広葉樹(白)  

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2004年9月-2005年1月文献タイトル
ブドウによってコレステロールおよび血中脂質が低下する可能性
高齢男性において運動が免疫力を高める
気分が悪いと記憶の正確度が高まる可能性
大気汚染は若年成人の肺の発達と機能に有害な影響を及ぼす
健康な加齢には健康な考え方が必要
犬の鼻、がん患者の尿識別 英医学誌が発表
ウイスキーが合併症抑制? 糖尿病で効果とサントリー
運動習慣により認知機能低下や活力度低下を予防可能
1日大さじ2杯のオリーブ油で冠動脈性心疾患を予防、米国食品医薬品局(FDA)がラベル表示を許可
小児にも前高血圧を適用
高齢長距離走者のほうがより記録が向上 ただし年齢別上位 人の検討で
食物線維が湿性咳嗽(がいそう)を抑制
小児への体罰は逆効果
体重が安定している場合、メタボリックシンドロームの発症率は低い
高血圧は若年者でも認知機能を低下 血圧が上昇したら治療開始を
やせた男性飲酒で危険上昇 2型糖尿病で研究班調査
明るさでやる気引き出す? 松下電工が新照明システム
運動が中高年の心血管死を予防 中等度〜強度ならリスクを38%低減
〜高齢者の寝たきり〜 入院や活動性の低下がきっかけ
1日1杯の赤ワインで 前立腺癌リスクが半減
インスリン吸入でHbA1c目標値を達成
喫煙で年間483万人死亡 全世界の死因の12% 1位は心臓血管病 米研究グループが調査
夢が問題を解決することも
ファスト・フードは肥満とインスリン抵抗性のリスクを高める 15年間の調査から
胃薬ががん転移を抑制 シメチジンに意外な効果 大腸がんの生存率アップ
比較的若年の女性では、葉酸の積極的摂取で高血圧発症が予防できる可能性
コーヒー党に肝がん少ない 肝硬変防止の可能性も 東北大が6万人調査

ブドウによってコレステロールおよび血中脂質が低下する可能性
 コレステロールや血中脂質の低下に一房のブドウのように身近なものが役に立つかもしれない。
ブドウにはシプロフィブレートなどの処方薬と同じようにコレステロールや血中脂質の一種であるトリグリセリドを低下させる可能性があるpterostilbeneという成分が含まれている。
 米国農務省のAgnes Rimando博士は、pterostilbeneが血中脂質値の調節に関与している酵素にどの程度の作用を示すかを評価した。ラット肝細胞における試験において、この酵素に対するブドウ成分の作用はシプロフィブレートの作用と同様であることが認められた。
 このブドウ成分は実験において抗がん作用も認められている。
 pterostilbeneはブドウにだけ含まれているというわけではなく、ブルーベリーにも含まれており、その抗脂質作用および抗コレステロール作用の根拠となっている、とRimando博士らは今週前半に報告した。
 このような有益な作用を得るにはどのくらいのブドウを食べなければならないかは、まだ明らかにされていない。
 しかし、さらなる試験が行われるものとみられる。
m3.com 2004-9-1
高齢男性において運動が免疫力を高める
 高齢でも運動の効果は必ずある。実際、定期的にトレーニングをする60代以上の男性は、加齢により衰える免疫力を向上させることができる。
 Monika Fleshner氏が率いる研究チームは、20-25歳および65-79歳の身体的に活発な男性または運動不足の男性46例を対象に、免疫系の反応を検討した。
 運動不足の男性群は、2年以上にわたり定期的な運動をしていなかった。一方、身体的に活発な男性群は、2年以上にわたり週3回以上運動していた。全例とも健康であり、喫煙、薬物服用、大量の飲酒が認められる者はいなかった。
 運動習慣のある高齢者は、運動不足の高齢者に比べて、有意に高い免疫系反応を示した。観察された免疫レベルは、本研究に参加した若年男性でみられた免疫反応に匹敵していた。
 通常の場合、免疫系反応は年齢とともに低下し、高齢者は病気にかかりやすい状態となる。
 「身体的に活発な生活習慣の維持によって、一生涯にわたり健康状態の改善が得られるが、このことは特に免疫系が弱体化している時期にあてはまる」と研究者らは記している。
 必要なのは定期的かつ適度な運動のみである、と研究者らは述べている。
m3.com 2004-9-1
