広葉樹(白)   

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2005年9月-2005年12月文献タイトル
乳房撮影で発見された乳癌は予後良好
アスピリンの結腸直腸癌リスク低下作用 長期服用の女性でも確認
延命措置停止の声に絶望 「会話聞こえた」とイタリア人患者
自力歩行を補助 障害者向け脚力強化装置 東北大、ロボット技術応用
前高血圧で心臓発作リスクが3倍に
早期退職、長寿効果はなし 米で企業従業員対象に調査
放射線療法は、ほぼすべての乳腺腫瘤摘出術の患者に有用 早期乳癌の女性の5年後の無再発率が99%を超えた
水でうがい、風邪4割減 薬効果確認できず、京都大
肥満の原因は脳に? 研究で脳細胞が摂食行動に関与している可能性が示される
ストレスを3分で測定 唾液で心の健康チェック
頬粘膜細胞で肺癌が検出できる可能性 カナダの研究者が頬粘膜を分析する新技術で感度66%、特異度70%を達成
幼児期・小児期の成長は成人期の心疾患に関連 乳児期に痩せていて小児期に太るとリスクがある可能性
目覚めのメカニズム解明 光を感じステロイド分泌
犬の癒やし効果、人より上 心臓病患者の不安など改善
高い夜間血圧と低い認知機能は関連 新たな研究により、血圧およびその関連リスクを正確に評価するために24時間自由行動下血圧測定の必要性が強調される
運動しない細身の人は運動する太った人より循環器リスク因子が少ない 横断研究によると、循環器リスクの低減にはフィットネス運動よりも減量のほうが重要
腹腔鏡的結腸切除術 ガムをかむと術後の退院が1日早い
ω-6脂肪酸に前立腺癌増殖リスク 培養組織を用いた実験で明らかに
飲酒は乳癌発症の危険因子である 一部の乳癌の発症率が高まっていた
肝癌にはレーザー焼灼術が有望 最小限の侵襲的治療で、切除術と同程度の生存率でありながら治療後の回復時間は短かい
中年期の運動が認知症とアルツハイマー病リスク低減
週 1 〜 2 回の魚摂取で認知機能障害の進行を遅延
乳癌の死亡リスクが運動で低減 週3〜5時間のウオーキング相当で
ピスタチオでコレステロールが低下
茶の摂取によって卵巣癌のリスクが低下する可能性
乳がん女性は二次がんを発症しやすい 乳がん患者では経過中に他がん腫を発症する危険が高い
チョコレートが喫煙者の心臓を保護する可能性

乳房撮影で発見された乳癌は予後良好
 テキサス大学MDアンダーソン癌センターのDonald Berry博士らは「乳癌検査法は患者の予後を左右する独立した因子であるかもしれない。最初に乳房撮影により乳癌が発見された女性の予後は,しこりの触知などの症状により発見された女性と比べて有意に良好であることが判明した」と発表した。
 同博士らは,最終的に乳癌と診断された女性のみを検討した。前回の乳房撮影によるスクリーニングが陰性でのちに腫瘍が発見された女性の乳癌による死亡リスクは,最初に乳房撮影により癌が発見された女性に比べ,病期調整後で53%高かった。また,乳房撮影によるスクリーニングを受けなかった対照群では,乳房撮影スクリーニングを受けた群に比べ,乳癌死亡リスクが36%高かった。
 同博士は「今回の試験が臨床医と患者に対して発している重要なメッセージは,乳房撮影により検出された乳癌はかなり良好な予後を示し,同年齢で,腫瘍の大きさと病期,リンパ節転移が同等であれば,乳房撮影で癌が発見された患者のほうが生存率が高いことだ」と述べている。
Medical Tribune 2005-9-29
アスピリンの結腸直腸癌リスク低下作用 長期服用の女性でも確認
 ハーバード大学のAndrew T. Chan博士らは,女性看護師保健研究に参加した 8 万2,911例の女性を対象にアスピリンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の服用状況と結腸直腸癌の関係を検討し,10年間以上にわたりアスピリンを週に 2 錠以上服用した女性で結腸直腸癌リスクが有意に低いことを明らかにした。
