広葉樹(白)    

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2006年5月-2006年9月文献タイトル
コンピューターのキーボードは毎日消毒すべき
吸わない人は歯が丈夫 たばことの関係を初調査
電解水で感染力100分の1に 鳥インフルで三洋電機など
アフリカの土に新抗生物質 MRSAなど耐性菌に有効
ヒップガードで骨折を45%予防
年寄りの物忘れには血圧の検査を 血圧変動の増大によって認知機能障害のリスクが上昇する可能性あり
酵素の酸化で発症か アルツハイマー危険予測も
レモネードが腎臓結石に有効 腎臓結石の治療と予防のための最新の方法は、レモネードを飲むこと
ディーゼル粒子で子に病変 妊娠中の母吸入で
生鮮カットフルーツのビタミンは保たれている可能性 科学者らが果物をカットして栄養成分量を測定
感度1000倍のX線CT開発 医薬品開発にも貢献
脂肪肝が「やせる指令」
米国心臓協会は食事と生活習慣の勧告を改正 食事と生活習慣の新しい勧告に従えば米国人は心血管疾患の発現リスクをかなり減少させることができる
白血病再発防ぐ治療法を開発
認知症「支える会議」発足 東京都
発病前に異常プリオン検出 将来はBSE早期発見も
ウエスト基準に異論 メタボリック症候群
肝炎患者はコーヒーの積極的摂取を
胆汁酸調整で、やせ効果 高脂血症薬で排せつ促進
好きな音楽でホルモン安定 高齢者に効果、予防に利用
女性の喫煙者は男性の2倍も肺癌になりやすい
食物繊維少ないと危険 大腸がんリスク2・3倍
コショウを使って誤嚥予防 東北大チームが研究
日本で意識回復 米・カナダ滞在中に脳死判定の3人
コンピューターゲームで痴呆のスクリーニングができる可能性 ソリティアに似たコンピューターカードゲームの早期試験で良い結果
脳に腹時計あった 肥満予防に道
ワクチンで楽々、食べても太らない ラットで成功
たばこの煙、ダイオキシンと似た働き
歌で認知症を予防 性ホルモン量の適正効果
運動が神経保護作用を有する可能性あり
赤ちゃんの睡眠、「終日照明」で乱れ
昼寝は乳児の学習の助けになる
中皮腫細胞を攻撃 大阪の医師ら、ウイルス発見
スダチで血糖値抑制 搾りかす与えラット実験
メラニン色素阻害酵素を発見、しみ・そばかす防止に期待
ビタミンC不足、老化がCOPD発症の危険性高める
大腸がん発見率大幅向上 便でDNA検査
学習は午前中が効果的 北大研究者が貝で実験
薬剤耐性がんを大幅縮小 遺伝子抑え効き目回復 がんセンターが動物実験 新治療法開発に期待
がん発症メカニズムで新説「最初にたんぱく質損傷」
音楽レッスンは子供の脳の発達を促進 音楽を学んだ低年齢小児は記憶能力が高まる
脂肪ホルモンに抗がん作用 アディポネクチン
チキンから発がん物質 マクドナルドなどを提訴

コンピューターのキーボードは毎日消毒すべき
 コンピューターキーボードの消毒は有効であり、一般的には毎日消毒すべきであることを示す研究結果が報告された。一方で研究者らは、手洗いに関するガイドラインが守られていれば、毎日の消毒は必要ないことを示唆している。
 「コンピューターは医療現場のあらゆる場所で使われており、病原体となりうる微生物に汚染されていることが明らかと
なっている」とノースカロライナ大学保健医療システム学部のWilliam A. Rutala, PhD, MPHらは記している。「病原体がコンピューターのキーボードから患者に移る危険性については、現行の手洗いに関する衛生ガイドラインを遵守することで防止できるだろう。
 本研究は、微生物汚染の程度、様々な消毒薬の有効性、消毒薬がコンピューターキーボードの外見および機能に及ぼす影響を評価するために実施された」。
 「今回のデータから、微生物によるキーボードの汚染は一般的であり、消毒薬によって有効に汚染が除去できる可能性が示唆される」と著者らは記している。「キーボードは毎日、または目に見える汚れが生じた場合、または血液によって汚染された場合に消毒すべきである。他の研究者らは、患者ケア区域で使用されるコンピューターキーボードは定期的に消毒するよう推奨しているが、我々もこの意見には賛成である」。
m3.com 2006-5-8
吸わない人は歯が丈夫 たばことの関係を初調査
 40歳以上の男性で喫煙しない人は、習慣的に喫煙している人と比べ、自分の歯が20本以上ある人の割合が高い-。厚生労働省が8日公表した国民健康・栄養調査では、喫煙習慣と歯の状況の関係を初めて調べた。
 それによると、喫煙者の場合、歯が20本以上の人は40代で90・7%いるが、50代は71・5%と減少。70歳以上は22・2%しかいない。
 一方、非喫煙者は40代92・6%、50代88・1%と減少幅が小さく、70歳以上も32・3%は歯が20本以上あった。
 過去に喫煙習慣があったがやめた場合は、50代、60代、70歳以上の各年代とも、歯が20本以上ある人の割合が喫煙者より高く、非喫煙者より低かった。
 同様に50代以上の各年代で、「何でもかんで食べることができる」と回答した人の割合は非喫煙者が最も高く、喫煙をやめた人、喫煙している人の順に低下した。
m3.com 2006-5-9
電解水で感染力100分の1に 鳥インフルで三洋電機など
 水道水を電気分解して作る電解水を使い、空気中や綿棒に付着した鳥インフルエンザウイルスの感染力を100分の1に減少させたと、鳥取大学と三洋電機が発表した。
 鳥取大の大槻公一特任教授によると、ウイルスの表面構造の一部が電解水で破壊された可能性がある。三洋電機は電解水を利用してウイルスを除去する空気清浄器や加湿器、洗剤のいらない洗濯機を既に商品化しており「飛行機内や電車内といった公共の場での空気浄化に、この技術を生かしたい」としている。
m3.com 2006-5-16
アフリカの土に新抗生物質 MRSAなど耐性菌に有効
 既存の抗生物質がほとんど効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの多剤耐性菌にも効果を示す新しい抗生物質を、米医薬品大手メルクの研究チームが南アフリカの土中にすむ細菌の一種から発見した。
