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2004年2月−2004年5月文献タイトル
適量飲酒でも脳萎縮の可能性 定説覆す研究成績を発表
肥満者で低い心肺フィットネス 小児期から活動的な生活を
タマネギなどが前立腺癌リスクを低減
超長寿は遺伝の影響大きい ニューイングランド百寿者調査
抗酸化物質が豊富な食事により糖尿病が予防される可能性 特にビタミンEなどの抗酸化物質を多く含む食品を摂取するとリスクが低下する可能性
地下鉄内スチールダストの安全性に疑問
幼児への頭部CT検査は慎重に
喫煙女性は閉経が早い
卵巣は卵を作り続けている 男女のちがいがまた1つ少なくなる?
温熱化学療法で腹膜癌腫症の生存率上昇
アルコールや麻酔薬が胎児脳を障害
英国が輸血経験者の献血を禁止 vCJD感染拡大を恐れる措置が保存血液量に影響
肖像画からもたばこが減少
内視鏡なしで結腸内部の立体像 CTバーチャル結腸鏡は従来方式の感度に匹敵
捕手に多い手指の微小血管障害
カレーが脳の老化を予防 香辛料が脳細胞を保護し、アルツハイマー病を予防する可能性
軽症鉄欠乏症は女性の記憶力に悪影響を及ぼす可能性あり 鉄欠乏であれば、サプリメントにより思考力を改善しうる
ミクロの医者ががん治療 がんを見つけ薬を放出するコンピューター
母乳育児によって成人期のコレステロール値が低下 1カ月の母乳育児によって一生涯の心疾患のリスクが低下する可能性
ギャンブルに後悔は大事 脳の機能が勝負に影響
ご飯で学習能力アップ マウス実験で名城大教授
身近な飲料が食道腺癌に影響を及ぼす模様 緑茶エキスは食道腺癌細胞株に対して抗腫瘍活性を示し、一方、清涼飲料摂取は食道腺癌発生に関連
〜経鼻的胃内視鏡〜 検査所要時間が短く鎮静も不要
ナタネ油の増量で牛乳がより健康的に
コーヒーの大量摂取で 2型糖尿病のリスク低下

適量飲酒でも脳萎縮の可能性 定説覆す研究成績を発表
 ジョンズホプキンス大学のJingzhong Ding博士および他の 5 つの医療機関に所属している研究者らによる共同研究チームは「中年者の飲酒が少量または適量であっても,脳の萎縮に関連があるかもしれない」と発表した。今回の調査では,脳卒中の罹患リスクが少量から適量までの飲酒により低減されなかったとして,従来の研究とは異なる結果となった。
 従来の研究では,慢性的アルコール乱用により脳の体積が減少するとされていた。今回の研究の筆頭研究者であるDing博士は「さらに適度の飲酒でも,脳萎縮を進行させる可能性を示唆している」と述べている。脳萎縮は,認知能低下と手足の機能低下に関連があるとされている。
Medical Tribune 2004-2-5
肥満者で低い心肺フィットネス 小児期から活動的な生活を
 青年期に心肺機能が良好であると中年期以降の高血圧や糖尿病の発症リスクが有意に低下し,腹部肥満,高血圧,高トリグリセライド(TG)血症,低HDL血症など危険因子の集積であるmetabolic syndromeのリスクも低下することが,米国立心肺血液研究所(NHLBI)による助成研究で明らかになった。
 NHLBIのBarbara Alving所長代理は,この研究について「心疾患と脳卒中およびその危険因子と戦ううえで心肺フィットネスと健康体重維持の重要性を強調するもの」とし,「できるだけ健康であるために,米国人は小児期から身体を活発に動かし,高齢になっても活動的な生活を送る必要がある」と述べた。
Medical Tribune 2004-2-5
タマネギなどが前立腺癌リスクを低減
 William Grant博士は1990年代後半の数値を用い,白人が多数を占める32か国(うち欧州20か国)の調査を行ったところ,肉食が前立腺癌死亡率の高さに関与することが再確認された。食事での脂質摂取量の多さも,死亡率の上昇に関連していた。アルコール飲料摂取は軽微な危険因子であった。