気分が悪いと記憶の正確度が高まる可能性
 新しい研究により、気分が記憶に強い影響を及ぼすことが示され、気分の悪い人は幸せな人よりも目撃者としては優れている可能性があることがわかった。
気分が良い人は目撃証言の細部に誤った情報が含まれる可能性が高いことが認められた。しかし、気分の悪い人は、出来事をより正確に説明できた。
 「前向きな気分の時に過去の出来事を想起すると、その情報には的外れのものが紛れ込んで品質が低下している可能性が高いことがわかった」と同研究を行ったニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)教授Joseph Forgas氏はニュースリリースで話している。
 直接目撃した出来事を思い出すということは、さまざまな影響や歪曲を受けやすい一連の複雑なプロセスである、と同研究者らは述べている。そして、気分はこうしたプロセスに大きな役割を果たすとともに、重要な思考技能に影響を及ぼしている可能性があることが、同研究により示された。
 この研究は、気分が良い人は後に間違った情報を正しいものとして思い出す可能性が高くなることを示すとともに、目撃者の証言に頼った科学捜査および司法手続きに対して意味があると思われる。
m3.com 2004-9-9
大気汚染は若年成人の肺の発達と機能に有害な影響を及ぼす
 大気汚染への曝露は若年成人の呼吸器の成長と発達の有意な障害に関連し、成人期までに肺機能に臨床的および統計学的に有意な障害を引き起こすという縦断的プロスペクティブ(前向き)「Children's Health Study」の結果が掲載された。
 「大気汚染が小児の肺の発達に慢性的で有害な影響を及ぼすというエビデンスがますます増えている」と、南カリフォルニア大学のW. James Gauderman, PhDらは記している。「しかし、以前の縦断的研究では幼児を比較的短期間(2-4年間)追跡し、大気汚染の影響が青年期から成人期にまで持ちこまれるか否かについては答えが出されないままであった」。
 現在の大気汚染レベルに曝露されている12の地域の小児1,759例(平均年齢10歳)を対象に、肺が急速に発達し、肺機能が大幅に向上する8年間、肺機能を年1回測定した。1秒量(1秒間努力呼気容量;FEV1)、努力性肺活量(FVC)、最大呼気中間流量(MMEF)を主要エンドポイントとした。臨床的FEV1低値をFEV1予測値の80%未満のFEV1実測値と定義した。
 「8年間の試験期間中、肺機能の成長障害が累積して大きくなった結果、18歳時に大気汚染への曝露と臨床的FEV1低値との間に強い関連が認められた」と、著者らは記している。これらの障害は被験者の肺の成長に伴って回復する可能性は低かったと、著者らは指摘している。
 若年成人期の肺機能の障害が呼気器疾患のリスクを増加させる可能性があるが、「肺機能低下は成人期の合併症および死亡の強力なリスク因子であるので、大気汚染に関連した障害の最も大きな影響は晩年に起こる可能性がある」と、著者らは指摘している。
 「観察された影響の規模および成人期の罹患率と死亡率の決定因子としての肺機能の重要性を考慮すれば、都市部の大気汚染レベルを低下させるための対策の特定に絶えず重点を置くことが必要である」と、著者らは結論づけている。
m3.com 2004-9-14
健康な加齢には健康な考え方が必要
 幸せでいることで健康を維持できるだろうか? 従来の医学知識から、ポジティブな態度の患者はネガティブな考え方の患者よりも対処がうまく、回復が速い傾向があることがわかっている。最近、2件の新しい研究で、特に健康な加齢には考え方がすべてであるという更なる証拠が得られた。
 第1の試験では、テキサス大学医学部(ガルベストン)のGlenn V. Ostir, PhDらが、良好な心理学的健康が高齢者の衰弱の発現に影響を及ぼすかどうかを検討した。
 研究者らは、開始時に衰弱がみられなかった年齢65歳以上のメキシコ系アメリカ人1,600例を7年間追跡調査した。前週の感情に関する質問への回答から、高齢被験者のポジティブな考え方について定期的に評価した。
 高齢被験者は、将来が希望に満ちているかどうか、幸せであるかどうか、生活を楽しんでいるかどうか、他人と自分を比べてどうか(例、「私は他の人と同じようによい状態であると感じた」)をに関する質問に回答した。
