けての製品開発を進めている。
  Sanofi-Aventis社によると、この製品は単剤として経口摂取するが、構成する成分は3つあり、フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグであるテガフール、ジヒドロピリミジン脱水酵素阻害薬(PDPD)であるギメラシル(5-クロロ-2、4-ヒドロピリジン[CDHP])、消化器有害事象を『修正』するオテラシル(オキソン酸カリウム)からなる。この製品は胃癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、転移性乳癌、膵癌といった複数の癌の治療薬として日本ではすでに市販されている。
 この試験は2期または3期の胃癌で拡大手術を受けた患者1,059例をプラセボ群またはS-1群に無作為に割り付けて投与した。
 S-1群の3年経過時の全生存率は80.5%で、手術のみの群の70.1%よりも有意に高かった。
 また、この薬剤によって再発の相対リスクも有意に減少し、手術のみの群に比べて38%低かった。3年経過時での無再発生存率は、S-1群が72%で、手術のみの群が60%であった。
m3.com 2007-1-30
コレステロール判断基準、変更へ 「悪玉」に標的絞る 日本動脈硬化学会が指針
 日本動脈硬化学会は、心筋梗塞など動脈硬化性疾患の予防や治療の指標から従来の「総コレステロール」をはずし、代わりに「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールなどを判断基準とする新しい診療ガイドラインを策定した。
 「高コレステロール」の中でも、「善玉」のHDLコレステロールが多い場合にはLDLコレステロールは通常より低く、動脈硬化につながりにくい。日本人はこうしたケースが多く、総コレステロールを基準にすると、必要量以上の投薬が行われるなどの問題が分かってきた。このため、「誤解の元」となる総コレステロールを基準から外し、高コレステロール血症は「LDLコレステロール140ミリグラム以上」とした。
m3.com 2007-2-5
「延命治療」希望を文書化 高齢者の意思、事前に把握 国立長寿医療センター
 患者本人の意思が分からないことが多い高齢者の終末期医療をめぐって、国立長寿医療センターが、心臓マッサージや人工呼吸器装着など延命治療に対する希望の有無を、患者にあらかじめ文書化してもらう取り組みを始めることが分かった。
 こうした文書は「事前指示書」と呼ばれ米国などでは一般的だが、日本の医療機関での導入は現状ではごく一部。最先端医療の拠点施設である国の高度専門医療センターとしては初の取り組みで、軌道に乗れば事前指示書の普及に弾みがつきそうだ。
m3.com 2007-2-5
食道癌発生率の大きな増加は肥満が原因
 米国で食道癌の発生率が劇的に増加しているのは、肥満が「蔓延」と呼べるほどの割合に達していて、その結果、慢性の胃食道逆流症が増えているためであるということが、ミシガン大学の研究者により発表された。
 「食道癌の特徴が変化してきており、発生率が跳ねるように上昇している」と、研究班のリーダーであるMark Orringer博士は言う。「20年前では、食道癌はアルコールとタバコを過度に摂取する者の扁平上皮癌がほとんどを占めていて腺癌はわずかしかなかったが、今では食道癌の大半である85%が、胃食道逆流症と肥満蔓延からくる腺癌である」。
 肥満により胃食道逆流のリスクが増大し、食道の内面を覆う扁平上皮細胞が逆流した酸で徐々に剥がされていき、ついには侵された部分の粘膜がバレット粘膜で置き換わり始める。バレット粘膜は癌のリスクが顕著に大きいとOrringer博士は説明した。
m3.com 2007-2-6
高齢者の運動と膝関節炎のリスク 運動は膝損傷の原因にならないとの研究結果
 体重が重い高齢者でも、適度な運動で膝関節炎のリスクが増加することはないという調査結果が1,200例以上を評価した研究により示された。
 「実際、膝関節炎の発症に関して運動した人としなかった人に差はなかった」とボストン大学の内科学・疫学のDavid T. Felson教授は話す。
 9年間の調査の結果、運動によって膝関節炎のリスクが増減することはなかったという。
 Felson博士は被験者を3つの群に分けた。運動習慣のない人、週に6マイル(約9.6km)以上歩く人、週の歩行距離が約9.6km未満の人の3群である。
 2002年に追跡検査が開始され、再び膝のX線検査と膝症状に関する調査が行われた。体重は専門医がX線写真を読影して関節炎のエビデンスを調べる開始時と最終追跡検査時に記録された。