 最近のランダム化比較試験では,結腸直腸腺腫(良性腫瘍)または結腸直腸癌の病歴を持つ患者がアスピリンを定期的に服用すると,1 〜 3 年以内に腺腫が再発するリスクが低下することが明らかにされていた。しかし,アスピリンの長期投与が同等に結腸直腸癌リスクを下げるか否かは明らかではなく,有効量も不明であった。
Medical Tribune 2005-9-29
延命措置停止の声に絶望 「会話聞こえた」とイタリア人患者
 2年前に交通事故で意識不明となり医師から回復不可能と判断されていたイタリア人男性(38)が、3カ月前に意識を取り戻し「周囲の会話は全部聞こえていた。栄養チューブを外そうかという声が聞こえ絶望的な気持ちだった」と、最近話し始めた。
 カトリックの影響の強いイタリアでは、尊厳死への反対も根強く、一部の識者は「植物状態に見える患者でも、生命は維持するべきだ」と主張。回復の見込みのない患者の延命措置停止の是非をめぐる議論にも影響を与えそうだ。
 この男性は4児の父。内外の専門医を転々としたが、「回復不可能」と診断された。しかし、本人は「医者が『患者の意識はない』と話すのも聞いていた」という。
m3.com 2005-10-6
自力歩行を補助 障害者向け脚力強化装置 東北大、ロボット技術応用
 高齢やけがで脚力が衰えたため、車いすでの生活を余儀なくされている人が、自分の足で歩けることを目指す装着型の補助装置を東北大学の研究グループが試作した。
 足裏にかかる力や関節の曲がり具合をセンサーで読み取り、歩くのに必要な力を瞬時に予測、両足に取り付けたモーターで手助けする。
 下半身をパワーアップするこの装置は、装着型ロボットともいえ、日本が世界をリードするロボット技術が誕生に一役買った。
 高齢者らへの実際の応用はこれからだが、試作した小菅一弘(こすげ・かずひろ)教授は「人間の歩行動作を詳細に解析し設計したことで、シンプルながら信頼性の高い装置に仕上がった。5年程度で、数十万円の価格で実用化したい」と自信を見せている。
 今後は医療機関などと連携し、補助率をどの程度に設定すれば脚力が弱った人が快適に利用できるかを調べたいという。
m3.com 2005-10-12
前高血圧で心臓発作リスクが3倍に
 ニュージャージー医科歯科大学のAdnan I. Qureshi教授らは,前高血圧の患者は心筋梗塞(MI)と冠動脈疾患(CAD)リスクが 3 倍になると発表した。
 Qureshi教授によると,前高血圧を取り除くことができれば,すべての心筋梗塞の47%は潜在的に予防できるという。
 前高血圧とは収縮期血圧が120〜139mmHg,拡張期血圧が80〜89mmHgで,高血圧でもなければ正常血圧でもないグレーゾーンのことである。
 同教授は「伝統的に,前高血圧の患者に対しては,体重管理や規則的な運動,食事の変更などのライフスタイルの改善を勧めているが,この調査結果を見ると,前高血圧の患者をもっと積極的に治療すべきであろう」と結論付けた。
Medical Tribune 2005-10-20
早期退職、長寿効果はなし 米で企業従業員対象に調査
 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの電子版はこのほど、早期退職は必ずしも長生きにつながらないとする米研究者グループの論文を掲載した。
 国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルの米部門(ヒューストン)の従業員のうち、1973年から2003年までに55歳、60歳、65歳で退職した計約4500人について調査を実施。
 その結果(1)55歳や60歳で早期退職した人は、65歳で退職した人と比べ〓余命〓は延びていない(2)それどころか55歳で退職した人の死亡率は65歳での退職者より高かった(3)しかし60歳で退職した人の死亡率は65歳での退職者とほぼ同じだった-などの点が判明した。
