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2003年12月-2004年1月文献タイトル
無症状の成人における大腸新生物スクリーニングのためのCT 仮想大腸内視鏡
短いテロメアは癌リスクと関連 女性では男性を上回る
98%が1つ以上の不健康なライフスタイル持つ
ヒト用医薬品により魚類に奇怪な挙動 魚は食べても安全?
成人喘息の肺機能低下は防げる
赤ワインの成分が慢性閉塞性肺疾患に有効
非飲酒者でも肥満が肝硬変の原因に
唾液からHCVを検出
肝移植で肝癌の5生率向上
喫煙は乳癌の発症に多大な危険性を及ぼす
カプセル型の内視鏡検査法は小腸疾患の診断において有望
飲酒で高齢女性の乳癌リスク上昇 毎日30g以上のアルコール摂取で顕著
英国民は化学物質漬け WWFが即刻禁止訴え
ニコチンパッチへの過度な期待は禁物 長期禁煙成功率はわずか5%
食物中のマグネシウムは、2型糖尿病の発症予防に有効な可能性
ビタミンEとCの併用者はアルツハイマー病の罹患率、新規発症率が低い

無症状の成人における大腸新生物スクリーニングのためのCT 仮想大腸内視鏡
 無症状の成人を対象としたこの大規模研究では,コンピュータ断層撮影(CT)仮想大腸内視鏡検査と光学式大腸内視鏡検査を同日に行った.
 8 mm 以上の腺腫様ポリープの検出に対する仮想大腸内視鏡検査の感度と特異度は,共に 92%以上であった.患者は,光学式大腸内視鏡よりも仮想大腸内視鏡に対してより多く不快感を報告したが,より便利であるとも評価しており,次回のスクリーニング検査では仮想大腸内視鏡検査を選ぶと述べた.
 CT 仮想大腸内視鏡検査は,無症状の成人において大腸ポリープを正確に検出し,光学式大腸内視鏡検査よりもすぐれていた.仮想大腸内視鏡技術の改良がすすんだことが,今回の研究でこれまでの研究よりも高い感度を示したことの一因であった可能性がある.
New England Journal of Medicine 2003-12-4
短いテロメアは癌リスクと関連 女性では男性を上回る
 テキサス大学のXifeng Wu博士らが発表した研究によると,膀胱・頭頸部・肺・腎細胞癌患者は,癌ではない患者に比べ,統計学的に有意に短いテロメア(染色体の末端にある小粒)を有していた。同博士らは「今回初めてテロメアの長さがこれら癌のリスク増加と関係していることを証明した」と述べている。これまで,短いテロメアは腸癌および上皮癌と関連することが示されていた。
 Wu博士らによると,テロメアが短くなればなるほど,癌リスクが増加した。さらに,短いテロメアを持つ喫煙者は,短いテロメアを持つ非喫煙者や長いテロメアを持つ喫煙者に比べ,たばこ関連癌のリスクがかなり大きいことが判明した。
Medical Tribune 2003-12-4
98%が1つ以上の不健康なライフスタイル持つ
 米国家庭医学会(AAFP)のMichael O. Fleming次期会長は,1,000人の市民に対する世論調査の結果,98%が喫煙,運動不足,過剰飲酒,ストレスへの対処不良,睡眠不足などの不健康なライフスタイルを 1 つ以上持っていると認めていることが判明した,とAAFP年次集会で報告した。
 よいライフスタイルを守れない理由として回答者が一般的に挙げているのは,習慣を変えようとする意志が欠如していること,または生活にストレスが多く,生活をより健康的に変える時間がないため変更が難しいことである。しかし,Fleming次期会長は「この調査結果は同時に家庭医が,患者が不健康な生活を改め疾患を予防することを手助けする好機となる」と述べた。
Medical Tribune 2003-12-4
ヒト用医薬品により魚類に奇怪な挙動 魚は食べても安全?