 被験者の体格指数(BMI)は平均27.4であった。18.5-25は標準体重、25-29.9は体重超過と判定される。
 運動しなかった人のうち7.5%が研究期間中に症候性膝関節炎を発症した。症候性膝関節炎の発生率は、週の歩行距離が約9.6km未満の人で4.9%、週に約9.6km以上歩いた人で6.4%であった。科学者にとってこれは重大な差ではないとFelson博士は話す。
m3.com 2007-2-7
1304人で過去最多更新 06年の新規エイズ報告
 国内で2006年に新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者数は914人、エイズ患者数は390人で計1304人に上るとの速報値を、厚生労働省エイズ動向委員会が発表した。今後まとめる確定値で数が増減する可能性もあるが、新規感染者、患者数とも過去最多となった。
 合計が年間1000人を超えたのは04年から3年連続。過去最多も更新し続けている。
 同委委員長の岩本愛吉東京大医科学研究所教授は「検査件数も伸びているが、感染そのものが増えていると考えられる。ほとんどが性感染で、HIVがますます身近にあることを理解して予防に努め、心配なことがあれば早く検査を受けてほしい」と話している。
m3.com 2007-2-8
「尊厳ある死は4割以下」 全国1500病院の53% がん患者の終末医療 厚労省研究班が調査
 厚生労働省研究班が調査した全国の約1500病院のうち、「『尊厳ある死』を迎えることができたがん患者は4割以下」と感じている病院が、53%に上ることが分かった。患者本人に余命を告知したのは約3割、人工呼吸器の装着など延命処置の希望を確認したのは半数強にとどまっていたことも判明した。
 研究班主任研究者の松島英介東京医歯大大学院助教授は「患者と家族、医師のコミュニケーションがとれ、最善の治療を探ることが『尊厳ある死』には不可欠。ソーシャルワーカーを配置するなど体制を整えるほか、医師の研修も重要だ」と指摘している。
m3.com 2007-2-16
運動は大腸がん予防に有効 男性で危険度が30%低下
 日常的に運動をしている男性は、あまりしない男性に比べ、大腸がんになる危険度が低いことが、厚生労働省研究班が発表した疫学調査で分かった。
 運動によるがん予防効果があらためて裏付けられた形。女性では今回、同様の傾向が確認できなかったが、研究班は「家事労働の影響を正しく評価できなかったためかもしれない。適度な運動は女性の健康増進にも役立つはずだ」としている。
 男性のうち運動量が多いグループほど大腸がんリスクが低くなることを確認。肉体労働や激しいスポーツを日常的にしている人は、ほとんど運動しない人に比べ、発症の危険度が約30%低下していた。大腸がんのうち結腸がんで特にこうした傾向が強く、1日3時間以上歩いたり立ったりする程度の運動でも一定の予防効果がみられた。
m3.com 2007-2-20
煙の立たないタバコに切り替えても解決にはならない
 紙巻きタバコから、かぎタバコまたは噛みタバコに切り替えるても、完全な禁煙による効果と同様の効果は得られない。
 かつて紙巻きタバコを吸っていて無煙タバコ製品に切り替えた人は、すべての種類のタバコの使用を止めた人よりも、肺癌および心臓疾患のようなタバコ関連疾患によって死亡する可能性が依然として高いことを、新規研究は示している。
 20年間の追跡調査期間の後、無煙タバコ製品に切り替えた喫煙者は、すべての原因を含めた死亡リスクが高く、肺癌、心臓疾患、および脳卒中のような、タバコ関連疾患によって死亡する可能性がはるかに高かった。
 例えば、無煙タバコに切り替えた人々はタバコを止めた人々よりも肺癌で死亡する可能性が46%高かった。
 さらに研究者らは、無煙タバコに切り替えた人々はタバコを止めた人々に比較して、口腔癌および咽頭癌で死亡する可能性が2倍以上高かったことを見出した。
 この知見は禁煙のために代替タバコ製品を奨励することを支持するエビデンスがないことを示した、過去の研究を裏付けている。
m3.com 2007-2-20
病院の勤務医9割が医師不足実感 妊娠時に異常、6割経験
 病院の勤務医の90・0%が「医師不足」と感じ、9割以上の人が「疲れを感じている」ことが、日本医療労働組合連合会のアンケート調査で分かった。
 時間外労働は月平均63・3時間で、過労死認定基準の目安である「月80時間」を超える人が31・2%に達していた。女性医師の97・9%は生理休暇を取れず、6割近くが妊娠時に「切迫流産」などの異常を経験していた。