m3.com 2005-10-24
放射線療法は、ほぼすべての乳腺腫瘤摘出術の患者に有用 早期乳癌の女性の5年後の無再発率が99%を超えた
 乳腺腫瘤摘出術を受けるほぼすべての乳癌患者は、手術後に放射線療法のコースを受けることによって利益が得られるだろうと、研究者らは報告している。
 「良好な特性を有する早期乳癌の女性のサブグループにおいても、乳房全体への放射線療法を標準治療にすべきである」と、ウィーン大学放射線腫瘍学の教授であるRichard Poetter, MDは述べた。
 米放射線腫瘍学会(ASTRO)の第47回年次総会(デンバー)で発表されたこの研究には、ステージT1またはT2の乳癌のために乳房温存手術を受けた875例の女性が登録され、このうち826例がintention-to-treat解析の対象となった。
 手術後に、410例の女性が、腫瘍床へのブースト照射を併用した乳房全体への放射線照射に無作為に割り付けられた。すべての女性が、同じくタモキシフェンまたはアナストロゾールのいずれかによるホルモン療法も受けた。
 その後5年間に再発した14例の女性のうち、13例は放射線療法を受けなかった女性であったと、Poetter博士は報告した。これは、放射線療法を受けた女性の5年後の局所無再発生存率は99.4%であり、放射線療法を行わなかった女性の5年後の局所無再発生存率は95.5%であったことになる。
m3.com 2005-10-24
水でうがい、風邪4割減 薬効果確認できず、京都大
 水でうがいすると、しない場合に比べ風邪になるのを4割近く抑える効果があるとの調査結果を京都大の川村孝教授(内科学)らがまとめ発表した。
 水道水に含まれる微量の塩素の殺菌効果や、口をすすぎ病原体を吐き出した可能性が考えられるという。一方、ヨード液を使ったうがい薬には、予防効果は確認できなかった。
 川村教授は「水うがいをしていれば発症後も気管支症状が軽かった。うがいは日本独自の衛生習慣で世界に広めたい。医療費や薬剤費の節約にもつながる」と話した。
m3.com 2005-10-31
肥満の原因は脳に? 研究で脳細胞が摂食行動に関与している可能性が示される
 新しい研究によれば、肥満は脳内のある細胞によって誘発される可能性があるという。
 マウスにおいてNPY/AgRPという細胞を取り除くと、摂食量が減り始めることが研究で示された。6-8日後、マウスの体重は20%減少した。
 この知見は、肥満の生物学的原因と、ヒトが過剰に食べるようになる要因の解明に一歩近づくものであると研究者らは述べる。
m3.com 2005-11-1
ストレスを3分で測定 唾液で心の健康チェック
 唾液(だえき)に含まれる成分から3分でストレスの程度を測定する装置を、産業技術総合研究所関西センターの脇田慎一ストレス計測評価研究チーム長らが開発した。
 より簡単に使える製品ができれば、自分でストレスを測定、心の健康状態をチェックできるという。
 ストレスが多いと唾液中のコルチゾールが増えたり免疫グロブリンAが減るなど変化するが、従来は測定に数時間かかった。
 開発した装置は、名刺大の樹脂製の板に唾液を乗せ、コルチゾールなどに蛍光色の目印を付けた抗体をくっつけ電気をかけて分離、濃度を分析する。唾液の処理を含め十分以内に測定できる。ストレスの目安となるほかの物質もこの方法で測定できる。
 脇田チーム長は「癒やしを売りにした商品の効果も確かめられる」と話している。
m3.com 2005-11-4
頬粘膜細胞で肺癌が検出できる可能性 カナダの研究者が頬粘膜を分析する新技術で感度66%、特異度70%を達成
 頬粘膜の擦過細胞の分析が早期肺癌のスクリーニング法として有用である可能性があるという研究結果が、米国胸部疾患学会議(ACCP)の第71回年次学術会議CHEST 2005で発表された。