 試験開始時および2年目、5年目、7年目の経過観察時に、研究者らは高齢者がどの程度衰弱状態になったかを評価した。研究者らは、4ポイント評点スケールに基づいて高齢者の歩行速度、握力、体重減少、疲労度を調べた。
 衰弱の割合は全体的に増加したが、研究チームは、よりポジティブな感情がみられた患者では衰弱状態になる割合が有意に低いことを見出した。例えば、試験開始時の高齢者のポジティブ効果スコアが1ポイント増加するごとに、衰弱リスクが3%低下することと関連していた。
m3.com 2004-9-15
犬の鼻、がん患者の尿識別 英医学誌が発表
 ぼうこうがんなどの患者の尿のにおいを、犬が高い確率で識別できるという研究結果を、英研究者らがまとめ、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル最新号で発表した。
 犬は、患者の尿に含まれる異常なタンパク質をかぎ分けられるとみられる。研究者らは36人のがん患者を含む144人分の尿サンプルを使って、コッカースパニエルやラブラドルレトリバーなど6頭を7カ月以上にわたって訓練。
 その後、7つの尿サンプルのにおいをかいで、がん患者のものと判断したサンプルの隣に横たわるというテストを繰り返したところ、41%の確率で成功した。コッカースパニエルの成績は優秀で56%の成功率だったという。
m3.com 2004-9-24
ウイスキーが合併症抑制? 糖尿病で効果とサントリー
 サントリーは19日、ウイスキーの中に糖尿病合併症の発症を抑える成分が含まれている可能性が高いと発表した。福山大や静岡県立大との共同研究で突き止め、3日の日本糖尿病合併症学会で報告した。
 体の細胞内にあるアルドース還元酵素という物質は糖尿病性網膜症などの合併症を加速することで知られている。サントリーは、いくつかの飲料を加えてこの酵素の活性化をどれだけ抑えられるか実験した。その結果、ウイスキーが83%に達し、ウーロン茶の38%、緑茶の6%、赤ワイン5%を大きく上回った。
 熟成期間の違うウイスキーでも比較したところ、30年ものが56%、20年が42%などと年数が長いほど高い結果が出たという。
 サントリーは「アルドース還元酵素の働きを抑える成分は、オークたるで熟成する過程で出ているのではないか」と話している。
m3.com 2004-6-28
運動習慣により認知機能低下や活力度低下を予防可能
 最近の大規模臨床研究で,社会的交流や若いころからの運動習慣は,認知機能の低下予防に役立つことが示されている。
 杏林大学高齢医学の鳥羽研二教授は,運動習慣を持つ体操教室会員を対象に,昨年 4 月から長期的運動習慣が肉体的精神的社会的活動に及ぼす効果について縦断調査を開始した。今回,初年度調査を解析し「運動を習慣とすることにより,認知機能低下や活力度低下が予防される可能性が示唆された」と報告した。
Medical Tribune 2004-10-21
1日大さじ2杯のオリーブ油で冠動脈性心疾患を予防、米国食品医薬品局(FDA)がラベル表示を許可
 米国食品医薬品局(FDA)は11月1日、オリーブ油やオリーブ油を含む食品に対し、冠動脈性心疾患の予防効果を示すラベル表示を許可した。これまでの研究結果から、飽和脂肪の代わりに、オリーブ油やオリーブ油を使った食品に含まれる一価不飽和脂肪を摂取することで、冠動脈性心疾患の発症リスクが減ることを示すエビデンスが得られたため。
 具体的にFDAが許可した表示は、「1日約大さじ2杯(23グラム)のオリーブ油を摂取すると、それに含まれる一価不飽和脂肪のために、冠動脈性心疾患の発症リスクが減少する可能性がある。この可能性のある効用を得るためには、同等量の飽和脂肪の代わりにオリーブ油を使い、1日の総摂取カロリーは増やさないようにするのがよい−−」という趣旨の文言を含んでいる。
MedWave 2004-11-3
小児にも前高血圧を適用
 トーマスジェファーソン大学内科のBonita Falkner博士ら小児と青年の高血圧に関する専門調査委員会は,収縮期血圧が120mmHg以上,拡張期血圧が80 mmHg以上の小児と青年も,前高血圧という新しいカテゴリーで記述されることになったと発表した。このカテゴリーは,将来本格的な高血圧を発症する成人に対して近年初めて命名された。