 病原菌の増殖に重要な脂質の合成を妨げるという、従来の抗生物質にはなかった新しい仕組みで働くため、実用化できれば治療の選択肢が大きく広がることになる。感染症の専門家は「画期的発見だ」と評価している。
 試験管内の実験では、MRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)など医療現場で問題になっている多くの耐性菌に有効だった一方で、人の体内にいる大腸菌には影響が少なかった。黄色ブドウ球菌を感染させたマウスの治療実験でも効果が確認されたほか、強い毒性はみられなかった。
m3.com 2006-5-18
ヒップガードで骨折を45%予防
 高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折は、ヒッププロテクター(ヒップガード)の装着で約45%が予防できる。大阪市立大学リウマチ外科学助教授の小池達也氏が、国内初の大規模無作為化比較試験の結果として発表した。
 海外では、既に同様の大規模試験が行われているが、装着率が低かったり、評価項目の設定が不十分であるなどの理由で結果がばらつき、ヒッププロテクターの骨折予防効果に対する評価は定まっていない。今回の試験では装着率も高く、プロテクターの有用性を実証した試験として、世界的な注目を集めそうだ。
 今回の試験では、国内76の高齢者施設が参加し、65歳以上の骨折危険因子を有する起立可能な女性689人を登録した。うち357人が約10カ月間、原則として24時間ヒップガードを装着し、装着していないコントロール群(332人)と比較した。期間中の大腿骨頸部骨折の発生数は合計38人で、うち11人がヒッププロテクター群、27人がコントロール群だった。この結果をCox比例ハザードモデルで解析したところ、プロテクターなしの場合を1とした場合のハザード比が0.54となったことから、「ヒッププロテクターで45%の骨折は防げると言っていい」(小池氏)。また解析の結果、大腿骨頸部骨折の有意な危険因子としては、やせ、認知症の程度、過去の転倒歴など、従来から知られているものが挙がった。
 試験では、ヒッププロテクターとして、帝人ファーマの「セーフヒップ」を使用している。
日経メディカル オンライン HOT NEWS 2006-5-18
年寄りの物忘れには血圧の検査を 血圧変動の増大によって認知機能障害のリスクが上昇する可能性あり
 お年寄りに時々みられる物忘れは、実際には血圧変動の増大によって生じたものである可能性を示す新規研究が、発表された。
 80歳以上の日本人101例を対象にした新規研究において、1日の間の血圧測定値における数値の差が大きいほど、認知機能障害のリスクも大きかった。
 加齢によって血圧変動のリスクが上昇することが知られているが、これらの変動がいかにして認知機能に影響するのか、正確には明らかになっていないと、研究を行った市立紀和診療所の坂倉健一博士は語っている。
 「認知機能障害の進行を防止するには、高齢者における大きな血圧変動を治療することが重要と思われる」と、坂倉博士は語る。同博士はそのような変動を治療するのが「難しい」ことを認めつつも、長時間作用型の降圧薬が非常に有用な可能性があると示唆する。これらの薬剤の効果は長時間持続する傾向があるため、一日中、血圧をコントロールできる可能性がある。
m3.com 2006-5-23
酵素の酸化で発症か アルツハイマー危険予測も
 脳の神経細胞で働く「PDI」という酵素の活性が酸化により低下すると、パーキンソン病やアルツハイマー病などの発症につながる可能性があることを北海道大の上原孝助教授(薬理学)らの研究チームが突き止めた。
 この酵素を調べれば発症の危険性が予測でき、予防や早期診断に役立つ可能性があるという。
 この酵素は細胞の小胞体にあり、タンパク質ができる際にひも状の分子を正しい形に折り畳んだり、壊れたタンパク質を修復したりする働きを持つことが知られている。
 研究チームは、正常な細胞と、酵素の一部が酸化した細胞を低酸素状態で比較。正常細胞は酵素が働いて死ななかったが、酸化した酵素は活性が低下し、細胞が死ぬことが分かった。
 一方、遺伝性でない孤発性のパーキンソン病やアルツハイマー病などで死亡した患者の脳を調べたところ、この酵素が酸化していた。研究チームは、酵素の活性低下で、細胞内に変性したタンパク質が蓄積するのを防げずに細胞が死に、発症につながるとみている。
 上原助教授は「体に悪いと言われる酸化ストレスは、PDIを標的の1つとしていることが分かった。なぜ酸化するか調べたい」と話している。
m3.com 2006-5-25
レモネードが腎臓結石に有効 腎臓結石の治療と予防のための最新の方法は、レモネードを飲むこと
 腎臓結石になりやすい体質の人は、レモネードを作って飲むと良い。
 新しい研究によると、レモネードは、腎臓結石ができやすい人々にとって新しい結石の形成を遅らせる、有効かつおいしい方法であるという。
 「われわれの腎臓結石センターでは、すべての患者にレモネード治療を行っている」と、ウィスコンシン大学泌尿器科の責任者であるSteven Y. Nakada教授は述べている。
 腎臓結石が形成されるのは、腎臓内の尿が結石形成塩の過飽和状態になった時、および尿中に十分な量の結石形成抑制物質が含まれていない時である。抑制物質のひとつがクエン酸塩である。
 結石ができやすい人々に、医師は通常、クエン酸カリウムを処方する。錠剤または液剤として服用可能である。しかしレモンの果汁には天然のクエン酸塩が豊富に含まれている。
 レモネードには、腎臓結石ができやすい人々にとって必要な、別の作用もある。レモネードが多量の尿の排泄を促す。
「腎臓結石を減らすには、1日の尿量が1.5?2Lになるよう、水分摂取量を増やす必要がある」とカリフォルニア大学のStoller博士は述べた。「陽光の満ちあふれるアトランタに住んでいるなら、霧深いサンフランシスコに住むよりも、多くの水分を摂取する必要がある」。