 一方,最大のリスク低減因子は,タマネギ,ニラ,ニンニクといったネギ科の野菜や穀物,果物,その他の野菜に含まれる複合糖質および抗酸化物質を多量に摂取することであった。トマトに含まれるリコピンは前立腺癌のリスクを低下させると考えられているが,この調査では単独での関連性は認められなかった。
Medical Tribune 2004-2-12
超長寿は遺伝の影響大きい ニューイングランド百寿者調査
 超高齢者に関する長期研究としては,現在までの登録者数1,500例と世界最大である「ニューイングランド百寿者調査」が継続中で,百寿者とその同胞および子(70〜80歳代)を対象に加齢疾患を検討することをおもな目的としているが,これまでに得られた知見が明らかにされた。
 ボストン大学内科のThomas Perls准教授はAnnals of Internal Medicineの論文で,超高齢まで生きられる人とそうでない人がいる理由を「百寿者には若年死に関係する遺伝子変異が存在しない。これが長寿の理由の 1 つである。家系研究により,超長寿には家系因子の有意な影響が確認されている」と説明している。
 また,同調査では百寿者の兄弟が百寿者になる可能性は一般人口の17倍,姉妹も8.2倍であることを確認している。同准教授はこれについて「女性より男性のほうが有益な遺伝子型から多くの恩恵を受けるようだ」と指摘している。男性の百寿者は女性に比べて少ないが,同准教授は「100歳以上になると,身体機能および認知機能の両面において女性よりも男性のほうが健康である傾向が強い。その理由の 1 つとして,男性が高齢まで生きるにはきわめて健康でなければならないことが挙げられる」と述べている。
 同准教授は,研究の次段階として,Elixir Pharmaceuticals社(マサチューセッツ州)と協力して百寿者のDNAを検討し,アルツハイマー病や糖尿病といった加齢疾患を持つ人のDNAと比較する大規模試験を考慮しているという。同准教授らは,こうした研究が加齢疾患の発症を予防する新薬の開発につながって欲しいと期待を寄せている。
Medical Tribune 2004-2-19
抗酸化物質が豊富な食事により糖尿病が予防される可能性 特にビタミンEなどの抗酸化物質を多く含む食品を摂取するとリスクが低下する可能性
 抗酸化物質が豊富な果物および野菜を多く取り入れた色彩豊かな食事を摂取することが糖尿病予防の一助となる可能性がある。
最高レベルのビタミンEを含む食事を摂取していた人では、抗酸化物質の摂取量が最低レベルであった人に比べて、2型糖尿病になる可能性が30%低いことが新規研究で示された。
 また、色彩豊かな果物や野菜に含まれる抗酸化物質の一種であるカロテノイドを多く摂取した人でも2型糖尿病の発現リスクが低いことが明らかになった。
 抗酸化物質は全粒の穀物、果物および野菜に含まれている。これらの物質を多く含む食事の摂取は、体内の細胞に傷害を引き起こす不安定分子であるフリーラジカルと対抗することによって、糖尿病のような慢性疾患の予防といった健康に対するさまざまな効果を発揮することが以前の研究によって示唆されている。
m3.com 2004-2-26
地下鉄内スチールダストの安全性に疑問
 コロンビア大学環境衛生科学部のPatrick L. Kinney准教授は,ニューヨーク市とロサンゼルスの地下鉄の乗客が吸い込んだ微粒子状物質を検討した結果,車内のスチールダストが空気中に浮遊する高レベルの鉄,マンガン,クロムを生成することを発表した。
 Kinney准教授らによると,実際にこのような物質のレベルはニューヨーク市の家庭やアウトドア施設で検出されたレベルよりも100倍も高いレベルであったという。
Medical Tribune 2004-2-26
幼児への頭部CT検査は慎重に