 専門調査委員会は,また,小児血圧を 3 歳から測定するように提案している。先天奇形または尿路障害の既往歴がある場合は,さらにより早く測定する必要がある。同委員会は,血圧を測定するうえで好ましい方法として,正しく調整された水銀血圧計またはアネロイド圧力計を挙げている。
Medical Tribune 2004-11-4
高齢長距離走者のほうがより記録が向上 ただし年齢別上位 人の検討で
 エール大学(米)整形外科のPeter Jokl教授らによる研究で,50歳以上の長距離走者,とりわけ女性走者のほうが,若い走者よりもタイムが大きく短縮することがわかった。
 Jokl教授らは,1983〜99年のニューヨークシティーマラソンに参加した全走者(41万5,000人)のタイム,年齢,性を検討した。さらに,年齢別に見た男女それぞれ上位50人の走者の成績も合わせて評価した。
 その結果,50〜59歳の女性走者は毎年2.08分ずつタイムを短縮し,同年齢の男性走者の 1 年当たり平均 8 秒の短縮と比べて,短縮幅が大きかった。
 一方,50歳以上の男性走者は,若い男性走者よりも大きくタイムを短縮したが,20〜30歳の走者は男女とも調査対象期間にはタイムの有意な短縮は認められなかった。上位50人の走者の最も有意なタイムの短縮は,男性では60〜69歳,70〜79歳,女性では50〜59歳,60〜69歳に認められた。
 同教授は「われわれのデータは,高齢者の一般的な健康状態が改善される可能性を示している。高齢の参加者が増え続けていることは驚くことではない。健康状態が良好でこのような激しい競走に参加する高齢者の増加は一般的な傾向である」と説明。また,「以前の生理学的諸研究で予測されたものよりも,高齢者の能力の限界は高いようである」と述べている。
Medical Tribune 2004-11-4
食物線維が湿性咳嗽(がいそう)を抑制
 カリフォルニア大学デービス校のLesley M. Butler博士らは,中国系シンガポール人保健調査のデータから,果実や大豆由来の食物線維が豊富な食事の摂取により,慢性呼吸器疾患症状,特に湿性咳嗽の発生率が低下することを明らかにした。
 Butler博士は「果実の多量摂取により湿性咳嗽の発生率が低下したが,野菜や穀物製品の多量摂取ではそうはならなかった。湿性咳嗽の発生を抑えるうえで,果実の食物線維は野菜や穀物製品の食物線維に比べて,より有益な生理作用を有する可能性がある」と述べている。
 食物線維のほかにも果実に含まれる成分,例えばフラボノイドなども慢性咳嗽の防御に重要だとされる。芳香族化合物であるフラボノイドの持つ多彩な作用のなかには,果実の黄色,赤色,青色など色素形成や,抗酸化・抗炎症作用がある。同博士らは,リンゴ,ブドウ,洋梨などフラボノイド含有量の多い果実の多量摂取と湿性咳嗽発生率の低下に関連が見られると指摘している。
Medical Tribune 2004-11-4
小児への体罰は逆効果
 ミシガン大学のAndrew Grogan-Kaylor助教授は,従来より強力な統計学的管理を駆使して,体罰は小児に有害な影響をもたらすとするこれまでの見解をさらに支持する同大学の研究結果を発表した。
 Grogan-Kaylor助教授は,体罰の影響を調べた 3 年間(1994,96,98年)の全米青年フォローアップのデータを用いた。この研究では,しばしばスパンキング(尻たたき)を伴う体罰が後年,小児の反社会的行動の発生にいかなる影響を与えるか分析を試みた。
 その結果,同助教授は「体罰がほんの軽い場合であっても,小児の反社会的行動が増加する可能性がある」と述べている。研究ではさらに,人種間,民族(エスニック・グループ)間で体罰の影響が異なる証拠は見られなかったとしている。
Medical Tribune 2004-11-4
体重が安定している場合、メタボリックシンドロームの発症率は低い
 15年間で15ポンド(約6.8kg)以上体重が増加した痩せ型の人では、体重を一定に保っている体重超過の人よりもメタボリックシンドローム発症のリスクが高いという調査結果が米国心臓協会2004 年度学術セッションで発表された。
 肥満指数(BMI)が一貫して安定している場合、トリグリセリド、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール、インスリン、血圧値が安定している可能性が高いとノースウェスタン大学助教授であるDonald M. Lloyd-Jonesは発表した。