 レモネードの作り方は、2分の1カップの濃縮レモン果汁と7カップの水を混ぜる方法であった。味付けに人工甘味料を加えてもよい。砂糖入りのレモネードに含まれる余分のカロリーは、大多数の人には健康上、過剰であるので、砂糖の使用は避けるべきである。
m3.com 2006-5-30
ディーゼル粒子で子に病変 妊娠中の母吸入で
 ディーゼル排ガスに含まれる粒子を妊娠中に吸わせたマウスから生まれた子の小脳に、特定の細胞が死ぬなどの病変が多く起こっていることを、東京理科大の武田健教授らのグループが突き止めた。
 グループは「人でも妊娠中にディーゼル粒子を吸うと、胎児の脳や神経に悪影響が出る恐れがある」と警告している。
 妊娠中のマウス20匹を使って実験。10匹に一立方メートル当たり0.3ミリグラムのディーゼル粒子を含む空気を1日12時間、2週間続けて吸入させる一方、残る10匹にはきれいな空気を吸わせ、生まれた子の脳を顕微鏡で比較した。
 粒子を吸わせたマウスの子は、脳の血管などに粒子が沈着。プルキンエ細胞という小脳細胞の一種に細胞死(アポトーシス)が多数発生し、きれいな空気を吸ったマウスの子に比べ、プルキンエ細胞の数が目立って少なかった。
 グループは「今回見つかったのと非常によく似た病変が、自閉症と診断された人の脳で報告されている」と指摘、関連を調べている。
m3.com 2006-6-5
生鮮カットフルーツのビタミンは保たれている可能性 科学者らが果物をカットして栄養成分量を測定
 新規の研究によれば、生鮮カットフルーツを冷蔵庫で数日間保存した場合、多くの栄養成分は失われない可能性があるという。
 研究者らはナイフを研ぎ、マンゴー、パイナップル、キウイ、イチゴ、スイカ、カンタロープ・メロンを用意した。
 本研究の目的は、密閉されていない透明のプラスチック容器に生鮮カットフルーツを入れ、華氏41度(約5℃)の冷蔵庫で保存した場合、ビタミンC、カロチノイド、フェノール等の抗酸化物質が失われるかどうかを検討することであった。
 重要な知見として、「一般に、生鮮カットフルーツの場合、栄養成分が顕著に消失する以前に、外見上の腐敗が認められる」と研究者らは記している。
m3.com 2006-6-7
感度1000倍のX線CT開発 医薬品開発にも貢献
 筑波大は12日、日立製作所や高エネルギー加速器研究機構と共同で、従来の装置に比べて1000倍の感度を持ち、造影剤も要らないエックス線CT装置を開発したと発表した。
 水素や炭素、窒素などからなる生体組織の観察に適しており、病気の研究や医薬品開発などへの応用が期待される。
 筑波大などは、透過率の変化を基に組織を画像化する従来のCTと違い、物質を透過するエックス線の進み方の変化から組織を画像化する技術を応用。縦6センチ、横3センチの視野で、これまでならば造影物資を使わなければならなかった実験動物の生体組織を、精密に3次元画像化することに成功した。高感度であるため被ばく量も従来の約1000分の1という。
 実験では、生きたネズミの表皮に人工的に作った大腸がんに抗がん剤を投与してできた、がんの壊死(えし)状態を3次元的に観察したり、アルツハイマー病になったネズミの脳に斑点状に蓄積した原因物質の様子を観察したりすることができた。
m3.com 2006-6-13
脂肪肝が「やせる指令」
 脂肪肝になると、肝臓が神経と脳を通じて指令を出し、全身の脂肪組織を燃焼させ、やせさせることを、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授の研究チームがマウスの実験で発見した。
 脂肪肝は、肥満や高血糖、高血圧、高脂血症が重なるメタボリック症候群の人によく見られる。片桐教授は「脂肪肝は、肥満になるのにブレーキをかけ、体重を調節している。ヒトにも同様の機構があると考えられ、指令を促進する物質を開発できれば、肥満や糖尿病の治療薬になる」と話している。
m3.com 2006-6-16
米国心臓協会は食事と生活習慣の勧告を改正 食事と生活習慣の新しい勧告に従えば米国人は心血管疾患の発現リスクをかなり減少させることができる
 米国心臓協会は心血管疾患の予防を目的とした食事と生活習慣の勧告を改正し発表した。2006年の勧告は次の通りである。

 ・総合的に健康的な食事を摂取する。
 ・健康的な体重を維持し、燃焼カロリーとバランスのとれた摂取カロリーを保つ。
 ・通常摂取する一食の食物のカロリー含有量および1日のカロリー必要量への意識を高める。
 ・毎日、最低30分間の身体活動という目標を設定する。
 ・さまざまな果物と野菜(果汁以外)、特に緑黄色野菜(ホウレンソウ、ニンジン、モモ、ベリー類)の豊富な食事を摂取する。
 ・飽和脂肪またはトランス脂肪、食塩、砂糖をあまり添加せずに果物や野菜を調理する。
 ・全粒かつ高繊維質の食物を選択する。
 ・少なくとも週2回は魚、特にω-3脂肪酸が比較的多い魚(サケ、マス、ニシンなど)を2皿摂取する。
 ・小児および妊婦は米食品医薬品局(FDA)の水銀汚染魚(サメ、メカジキ、ヨコシマサワラ、アマダイ)を避けるためのガイドラインに従う必要がある。
 ・赤身肉、野菜による代替食品、無脂肪(脱脂)および低脂肪(脂肪1%)の乳製品を選択することにより飽和脂肪、トランス脂肪、コレステロールの摂取量を制限したり、半硬化油の摂取を最小限に抑える。
 ・砂糖を添加した飲料および食品の摂取量を最小限に抑える。
 ・1日のナトリウム摂取量が2,300mgを超えないこと。低塩または無塩の食物を選択または調理する。中年以降の成人、アフリカ系アメリカ人、高血圧を有する人は、1日のナトリウム摂取量が1,500mgを超えないこと。
 ・アルコール摂取量を制限し、女性は1日のアルコール摂取量が1杯を超えないこと、男性は2杯を超えないこと(1杯=ビール12オンス[約340g]、ワイン4オンス[約113g]、80度蒸留酒1.5オンス[約43g]、100度アルコール1オンス[約28.5g])。[訳注:1オンス=約28.35g]
 ・外食時には、一食の分量を意識するとともに、野菜や果物を選択し、また飽和脂肪、トランス脂肪、砂糖を加えて調理した食品を避ける。
m3.com 2006-6-26
白血病再発防ぐ治療法を開発