 この研究グループは、肺癌が確認されている150症例と肺癌陰性の高リスク者990例を対象に、頬粘膜の擦過細胞を調べたところ、感度66%および特異度70%を得た。150症例のうち47症例を占める病期1の肺癌に対する感度は61%に達した。
 この研究で用いられたシステムは自動細胞定量測定装置というもので、一つの標本に含まれる数千個の細胞核に特異的なDNA染色をして核を評価し、微細な変化を検出することができる。この分析によって得られるスコア値が、悪性腫瘍の存在確率を示す。
m3.com 2005-11-7
幼児期・小児期の成長は成人期の心疾患に関連 乳児期に痩せていて小児期に太るとリスクがある可能性
 幼児期および小児期における成長パターンは後の人生における心疾患のリスクと強く関連することが新しい研究で示唆されている。
 2歳までは非常に痩せていて、2歳から11歳の間に急激に体重が増加することは、心疾患の独立したリスク因子であることが明らかになった。この研究では、出生から60歳代まで被験者を追跡調査した。
 同研究は、10年以上前に平均以下の出生体重とその後の心疾患との間に関連があることを最初に報告した研究チームにより実施されたものである。
 メッセージは明確である、と同研究を行ったDavid Barker, MD, PhDはWebMDに述べている。つまり、胎内および生後1年間の栄養と成長は、心疾患、糖尿病などの後の慢性疾患と強く関連している、ということである。
 同年齢集団との体重比較で、2歳時には体重が少なく11歳時には体重が多かった小児は、後年の心疾患リスクが、2歳時に体重が多く11歳時に体重が少なかった小児の3倍であることが同研究で認められた、とBarker博士は指摘している。
 「出生前および幼児・小児期の栄養と成長は成人期の疾患リスクに決定的な役割を果たしていることが、今、明らかになった」とBarker博士は述べている。
m3.com 2005-11-7
目覚めのメカニズム解明 光を感じステロイド分泌
 光が目の網膜に当たると脳にある体内時計の中枢からの指令で大量の副腎皮質ホルモン(ステロイド)が分泌されることを岡村均神戸大教授らが発表した。
 ステロイドは脳の細胞を活性化し、さわやかな〓朝の目覚め〓を迎えることができるらしい。
 岡村教授らは、体の細胞にある時計遺伝子に目印を付けたマウスを使い実験。目に光を当てると、副腎で時計遺伝子が多く発現することを見つけた。日光よりは弱く室内の蛍光灯より少し明るい程度の光の場合、一時間後にはステロイドの血中濃度が3倍近くに増加した。
 岡村教授は「光を当てるとうつ病の改善につながる治療法の効果を裏付けるものだと思う」と話している。
m3.com 2005-11-9
犬の癒やし効果、人より上 心臓病患者の不安など改善
 犬との短時間の触れ合いは、心臓病患者の不安軽減や血圧などの改善に人と接するより大きな効果をもたらすと、米カリフォルニア大ロサンゼルス校のチームが15日、テキサス州で開催中の米心臓病協会の会合で発表した。犬の「癒やし効果」を具体的な数値で示した研究は珍しい。
 チームは心不全で入院中の患者76人(平均57歳)を3班に分け、12分間にわたり(1)ボランティアが連れてきた犬と触れ合う(2)ボランティアだけの訪問を受ける(3)ベッドで安静にする-を実行してもらった。
 その結果、犬と触れ合った患者では、不安の強さが訪問前より平均24%低下した。人の訪問では10%しか低下せず、安静に寝ていた患者には変化はみられなかった。ストレスホルモンである「エピネフリン」の量も、犬と接した患者は17%も低下し、人の2%を大きく上回った。心臓や肺の血圧にも、犬のグループだけに改善がみられた。
 チームは「犬は人をより幸福に、落ち着いた気分にさせる」としている。
m3.com 2005-11-16
高い夜間血圧と低い認知機能は関連 新たな研究により、血圧およびその関連リスクを正確に評価するために24時間自由行動下血圧測定の必要性が強調される