 「われわれが見出した最も重要な知見は、開始時の体重にかかわりなく、体重が安定している場合、リスクファクターは大きく変化しないということであった」とLloyd-Jones博士は聴衆に語った。
 「開始時に体重超過であった患者における最初の目標は体重の安定化である」とLloyd-Jones博士は推奨した。「減量はその次の目標であろう」
 「開始時に痩せ型であり、後に体重が増加した人では、開始時に高体重で、後に体重が増加した人と同様にリスクファクターが上昇した。このような痩せ型の人は非常に危険なコースにいる」とLloyd-Jones博士は語った。
m3.com 2004-11-12
高血圧は若年者でも認知機能を低下 血圧が上昇したら治療開始を
 メーン大学オロノ校のMerrill F. Elias教授らは,若年高血圧者は高齢者と同様,精神機能の低下を惹起しやすいことを発表した。
 共同研究者の同教授は「年齢にかかわらず高血圧の予防と治療には早期から積極的な努力が必要である。高齢者では高血圧の認知機能への影響に配慮する必要があるが,若年者でも血圧の経時変動と認知機能の変化との関係に配慮すべきである」と述べている。
 Elias教授は「高血圧の認知機能低下への影響は,慢性的かつ長期的である。血圧が上昇し始めたら,高血圧予防に可能なあらゆる対策を行い,血圧が上昇してしまったら,直ちに治療する必要がある。若年者の治療をためらうべきでない。収縮期血圧を20mmHgないし拡張期血圧を10mmHg下げるだけでも,この年齢層において認知機能維持におおいに有益である」と示唆している。
Medical Tribune 2004-11-25
やせた男性飲酒で危険上昇 2型糖尿病で研究班調査
 食生活などがかかわる2型糖尿病に、肥満男性に比べてなりにくいとされるやせた男性でも、飲酒量が増えるにつれて発症の危険性は高まることが、厚生労働省研究班の大規模疫学調査で分かった。
 研究班の野田光彦虎の門病院内分泌代謝科部長は「やせた人には、血糖値を抑えるインスリンの分泌能力が弱い人が多い。長期の飲酒も分泌能力を下げると報告されており、両者の複合要因ではないか」と分析。「ほかの病気への影響も考慮し、日本酒に換算し1日1合程度を超える飲酒習慣には注意を」とアドバイスしている。
m3.com 2004-11-26
明るさでやる気引き出す? 松下電工が新照明システム
 室内の明るさを変えることで人のやる気を引き出し、快眠へも誘う-。松下電工は、光量の違いが精神状態に及ぼす影響を利用した照明を開発し、販売している。オフィスから学校、介護施設、病院まで適用対象は広く、専門家からは高評価を得ている。
 松下電工は、人に強い光を当てると、睡眠を促すメラトニンというホルモンの一種の分泌が減る点に注目した。
 部屋の明るさをコンピューターで自動制御し、午前9時ごろから正午までは通常の3倍の2500ルックスにまで光量を増やす。晴れた日の窓際並みの明るさで、出勤後間もない寝ぼけた状態を一掃し、仕事の能率を向上させる。昼休みは気分を落ち着かせるため光量をいったん減らし、休憩後はまた増やして食後の眠気を防ぎ、夕方には再び明るさを落とす仕組みだ。
 太陽の下で生活してきた人間の生体リズムは、明るさに変化のない室内では崩れやすい。松下は「めりはりをつけることでリズムが調整されるため、夜はメラトニンの分泌を促し、睡眠も快適になる」とPRしている。
m3.com 2004-12-15
運動が中高年の心血管死を予防 中等度〜強度ならリスクを38%低減
 定期的に軽度〜強度の運動を行うことは50〜60歳代にとって重要だが,複数の心疾患リスク要因を持っている人にはとりわけ重要である。
 ミシガン大学家庭医学のCaroline Richardson助教授らは,ミシガン大学社会研究所が1992年に開始したHealth and Retirement studyに参加した中高年者9,611例のデ−タをもとに,50〜60歳代前半に定期的な運動をしていた人では,座りがちの生活をしていた人に比べ,その後 8 年間の死亡リスクが35%低いことを明らかにした。複数の基礎疾患がある心疾患リスクの高い人では45%減少することがわかった。
 死亡リスクを下げるためにマラソンをする必要はなく,死亡リスク低下は,より強度の運動を行った人にも,ウオーキングやガーデニング,ダンスなどの軽度の運動を週に数回行った人にも見られた。肥満者でも定期的に運動を行った人では死亡リスクが低下した。