 東京理科大薬学部と札幌医科大の研究グループが、血液のがんである白血病の再発を防ぐ治療法を開発した。抗がん剤と一緒にペプチド(アミノ酸の集合体)を投与し、骨髄に付着しているがん細胞をはがして抗がん剤の効果を発揮させることで再発を防ぐ。マウスを使った実験では大幅に生存率が改善しており、今後は早期の臨床試験を目指す。
 動物実験でマウス6匹ずつの3グループに分けて人間の白血病細胞を注射したところ、抗がん剤とペプチドを併用したマウスは62日目でがん細胞が消滅したことを確認した。何も投与しないマウスは平均30日、抗がん剤だけを投与したマウスは同40日で死んだ。
毎日新聞社 2006-7-2
認知症「支える会議」発足 東京都
 認知症高齢者への理解を深め、当事者や介護する家族を地域全体で支援するまちづくりに向け、都は「認知症高齢者を地域で支える東京会議」を発足させる。会議には医療・介護や行政の専門家だけでなく、商工・金融業界など日常生活にかかわりが深い企業の関係者も参加。
 都在宅支援課によると、都内の認知症高齢者は65歳以上人口の約1割に当たる23万人に上り、その約7割は介護保険サービスなど何らかの支援が必要とされる。しかし、親や配偶者の認知症を周囲に打ち明けられず、結果的に介護や悩みを家族だけで抱え込んでしまうケースも少なくないという。
 認知症は、団塊の世代が高齢者の仲間入りをする今後10年間はさらに増大すると予想され、国は今年から認知症への正しい知識を普及する10カ年キャンペーンを開始している。
m3.com 2006-7-6
発病前に異常プリオン検出 将来はBSE早期発見も
 牛海綿状脳症(BSE)や人間のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を起こす異常プリオンタンパク質を、発病前の感染初期にハムスターの血液から検出することに成功したと、米テキサス大が発表した。
 研究が進めば、BSE感染牛の早期発見につながる可能性がある。輸血や臓器移植によるCJDの拡大防止や治療の可能性を探るのにも役立つという。
 異常プリオンは、接触した正常プリオンの立体構造を変えて異常プリオンにすることで増える。研究チームのクローディオ・ソト教授らはこの性質を利用、ハムスターの血液に正常プリオンを加えて培養を繰り返す手法で、血中のごく微量の異常プリオンを検出可能な量まで増幅させることに成功した。
m3.com 2006-7-7
ウエスト基準に異論 メタボリック症候群
 心筋梗塞や脳卒中になる危険が高いとされる「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の診断基準の一つ、ウエストサイズに異論が続出している。国内の基準は「男性85センチ以上、女性90センチ以上」だが、「女性は80センチ以上とするのが適当」との研究成果が相次いで発表されているのだ。男性は逆に、基準をゆるめる方向につながる研究も出ている。「最近おなかが気になって」という人にとって、注目の議論になりそうだ。
 東京大の研究チームは、00-01年に新潟県新発田市で集めた692人のデータを解析。血圧、血糖値など二つ以上の検査値が基準を上回ったり、高血圧などの病歴を持つ人をほぼ網羅するウエストは、「男性85センチ以上、女性80センチ以上」だった。九州大の研究チームが、福岡県久山町の2452人分の健康データを解析したものでも、女性は80センチを境に、心筋梗塞などの発症リスクが1・6倍に高まり、現在の基準の90センチでは発症リスクは変わらなかった。
 さらに札幌医大が患者420人を調べたところ、血圧などの数値が二つ以上高い人の割合は男性83・7センチ、女性80・8センチで急増。一方、男性の基準について、九州大は、現在の診断基準より5センチ大きい90センチを境に、心血管病の発症リスクが高くなる研究をまとめている。
m3.com 2006-7-11
肝炎患者はコーヒーの積極的摂取を
 ハノーファー医科大学消化器科のHeiner Wedemeyer講師は「ウイルス性肝炎の場合,薬剤療法を実施するだけでなく,共変量を改善する補助因子を減らすこと,なかでも脂肪肝を回避することが重要である。それには禁酒と減量が欠かせないが,コーヒーについてはむしろ積極的に摂取すべきである」と発表した。
 同講師によると,コーヒーの摂取は用量依存性に肝検査値の低下および慢性肝疾患発症率の低減と結び付いており,ある研究では 1 日 2 杯以上の摂取でこうした効果が確認されたという。
 さらにコーヒーは,胆石リスクを50%,糖尿病リスクを40%低下させ,アルツハイマー病の発症リスクも抑制するというデータが得られている。
 また,結腸癌,卵巣癌,乳癌,肝癌の発症リスクも低下させ,肝癌リスクの低下に関しては数十万人を対象とした試験で既に証明されているという。
 コーヒー多飲により膵癌リスクが上昇するとの見解については,最近,これを否定する研究報告が約10件寄せられている。
Medical Tribune 2006-7-13
胆汁酸調整で、やせ効果 高脂血症薬で排せつ促進
 肝臓から腸に分泌される胆汁に含まれる胆汁酸の排せつを高脂血症薬で促進すると、エネルギー消費が活発になり、血糖値低下や脂肪燃焼に効果があるとの研究結果を、フランスのルイ・パスツール大の渡辺光博研究員らが発表した。
 渡辺さんらは、胆汁酸に脂肪の消化、吸収を助けるだけでなく、燃焼を促す働きもあることを確認した。一方、腸内細菌により胆汁酸は、新たな胆汁酸の合成を妨げる性質に変化して肝臓に戻ることが分かっていることから、腸内の胆汁酸を吸着して排せつする作用のある高脂血症薬を投与することで、肝臓での新たな胆汁酸合成が活発になると推測した。
 マウスの実験では、体内の胆汁酸の組成が変化しエネルギー消費が活発になった。肥満や糖尿病の日本人男女計12人に24週間投与した試験でも、内臓脂肪が平均約25%減少、空腹時血糖値は同29%低下したという。
 渡辺さんは「大きな副作用はなかった。糖尿病や肥満の治療薬として使えるようになるのではないか」と話している。
m3.com 2006-7-14
好きな音楽でホルモン安定 高齢者に効果、予防に利用
