広葉樹(白)   

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2006年10月-2006年12月文献タイトル
がん細胞を光らせるウイルスを開発
紅茶がストレスを和らげる可能性
飲酒運転では視覚が死角に
ピロリ菌と胃がんの関係 東海大・古賀教授に聞く
肥満は認知機能の低下と関連
毎年のインフルエンザワクチン再接種により、高齢者の下気道感染症リスクが低下
高濃度酸素吸って記憶力アップ 認知症抑制に期待 松下電器など共同研究
禁煙法が肺の健康状態を速やかに改善
イチゴ「フィセチン」大量含有、記憶力向上!?
精度向上「77兆人に1人」 DNA鑑定、11月から導入
コーヒーで糖尿病を予防できる可能性 習慣的にコーヒーを飲む人は2型糖尿病を発症するリスクは低いとした研究
がん細胞自殺の仕組み解明 山形大、新治療の可能性も
野菜の摂取が認知低下を遅らせる
ジュース含有のポリフェノールがアルツハイマー病予防 日系米国人で発症リスクを76%低減
埋め込み式「バイオ人工肝臓」開発 肝細胞注入、マウスで成功
運動が疲労回復に有効で、エネルギーを高める  定期的な運動は興奮薬よりもエネルギー増進に効果的であることが研究で示される
砂糖取りすぎは高リスク 膵臓がん、8万人調査で
高コレステロールはアルツハイマー病のリスク上昇につながる
長寿には学歴、伴侶も必要 ハワイ日系人を40年間調査
化学療法は認知機能を障害するが、この副作用は軽症
5年で10倍の約7000カ所 認知症グループホーム
卵食べても心筋梗塞増えず 背景に食生活の変化も
タマネギとニンニクで癌を予防できる可能性
10人に1人たばこで死亡 2015年のWHO予測
アルツハイマーMRI診断 試薬開発、滋賀医大
旧世界の赤ワインはより健康に良い可能性
笑い声が脳をくすぐる
肥満、腸内細菌で決まる?…米ワシントン大
ぜんそくの子、10年前の倍 幼稚園児のアトピー4% 文科省の学校保健調査

がん細胞を光らせるウイルスを開発
 岡山大病院遺伝子・細胞治療センターの藤原俊義助教授らのグループが、リンパ節に転移したがん細胞を光らせるクラゲの発光遺伝子を組み込んだウイルスを開発した。藤原助教授は「人に応用できれば、手術の際に切除範囲を小さく抑えることが期待できる」としている。
 藤原助教授らは既に、がん細胞だけを死滅させるウイルスを開発しており、間もなく臨床試験に入る予定。今回、このウイルスにオワンクラゲの発光遺伝子を結合させ、新しいウイルスを生み出した。新ウイルスは術前に腫瘍に注射すると、数日後に原発巣と転移したリンパ節で増殖。特殊な光を当ててフィルターを通して見ると、がん細胞が黄緑色に光って見える。
 実験で、直腸がんを発症させたマウス7匹の腫瘍に新ウイルスを注射すると、計13カ所あるリンパ節転移のうち12カ所を特定できた。
m3.com 2006-10-3
紅茶がストレスを和らげる可能性
 ごく平凡で、昔ながらの紅茶がストレスに対抗し、リラックス効果をもつ可能性が新規の研究で示唆されている。
 紅茶を愛飲する都市であるロンドンの研究者らは、紅茶を飲んだ人は、紅茶に似た代用飲料を飲んだ人に比べ、ストレスから迅速に回復できたことを確認した。これに加え、紅茶摂取者では、ストレスを受けた後のコルチゾール値(ストレスホルモン)が低かった。
 「われわれの研究から、紅茶の摂取によって、日常生活ストレスからの回復スピードが速まる可能性が示唆される。われわれが実際に受けるストレスの程度は抑制できないかもしれないが、紅茶はストレスホルモン値を平常値へと戻すのに大きな効果を発揮すると考えられる」とロンドン大学の研究者Andrew Steptoe氏は述べている。「この効果には、重大な健康上の意義がある。なぜなら、急性ストレス後の回復が遅いと、冠動脈性心疾患のような慢性疾患のリスクが高くなるためである」。
m3.com 2006-10-5
飲酒運転では視覚が死角に
 ワシントン大学嗜癖行動研究センターのSeema Clifasefi博士らの研究によると,たとえ 1 杯だけ飲んだとしても,飲酒運転は従来考えられていたよりもはるかに危険であるという。これは,不注意による見落としという視覚的な問題で,予期せずに視野に飛び込む重要な物体に気付かない可能性があるからである。