 夜間血圧が高い、特に夜間の血圧降下がないことは、認知機能検査のスコアが低いことと関連がある、との研究が発表された。
「この結果は、血管疾患および血管イベントのリスクが最も高い集団に夜間血圧増加が典型的に存在することを示す他のデータを裏付ける。また、夜間[血圧]が将来の心血管性イベント、また死亡でさえも予測する最良の予測因子であることが、より大集団の研究によって示されている」とWilliam White, MDはこの結果について論評した。
 米国腎臓学会のプレスリリースによると、他の研究からも、高血圧と認識機能低下が若い成人においても関連していることが示唆されている。
m3.com 2005-11-18
運動しない細身の人は運動する太った人より循環器リスク因子が少ない 横断研究によると、循環器リスクの低減にはフィットネス運動よりも減量のほうが重要
 若年成人では運動するよりも体重を減らすほうが循環器の健康には良いというロードアイランド州のグループの研究結果が、米国心臓協会学術集会2005(AHA 2005)において発表された。
 「太っていて運動するよりも正常体重でいるほうがよい」とブラウン大学医学部の家庭医学科教授であるCharles Eaton, MDがMedscapeに語った。「米国では体重超過の人口が多い。問題は、減量と運動のどっちが優れているのかということだ」。
 この試験の結果によれば、冠動脈性心疾患(CHD)のリスク因子像がもっとも優れているのは当然ながら、肥満指数(BMI)が正常で多く運動する人であり、もっとも悪かったのは体重超過または肥満で運動量が少ない人だった。
 しかし、体重が正常で運動量が少ない被験者のCHDリスク像は、多く運動するが体重超過または肥満の被験者よりも優れていた。
m3.com 2005-11-29
腹腔鏡的結腸切除術 ガムをかむと術後の退院が1日早い
 テキサス大学サウスウェスタン医療センター外科のHarry Papaconstantinou助教授らは,待期的腹腔鏡的結腸切除術後,ガムをかむことで患者の退院が 1 日早まり,痛みを伴う腸管機能の喪失も軽減すると報告した。
 術後イレウスは,結腸手術後の入院長期化の原因としては最も多く,疼痛,腹部膨隆,便秘,嘔吐,脱水を引き起こす恐れがあるが,結腸切除などの腸管に対する手術では避けることができないと考えられている。術後の患者が通常の食事を取ることはできないが,かといって何も口にしなければ腸管の正常な機能の回復が遅れてしまう。
 Papaconstantinou助教授は「その中間をとって“嚥下せずにかむ”ことが有効なのではないか」と提案。実際,先に実施された擬給食による研究では腸管の機能回復が早まったという。そこで,同助教授らは,ランダム化前向き研究を行い,術後にガムをかむことで腸管機能と入院日数にどのような影響が生じるのか検討した。
 同助教授らは「腹腔鏡的結腸切除術後にガムを処方することは,回復を促進し入院コストを削減するための安価な介入法かもしれない」と結論付けた。
Medical Tribune 2005-12-1
ω-6脂肪酸に前立腺癌増殖リスク 培養組織を用いた実験で明らかに
 カリフォルニア大学サンフランシスコ校内科のMillie Hughes-Fulford助教授らは,コーン油などに含まれるω- 6 脂肪酸が前立腺癌の増殖を促進するとの実験結果を発表した。
 Hughes-Fulford助教授らはヒト前立腺癌の培養組織を用いた実験を行い,ω-6脂肪酸が前立腺癌の増殖に直接関与していることを初めて見出した。
 復員軍人局保健次官の科学顧問でもある同助教授は「ω-6脂肪酸はコーン油やパン・焼き菓子類に使用される食用油の大部分に含まれており,今回の知見は非常に重要」と指摘している。つまりω-6脂肪酸を多く含んだ食生活を続けていると,前立腺癌,大腸癌と一部の乳癌に共通の発癌機序であることが確認されているカスケードのスイッチを入れることになる。