 これらの結果は,50〜60歳代に運動を行わせる取り組みは心血管疾患の危険因子を持つ人,心筋梗塞や脳卒中の既往歴を持つ人に焦点を絞るべきことを示唆している。
Medical Tribune 2004-12-16
〜高齢者の寝たきり〜 入院や活動性の低下がきっかけ
 エール大学老年医学のThomas M. Gill准教授は,疾患や傷害がおもなきっかけとなって入院や活動性の低下が誘発され,身体が弱くなっても独居生活をしていた高齢者が寝たきりとなっていると発表した。
 Gill准教授は「入院後 1 か月以内で寝たきりとなるリスクは60倍以上に上昇し,活動性が低下してから 1 か月以内で寝たきりとなるリスクは 6 倍以上」と述べている。寝たきりのリスクのなかで最も多く見られたのが,転倒やこれに関連した傷害であった。
 入浴,衣服の着替え,室内の歩行,自力でいすから立ち上がるなどの基本的な日常生活動作(ADL)ができなくなる高齢者は珍しくなく,致命的となったり,経済的な損失が大きくなる可能性が高い。同准教授は「したがって,ADLで不自由にならないよう未然に努力することが重点目標である」と述べているが,不自由となるプロセスについては,これまでほとんど解明されていない。
 そこで,同准教授らは,介入イベント(入院と制限された活動)と寝たきりの発生との関係について前向きの縦断的研究を行った。身体能力が減衰していることにより,この関係になんらかの調整が生じているかどうか検討した。
 調査は,ニューヘブンの70歳以上の住民754例を対象に電話インタビューを 5 年間毎月 1 回行い,被験者が受けている介入の程度と寝たきりになる件数との関係を検証した。
 その結果,寝たきりとなった被験者は55%で,入院したのは49%。活動性が低下した原因が 1 つ以上あった被験者は80%で,寝たきりとなるか通常の活動を制限されるような状態となっていた。
Medical Tribune 2004-12-23,30
1日1杯の赤ワインで 前立腺癌リスクが半減
 ワシントン大学のJanet L. Stanford教授らは,1 日 1 杯の赤ワインを摂取することで,前立腺癌リスクを半減でき,その予防効果は悪性度の高い癌ほど大きいようだとする新知見を発表した。
 研究責任者のStanford教授は「 1 週間に 4 オンス(約118.4mL)のグラス 4 杯以上の赤ワインを摂取していた男性では,前立腺癌リスクが50%減少し,最も悪性度の高い場合は約60%減少した。臨床的に悪性度の高い癌ほどリスク減少効果は大きかった」と述べている。
 同教授らは,ビールやアルコール度数の高い酒を飲んでも,好影響,悪影響ともに有意な変化はなく,白ワインでは一貫したリスク減少効果がないことを確認した。このことは,赤ワインには他のアルコール飲料にはない有効成分が含まれていることを示唆しており,同教授らは,その成分を抗酸化物質の一種であるリスベラトロールと考えている。
Medical Tribune 2004-12-23,30
インスリン吸入でHbA1c目標値を達成
 ドイツ糖尿病研究所のWerner Scherbaum教授は「現在,糖尿病患者におけるHbA1cのコントロールにはインスリン注射が用いられているが,将来はスプレーによるインスリン吸入が主流となるかもしれない」と,欧州糖尿病会議で行われたシンポジウムで報告した。
  1 型と 2 型糖尿病患者3,000例以上を対象として最近行われた臨床試験では,吸入インスリンの効果が検証された。ドイツではインスリン吸入剤は当局による承認待ちの段階であるが,HbA1c値を低下させる効果はインスリン皮下注の場合と同等で,経口糖尿病治療薬投与群より優れていることが実証された。さらに,吸入インスリンと経口糖尿病治療薬を併用した 2 型糖尿病患者では,良好な成績が得られた。総じて吸入法の導入により,多くの症例で厳格なHbA1c目標値が達成されたという。
 吸入療法がHbA1cの改善につながる理由は,同療法に対する患者の耐容性の高さにあると考えられている。アムステルダム大学(オランダ・アムステルダム)のRobert J. Heine教授は「インスリン吸入療法が承認されて普及するようになれば,インスリン投与を嫌がらずに行う患者の割合が15.5%から43.2%に増えるだろう」と試算している。