 同博士らは,ワシントン大学内のバーに見立てたセットに入れた男女46例(21〜35歳)を 2 群に分け,一方にはトニックウォーターを,他方にはウォッカとトニックのカクテルを飲ませた。アルコールを飲ませる場合は,血中アルコール濃度が0.4%になるようにアルコール量を被験者ごとに調整した。同濃度が0.8%になると,米国のほとんどの州で法的に飲酒運転とみなされる。
 次に,被験者の血中アルコール濃度を測定した。また,集団でボールをパスしている25秒間のビデオを被験者に見せ,パスの回数を数えさせた。ビデオの途中でほんの少しの間,ゴリラのぬいぐるみを着た人間が現れ,胸をたたきながら集団の間を通り抜けた。
 後でゴリラについて質問したところ「ゴリラを見た」と答えた者は非飲酒群では46%であったのに対して,飲酒群では18%にすぎなかった。
 Clifasefi博士は「飲み物について言われたことの真偽に関係なく,酔った被験者は予期せずに視野に入ってくる物体に気付かない可能性が高かった」と述べている。
Medical Tribune 2006-10-5
ピロリ菌と胃がんの関係 東海大・古賀教授に聞く
 日本人は欧米人に比べて胃がんが多い。その原因の一つが細菌の一種、ピロリ菌の感染だといわれる。ピロリ菌と胃がんの関係について、感染症の研究で知られる東海大学医学部の古賀泰裕教授に聞いた。
 今年9月には、約3万7000人を11-13年間、追跡した大規模調査が日本癌(がん)学会学術総会で厚生労働省・研究班によって発表された。ピロリ菌の感染者は、非感染者に比べ、胃がんになるリスクが約5-10倍も高いという報告だった。
 この研究報告ではピロリ菌の感染の有無を菌の抗体や毒素の反応だけで見ているため、実際には感染していても陰性として扱われたケースがあったと推定される。
 このため、古賀さんは「ピロリ菌による胃がんのリスクは、実際には10倍以上だと考えられる」と指摘する。
 では、除菌すればよいのか。中高年では、すでに胃粘膜への影響が蓄積しているため、除菌で胃がんを防げるかは不明という。ただ「若い10-20代のうちに除菌治療すれば、胃がんのリスクを下げられる」と古賀さんは話す。
m3.com 2006-10-9
肥満は認知機能の低下と関連
 体格指数(BMI)の高い中年成人は、BMIが低く体重の軽い対照よりも認知機能検査のスコアが低いことが、新規研究で明らかになった。
 ツールーズ大学医学部(フランス)の研究者らが、2,223例の被験者におけるBMIと認知機能との関連を調査し、BMIが高いことは、認知機能検査のスコアが低いことと、独立した関連があることを見出した。
 「研究の知見は、肥満またはもしかするとインスリン抵抗性の発現に起因する大脳血管の肥厚および硬化を含む、多数の因子によるものである可能性がある」と、首席治験責任医師のMaxime Cournot, MDは述べた。
m3.com 2006-10-9
毎年のインフルエンザワクチン再接種により、高齢者の下気道感染症リスクが低下
 高齢患者集団を対象とした毎年のインフルエンザワクチン再接種により、合併疾患のない集団の下気道感染症リスクが33%低下するという地域集団ベースの研究の結果が、発表された。
 「1996-2002年の期間中、高齢者のインフルエンザワクチン接種と呼吸器疾患による入院回数の減少との間に関連性が認められた」とエラスムス大学医療センター(オランダ)のBettie C. G. Voordouw, MD, PhDらは記述している。「ただし、色々な重症度の気道感染症に対するインフルエンザワクチン接種の効果については、ほとんどわかっていない」。
 「この研究から、地域住民の高齢者集団を対象にインフルエンザワクチン接種を繰り返すことにより、インフルエンザ流行の盛んな年でも下気道感染症や肺炎の発症リスクが低下する可能性が示唆される」と著者らは結論付けている。「インフルエンザワクチンの予防効果は高くはない。だが、高齢者では下気道感染症の背景発症率が高いことを考慮し、死亡率の低下が観察されたことから、ワクチン接種を勧めるべきである」。
m3.com 2006-10-9
高濃度酸素吸って記憶力アップ 認知症抑制に期待 松下電器など共同研究
 松下電器産業は、高濃度の酸素を吸って勉強すると、記憶力がアップするとの実験結果を大手予備校の代々木ゼミナール、名古屋工業大学との共同研究で確認した、と発表した。高濃度酸素を吸ったネズミの神経細胞や記憶に関係する脳内遺伝子が活性化することも分かった。同大学の藤墳規明教授は「認知症の抑制などに活用できる可能性がある」と説明している。