 同助教授によると,60年前の米国ではω-6と有益な脂肪酸であるω-3脂肪酸(魚油)の摂取比率が 1:2 であったのに対し,現在ではこれが大幅に逆転して25:1 となっており,さらに,この60年間に米国における前立腺癌発生率は着実に増加しているという。
Medical Tribune 2005-12-1
飲酒は乳癌発症の危険因子である 一部の乳癌の発症率が高まっていた
 飲酒は乳癌発症の危険因子であるが、これは乳癌のうち一部の腫瘍にあてはまるとする研究が発表された。
 この研究はスウェーデンで閉経後の女性約52,000人を対象として行われ、中等量の飲酒によりエストロゲン受容体陽性(ER陽性)乳癌の発症率が上がることが明らかになった。さらにエストロゲンホルモンの服用も発症率を上げるが、そのER陽性腫瘍は乳癌のおよそ6割を占めている。
 飲酒と乳癌発症を関連にはしっかりとしたエビデンスがあり、大規模な研究のひとつでは1日1杯にも満たない量の飲酒でも、全く飲まなかった女性に比べて乳癌による死亡のリスクが30%高かったことが示されている。
m3.com 2005-12-5
肝癌にはレーザー焼灼術が有望 最小限の侵襲的治療で、切除術と同程度の生存率でありながら治療後の回復時間は短かい
 転移性肝癌の治療において、YAGレーザーによるレーザー焼灼術が外科的切除と同程度に有効であるというドイツの研究結果が、北米放射線学会の第91回学術集会と年次会議で発表された。
 発表によれば、他の侵襲が少ない腫瘍焼灼術法に比べてYAGレーザーが実用上で優れているのは、核磁気共鳴(MR)ガイド下で実施可能であり腫瘍への到達精度が向上できる点にある。現在、結腸直腸癌の肝転移患者を対象に研究が進められている。
 「レーザーは外科的切除と同程度に有効でありながら、副作用率と死亡率がはるかに少ない」と筆頭研究者であるMartin Mack, MDが記者会見で述べた。「長期試験における全生存期間は診断後3.8年であり、これは外科手術での1.5年から5年に劣らない」。

 Semelka博士によると、現在広く使用されている低侵襲治療法である高周波焼灼術はMRガイド下で利用できない。「MRは小さな腫瘍であっても見つけ出せる、もっとも高精度な画像撮影法である。悪性腫瘍が広がっている範囲を確定するのにもっとも適している」。
 Semelka博士の話によると、この研究は肝転移した肝癌の治療の進歩を示しているという。「ほんの数年前まで、転移性肝癌は末期段階と診断されていた。今や、レーザー焼灼術と高周波焼灼術のおかげで、転移性肝癌は死亡宣告ではなく慢性疾患のひとつになった」とSemelka博士は語った。
m3.com 2005-12-8
中年期の運動が認知症とアルツハイマー病リスク低減
 カロリンスカ研究所加齢研究センターのMiia Kivipelto博士らは,中年期によく運動する人は運動しない人に比べ後年に認知症やアルツハイマー病(AD)の発症リスクが低いとの研究結果を発表した。
 研究では,1972,77,82,87年に余暇の運動について調査した被験者から65〜79歳の高齢者1,449例をランダム化抽出し,98年に再調査を行ったところ,週に 2 回以上運動する人は 2 回未満の人に比べADのオッズが60%低く,認知症のオッズは50%低いことが明らかにされた。
Medical Tribune 2005-12-8
週 1 〜 2 回の魚摂取で認知機能障害の進行を遅延
 ラッシュ大学医療センター(シカゴ)内科学のMartha Clare Morris博士らの新しい研究によると,週 1 回以上魚を摂取すると,高齢者における認知機能障害の進行を年に10%遅延させるという。
 魚は神経認知機能発達と正常な脳機能に必須であるω-3脂肪酸の直接的な供給源である。魚の摂取は認知症と脳卒中リスクの低下と関連付けられている。ω-3脂肪酸,なかでもドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取は,高齢動物における記憶能力に重要であることが,近年の研究で示唆されている。