Medical Tribune 2004-12-23,30
喫煙で年間483万人死亡 全世界の死因の12% 1位は心臓血管病 米研究グループが調査ブルー
 喫煙が原因で2000年の1年間に死亡したと考えられる30歳以上の人は、全世界で483万人に達し、死因の12%を占めるとの調査結果を、米ハーバード大のマジド・エザッチ博士らの研究グループが25日までにまとめた。
 先進国と発展途上国の死者はほぼ同数だが、途上国ではアジアや西太平洋地域に集中。死因となったのはいずれも心臓血管系の病気が1位、途上国では慢性閉塞性肺疾患など呼吸器系疾患の割合が高い傾向が見られた。
 喫煙による死亡数は従来約500万人とされてきたが、地域や死因別に詳細に推定したのは初めて。研究グループは「地域ごとの喫煙傾向の特徴も踏まえ、途上国などでの対策を強化しなければ、健康被害はさらに深刻になる」と警告している。
m3.com 2004-12-27
夢が問題を解決することも
 問題の解決策が夢の中で見つかる可能性がある。問題が起きた後1週間以内に、睡眠中に夢が問題の解決策を教えてくれることがあると、研究者らは述べている。
新規の研究において、カナダの心理学専攻の学部生470名が、自分の見た夢を1週間記録した。学部生らは夢の激しさ、感情および印象と同様、夢をどのくらいよく思い出すことができたかを評価した。
 翌週に、つい最近見た、よく思い出すことのできた夢について、より詳細な検討を参加者は行った。参加者らは、夢と、夢の1週間前までの無作為に選択した日の事象との関連に注目した。その後、事象を思い出すことのできた確かさと、事象と夢の関連の程度の両方について評価した。
 その後、参加者と無関係の判定者2名が夢および関連事象を再検討し、それらの事象から生じた問題の解決策が夢の中に含まれていたかどうかを判定した。
 判定者らは、夢が実際に解決策を提供しようとしていると結論づけた。夢の世界は、明らかに速やかに作用し、引き金となった出来事の後の夜、および6-7日後にも、洞察力とアドバイスを大量に生み出している。彼らは、夢が社会的および感情的な適応機能の助けになると述べている。
m3.com 2004-12-28
ファスト・フードは肥満とインスリン抵抗性のリスクを高める 15年間の調査から
 米国では肥満が急速に深刻化している。これに並行するようにファスト・フードの消費量が急増しているが、肥満との関係には注意が向けられてこなかった。そこで米国などの研究者が、15年間のファスト・フード店利用頻度と体重およびインスリン抵抗性の変化の関係を調べた。
 米国では、肥満が健康と経済に及ぼす影響が非常に大きな問題となっている。毎年30万人に過剰な死をもたらし、少なくとも1000億ドルの医寮費が過剰に支払われている。肥満した若者の増加は、糖尿病予備軍の増加を意味する。
 今回分析の対象になったのは、1984-2001年に米国で実施された青年期冠動脈疾患リスク進展調査(CARDIA)のデータだ。被験者として登録されていた白人と黒人の中から、1985-86年に18-31歳で、食事の内容に関する評価を繰り返し受けていた3031人を選出した。
 当初からずっとファスト・フード店の利用が少なかった人(週1回未満、203人)に比べ、15年間頻繁に利用した人(週2回以上、87人)では、その間の体重増加の平均が4.5kg多く、インスリン抵抗性も約2倍になっていた。得られた結果は、ファスト・フードの消費が肥満と2型糖尿病の強力なリスク因子であることを示唆した。
MedWave 2005-1-11
胃薬ががん転移を抑制 シメチジンに意外な効果 大腸がんの生存率アップ
 長年使用されてきた胃薬に、がんの転移を防ぐ作用があるらしいことが分かってきた。シメチジンという胃潰瘍(かいよう)や胃炎などの治療薬だ。
 その仕組み解明に取り組んでいる藤田保健衛生大松本純夫院長は「大腸がんで転移抑制効果があることが分かってきたが、他のがんでも転移を抑制している可能性がある」と指摘している。
 ▽不思議な効果
 シメチジンは世界初のH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)として1975年に登場し、以来30年も効果と安全性に優れた治療薬として日常臨床で使われ、市販されるようにもなった。そのシメチジンには、胃薬としての作用のほかにさまざまな効果があることが知られている。