 好きな音楽を歌ったり聴いたりすると、高齢者の性ホルモンの量が安定する効果があるとの研究結果を福井一奈良教育大教授らがまとめた。
 性ホルモンの減少は、認知機能の低下やアルツハイマー病の発病率が高まる要因とされており、福井教授らは予防につながる音楽療法を考案したいとしている。
 事前に参加者の好きな曲を調べ、「みかんの花咲く丘」「憧れのハワイ航路」など昔の流行歌を合唱したり、生演奏を鑑賞。童謡に合わせてお手玉を使って体を動かしたりし、月1回、2時間活動。唾液(だえき)中の男性ホルモンと女性ホルモンの量の変化を調べた。
 服用している薬などの影響が少ない64-83歳の女性36人では、ホルモン量が多い人は減少、少ない人は逆に増加し、一定量に収束する傾向があった。心理テストでも、抑うつや不安が緩和していた。
 男性は4人と少なかったが同様の傾向だった。若者でも同様の効果が期待できるという。
m3.com 2006-7-14
女性の喫煙者は男性の2倍も肺癌になりやすい
 17,000名近くの喫煙者の追跡調査から、女性が男性の2倍も肺癌になりやすいことが明らかになり、女性はタバコに含まれる発癌物質に対する感受性が高いことが示唆された。しかしもう一方で、女性は肺癌が発現した後の生存率が男性より高いという、以前の報告を確認する知見も明らかになった。
 「この知見から、女性は喫煙量が男性と同じでも肺癌になるリスクが高いことを、若い女性に教えることが重要だ」と、筆頭研究者であるニューヨークプレスビテリアン病院のClaudia Henschke博士は述べた。「タバコの煙の害をより受けやすいことを踏まえて、女性は男性よりも早くから肺癌のスクリーニングを受けることが必要だろう」と博士は述べ、女性がスクリーニングを受けるべき閾値を男性よりも約50(箱・年)低く設定すべきだと、示唆している。
m3.com 2006-7-14
食物繊維少ないと危険 大腸がんリスク2・3倍
 穀物や野菜などに含まれる食物繊維は、1日10グラムを超えて取っても大腸がんの予防効果に差は出ないが、摂取量が少ないと発症の危険性は2.3倍に高まるとの調査結果を、厚生労働省研究班が発表した。
 同様の結果は欧米でも出ており、適度な摂取が健康維持に大切との見方を裏付けた。厚労省は生活習慣病予防などの観点から大人で15-20グラムの目標を掲げているが、大腸がん予防だけなら10グラムで足りるかもしれないことを示した形だ。
 大谷助手によると、食物100グラム中の食物繊維は、ご飯で0.22グラム、みそ汁0.32グラム、納豆6.7グラム、ニンジン2.7グラム、キャベツ1.8グラム、リンゴ1.5グラム。
m3.com 2006-7-20
コショウを使って誤嚥予防 東北大チームが研究
 高齢者に毎食前、コショウのにおいをかいでもらうだけで、誤って食べ物を気管や肺に吸い込む「誤嚥(ごえん)」の予防が期待できるかも知れない。東北大大学院老年病態学チームが、嚥下(えんげ=飲み込み)反射が改善される効果を確かめた。肺炎の原因になる誤嚥は、高齢者には命にかかわる問題だ。
 のどの奥、食道と気管が分かれる部分の働きが衰えた高齢者では、食べ物やつばの誤嚥が増える。健康ならせき込んで排出できるが、そのまま吸い込み肺炎を起こす高齢者も多く、死亡の大きな原因となっている。
 東北大の海老原孝枝医師、荒井啓行教授らは、宮城県内の老人保健施設で70〜98歳(平均約85歳)の男女入所者105人を3グループに分け、それぞれ1カ月間、毎食事前に黒コショウのにおいのする精油、ラベンダー精油、水のにおいをかいでもらった。
 食べ物を口に入れてから、嚥下反射が起きるまでの時間を調べたところ、実験前は平均15〜17秒だったのが、黒コショウ精油のグループだけが大幅に改善され平均約4秒になった。嚥下運動の回数も増えた。他の2グループでは、大きな変化はなかった。
朝日新聞 2006-7-24
日本で意識回復 米・カナダ滞在中に脳死判定の3人
 米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。
 報告によると、02-05年度に、旅行や仕事で米国、カナダに滞在中の旅行保険契約者9人が脳血管障害で入院。主治医は家族や損保の現地スタッフに「脳死」と説明した。うち3人の家族は「治療中止は納得できない」などと訴え、チャーター機で帰国。日本で治療を受け、意識が回復した。搬送費用の約2000万円は保険で支払われた。残り6人は、チャーター機手配に必要な額の保険に加入していなかったことなどから帰国を断念。現地で死亡したという。
 日本医科大の横田裕行助教授は「海外の基準でも脳死なら意識は回復しない。米やカナダなどの一般医療現場では、回復は難しいなどの意味で脳死を使うことがある」と言う。
m3.com 2006-7-26
コンピューターゲームで痴呆のスクリーニングができる可能性 ソリティアに似たコンピューターカードゲームの早期試験で良い結果
 軽度の認知障害の高齢者を同定するのに、コンピューターカードゲームが役立つ可能性がある。
 オレゴン健康科学大学のJimison博士とPavel博士はさらに、ソリティアに似たFreeCellというコンピューターカードゲームにモニタリングプログラムを追加した。研究対象となったのは、コンピューターの使用経験があり過去3週間にFreeCellで頻繁に遊んでいた9名の高齢者(平均年齢:80歳)であった。
 まず、Jimison博士とPavel博士は高齢者に一連のメンタルスキルテストを行った。それらの検査によって、3名の高齢者において軽度の認知障害が同定された。
 次に、研究者らは、被験者にFreeCellゲームを数回やるように要請した。モニタリングプログラムによって、被験者らがどのくらい上手にプレイできたかを示した。
 「上手にゲームをするにはかなりの計画性が必要であり、計画性は、神経心理学者が臨床の場で検査しようとする指標のひとつである」と、Jimison博士はオレゴン健康科学大学のニュースリリースで述べている。