 癌治療などで小児の脳に高線量の放射線を照射した場合,のちに認知障害を生ずる恐れがあることは既に知られている。転倒事故後の幼児に対して,重大な損傷の有無を確かめるために頭部CTが適用されるケースは多いが,カロリンスカ研究所のPer Hall教授らは,頭部CTによる低線量の放射線が脳の発達に与える影響について検討した。
 Hall教授らは,皮膚血管腫のため生後18か月までに頭部に低線量放射線療法を受けたことのあるスウェーデンの若者3,094例を対象に,知能テストを行った。治療時に250mGyを超える照射を受けていた男性で,高校卒業レベルに達したのは17%にすぎず,放射線療法を受けていない同年齢対照群の32%と比べて低い割合であった。学習能力および論理的思考を調べる認知テストでも,放射線療法群の成績は対照群より明らかに悪く,照射線量との相関が認められた。
 今回の試験結果を踏まえて,同教授は「低線量の放射線であっても小児の脳に悪影響を及ぼす恐れがあり,頭部CTなどで用いられる120 mGyの線量も例外ではない。したがって,幼児における軽度の頭部外傷の場合,CTの適用には慎重を期すべきだ」と主張している。
Medical Tribune 2004-2-26
喫煙女性は閉経が早い
 チビタノーバマルケ総合病院(イタリア)婦人科・内分泌科のFiliberto Di Prospero博士らは,喫煙する女性は非喫煙女性に比べて閉経開始年齢が 2 年早いと発表した。
 この研究で,たばこの煙に含まれる化学物質の影響で卵細胞が障害を受け,受精能力も低下することがわかった。
 英国不妊症治療学会のRichard Kennedy博士は「体外受精を希望する女性が喫煙者の場合,妊娠の確率は低いことがわかっていた。今回の研究で,この事実が裏づけられた」とコメントした。
Medical Tribune 2004-3-11
卵巣は卵を作り続けている 男女のちがいがまた1つ少なくなる?
 哺乳動物の卵巣が一生の間を通じて新しい卵子を作り出していることを示す研究が発表された。これは不妊や閉経期に対する新しい治療法の到来を予告するものとなるかもしれない。
 この発見は、女性や他の哺乳動物のメスが生まれる時に持っている未熟な卵子の数は増えることがないという、ずっと以前からの学説に異議を申し立てるものである。ストックされている卵子の数は、退行変性、細胞死、排卵などによって減少していき、閉経期に至って底をつくのだと考えられてきた。
 今回、米国の研究者がマウスの卵巣にある幹細胞が生殖可能な年令の間ずっと新しい卵を形成し続けていることを示す証拠を見出した。これは、卵巣と精子を作り続けるオスの精巣では、以前に考えられていたよりも共通な部分が多いことを示唆している。
Nature 2004-3-25
温熱化学療法で腹膜癌腫症の生存率上昇
 通常,腹膜癌腫症の予後は不良であるが,ウェイクフォレスト大学腫瘍外科のPerry Shen助教授らによる研究で,手術と温熱化学療法を組み合わせた積極的な治療により,生存期間を数年間延長できるケースもあることがわかった。
 この研究では,同大学バプテスト医療センターで1991〜2002年に治療を受けた結腸直腸癌が腹膜腔に転移した77例の患者のアウトカムについて後ろ向き調査を行った。34℃をやや上回る程度まで体温を低下させた状態で,可能な限りの癌組織を切除した直後にカテーテルを留置し,41℃に加熱した薬剤による腹腔内温熱化学療法(IPHC)を行った。
 この方法により,より高濃度の薬剤が腹膜に注入できる一方,他の部位への毒作用を最小限に抑えることができる。患者の平均生存期間は16か月で,17%の患者は 5 年以上生存した。
Medical Tribune 2004-3-25
アルコールや麻酔薬が胎児脳を障害
 ワシントン大学薬理学のJohn Olney教授らは「妊娠中期ころから飲酒を始めた妊婦,あるいは一般的な麻酔薬であるケタミンの曝露を受けた妊婦では,発育中の胎児の神経細胞を損傷する恐れがある」と報告した。