 「この薬をのんでいると、帯状疱疹(ほうしん)のひどい痛みも少なくなるし、皮膚がんの一種メラノーマの転移も少ない。胃がんの予後も良いというような不思議な効果が知られていた」と松本院長。
 そこで、注目したのが大腸がんとの関係だ。原発性大腸がんの患者64人を、手術後2週間から1年間、シメチジンと抗がん剤(5FU)を投与した群と5FUだけを投与した群をほぼ半々に分け、10年生存率を比較すると、予想外の結果が浮かび上がってきた。
 ▽転移を半分以下に
 シメチジン投与群では10年生存率が84・6%だったのに対し、抗がん剤だけの群は49・8%と大きな差が見られ、シメチジンの効果があることが判明。転移の発生数で見ても、シメチジン投与群34人では7人で計8カ所だったが、抗がん剤単独群は30人中16人計23カ所で、シメチジン投与により転移が半分以下に抑えられていた。
 さらに大腸がんの進行度の目安になるリンパ節転移で比べてみた。
 リンパ節転移を伴わないケースでは、10年生存率はシメチジン投与群90・5%、抗がん剤単独群69・5%で、あまり差は見られなかった。
 ところが、リンパ節転移のあるケースの同生存率は、シメチジン投与群84・6%に対し、抗がん剤単独群では23・1%。このことは、転移を伴うケースの方が、シメチジンの効果が大きかったことを示していた。
医療新世紀 2005/01/11
比較的若年の女性では、葉酸の積極的摂取で高血圧発症が予防できる可能性
 比較的若年の女性では、葉酸の積極的摂取により高血圧発症が予防できる可能性が出てきた。米Harvard Medical SchoolのJohn P. Forman氏らがプロスペクティブ(前向き)に8年間追跡した結果だ。
 Forman氏らは、女性看護師6万2260人を対象としたNurses Health Study I(33〜55歳)と同様の9万3803例を対象としたNurses Health Study II(25〜42歳)において、試験開始時の葉酸摂取量(質問表より算出)により6群に事前層別化を行った。
 8年間の高血圧発症リスクを交絡因子を補正後、1日葉酸摂取量200μg未満の群と比較すると、Study Iでは、葉酸摂取量が増加すると高血圧発症リスクは低下傾向を示すが、有意な低下となったのは1000μg以上摂取群(相対リスク:0.82、95%信頼区間:0.69〜0.97)のみだった。
 一方、より若年を対象としたStudy IIでは200〜399μg摂取群ですでに低下傾向が認められ(相対リスク:0.91、95%信頼区間:0.83〜1.00)、400〜599μg摂取群では有意にリスクが低下した(相対リスク:0.81、95%信頼区間:0.72〜0.92)。さらに、Study IIにおいて1000μg以上摂取していた群では高血圧発症リスクは0.54(95%信頼区間:0.45〜0.66)まで低下していた。またStudy IIでは葉酸摂取量増加に伴い高血圧発症リスクが低下するという有意な傾向も認められた。
MedWave 2005-1-20
コーヒー党に肝がん少ない 肝硬変防止の可能性も 東北大が6万人調査
 コーヒーを1日に1杯以上飲む人が肝臓がんになる危険性は、全く飲まない人の6割程度。東北大の辻一郎教授(公衆衛生学)らが21日までに、約6万1000人の追跡調査結果をまとめた。
 辻教授によると、コーヒーに含まれるどんな物質が作用するかはよく分かっていないが、肝硬変の発症リスクを低下させる可能性があるほか、動物実験では成分のクロロゲン酸が肝臓がんの発生を抑制したとする報告もあるという。
 1984〜97年に、40歳以上の男女を7〜9年間追跡調査。計約6万1000人のうち、調査期間中に新たにがんになったのは117人だった。
 年齢や性別などの要因を考慮して解析した結果、全く飲まない人の危険度を1とした場合、1日平均1杯以上飲む人は0.58、1杯未満の人は0.71だった。
 がん以外の肝臓疾患を経験した人や60歳以上の人、過去に喫煙経験がある人では、こうした傾向が特に強かった。
 辻教授は「年齢や性別、飲酒状況などで分けて解析しても傾向は変わらなかった。ただし、コーヒーに砂糖などを入れすぎると体に良くないので注意してほしい」としている。
m3.com 2005-1-21