 Jimison博士とPavel博士は、ゲームをかなり難しいレベルに設定した。「我々は、やる気がなくならないようなレベルの難易度を維持するよう努めている」とJimison博士は述べている。「ちょうど苦労し始めるような程度まで挑戦してもらいたいと考えている。易しすぎたり難しすぎたりするのは好ましくない」。
m3.com 2006-7-26
脳に腹時計あった 肥満予防に道
 おなかのすき方でだいたいの時刻が予想できる「腹時計」のメカニズムを、米テキサス大の柳沢正史教授と東京医科歯科大の三枝理博助手らがマウスを使った実験で明らかにした。脳内の時計遺伝子が餌の時間を記憶し、餌を食べるよう指令を出す体内時計。腹時計と食欲の関係を解明すれば、肥満予防策を編み出す一歩になるという。
 マウスは夜行性で、夜に動き回って餌を食べるが、昼にだけ餌を与えると昼夜逆転する。柳沢教授らはこの時のマウスの脳を分析した結果、食欲に関係するとされる脳の背内側核(はいないそくかく)で、時計遺伝子が餌の時間に合わせて24時間周期で動いていることを突き止めた。
 肥満の人は1日のカロリーの半分以上を夜間に食べる「夜型」が、正常人の40倍多いとの報告がある。柳沢教授は「腹時計と主時計のせめぎ合いから解明してゆけば、肥満の予防策につながるだろう」と話している。
m3.com 2006-8-1
ワクチンで楽々、食べても太らない ラットで成功
 ワクチンで特定のホルモンの働きを弱め、体重の増加を抑える実験にラットで成功したと、米スクリプス研究所と大阪市立大のチームが発表した。人間で同様の効果が得られるかは未知数だが、チームは「肥満解決への一つの道になるかも」と話している。
 このホルモンは、食欲促進や脂肪蓄積などの働きがある「グレリン」。ワクチンでグレリンに対する抗体が増えたラットは、食べる量に変化はなかったのに、1日当たりの体重増加はワクチンなしのラットの3分の1以下で、脂肪蓄積も少なかった。体のエネルギー消費量が増えたらしい。
毎日新聞社 2006-8-2
たばこの煙、ダイオキシンと似た働き
 たばこ1本分の煙が、細胞内でダイオキシンと似た働きをし、1日の摂取基準を約200倍上回るダイオキシンが細胞に加わった場合と同様の作用を持つことを、山梨大大学院生の河西あゆみさんや、北村正敬教授らが突き止めた。
 タール10ミリグラムを含む平均的なたばこの場合、活性化の程度は、ダイオキシン3万9300ピコグラム(ピコは1兆分の1)が受容体と結びついたのに相当した。体重60キロの人なら、国が定めるダイオキシンの1日耐容摂取量(体重1キロ当たり4ピコグラム)の164倍に当たる。タールの多いたばこでは200倍以上に達した。
 さらに、同受容体の活性化で特殊なたんぱく質を作るマウスを作成。主流煙を直接吸わせる実験や、受動喫煙と同じ状態にする実験をした。いずれも、活性化が確認された。
m3.com 2006-8-5
歌で認知症を予防 性ホルモン量の適正効果
 奈良教育大の福井一教授らは、歌を歌うなどの音楽療法に、性ホルモン量を適正にする効果があることを実証したと発表した。性ホルモンは認知症やアルツハイマー病との関係が指摘されており、予防メカニズムの解明が期待される。
 05年6-10月、64-83歳の健康な女性36人に月1回(1時間45分)、季節の歌や思い出の歌などの歌唱と鑑賞、わらべ歌に合わせたお手玉遊びをさせる療法を実施。各回の前後で、だ液中の男性ホルモン・テストステロンと女性ホルモン・エストロゲンの量を測定した。心理テストで心の状態も測った。
 福井教授は「認知症などの原因は、加齢に伴う性ホルモン減少と指摘されている。音楽が脳の保護や機能改善に役立つ可能性があり、今後、どういった音楽療法がどういう効果を持つのかのモデルを作りたい」と話している。
m3.com 2006-8-8
運動が神経保護作用を有する可能性あり
 運動は加齢に伴う脳の構造・機能維持に役立ち、アルツハイマー病およびその他の認知症の発症を遅延させる可能性があるという論評が発表された。
 「レトロスペクティブ(後ろ向き)およびプロスペクティブ(前向き)臨床試験のほか、動物研究からさまざまな証拠が得られている。いずれも、運動が初老期から老年期にかけて有益な作用を有することを示唆している」と、発表者であるイリノイ大学Arthur F. Kramer博士は語った。
 「運動が示す神経保護作用は、より高次の認知を可能にし、アルツハイマー病などさまざまな病型の認知症の発症を遅延させるとしたプロスペクティブ疫学研究が、いくつも報告されている」と、Kramer博士は続けた。
 「脳の構造・機能に対して好ましい作用も有するということが、磁気共鳴画像法(MRI)や機能的MRI、事象関連電位(ERP)を用いた臨床研究のみならず、動物研究の文献で報告されている。特に、動物研究の文献は多く、活動性毛細血管床の増殖や新たな樹状突起連結のほか、海馬など特定領域における新生ニューロンも示されている」。
m3.com 2006-8-17
赤ちゃんの睡眠、「終日照明」で乱れ
 昼夜連続して照明のついた環境が新生児や乳幼児の脳の活動に影響を与え、「睡眠覚せいリズム」を乱す可能性があることを東北大病院の研究グループが突き止めた。夜間照明が乳幼児の成長(体重増加)に影響を与えることは別の研究で分かっていたが、脳科学の分野でもメカニズムの一部が明らかになった。
 太田医師らは生後3週間のマウスに人工照明を当て(1)昼明るく夜暗い環境(2)一日中明るい環境----の2グループを飼育。睡眠や覚せいなど「生物時計」の機能を持つ脳細胞の活動を調べたところ、(1)のマウスは脳細胞が1日に1回ほぼ同じタイミングで活動するのに対し、(2)はタイミングがばらばらになった。(2)から(1)の環境に戻すと再び正常なリズムになり、睡眠覚せいリズムは矯正可能なことも分かった。
 さらに、大人のマウスと生後間もないマウスを一日中明るい環境で飼育したところ、脳の活動の乱れは大人の場合5カ月間で10%だったのに対し、子供は3週間で100%に達し、大人に比べ影響を受けやすかった。太田医師は「睡眠覚せいリズムの乱れは乳幼児の成長に影響を与える可能性がある。病院で早産児を保育器に入れたり、家庭で乳幼児を寝かせる際には昼夜区別のある環境が望ましい」と話している。
m3.com 2006-8-22
昼寝は乳児の学習の助けになる