 Olney教授は「シナプス形成の胚芽期にある胎児の神経細胞は,ケタミンなどに短時間曝露されただけでもアポトーシス(細胞死)が励起される」と述べ,神経アポトーシスをもたらす 4 種類の薬剤としてN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト,γアミノ酪酸(GABA)類似薬,ナトリウムチャネルブロッカー,アルコールを挙げた。ここ数年間の動物実験において,これら薬剤を高用量ではなく,むしろ低用量で試みた結果から,同教授は「このような神経アポトーシスは,高齢者のうつ病などヒトの精神神経疾患に大きく関与する」とコメントした。
Medical Tribune 2004-3-25
英国が輸血経験者の献血を禁止 vCJD感染拡大を恐れる措置が保存血液量に影響
 英国政府は今から遡る24年間に輸血を受けた人からの血液提供を禁止しようとしている。これは、人間がかかる狂牛病といわれるvCJDが拡大する危険率を下げるためである。
 この新しい措置により、ほぼ5万2千人が献血できなくなると予想され、死活に関わりかねない保存血の量が減ることが心配されている。
 変型クロイツフェルト-ヤコブ病(vCJD)の患者で、輸血によって感染したのではないかと疑われる最初の例が見つかったことが公表されてから3ヶ月たった3月16日、John Reid保健相がこの条例について発表を行った。献血後にvCJDで死亡した供血者の血液を輸血されたある患者が、この致命的な脳変性疾患にかかったのである。
 この患者がvCJDにかかったのが輸血によるのか、それとも狂牛病に感染したウシの肉を食べたことによるのか、それははっきりしていない。しかし、専門家はずっと以前から輸血による感染はあり得ると考えてきている。
Nature 2004-4-1
肖像画からもたばこが減少
 オタゴ大学(ニュージーランド)公衆衛生学のNick Wilson博士らは,20世紀後半の英国において,喫煙している肖像画が激減していることを発表した。
 ハリウッド映画から受ける印象とは逆に,芸術の世界,少なくとも英国では,禁煙の傾向が高まっている。
 Wilson博士らによる調査の結果,国立ポートレートギャラリー(ロンドン)に展示された肖像画のうち,パイプ,葉巻,紙巻きたばこを手にした人物像が,1950〜99年にかけて急激に減少していることがわかった。
Medical Tribune 2004-4-8
内視鏡なしで結腸内部の立体像 CTバーチャル結腸鏡は従来方式の感度に匹敵
 ウィスコンシン大学のPerry J. Pickhardt博士によると,平均的な大腸癌リスクを有する患者では,3 次元(3D)CTバーチャル結腸鏡検査は従来の方式に匹敵する感度を示すようだ。この新技術は従来の結腸鏡によるスクリーニングより低侵襲で,内視鏡を挿入せずに結腸内部のさまざまな角度からの3D画像が得られるのが特徴。
 筆頭研究者のPickhardt博士は「バーチャル結腸鏡は従来の結腸鏡とともに大腸癌スクリーニングの主役になれるはずだ」と指摘。共同研究者で同大学のJ. Richard Choi博士は「米国で大腸癌は 2 番目に多い癌死亡原因であり,しかも多くは予防可能でありながら,スクリーニングを受けるのは対象者の半数に満たない」と説明。バーチャル結腸鏡によるスクリーニングの目的は受検者数を増やすことにあるとしている。
 Pickhardt博士によると,バーチャル結腸鏡で見落とされたポリープの大半は直径 5 mm以下で,臨床的意義はほぼゼロである。さらにバーチャル結腸鏡は,結腸粘膜層の内部にあって従来の結腸鏡では見落とされそうなポリープも検出できる。
 Choi博士は「バーチャル結腸鏡は粘膜を越えて筋層,さらに漿膜面に至るまで観察でき,進行性・浸潤性癌の指標となる結腸周囲リンパ節腫脹の検査にも適用できる」と述べている。
Medical Tribune 2004-4-15