 Morris博士らは,65歳以上のシカゴ住民を対象に現在も進行中の試験の 6 年間のデータを分析。1993〜97年に初回面接調査を,その後 3 年ごとに 2 回の追跡面接調査を行った。面接調査では,4 つの標準認知機能検査と139種類の食品摂取頻度に関する食事調査を行い,さらに日常活動,運動強度,飲酒習慣,既往歴について調査した。
 その結果,2 人種から構成されたこの地域の高齢住民研究において,食事からの魚の摂取は認知機能の低下と 6 年以上も逆相関していた。1 週間に 1 回以上の魚料理摂取者は,それ未満の摂取者と比べて認知機能低下の進行速度が10〜13%遅延し,結果的に 3 〜 4 歳若い人と同等の進行速度を示した。全体的な食事摂取パターンで認知機能低下と魚摂取の関連が説明できるかを調べたが,野菜・果物の摂取量を調整した後も機能低下速度の差は変化しなかった。
Medical Tribune 2005-12-8
乳癌の死亡リスクが運動で低減 週3〜5時間のウオーキング相当で
 ハーバード大学のMichelle D. Holmes博士らは,Nurses' Health Study(NHS)の参加者で1984〜98年に I 〜 III 期の乳癌と診断された女性正看護師2,987例の回答に基づく前向き観察研究から,「乳癌の診断後の運動は乳癌死リスクを減少させる可能性がある」とする結論を発表した。
 乳癌患者の生存を予測する要因に関する調整を行ったところ,最高レベルの活動を行っていた患者は,最低レベルの活動しか行っていなかった患者と比べて相対死亡リスク,乳癌死,乳癌再発などの有害アウトカムが26〜40%低かった。
 Holmes博士は「平均的な速度で週 3 〜 5 時間のウオーキングに相当する運動を行った患者において,最大の恩恵が見られた。」と述べている。
Medical Tribune 2005-12-8
ピスタチオでコレステロールが低下
 ピスタチオおよびヒマワリの種子は、コレステロール値に注意している人にとっては最適なスナックである可能性がある。
 一般的に食べられているナッツや種子の中では、ピスタチオおよびヒマワリの種子が、コレステロールを低下させるフィトステロールを最も多く含んでいることが新たな研究によって示された。
 フィトステロールは、コレステロールに似た化学構造を持つ、植物中で発見された化合物群である。この植物性化合物を高用量補給することによって、血中コレステロール値を低下させ、ある種の癌のリスクを低減しうることがいくつかの研究から示されている。
 しかし、天然のフィトステロールを豊富に含む食品から得られる程度のさらに少ない量のフィトステロールも、コレステロール低下に有効である可能性が、最近の研究から示されていると研究者らは語る。
 ゴマと小麦麦芽は総フィトステロールを最も多く含んでいたが、これらの食品は、個々の食品としては一般的には摂取されていないと研究者らは語る。
 一般的に摂取されるナッツおよび種子の中では、ピスタチオおよびヒマワリ種子が最もフィトステロール含量が高く、次いでパンプキンシード、松の実、アーモンド、マカダミアナッツ、クログルミ、ペカンナッツ、カシューナッツ、ピーナッツおよびヘーゼルナッツが高かった。これらと比較して、チョコレートは、フィトステロール含量に関してはクログルミとペカンナッツの間であった。
m3.com 2005-12-14
茶の摂取によって卵巣癌のリスクが低下する可能性
 大規模前向き試験で、茶の摂取が上皮性卵巣癌のリスク低下に用量依存的に関連することが示唆された
 「実験室における研究による十分なエビデンスから、緑茶および紅茶の抽出液にはさまざまな癌に対する保護効果があることが示唆されている」とカロリンスカ研究所Susanna C. Larsson, MScとAlicja Wolk, DMScは記述している。「しかし、茶の摂取と卵巣癌のリスクとの関係を具体的に検討した疫学研究はほとんどない」。