 宿直の月平均は2・9回で、当直明けの勤務は「ある」人が74・5%。最長の連続勤務時間は平均32・3時間に上り、36-41時間が36・8%で最も多く、30時間以上が71%を占めた。出産経験のある女性医師のうち、妊娠の状況が「順調」だったのは42・6%しかなかった。
m3.com 2007-2-20
睡眠の量と質は血糖管理に影響 2 型糖尿病リスクと重症度の予測因子に
 ノースウェスタン大学内科学のKristen L. Knutson博士らは, 2 型糖尿病患者を対象とした横断研究で,睡眠時間と睡眠の質がHbA1cの有用な予測因子であることを明らかにした。これまでに複数の研究から睡眠時間の短縮と睡眠の質の低下は,血糖管理に悪影響を与えることが示唆されている。
 Knutson博士らは「睡眠不足と糖尿病リスクの増大を関連付ける既存のエビデンスと考え合わせると,本研究のデータから 2 型糖尿病の血糖管理を改善する介入法として,睡眠時間と睡眠の質の最適化を検証すべきであることが示唆される」と結論。また,この研究では睡眠時間と睡眠の質は 2 型糖尿病のリスクだけでなく,その重症度にも関連性が示された。
 平日に希望する睡眠時間と実際の睡眠時間の差として求めた主観的睡眠不足が 1 晩 3 時間であれば,予測されるHbA1cは中央値より1.1%高い。客観的な睡眠の質を評価するために用いられたPittsburgh Sleep Quality Indexが 5 ポイント増加すると,予測されるHbA1cは中央値より1.9%高いことがわかった。
 同博士らは「われわれの解析で,主観的睡眠不足の増加,または睡眠の質の低下は,年齢,性,体格指数(BMI),インスリン使用と主要合併症の存在で調整した後も,血糖管理の悪化と関連していた」と述べている。
Medical Tribune 2007-2-22
乳がん:早い初潮/出産経験なし/高身長…高率に 日本人で初の裏付け----厚労省調査
 研究班は、90年と93年に全国の40-69歳の女性約5万6000人にアンケートし、身長や体重、初潮の時期、出産回数などを聞いた。02年まで追跡調査すると、441人が乳がんにかかった。
 分析の結果、閉経前の女性の場合、初潮が14歳未満だと、16歳以降だった人に比べ乳がんになる率が約4倍になった。
 また、出産経験がない女性が乳がんになる率は、経験がある女性の1・9倍に達した。出産回数が増えるほどがんになる率が下がり、5回以上出産した人は、1回の人の4割弱だった。
 また身長160センチ以上の女性は、148センチ未満に比べ閉経前で約1・5倍、閉経後で約2・4倍、乳がんにかかる率が高かった。
 研究班によると、初潮や出産が乳がんに影響するのは、体内の女性ホルモンの状態が変化するのが理由とみられる。
m3.com 2007-2-22
ビタミンCは白内障を予防 食生活で発症に差
 食事を通じてビタミンCを多く取る人は、摂取量の少ない人に比べて老人性白内障にかかりにくいとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班が発表した。
 欧米でも同様の調査結果はあるが、日本を含むアジア人で予防効果が確かめられたのは初めて。研究班の吉田正雄杏林大助手は「普段の食事で果実や野菜をバランス良く多めに取るのが効果的」と話している。
 ビタミンCは、ミカン1個当たり30-35ミリグラム、イチゴに約9ミリグラム、レモンに約20ミリグラム含まれる。
 吉田助手は「多く取っても副作用はないが、たばこを1本吸うとレモン1個分以上が破壊されてしまうので要注意」と指摘している。
m3.com 2007-2-27
中年女性の脳卒中有病率は中年男性の2倍以上
 中年女性の脳卒中有病率は中年男性の2倍以上であるという新しい研究の結果が発表された。
 米国脳卒中協会の国際脳卒中会議2007で、カリフォルニア大学ロサンゼルス脳卒中センターの研究者らは、45-54歳の女性の脳卒中発症リスクは同年齢の男性の2.5倍であるという研究結果を発表した。
 「これは驚くべき知見である。中年女性の脳卒中リスクは中年男性と同等またはそれよりも低いというのがこれまでの常識であったが、そうでないということが判明した」と、治験責任医師であるAmytis Towfighi博士は語った。
 「医師は女性の心血管リスクを過小評価する傾向があり、そのために危険因子の治療に気を配っていないということが複数の研究によって示されている。この研究は、コレステロール、高血糖、高血圧の低下を目標として、中年期の早い時期から脳卒中の危険因子を積極的に治療する必要性を示している」と、同博士は述べた。