 代ゼミの生徒77人を2グループに分けて実施。松下製の酸素補給機を使用した。
 第1のグループは、初日に100問の英単語の意味を問う試験を行い、その後、約30%の高濃度酸素を吸引しながら、出題された英単語を約20分間学習。2日目に同様の単語の試験を行ったところ、平均正解数が初日の24・3から2日目に57・4に増加した。同様のやり方で試験した高濃度酸素を吸わない第2のグループは、初日が22・9、2日目は51・6で、正解の増加数は第1のグループが約15%多かったという。
 また、意味のない単語の記憶試験を中高年に実施したところ、酸素を吸引した人の記憶量が、吸引しなかった人に比べ約17%上回った。
 ネズミを使った迷路試験でも同様の結果が得られ、記憶をつかさどる脳の部位を分析。神経細胞の情報伝達を促進する遺伝子や記憶たんぱく質を作る遺伝子が計26個活性化し、関連たんぱく質が合成されていることを確認した。
m3.com 2006-10-12
禁煙法が肺の健康状態を速やかに改善
 バーにおける喫煙を禁止する法律により、バーの従業員の肺に速やかに恩恵をもたらす可能性があるという新規研究が発表された。
 Menzies氏らのチームは、スコットランドテイサイド県内の喫煙が禁止されたバーの従業員77名について、禁煙法の施行前後に調査を行った。
 バーの従業員は肺の症状に関する質問票に回答した。同じく、肺機能検査を受け、研究用の血液検体を提供した。
 禁煙法施行前には、バーの従業員の80%近くが、ぜん鳴、息切れ、咳、および痰などの肺の症状があると回答した。
 禁煙法の1カ月後に、その割合は約53%まで低下し、2カ月目にはさらに47%にまで低下した。
 バーの従業員の肺機能も改善し、禁煙法施行後には血中のコチニン濃度が低下した。コチニンはタバコの煙への曝露を示す指標である。
m3.com 2006-10-16
イチゴ「フィセチン」大量含有、記憶力向上!?
 野菜や果物に広く含まれるフラボノイドの一種「フィセチン」を摂取すると、記憶力が向上することを、武蔵野大と米ソーク研究所の共同チームが動物実験で確認し発表した。フィセチンはイチゴに多く含まれているが、「人への効果はこれから調べる」としている。
 記憶をつかさどるのは、大脳の奥にある「海馬」だ。海馬に入ってきた情報は「長期増強」という仕組みで記憶として定着する。武蔵野大薬学研究所の赤石樹泰助手と阿部和穂教授は、認知症に効果のある物質を探す過程で、フラボノイドの一種フィセチンに注目した。フラボノイドは強い抗酸化作用があり、老化防止への効果が知られるポリフェノールの代表的な物質。
 ラットの海馬を取り出して生きた状態に保ち、フィセチンの水溶液を細胞にかけると、長期増強を担う分子が活性化した。次に生きたマウスを使って実験した。2個の物体を健康なマウスに記憶させ、24時間後、2個のうち1個を別のものにすり替えて再び見せる。前日、物体を見せる前にフィセチンの水溶液を飲ませたマウスは、すり替えた物体にだけ興味を示した。しかし、この水溶液を飲まなかったマウスは、どちらの物体にも均一に興味を示し、前日に見たことを忘れていた。
m3.com 2006-10-18
精度向上「77兆人に1人」 DNA鑑定、11月から導入
 警察庁は、全国で実施しているDNA鑑定に、飛躍的に個人識別精度を向上させる検査試薬を導入することを決めた。個人のDNA型の記録が増え、型の組み合わせが別人と一致する確率は現在の約1億8000万人に1人から約77兆人に1人になるという。
 国家公安委員会は同日、これに伴うDNA型記録取扱規則の改正案を承認。11月から順次、全国の警察で導入する。
 警察庁によると、現在のDNA鑑定は、デオキシリボ核酸(DNA)の計9つの部位の鑑定ができる試薬を使用。
 9部位すべてのDNA型が別人と一致する確率は、日本人に最も多い組み合わせでも約1100万人に1人で、必要に応じて実施されている別の部位の検査と合わせると、約1億8000万人に1人。
 新たな試薬は、計15の部位の鑑定ができ、DNA型の組み合わせが別人と一致する確率は約4兆7000億人に1人、別の部位の検査と合わせると、約77兆人に1人となるという。既に海外で使われているが、検証を重ねて性能に問題がないことを確認、実用化を決めた。
m3.com 2006-10-19