 研究者らは、1987年から1990年の間にSwedish Mammography Cohortに登録された年齢40-76歳の卵巣癌患者61,057例を対象として、茶の摂取と卵巣癌のリスクとの関連を評価した。これらの被験者は、登録時に妥当性が確認された67項目からなる食物摂取頻度質問表に回答し、2004年12月まで癌発症率が15.1年の平均追跡調査された。
 「これらの結果から、1日あたりの摂取量が1杯増えるごとに、卵巣癌リスクは18%低下した。茶の摂取が上皮性卵巣癌のリスク低下に用量依存的に関連することが示唆される」と著者らは記述している。「この関連は、茶の摂取量が多い女性では、コーヒーの摂取量が少ないことに依存しない。このコホートではコーヒーは卵巣癌のリスクに関連がない」。
m3.com 2005-12-19
乳がん女性は二次がんを発症しやすい 乳がん患者では経過中に他がん腫を発症する危険が高い
 乳癌と診断されことのある女性は二次がんを発症しやすい、との研究結果が発表された。
 デンマーク対がん協会がん疫学研究所のLene Mellemkjar, MDらは論文の中で「多くの女性は乳癌と診断された後も生存しており、二次がん罹患率の調査は、治療合併症としての二次がんの問題だけに留まらず、他がん腫と共通する発症因子の存在についての知見が得られるかもしれない重要な研究である」と述べている。
 欧州各国やカナダ、豪州ならびにシンガポールなど13地区で1943年から2000年の間に住民がん登録に登録された乳がん初回診断患者525,527例を対象として二次がんの発症につき調査した。
 乳がん初回診断ののち対側乳房再発患者を除いた、すべての二次がんは31,399例であった。二次がんの罹患比(相対危険率)は、乳がん診断から年数を経てからの方が高くなっており、乳がん診断年齢が高いほど低くなっていた。
 部位別にみると多くのがん腫で罹患率が上昇しており、150例以上の増加が認められたがん腫としては胃がん(SIR 1.35)、結腸直腸がん(1.22)、肺がん(1.24)、軟部組織肉腫(2.25)、悪性黒色腫(1.29)、黒色腫以外の皮膚がん(1.58)、子宮内膜がん(1.52)、卵巣がん(1.48)、腎がん(1.27)、甲状腺がん(1.62)および白血病(1.52)があげられた。
m3.com 2005-12-20
チョコレートが喫煙者の心臓を保護する可能性
 少量のブラックチョコレートを食べることによって、喫煙者の動脈機能が数時間にわたり改善する。1日に数片の摂取によって動脈硬化のリスクが低下する可能性がある。
 研究者らは、20例の男性喫煙者に約1.4オンス(約40g)のブラックチョコレートまたはホワイトチョコレートを摂取させた。ちょうど2時間で、ブラックチョコレートは動脈壁の内側に配列する内皮細胞の機能を有意に改善させ、血栓形成を助ける血小板の活性を低下させた。喫煙は、この2種類の細胞の機能を乱すことが知られている。これらの細胞機能の乱れは、しばしば動脈硬化および心臓病の原因となる。
 ブラックチョコレートの保護効果は約8時間持続した。ホワイトチョコレートには、動脈または血小板に対する効果は認められなかった。この試験では、非喫煙者におけるチョコレートの効果は検討されなかった。
 研究者らは、大量のチョコレートは、血糖値、体脂肪、体重を上昇させることによって心臓病のリスクを上昇させる可能性があると注意している。しかし、この知見から、1日あたりちょうど2オンス(約57g)のブラックチョコレートによって冠動脈疾患のリスクが低下する可能性があることが示唆されている。
 このような少量で強力な効果が得られるのはなぜか?著者らによれば、おそらくブラックチョコレートには抗酸化物質が多量に含まれるためであるという。
m3.com 2005-12-27