 毒性学者でベイラー大学環境学のBryan Brooks助教授は,魚料理とともに抗うつ薬を摂取するリスクについて研究し,その知見を発表した。
 これまでも,魚類を食べるヒトは,海洋魚中の水銀,またミシガン湖にかつて大量に発見されたポリ塩化ビフェニル類(PCBs)などの摂取のほか,農薬流出による魚類への汚染も懸念の対象であった。しかし,抗うつ薬摂取の危険も新たに浮上した。現在,米国には水資源中に医薬品を投棄することを禁ずる規制は存在しない。
 Brooks助教授は今回の研究において,魚類がダラス(テキサス州)の北を流れるペカン川中の抗うつ成分であるfluoxetineを摂取すると,行動にどのような影響が現れるかを測定した。その結果,魚類に抗うつ薬が蓄積されることにより,攻撃性,交尾などの生存に影響を及ぼす行動に変化が認められた。
 魚類の組織中に蓄積した物質をヒトが摂取した場合,それがどのようにヒトに影響するかは,現在はまだわかっていない。
Medical Tribune 2003-12-11
成人喘息の肺機能低下は防げる
 10年以上経過した成人喘息患者は肺機能が低下するだろうか。当地で開かれた米国アレルギー・喘息・免疫学会の年次集会での研究発表によると,米国立心肺血液研究所の全米喘息・教育・予防プログラム(NAEP)の専門家が提示したガイドラインを遵守すれば肺機能の低下はないという。
 長期間にわたり適切な治療を受けた患者の肺機能に関する最も長期と思われる研究のなかで,ジョージタウン大学医療センターのTalal M. Nsouli博士らは「中等度〜重度の喘息患者13例(年齢47〜79歳)はNAEPのガイドラインに基づく適切な喘息療法を受けたところ,1 秒量(FEV1.0)の平均値が 1 年目と10年目でほぼ同等であった」と報告した。
 同博士らは「われわれの知る限り,これは10年間にわたり喘息患者のFEV1.0の変化を観察した最初の長期的研究で,NAEPが勧める吸入ステロイドやその他の適切な治療法を受ければ,患者の肺機能低下が防げることを強く示唆している」と結論付けた。
 この研究によると,患者の平均FEV1.0は 1 年目で90.7±17.6,10年目で90.9±11.4であった。
Medical Tribune 2003-12-18
赤ワインの成分が慢性閉塞性肺疾患に有効
 喫煙者で多く見られる慢性閉塞性肺疾患(COPD)は進行性かつ不可逆性の疾患と考えられているが,王立医科大学心肺研究所(ロンドン)胸部疾患学のLouise Donnelly博士らの研究で,赤ワインや赤ぶどうに含まれる抗酸化物質レスベラトロールには,COPDに関連するマクロファージやインターロイキン(IL)に対する抗炎症効果のあることがわかり,COPDの治療につながると期待されている。
 これらの研究結果を踏まえ,同博士は「レスベラトロールまたは関連化合物は,現在COPDの治療薬として使われているコルチコステロイドよりも効果的だ」と結論付けている。薬剤を肺の奥まで届かせることが難しいという問題点はあるが,吸入器を使うことで解決できるとしている。
Medical Tribune 2003-12-18
非飲酒者でも肥満が肝硬変の原因に
 肝硬変は,一般的にアルコール依存症,肝炎ウイルスなどの感染,薬物,毒素と関係がある。しかし,今回ワシントン大学消化器内科のJason Dominitz准教授らが行った研究によると,アルコールを全くもしくはほとんど飲まない人でも,肥満だと発症することがわかった。
 国民保健栄養調査に参加した 1 万1,465例の患者を対象とした前向き研究で,Dominitz准教授らはアルコールを飲む人は肝硬変による死亡率が上昇することはないが,アルコールを飲まないが肥満である人は肝硬変による死亡率と入院期間が増加することを見出した。この研究では肥満をbody mass index(BMI)が30以上と定義した。
Medical Tribune 2003-12-25
唾液からHCVを検出