コーヒーで糖尿病を予防できる可能性 習慣的にコーヒーを飲む人は2型糖尿病を発症するリスクは低いとした研究
 米国人のコーヒー好きは糖尿病リスクの低下に役立っているという証拠が、またもや得られた。
 2型糖尿病を発症するリスクは、高リスク集団を含めても、カフェイン入りのコーヒーを飲むことによって60%も低下するという研究の結果が、最近発表された。
 過去にコーヒーを飲んでいて飲まなくなったという場合でも、飲んだことがない場合よりは糖尿病を発症しにくい。
 「今回の知見は非常に確かなものだった」と研究者のBesa Smith, MPHは語っている。「次の段階では、この予防効果の担い手となるコーヒーの成分を明らかにする」。
 習慣的なコーヒー摂取が糖尿病の予防に有利であるとした研究は、今回が初めてではない。
 2004年に発表されたフィンランドの研究によれば、2型糖尿病リスクは、1日3-4杯のコーヒーを飲んでいる男女で30%低下し、1日10杯以上のコーヒーを飲んでいる女性で79%低下した。
 また、参加者の合計が20万名以上になる15の研究結果の統合解析でも同様の予防効果が示唆された。つまり、コーヒーを飲む量が最も多いグループでは、糖尿病リスクが最も低かった。このレビューは、ハーバード大学公衆衛生学部の研究者らが実施したものである。
 カルフォルニア大学サンディエゴ校のSmith博士らが実施した研究は、血糖値が標準範囲を上回る2型糖尿病の高リスク集団を含めたという点でユニークである。
m3.com 2006-10-25
がん細胞自殺の仕組み解明 山形大、新治療の可能性も
 山形大医学部がんセンターの北中千史教授(腫瘍分子医科学)は、がん細胞の代謝と自殺(アポトーシス)に関する仕組みを解明したと発表した。がん細胞の代謝メカニズムを利用することで難治性がんの治療につながる可能性もあるという。
 北中教授によると、正常な細胞は酸素を利用してエネルギーを作り出すが、がん細胞は酸素を利用できる状態でも利用しないことが分かっていた。しかし、がん細胞がなぜ酸素を利用した場合の20分の1しかエネルギーを作れない方法をとるのかは謎とされていた。
 北中教授の研究チームは、がん細胞を酸素と酸素以外のものを使って代謝させた場合を比較。酸素を利用しない場合、細胞内にある細胞の自殺を引き起こす分子が働かなくなっていることを発見した。この分子が働かないことで、がん細胞が死滅しにくくなっていることが分かった。
 北中教授は「がん細胞が酸素を利用する状態に変えることができれば、がん細胞を死滅させたり、放射線や化学療法による治療の効果を高められる可能性がある」としている。
m3.com 2006-10-26
野菜の摂取が認知低下を遅らせる
 研究者らによれば、大量の野菜摂取後に高齢患者の認知低下速度が遅くなったが、果物では効果が認められなかったという
 1日あたり2.8皿以上の野菜を摂取する人では、1日当たりの摂取量が1皿未満の人に比べ認知低下速度がおよそ40%遅かった。この遅延は約5歳若い年齢に相当する。
 「われわれは、緑色葉野菜と認知機能低下速度の遅延との間に極めて強い関連を見出した。その理由はまだ定かではないが、いくつかの解析から野菜に含まれる食事性ビタミンEに起因する可能性が示唆される」と筆頭研究者であるラッシュ大学医療センター(シカゴ)のMartha Clare Morris, ScDは語った。
 Morris博士は、果物の摂取は認知機能低下の遅延に関連しなかったと述べた。この知見はさらなる研究に値する。
 Morris博士のチームはアルツハイマー病発症と野菜摂取との関連について検討する予定であるという。さらに、Morris博士は果物の摂取が脳に及ぼす影響についてより明確にしたいと述べた。
 「この分野は非常に新しい分野であり、私の知る限り、果物と野菜の摂取がヒトの脳に及ぼす影響を検討した研究は一握りしかない。野菜と果物の摂取が脳を認知機能低下から守るという勧告を行うにはまだ準備不足である。しかし、これらの結果は患者に野菜を食べるように勧める理由の1つとなるだろう」とMorris博士は述べた。
m3.com 2006-10-27
ジュース含有のポリフェノールがアルツハイマー病予防 日系米国人で発症リスクを76%低減