 十分な昼寝は乳児をぐずらないようにするだけでなく、学習の助けにもなる可能性がある。
 昼寝は、乳児が目覚めている間に得た情報を処理および記憶できるようにすることによって、学習過程において重要な役割を果たすと、新規研究は示唆している。
 研究者らは、人工言語によるフレーズを聞いた後に昼寝をした生後15カ月の乳児は、昼寝の時間をとらなかった乳児よりも学習した情報を後で認識し利用できる可能性が高かったことを見出した。
m3.com 2006-8-23
中皮腫細胞を攻撃 大阪の医師ら、ウイルス発見
 アスベスト(石綿)関連がんの中皮腫の細胞を破壊するウイルスを、大阪府立成人病センターの高橋克仁医師と山村倫子・主任研究員らのグループが発見した。このウイルスは、中皮腫に集中して現れるたんぱく質を目印に攻撃するよう遺伝子改変されており、マウスを使った実験で成功した。
 高橋医師らは、子宮や消化管など意識して動かせない筋肉「平滑筋」にできる「平滑筋肉腫」という難病の研究を続けてきた。その過程で、平滑筋にだけ現れるたんぱく質「カルポニン」が中皮腫にも同じように存在することを突き止めた。
 研究グループは、平滑筋肉腫を縮小させる効果のあるウイルスを、マウスに移植したヒトの「肉腫型」中皮腫細胞に投与。このウイルスは、カルポニンを生み出しながら分裂、増殖する肉腫だけを標的にするよう遺伝子が改変されている。
 実験の結果、細胞が破壊され、腫瘍は1割程度にまで小さくなった。ウイルスは細胞内で増殖し、さらに別の細胞を攻撃するが、カルポニンのない正常な細胞は攻撃しない。また、治療が終われば、別の薬でウイルスを殺すことができる。
m3.com 2006-8-28
スダチで血糖値抑制 搾りかす与えラット実験
 スダチの皮と果肉には血糖値の上昇を抑える効果があるというラットの実験結果を高石喜久徳島大教授(生薬学)らが発表した。
 食品加工で大量に出る搾りかすの新しい活用方法につながるもので、高石教授は「人でも効果があるかを調べ、健康食品に使うことを考えたい」と話している。
 高石教授らは、糖尿病になりやすい体質のラットに生後約40日から、餌とともに搾りかすの粉末を水に溶かして与えた。すると血糖値はほとんど変化しなかった。与えないラットは血糖値が最大で約2.5倍に上昇した。体重や血圧、脈拍に差はなく、副作用はないと考えられるという。
 インスリン濃度などに違いはなく、高石教授は「なぜ血糖値が抑制されるのかは、まだ分からない」としている。
m3.com 2006-8-31
メラニン色素阻害酵素を発見、しみ・そばかす防止に期待
 皮膚や髪を作る細胞にメラニン色素が輸送されるのを妨げる酵素を、理化学研究所と東北大の共同研究グループが見つけた。メラニン色素は紫外線で遺伝子が傷つくのを防ぐが、しみやそばかすの原因にもなる。輸送を妨害して肌の美白を保ったり、促進して白髪を減らす方法の開発に役立ちそうだ。
 メラニン色素は、皮膚に紫外線が当たると表皮の内側の細胞で合成され、膜に包まれた袋に蓄積される。この袋が、皮膚や髪を作る別の細胞に輸送されると肌や髪が黒くなる。
 研究グループの福田光則・東北大教授らは2年前、「Rab27A」と呼ばれるたんぱく質が輸送に不可欠なことを解明した。「Rab27A」は、働いて輸送を促す場合と働きを失う場合を繰り返し、輸送を正常に保っていると考えられたが、仕組みは分からなかった。
 グループは今回、たんぱく質の働きを失わせる可能性があると考えられた酵素40種類を、マウスの培養細胞に1種類ずつ加えて実験した。
 すると、ある一つの酵素を加えた場合には、メラニン入りの袋が細胞の中心部から広がらなくなった。袋は通常、中心付近で作られて周辺に輸送されるが、酵素が輸送を妨げたとみられる。グループは酵素を「Rab27A-GAP」と名付けた。
毎日新聞社 2006-9-15
ビタミンC不足、老化がCOPD発症の危険性高める
 喫煙が主因とされる肺の病気「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」は、ビタミンCの不足や老化によって発症の危険性が高まることを、東京都老人研究所などがマウスを使った実験で突き止めた。世界保健機関(WHO)によると、COPDは世界の死因の第4位で、日本にも約500万人の患者がいると推定されている。
 研究チームは、遺伝子操作でビタミンCを体内で合成できなくしたマウスを作成。微量のビタミンCしか含まない餌で飼育した。すると、生後3カ月ごろから肺胞の肥大が進み始め、老化した肺と同様の現象を示した。
 また、遺伝子操作したマウスに、生後3カ月目からたばこの煙を吸わせると、肺組織の破壊が急激に進み、8週間後にはCOPDになった。
 一方、同月齢の正常なマウスは、たばこの煙を吸わせても、吸わせなくても、肺の組織にほとんど変化はなかった。
m3.com 2006-9-18
大腸がん発見率大幅向上 便でDNA検査
 大腸などの消化管の壁からはがれ、便に含まれる細胞のDNAを調べることで、がんを効率よく発見する方法を松原長秀岡山大助手らが開発した。
 松原助手によると、米国の統計では、現在の便潜血反応検査で見つかる大腸がんは最大2割程度。この方法は8割程度になると期待できるという。
 松原助手は「ごくわずかの便があればよく、胃がんなども見つけることができる。大腸がんは早期に発見できれば、ほとんどは治すことができる」と話している。1-2年で実用的な検査ができるようにし、5年程度で簡単な検査キットにしたいという。
m3.com 2006-9-19
学習は午前中が効果的 北大研究者が貝で実験
 北海道大の伊藤悦朗客員研究員らが貝を使って学習の実験をした結果、記憶形成を妨げるタンパク質は午後よりも午前中の方が少ないことが分かった。
 伊藤研究員は「このタンパク質は人間にもある。午前中の学習は記憶形成を妨げるタンパク質を減らすのに効果が期待できる」と話している。
 実験では脳の神経細胞数が人間に比べ数十万分の1と単純で解析しやすいヨーロッパモノアラガイを使用。記憶形成にかかわることが知られるタンパク質が学習でどのように変化するかを調べた。