捕手に多い手指の微小血管障害
 野球選手のなかで捕手は最も多くの防具を身に着けているが,ウェイクフォレスト大学バプテスト医療センター(ノースカロライナ州)のThomas Adam Ginn博士らは,それでも指の微小血管に外傷を受け,それが微小血管の虚血につながっているとの新知見を報告した。
 同博士らは,マイナーリーグの現役選手36例を対象に,両手のドプラ超音波検査,手指と腕の血圧測定,橈骨動脈または尺骨動脈に閉塞があるかどうかを検査するアレンテスト,手指径の測定を実施。得られたデータを守備位置別に比較・解析し,さらに捕手と他の守備位置との比較を行った。守備位置の内訳は捕手 9 例,外野手 7 例,内野手 5 例,投手15例。
 ドプラ検査の結果,捕手は尺骨動脈の血流異常の発生率が高く,9 例中 7 例でミットをはめる側の手指が顕著に肥大していることがわかった。また,示指の肥大は捕手にのみ認められた。さらに,捕手のなかには手指の痺れ,疼痛,筋力低下,刺痛を訴える者もいた。
Medical Tribune 2004-4-15
カレーが脳の老化を予防 香辛料が脳細胞を保護し、アルツハイマー病を予防する可能性
 低用量のカレーはアルツハイマー病から脳を保護しうるということが、少なくともラットでは認められている。この知見をヒトに対してどのように適応するかはまだ明らかになっていない。
 新しい研究により、料理用香辛料が実際に健康に良い働きをするというエビデンスが追加された。例えば、2型糖尿病患者や高コレステロール患者においてシナモンは血糖やコレステロールの血中濃度を改善しうることが示されている。チョウジ、ゲッケイジュ、ターメリックも糖尿病の改善に有望であることが明らかになっている。
 香辛料は血流中のフリーラジカルの傷害作用から細胞や組織、また動脈を、保護するものとみられる。フリーラジカルは細胞が損傷される細胞過程の副産物である。脳におけるこの種の細胞損傷がアルツハイマー病にもつながるというエビデンスも増えている。
m3.com 2004-4-22
軽症鉄欠乏症は女性の記憶力に悪影響を及ぼす可能性あり 鉄欠乏であれば、サプリメントにより思考力を改善しうる
 中等症の鉄欠乏症であっても、女性の思考力を低下させうる。しかし、鉄サプリメントは、鉄欠乏を原因とする全ての学習・記憶障害の改善に有効とみられる、と新規研究が示唆している。
 本研究は、鉄欠乏症と思考・記憶力の緩やかな低下を関連付けるこの種の研究の中では、最初の部類に入る。しかし、鉄の濃度が正常な女性には、サプリメントは無効であり、サプリメントを使用する前に、血中の鉄濃度を調べてもらうべきであると研究者らは注意を促す。
 1つのテストでは、コンピューターの画面に順次表示される絵を記憶するよう女性らに指示した。鉄濃度が正常な女性では、54問中、平均8問が不正解であったのに対して、鉄欠乏症の女性では、不正解の数はその2倍であった、とペンシルベニア州立大学栄養学の研究員であり、本研究の筆頭研究者であるLaura Murray-Kolb, PhDは述べる。
 しかし、最初のテストの後に、鉄欠乏症の女性に対して、鉄として60mg/日を投与し、その後、鉄濃度を測定して、この鉄剤により鉄濃度が正常化したことを確認して、、4カ月後に再度、試験を行ったところ、この鉄欠乏症の女性は、研究当初に正常であった女性と同等な成績をおさめた。
m3.com 2004-4-22
ミクロの医者ががん治療 がんを見つけ薬を放出するコンピューター
 特定のタイプのがんを診断し、治療することができるかもしれない、極微のバイオコンピューターが作られた。この装置が作動するのは試験管の中だけで、臨床に応用できるまでには何年もかかるだろう。しかし、将来、体内を移動し、病気の起こっている場所で治療を行う「高知能な薬」が実現し、今回の装置がその先駆けとなってくれることを研究者たちは期待している。