 週3回のジュース飲用にはアルツハイマー病に対する神経保護作用があるようだ。バンダービルト大学(テネシー州)内科学のQi Dai助教授らによると,日系米国人1,836例を対象とした大規模疫学調査Kameプロジェクトで,週3回以上の野菜または果物ジュースの飲用はアルツハイマー病の発症リスクを76%低減することがわかった。この効果は,アルツハイマー病の遺伝子マーカーを有する人でより顕著に認められるという。
 日本人に比べ日系米国人はアルツハイマー病リスクが非常に高いことから,この両者を調査した。日系米国人でアルツハイマー病リスクが高いことにより,食事・ライフスタイルを修正してアルツハイマー病発症が予防できることが強く示唆されるという。
 Dai助教授らは当初,ビタミンC,E,βカロチンなど抗酸化ビタミンの多量摂取がアルツハイマー病に対してなんらかの神経保護作用を持つと考えていたが,最近の臨床試験ではそのような作用はないことが示唆されている。
 そこで同助教授らは別のクラスの抗酸化物質であるポリフェノールに着目。ポリフェノールは多くの食事のほか,お茶,ワイン,野菜・果物の皮やジュースに豊富に含まれている。
 Dai助教授は,動物モデルではポリフェノールが寿命を60%近く延ばし,加齢に伴う認知能力低下を遅らせることが示されていると説明。さらに「その他の動物や細胞培養を用いた研究でも,ジュースから摂取するポリフェノールには抗酸化ビタミンより強力な神経保護作用を示すものの存在が確認されている」と述べている。
Medical Tribune 2006-11-2
埋め込み式「バイオ人工肝臓」開発 肝細胞注入、マウスで成功
 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の小林直哉助手らのグループは、体内埋め込み式の「バイオ人工肝臓」を世界で初めて開発し、マウスでの実験に成功したと発表した。特定のたんぱく質で網目状のポリエチレンをコーティングした袋(1・5センチ四方)に、マウスの胚性幹(ES)細胞から分化させた肝細胞を注入した。ヒトへの応用に道を開く成果として注目される。
 グループは、肝細胞を増殖させるたんぱく質や、肝臓を構成する他の細胞などを加える手法で、ES細胞を効率よく肝細胞に分化させることに成功。この肝細胞を体内に埋め込む袋に、バイオ技術を応用した。
 肝臓を90%切除したマウスで、この人工肝臓を埋め込んだ場合と、埋め込まない場合とで比較実験。埋め込まなかったマウス10匹は4日以内に死んだが、埋め込んだマウスはアンモニアや糖の濃度が正常化し、10匹中9匹が2週間以上生き続けた。人工肝臓が機能したことが裏付けられ、元の肝臓も自力で30%程度まで再生していた。
m3.com 2006-11-7
運動が疲労回復に有効で、エネルギーを高める  定期的な運動は興奮薬よりもエネルギー増進に効果的であることが研究で示される
 疲労時のエネルギー増進と疲労回復には昼寝よりウォーキングの方が効果的かもしれない。
 新しい研究で定期的な運動が癌、心疾患のような疲労と関連のある慢性疾患患者でさえもエネルギーレベルを高める可能性があることが示唆されている。
 直感に反しているように思えるかもしれないが、研究者らは定期的な運動を行ってエネルギーを消費することで長期的にエネルギー増進をもたらす可能性があるという。
 「ほとんどの場合、疲労を感じる時に最もやりたくないことは運動である。しかし、あまり身体活動を行っておらず、疲労している場合、ほんの少し動くだけでも効果があるだろう」とジョージア大学運動心理研究室の共同責任者であるO’Connor博士は述べる。
 「1日を乗り切るのにより効果的な新しいスポーツドリンクやエネルギーバーやコーヒーを常に探し求めている社会にわれわれは生きている」と同じく研究者であるTim Puetz, PhDは述べる。「しかし、毎朝テニスシューズの紐を結んで外に出て、ある程度の身体活動を行うことで、人々が探し求めている活気を得ることができる可能性がある」。
m3.com 2006-11-8
砂糖取りすぎは高リスク 膵臓がん、8万人調査で
 ソフトドリンクなど砂糖をたくさん含む飲み物や食べ物を多く取る人は、そうでない人より膵臓がんを発症する危険性が最大約90%高いとする調査結果を、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究チームが発表した。
 研究によると、糖尿病やがんにかかったことのない45歳以上の男女約8万人を対象に食習慣を調べた。このうち、131人が8年後までに膵臓がんを発症。発症要因を分析したところ、砂糖の摂取量が危険要因であることが分かった。