m3.com 2006-9-19
薬剤耐性がんを大幅縮小 遺伝子抑え効き目回復 がんセンターが動物実験 新治療法開発に期待
 抗がん剤が効かなくなる耐性をがん細胞に持たせる遺伝子の1つを国立がんセンター研究所のグループが特定。この遺伝子の働きを抑え抗がん剤の効き目を回復させることで、マウスに移植した人の乳がん組織を大幅に縮小させる実験に成功した。
 乳がん患者の半分は、初めから抗がん剤が効かなかったり治療を続けるうちに効かなくなって再発したりするケースとされ、薬剤耐性の克服は大きな課題となっている。
 今回の手法は、薬剤耐性がんの新たな治療法につながると期待される。
 同研究所の落谷孝広がん転移研究室長らは「RPN2」と呼ばれる遺伝子が、がん細胞の内部から外部へポンプのように抗がん剤をくみ出すタンパク質の働きを調節していることを発見した。
 RNAの断片を細胞に入れ遺伝子の働きを抑えるRNA干渉という手法を用い、マウスに移植した薬剤耐性乳がんでRPN2が働かないようにしたところ、抗がん剤が劇的に効くようになり、直径5ミリあったがんが7日間で1ミリ以下に縮小した。
 RNA断片はコラーゲンの一種と絡ませ微小粒子にして細胞に入れた。
 肺がん細胞でも同様の効果が確認され、落谷室長は「人での安全性を確かめた上で、さまざまながんで治療法の確立を目指したい。抗がん剤の投与量を減らし副作用を軽減する効果も期待でき、患者によっては外科手術が不要になる場合もありそうだ」と話している。
m3.com 2006-9-22
がん発症メカニズムで新説「最初にたんぱく質損傷」
 がんは遺伝子の変異が積み重なって起きるとされるが、それ以前に、たんぱく質が損傷することで、細胞が「がん」特有の性質を持つとする新たな説を、渡辺正己・京都大学原子炉実験所教授らがまとめた。
 がん細胞は死なずに無限に増殖する。がんの原因を遺伝子の変異と考えた場合、変異の頻度と、細胞が“不死化”する頻度は比例するはずだ。しかし両者は一致しない場合が多い。渡辺教授らも以前、ハムスターの細胞に放射線を当てたが、不死化する頻度は、遺伝子変異の頻度より500〜1000倍も高かった。
 渡辺教授らは、遺伝子以外の、放射線で傷ついた部分に謎を解くかぎがあると考え、放射線照射後の細胞を詳しく調べた。その結果、染色体を安定させる役割を担うたんぱく質や、細胞分裂で染色体の動きを誘導するたんぱく質に多くの異常が見つかった。染色体数も増えており、不死化する頻度は遺伝子変異の頻度の1000倍以上だった。
 たんぱく質を傷つけるのは、放射線など様々な要因で細胞内にできる有害物質「ラジカル」とされる。渡辺教授らは、寿命の長いタイプのラジカルを培養細胞から化学的に除去。すると細胞が不死化する頻度が減り、関連が示唆された。
読売新聞 2006-9-25
音楽レッスンは子供の脳の発達を促進 音楽を学んだ低年齢小児は記憶能力が高まる
 低年齢の小児における音楽レッスンは脳の発達を促進し、記憶能力を向上させる可能性がある。
 低年齢小児は、音楽の訓練を受けると、1年の訓練期間に、聞こえてきた音楽に対する脳の反応が変わるだけでなく、記憶力も改善する可能性があることが認められた。
 「1年間音楽を勉強した小児は音楽を勉強しなかった小児より音楽を聴く技能が向上するということは、さほど意外なことではないだろう」とMcMaster大学(カナダ)の心理学の教授であるLaurel Trainor氏は述べている。
 「他方で、音楽のレッスンを受けた小児は、読み書き能力、言語性記憶、視空間処理、算数、IQなどの音楽以外の能力と相関する一般的記憶能力が音楽のレッスンを受けない小児より向上するということは非常に興味深い」とTrainor氏は述べている。
 今後の研究でこれらの結果が確認されれば、親にとって音楽家のタマゴにかかる騒音などに耐える良い理由になる可能性がある。
m3.com 2006-9-25
脂肪ホルモンに抗がん作用 アディポネクチン
 健康な脂肪細胞から分泌され動脈硬化の予防効果があるホルモン「アディポネクチン」に、強力な抗がん作用があることが、北山丈二東京大講師(腫瘍外科)らの研究チームの動物実験で分かった。
 内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)など、太りすぎの人の脂肪細胞からはアディポネクチンが出にくくなることが知られており、脂肪の健康状態そのものが、がんの進行に深くかかわっている可能性を示す成果だ。
 北山講師らは、胃がん患者では、がんが進行するほど血液中のアディポネクチン濃度が低くなるのに着目。アディポネクチンが人の胃、大腸、乳がん細胞の表面に取り付くと、抗がん剤並みの細胞死を引き起こすことを突き止めた。
 高脂肪食などで脂肪細胞が肥大するとアディポネクチンが出にくくなり、太った人の血中濃度は、健康な人の5分の1から6分の1になることが知られている。
 北山講師は「肥満解消は生活習慣病だけでなく、がん予防にも役立つかもしれない。将来はアディポネクチンを薬として使う道も開けそうだ」と話している。
m3.com 2006-9-27
チキンから発がん物質 マクドナルドなどを提訴
 肉や魚の焼け焦げに含まれる発がん物質が、ファストフードの焼いたチキンから検出されたとして、米国の約6000人の医師でつくる「責任ある医療のための医師委員会」が、カリフォルニア州地裁に提訴したと発表した。
 訴状などによると、カリフォルニア州に店舗があるマクドナルドなど全国チェーン7社の店で販売している焼いたチキンや、チキンを含むサラダなど100点を外部の検査機関で分析したところ、すべてから発がん物質ヘテロサイクリックアミンの一種PhIPが検出された。量は1グラム当たり43.2-0.08ナノグラム(ナノは10億分の1)だった。
 ヘテロサイクリックアミンは肉や魚を加熱調理すると発生し、米厚生省が2005年に発がん物質に指定。PhIPについては、カリフォルニア州でもがんを引き起こす化学物質として10年以上前からリストアップされているという。
 医師委員会は、発がんの危険性を客に警告することなしに販売するのは違法だとしている。
m3.com 2006-9-29