 この極微の装置は、シリコンチップと電子回路ではなく、DNAでできている。そして、電気信号で制御される代わりに環境の変化を感知し、生物学的分子を放出することにより反応する。
 このバイオコンピューターは、メッセンジャーRNAを感知する。メッセンジャーRNAは、DNAに似た分子で、遺伝子の情報からタンパク質を作るプロセスに関わっている。今回のバイオコンピューターは、特定のタイプの肺がんと前立腺がんに関係する遺伝子から作られる、異常なメッセンジャーRNAを見つけ出すことができる。
 こうしたRNAのひとつをこのコンピューターが感知すると、コンピューターは抗がん剤を放出する。この抗がん剤もDNAでできており、腫瘍(しゅよう)に関連した遺伝子の発現を抑える。
Nature 2004-5-13
母乳育児によって成人期のコレステロール値が低下 1カ月の母乳育児によって一生涯の心疾患のリスクが低下する可能性
 たった1カ月の母乳育児で一生涯の心疾患のリスクが低減できるかもしれない。
 この驚くべき知見は、未熟児の研究で13-16年前に収集されたデータに基づいている。この元となる試験は、未熟児への最善の栄養方法を調べることが目的であった。対象児には、約4週間母乳を与えられた児もあれば、人工乳が与えられた児もあった。
 現在、これらの対象児はティーンエイジャーになっている。これらの成人に近い対象児216例の血液検査から、母乳が与えられた者は人工乳が与えられた者よりもコレステロール値が低いことが明らかになっている。また、心疾患に関連する炎症マーカーである血中CRP値も低い。
 研究者らは、乳児期に母乳が与えられたティーンエイジャーの被験者で認められたのと同様のコレステロール値の10%の低下によって、心疾患のリスクが25%低下すると予測できると述べる。成人が低脂肪食を続けた場合のコレステロール低下は3%-6%であるため、これは重大である。
 初期の研究では、母乳育児によって血圧、肥満のリスク、2型糖尿病のリスクも低下することが明らかになっている。
m3.com 2004-5-19
ギャンブルに後悔は大事 脳の機能が勝負に影響
 ギャンブルに勝てないのは、脳の「後悔」を感じる場所がうまく機能していないため?フランスの国立科学研究センターなどの研究グループがこんな研究結果をまとめた。
 脳の額近くにあり、意思決定や物事への心配に関係するとみられる「眼窩(がんか)前頭皮質」という領域に注目。ここに障害がある人と健康な人に、実際に金をかけてルーレットのようなゲームをしてもらって調べた結果、障害がある人は「後悔」を示す感情が極めて弱く、負けも大きなマイナスになったという。
m3.com 2004-5-21
ご飯で学習能力アップ マウス実験で名城大教授
 ご飯を食べると学習能力が向上し、特に発芽玄米はアルツハイマー病の発症を抑制する効果があるとのマウスを使った研究結果を、名城大薬学部の鵜飼良(うかい・まこと)教授らのグループがまとめ発表した。
 鵜飼教授は「勉強の能率を高めるためにもご飯を食べることは重要」と指摘。今後はアルツハイマー病の治療薬への応用に向け、発芽玄米の研究を進めたいとしている。
m3.com 2004-5-26
身近な飲料が食道腺癌に影響を及ぼす模様 緑茶エキスは食道腺癌細胞株に対して抗腫瘍活性を示し、一方、清涼飲料摂取は食道腺癌発生に関連
 緑茶の抽出成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)は食道腺癌細胞株(BIC-1)において細胞増殖を用量依存的に抑制するということが示されている。これと対照的に、米国における1人あたりの炭酸清涼飲料摂取量の劇的な増加、つまり1946年の年間10.8ガロン(約40.6L)から2000年の年間53ガロン(約199.5L)への450%の増加は、米国の白人男性における食道腺癌発生率の劇的な増加に関連しているということが判明している。