 例えば「砂糖を添加したソフトドリンク」を1日2回以上飲む人は飲まない人に比べて約90%、「砂糖を入れたコーヒーや紅茶」を1日に5回以上飲む人は飲まない人に比べ約70%、「クリームの付いたフルーツ」を1日に1回以上食べる人は食べない人に比べて約50%、発症の危険性が高かった。
m3.com 2006-11-9
高コレステロールはアルツハイマー病のリスク上昇につながる
 高脂質・高コレステロールの食餌は、マウスにおいて神経炎症を誘発し、作業記憶を損傷することが新しい研究により示されている。この知見は、これまでの研究を確認および拡大するとともに、ヒトにおけるアルツハイマー病に伴う認知障害の回避と治療にとって大きな意味を持つ可能性がある。
 高脂質の食餌を与えた正常マウスは、記憶エラーの数が3-4倍増と、対照群より記憶能力が有意に低かった。一方、高コレステロール血症のLDLレセプターノックアウトマウスは、食餌とは関係なく記憶障害と神経炎症の徴候を示し、これは高脂質・高コレステロールの食餌により悪化した。
 この知見により、関連する炎症以外には、記憶に有害作用を及ぼすコレステロール濃度自体は上昇しない可能性が示されている。
 興味深いことに、最近の臨床試験では、スタチン療法のコレステロール低下作用ではなくその抗炎症作用に起因すると考えられる知見、すなわちコレステロール濃度を低下させるためにスタチン療法を受けている患者ではアルツハイマー病発生率が低いことが示されている、とサウスカロライナ医科大学のBhat博士は述べている。同様の知見はアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬を服用している患者でも報告されている。
m3.com 2006-11-9
長寿には学歴、伴侶も必要 ハワイ日系人を40年間調査
 健康で長生きできるかどうかには血圧や血糖値、筋力、喫煙などの要因のほか、学歴や伴侶の有無も関係してくることが、ハワイの日系アメリカ人男性約5800人の40年間にわたる追跡調査で判明した。
 研究チームによると、中年男性の危険要因を探る目的で、1965年にハワイに住む45歳から68歳の5820人の健康な日系人を登録。2005年まで健康状態を追跡調査し、死亡時などの年齢と医学検査や生活習慣、社会状況との関係を分析した。
 その結果、85歳未満で亡くなる危険要因として「高血圧」「肥満」「高血糖」「高い中性脂肪値」「喫煙歴」「握力が39キロ未満」「1日にビール換算で1リットル以上の飲酒」「高卒未満の学歴」「伴侶なし」の9項目が浮かび上がった。
 いずれにも該当しない人は69%が85歳まで生きたのに対し、6項目以上が該当した人では22%だった。危険要因なしの人は主要な病気を患っていない「極めて健康な」85歳を迎えた割合が半数以上の55%に達したのに対し、6項目以上が該当した人では9%しかいなかった。
 研究チームは「危険要因は女性にも当てはまると考えられる」としている。
m3.com 2006-11-15
化学療法は認知機能を障害するが、この副作用は軽症
 化学療法を受ける患者が訴えることが多い記憶などの思考過程の障害、いわゆる「ケモブレイン」という状態が、動物実験で化学療法が認知機能に影響を及ぼすことが明らかにされたことで実証された。
 この研究では、成体マウス25頭を水迷路を用いた行動モデルについて調べた。半数の動物は、メトトレキサートと5-FU(フルオロウラシル)で3週間処置した。どちらの薬剤とも、乳癌の補助療法で一般的に使用されているものである。
 薬剤処置群は対照群に比べて、空間記憶および非空間記憶に関する行動試験と非見本合わせ学習試験の成績が悪かった。「薬剤処置群の成績低下は、前頭葉および海馬を含む脳の特定領域での機能変化によるものであった」と著者らは記している。
 「今回の動物実験で我々が明らかにしたこの種の問題は、患者から常々聞かされる訴えに非常に近いものであった」とWinocur博士は述べている。同博士によると、患者の訴えとしては記憶消失 (海馬に関連)および計画が立てられない、問題解決ができない、新規の情報を獲得できない (前頭葉に関連する計画・実行機能)などがある。
 Winocur博士によると、動物実験で見られた認知機能の欠落は、軽症から中等症のものであった。「ヒトでの正常な加齢で見られる程度のものに相当する。」