m3.com 2007-2-27
パイロットの飛行能力は、年齢ではなく熟練で決まる
 最新研究によると、年齢に起因する認知機能低下の影響は熟練に基づいた知識で相殺できると思われ、定年退職の義務の妥当性について疑問が呈される。
 非民間航空会社の40歳から69歳までのパイロット118名を対象にした3年間の縦断研究によると、米連邦航空局(FAA)の上級パイロットの資格を有するパイロットは、年齢に関係なく、経年的な能力の低下が少なかった。
 この知見は、熟練知識が有利であり、人はある年齢に達すると自動的に認知機能の低下が始まるという想定に基づいた『60歳定年』ルールが合わないことを明確に示している。
 固定年齢制の就業制限を見直し、適性に基づいた能力評価への移行を考えるべき時期にきている。忠実度の高いシミュレーションといった評価手段の有効性を確認し、実行すべきである。より優れたシミュレーション技術の開発が、航空業界だけでなく、公衆の安全を左右する医療などの専門職においても必要である。
m3.com 2007-3-1
大腸がんインスリンも関係 分泌多いと高リスク
 血液中のインスリンの値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸がんになりやすいとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班が発表した。
 こうした人は肥満や高インスリン血症、糖尿病に陥っている恐れがあり、ホルモンバランスが崩れることも加わって発がんを促している可能性があるという。
 女性ではこうした傾向はみられなかった。
m3.com 2007-3-1
生ニンニクとニンニクサプリメントには脂質への効果はない
 6カ月間の生ニンニクとニンニクサプリメントでは低比重リポ蛋白・高比重リポ蛋白コレステロールやトリグリセリドの値に影響がないことが最新研究で判った。
 安くて自然で、人によっては美味しいとさえ言う生ニンニクやニンニクサプリメントはコレステロール値を下げる方法として期待されていたが、6カ月間でコレステロール値を下げる力があるというエビデンスは最新研究では見つからなかった。
 「実際に効くはずだと思っていた」と、筆頭著者であるスタンフォード大学のChristopher D. Gardner医学博士が語った。「生ニンニクは効くだろうし、サプリメント類のどちらかは、もしかすると両方ともおそらく効くだろうと思っていた。皆の力になることが見つからなくて、我々はがっかりしている」。
m3.com 2007-3-6
CT定期診断、肺がんの死亡率低下に無効果?
 肺がんの早期発見が期待されるコンピューター断層撮影法(CT)による定期診断には、肺がんによる死亡率を低下させる効果がなく、不必要で有害な医療行為にもなりかねない――という調査結果を米メイヨー・クリニックなどの研究チームがまとめ発表した。
 研究チームは「より決定的なデータが得られるまで不必要なCTの診断を受けるべきでない」と提言している。
 調査は、肺がんのリスクの高い喫煙者と元喫煙者3246人を対象に、4年間、毎年1回CT診断を実施。この間、肺がんで亡くなったり、進行性の肺がんと診断された患者の割合を、過去のデータをもとに算出したCT診断を受けない場合と比較した。
 その結果、死亡率、進行がんに発展する率とも、診断を受けた場合と受けない場合に大差がないと判明。小さながん細胞を早期発見し、早く治療することで死亡率を引き下げるという、CT診断に本来期待される効果がほとんど得られないとわかった。
 研究チームは「CT診断で肺がんを早期発見することはできるが、治療しないと急速に悪化するがんは見逃している可能性がある」としている。
読売新聞 2007-3-8
がん細胞自滅させる酵素、東京医歯大チーム発見
 がん細胞を自滅に導く酵素を、吉田清嗣・東京医科歯科大助教授らの研究チームが発見した。酵素の働きを高められれば、抗がん剤の投与量を減らすことが期待できるという。
 DNAが紫外線や放射線などの影響で変異することで、細胞はがん化する。変異が大きいと、細胞中のp53遺伝子が働き、細胞はアポトーシスと呼ばれる自滅現象を起こす。
 p53は酵素の働きで活性化すると考えられていたが、酵素が何かは特定されていなかった。研究チームは、p53が活性化する時にDYRK2という酵素が働いていることを突き止めた。細胞のDNAを傷つけると、この酵素が細胞質から核の中に移動してアポトーシスが始まることを確認。酵素が働かないようにすると、アポトーシスが起きなくなった。