 細胞を0.1-100μMのEGCGで処理したところ、72時間以内に細胞増殖の用量依存的な抑制が認められ、20μMを超える用量では細胞増殖はほとんど認められなかった。EGCGの主作用は、カスパーゼ3の活性を亢進し、切断PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)を増加させることによってアポトーシスを引き起こすことである。Chang博士は、この研究で示された最も有効なEGCG濃度は1日あたり緑茶2杯以上に相当すると推定した。
 作用機序はおそらく食道の酸曝露に関連している、とMallath博士は述べた。年間53ガロンの炭酸清涼飲料を摂取すると、食道の酸(pH4未満)曝露時間が32,100分延長する。また、米国女性は米国男性よりも炭酸飲料摂取量がずっと少なく、それに応じて食道腺癌発生率も低いと、同博士は指摘した。清涼飲料摂取量が少ない国(東欧、一部のアジア諸国)では、この期間に食道腺癌発生率はほとんど増加しなかった、と同博士は述べた。
m3.com 2004-5-27
〜経鼻的胃内視鏡〜 検査所要時間が短く鎮静も不要
 スコープの径をきわめて小さくすれば,胃内視鏡検査を経鼻的に実施することができる。ケルン市立病院のBernd Krakamp博士らは,「多くの医療機関でルーチンに実施されている経口胃内視鏡と比べた場合,経鼻胃内視鏡には鎮静の必要がなく,厄介な嘔吐反射を抑えることができるうえ検査所要時間も短縮できるなどの利点が見込める」と発表した。
 検査を怖がる患者が多いという理由から,経口胃内視鏡の大半は鎮静下で実施されている。しかし,この場合,検査後しばらくは患者を観察する必要があり,患者にとっても検査後すぐに仕事や日常活動に戻れないという問題がある。確かに,非鎮静下で経口胃内視鏡を実施すればこうした問題を回避できるが,別の解決策として経鼻胃内視鏡が注目されている。
 小径の経鼻胃内視鏡器具は,数年前から,複数のメーカーにより供給されている。経鼻胃内視鏡では,スコープを後鼻孔経由で挿入するため口蓋垂との接触を避けることができ,嘔吐反射はかなり抑えられることから,鎮静は不要である。
Medical Tribune 2004-5-27
ナタネ油の増量で牛乳がより健康的に
 ベルファストクイーンズ大学のAnna M. Fearon博士は,牛乳中の脂肪成分を低減する新たな方法は,乳牛に与えるナタネ油の増量であると発表した。
 北アイルランドの農業省ともかかわっているFearon博士は「ナタネ油を加えた飼料を毎日与えられた乳牛は,飽和脂肪酸が有意に少なく不飽和脂肪酸が多い牛乳を出す」と述べた。
 ナタネ油の量が多いと,産生される乳脂肪分の種類の変化もより大きくなると思われる。同博士らは「飼料中のナタネ油の含有量が増えても,乳脂肪の変化がプラトーに達する徴候はない。乳牛に与える飼料中の油分の栄養補助食品が多いほど,より良好な脂肪酸のバランスを取ることができると思われる」と指摘した。
Medical Tribune 2004-5-27
コーヒーの大量摂取で 2型糖尿病のリスク低下
 フィンランド国立公衆衛生研究所のJaakko Tuomilehto博士らは,コーヒーの大量摂取が 2 型糖尿病のリスク低下と関連しているとする研究結果を発表した。
 今回の研究は,脳卒中,冠動脈疾患,糖尿病の既往歴を持たないフィンランド人男性6,974例,女性7,655例を対象とし,1982,87,92年に実施された調査を合わせて解析したもの。研究によると,1 日 3 〜 4 杯のコーヒーを摂取すると,糖尿病のリスクが女性では29%,男性では27%低下するという。
 Tuomilehto博士らは「コーヒーの摂取と 2 型糖尿病のリスクとに,摂取量に応じた負の関連性が見られた」と述べている。その他の危険因子を検討した場合も,この関係は立証された。
Medical Tribune 2004-5-27