 欠落を補う方法はある、とWinocur博士は説明する。その1つの例として、同博士の研究グループでは認知機能リハビリテーションの新しい手法を開発した。その手法では、注意力と記憶補助を中心にして再訓練する。この種の訓練は、頭部外傷から回復する患者ですでに用いられているが、「記憶障害を訴える比較的健康な高齢者においても、12週間で非常に顕著な改善が見られた」とWinocur博士は述べている。
m3.com 2006-11-15
5年で10倍の約7000カ所 認知症グループホーム
 厚生労働省が発表した2005年介護サービス施設・事業所調査結果によると、認知症グループホームは前年比30%増の7084カ所で、介護保険制度が始まった2000年に比べて10倍に増加。入所者も前年比35・3%増の9万4907人となり、2000年の17倍となった。
 厚労省認知症対策室は「グループホームは認知症患者の新しい住まいとしてニーズが高く入所待ちの状況があり、必要性も高い」と分析。本年度の認知症患者は約170万人と推定されており、今後も患者は増加するとみている。
 また認知症専門棟を備えている老人保健施設は2000年の1.7倍の1089カ所に増え、全老健施設に占める割合は33・2%となった。
 調査は各年の10月1日時点のデータ。
m3.com 2006-11-16
卵食べても心筋梗塞増えず 背景に食生活の変化も
 卵を毎日食べても食べなくても、心筋梗塞になる危険度はあまり変わらないとの疫学調査を、厚生労働省研究班が発表した。
 1980年代に行われた別の調査では、卵の食べ過ぎが血中コレステロールを増やし、心筋梗塞の危険を高めるとの結果が出ており、今回は結論が逆になった形。
 両方の調査にかかわった京都女子大の中村保幸(なかむら・やすゆき)教授は「コレステロール値が高い人が卵を控えるようになったほか、肉類の摂取が増えるなど一般の食生活が変化し、卵のコレステロール値への寄与度が低くなったためでは」と分析している。
 卵の摂取とは関係なく、コレステロール値が高い人は低い人より心筋梗塞に約2倍なりやすいこともあらためて確認された。中村教授は「卵が高コレステロール食であることは間違いない。食べ過ぎには気を付けて」と話している。
m3.com 2006-11-17
タマネギとニンニクで癌を予防できる可能性
 口臭予防用のミントキャンデーがたくさん必要になるかもしれない。ニンニクとタマネギをふんだんに摂取することで癌を予防できる可能性のあることが、新規の研究で示唆された。
 タマネギやニンニクを始めとするネギ属をふんだんに使った食事を摂っている人では、こうした辛味成分を有する薬用植物の摂取を控えている人よりも、何種類かの癌のリスクが大幅に低いことをイタリアの研究者らが見出した。
 タマネギとニンニクが健康にもたらす有益性は何世紀にもわたって喧伝されてきたが、その有益性を証明できた研究はほとんどないと、マリオ・ネグリ薬理学研究所(ミラノ)の研究員、Carlotta Galeoneらは述べている。
 この研究で研究者らは、イタリアとスイスで実施された数件の癌研究のデータを用いて、タマネギおよびニンニクの消費量と、口腔、喉頭、食道、結腸、乳房、卵巣、および腎など数カ所の身体部位における癌との関連性を調査した。
m3.com 2006-11-27
10人に1人たばこで死亡 2015年のWHO予測
 2015年にはたばこが原因で死亡する人が10人に1人に達し、30年には心筋梗塞と脳卒中、エイズが死因の上位3位を占めるなどとした世界の死因の将来予測を世界保健機関(WHO)の研究者がまとめ発表した。
 WHO本部のコリン・マザーズ博士によると、WHOや世界銀行などの統計を基に、戦争や交通事故なども含めた30年までの推計で、5歳未満の子どもの死者数が02年から半減する一方、エイズによる死者が280万人から650万人と倍以上になるとした。
 たばこが原因とみられる肺がんや慢性閉塞性肺疾患による死者は、05年の540万人から15年には640万人、30年には830万人と増え続け、15年段階ではエイズによる死者の1.5倍、世界全体の約10%になるという。
m3.com 2006-11-28
アルツハイマーMRI診断 試薬開発、滋賀医大
 アルツハイマー病の原因タンパク質である「ベータアミロイド」に結合し、磁気共鳴画像装置(MRI)による診断をしやすくなる試薬を遠山育夫滋賀医大教授らと滋賀県工業技術総合センターが開発した。