m3.com 2007-3-9
肥満のカップルで妊娠率低下のリスク
 妊娠を試みるカップルが男女ともに体重超過または肥満である場合、通常よりも妊娠が困難である可能性があることが新たな研究で示唆されている。
 デンマークの研究に参加した肥満のカップルでは、妊娠が成立するまでに1年以上を要する割合が正常体重のカップルと比較してほぼ3倍高かった。
 以前の研究で、体重が女性の妊娠率に影響を及ぼす可能性があることが示されたが、このデンマークの研究ではカップルの体重超過または肥満の影響がはじめて検討された。
m3.com 2007-3-13
不眠症を治療しない方が医療財源で高くつく
 米国人の10%が不眠症に苦しんでおり、不眠症を治療しないことによる費用は、治療費をはるかに上回るという新しい研究の結果が発表された。
 コーネル大学の研究者らは、典型的な不眠症患者では、最も高額な薬剤でも1年当たり200ドル未満であるが、治療開始前6カ月間の医療費はそれよりも924-1143ドル高いということを見出した。
 「我々の研究は、不眠症は無視するよりも治療する方がはるかに費用がかからないということを示唆している。未治療の不眠症は、個々人の健康、生活の質、業績に影響を及ぼし、医療サービスの利用を大幅に増加させる」と、コーネル大学のRonald Ozminkowski博士は述べた。
m3.com 2007-3-14
人工リンパ節で免疫力20倍 理研、マウスに移植
 人工的に作成したリンパ節を免疫力の低下したマウスに移植し、免疫機能を正常マウスの約20倍に高めることに理化学研究所が成功した。高い免疫力は1カ月以上持続した。免疫力の強化は、エイズなどの重症感染症やがんなどの治療に有効だという。
 研究チームは、たんぱく質の一種のコラーゲンを3ミリ角のスポンジ状にし、免疫反応に重要な2種類の細胞を染み込ませた。これを正常なマウスの体内に移植すると、リンパ節に類似の組織ができた。複数の免疫細胞が本物と同じ比率で存在し、血管も形成された。
 この人工リンパ節を、免疫不全症を起こしているマウスに移植したところ、異物に対する血中の抗体量が正常マウスの約20倍にも高まり、1カ月以上持続した。
m3.com 2007-3-16
不眠症治療薬によって脳機能が改善する可能性あり
 無酸素症による無動無言症の成人患者の脳機能が、不眠症治療薬のゾルピデム(商品名マイスリー)によって一時的に改善したことが、新規研究で報告された。
 48歳の女性が、首吊り自殺企図の数日後に無酸素性脳障害に関連する無動無言症になった。
 2年後に、患者は不眠症の治療のためにゾルピデムを処方された。患者はそれまで話すことも歩くこともできず、胃瘻造設を行って栄養を摂取していたが、本剤の10mg用量の投与後20分以内に、会話、歩行、および介助なしの食事ができるようになった。これらの効果は最大3時間持続した。
 この現象は再現性が高かったため、介護者は患者に毎日最大3錠まで投与したが、副作用による眠気はみられなかった。
m3.com 2007-3-16
大腸がん治療薬開発へ前進 拡大の仕組み解明
 京都大大学院の武藤誠教授(遺伝薬理学)のグループは、大腸がんが周囲の組織に広がる「浸潤」の仕組みを解明した。
 がん細胞は「CCL9」というホルモンを使って血液中にある極少量の免疫細胞を引き寄せた後、免疫細胞が出す酵素を使って正常細胞の中に潜り込んでいた。
 武藤教授は「CCL9の受容体を阻害する薬剤ができれば、免疫細胞ががんに引き寄せられるのを防げる。浸潤を抑制し、がんの拡大を防ぐ新治療法につながる可能性がある」と指摘している。
m3.com 2007-3-19
トランス脂肪と心疾患リスクには「強い」関連性
 動脈を閉塞させるトランス脂肪がやがて心疾患につながることを示す非常に強力なエビデンスが報告された。
 女性看護師を対象とした研究において、保存検体中の赤血球におけるトランス脂肪濃度が最高群の女性はトランス脂肪濃度が最低群の女性に比べて心疾患を発現するリスクが3倍であることが認められた。
 トランス脂肪は、液体の植物性油脂が水素化といわれる過程により固体に変換される際に生成される。水素化油脂または部分水素化油脂は食品の品質保持期限の延長や食感の改善のために使用されている。
 トランス脂肪が含まれている可能性が最も高いのは、揚げ物、植物性ショートニング、ハードマーガリン、クッキー、クラッカー、焼き菓子、ポテトチップである。
m3.com 2007-3-29