 コンピューター断層撮影(CT)や陽電子放射断層撮影(PET)と違い、放射線被ばくがなく、治療効果の判定や症状の観察にも使えるという。同様に開発された試薬の5倍以上の感度があるといい、「Shiga-X」と名付けた。
 アルツハイマー病は脳にベータアミロイドが蓄積し老人斑と呼ばれるシミができ、細胞死が起きる。
 遠山教授らは、アミロイドに結合する化合物を作り、特殊なフィルターを通してみると明るく見えた。MRIで撮影しやすくするようフッ素を加え、アルツハイマー病のモデルマウスの静脈に注射すると、2、3時間でアミロイドに結合、MRIで観察すると白く光る様子が確認できた。
m3.com 2006-12-6
旧世界の赤ワインはより健康に良い可能性
 赤ワインが年月と共に熟成するのを助けるものと同じ成分が、心疾患を防ぐことによって長生きに役立つ可能性がある。
 フランス南西部やイタリアで製造されてるもののような、タンニンを多く含む辛口の赤ワインは、世界の他の地域で製造されているタンニンの少ないワインよりも大きな予防効果を有することが、新規研究によって明らかになった。
 タンニンはブドウの種、皮、および茎から抽出される化合物であり、赤ワインに独特の辛口の熟成した風味を与える。上質の赤ワインは年月を経て熟成するにつれて、刺激の強さが和らぎ風味がより複雑になる。
 この研究を行った研究者らは、得られた結果は、より多くのタンニンが含まれることを保証する旧世界のワイン製造技術によって、より心臓の健康に良いワインが製造され、そのようなワインを製造することが知られている地域にみられる長寿に寄与する可能性があることを示唆すると述べている。
m3.com 2006-12-6
笑い声が脳をくすぐる
 笑い声があなたを微笑ませたり笑わせたりする可能性があると、英国の研究者らが報告している。
 「『笑えば人は共に笑う(laugh and the whole world laughs with you)』ということわざは間違いなく本当のようである」と、ロンドン大学の認知神経科学研究所の教授であるSophie Scott, PhDは述べている。
 Scott博士らは、人間が笑い声を聞くと、微笑や笑いをコントロールする脳領域が活性化する、と述べている。
 研究者らは、良好な聴力を有する20名の健康な人々(平均年齢:32歳)にヘッドホンを通して笑い声を聞かせた。
 「我々が通常、笑い声や歓声のような好ましい感情に遭遇するのは、家族とコメディ番組を見ている時や友人とフットボールを見ている時のように、集団の中である」と、Scott博士は述べる。
 「脳において自動的に我々に微笑んだり笑ったりする準備をさせるこの反応が、他者の行動を反映する方法となり、我々が社会的に相互に影響し合う手助けをする」と、同博士は述べている。
 「そのことが、集団内の個人同士の強い結びつきを築く際に重要な役割を果たす可能性がある」と、Scott博士は付け加えた。
m3.com 2006-12-19
肥満、腸内細菌で決まる?…米ワシントン大
 動物の腸の中にすむ細菌が太りやすさに関係していることを米ワシントン大のチームが突き止めた。
 人間など哺乳類の腸内には、1000種類以上の細菌がすみ、消化吸収の補助などに役立っている。ほとんどの細菌が、バクテロイデス(B)類かファーミキューテス(F)類のいずれかのグループに属している。
 研究チームが、太ったマウスとやせたマウスの腸内細菌について、B類とF類の割合を比べたところ、太ったマウスは、B類が50%以上も少なかった。人の場合も、太った人ほどB類が少なかった。カロリー制限で体重を減らすとB類が増え、F類が減った。
 研究チームは、B類が減ってF類が増えると、食事からのカロリー回収率が高まり、体重増につながると推測。腸内細菌の状態を変えることで、肥満を治療できる可能性があると考えている。
読売新聞 2006-12-21
ぜんそくの子、10年前の倍 幼稚園児のアトピー4% 文科省の学校保健調査
 ぜんそくを患っている幼稚園児や小中学生の割合が、いずれも10年前と比べ2倍以上に増え、過去最高を更新したことが文部科学省が2006年度に実施した学校保健統計調査(速報値)で分かった。
 文科省は「ぜんそくだけでなくアレルギー性疾患全体が増加しているが、大気汚染や生活習慣など、さまざまな影響が考えられ、原因特定は難しい」としている。
m3.com 2006-12-22