 “C型肝炎はキスでも感染する”と最近ドイツで報道され,混乱を招いている。
 この報道の根拠となったのは,C型肝炎患者の唾液中から高感度ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によりC型肝炎ウイルス(HCV)が検出されたという内容の研究。
 しかし,エッセン大学ウイルス学研究所のMichael Roggendorf教授は「HCVのRNAが唾液中から検出されたという事実と,唾液を介した感染リスクが高いこととを同一視してはならない」と呼びかけている。
Medical Tribune 2004-1-1,8
肝移植で肝癌の5生率向上
 肝移植を受けた進行肝癌患者の 5 年生存率は60%以上であるのに対し,移植を受けなかった患者ではほぼ 0 %であることが,ジョンズホプキンス大学のPaul Thuluvath准教授らの研究で明らかになった。
 今回の研究では,1987〜2001年に米国で肝移植を受けた 4 万8,887例の患者データを,全米臓器分配ネットワークのデータベースから抽出して行った。
 肝癌のため肝移植を受けた985例を分析対象とし,その他の理由で肝移植を受けた 3 万3,339例を対照群とした。肝癌患者群と対照群は,1987〜91年,92〜96年,1997〜2001年のそれぞれ 5 年間で区切った 3 つの期間に分けられた。
 肝癌で移植を受けた患者では,特に最後の 5 年間に著しく確実な生存率の伸びが見られ,5 年生存率は1987〜91年では25.3%だったが,92〜96年では47%,1997〜2001年では61.1%と大幅に伸びていた。
Medical Tribune 2004-1-1,8
喫煙は乳癌の発症に多大な危険性を及ぼす
 喫煙は、以前に考えられていたよりも、乳癌の発症に多大な影響を及ぼすという研究結果がジャーナル誌「Journal of the National Cancer Institute」に公表された。これまで、喫煙と乳癌との関連性についての研究結果は一貫しておらず、多くの研究は、喫煙しない人の受動喫煙或いは間接喫煙について考慮していなかった。
 研究では、研究登録時の調査で喫煙状況を報告した116,544人の女性を対象に、乳癌の危険性について調査を行なった。
MedicalWave 2004-1-6
カプセル型の内視鏡検査法は小腸疾患の診断において有望
 小腸のデジタル画像を写す、患者が飲み込むカプセル型のビデオカメラによる内視鏡検査法(CE)は、他の診断技術では不可能であった領域を観察することができ、小腸疾患の診断において有望であるという研究結果がジャーナル誌「Radiology」に公表された。
 CEを使用すると、腸の不随意筋がこの「カメラ・ピル」を押し進めるに従って、小腸の全域(全長約25フィート)を表示する。
MedicalWave 2004-1-6
飲酒で高齢女性の乳癌リスク上昇 毎日30g以上のアルコール摂取で顕著
 フレッドハッチンソン癌研究センターのChristopher I. Li助教授らは,飲酒歴のある高齢女性では,非飲酒者と比べてエストロゲン受容体陽性(ER+)プロゲステロン受容体陽性(PR+)のホルモン感受性乳癌と診断される確率が有意に高いと報告した。
 Li助教授は「今回の研究の結果,現在も飲酒者で,自己報告で少なくとも毎日30g(ほぼ 2 杯のウイスキーに相当)以上のアルコールを飲用していた高齢女性は,非飲酒者に比べて乳癌罹患率が89%高いことが示された」と述べている。
Medical Tribune 2004-1-15
英国民は化学物質漬け WWFが即刻禁止訴え
 世界自然保護基金(WWF)は,イングランド,北部アイルランド,スコットランドおよびウェールズの13地域で合計155例の被験者から血清を採取,分析した結果,住民の体内に有毒な化学物質が蓄積されていると報告した。
 WWFがボランティア被験者155例を対象に調査した結果,被験者の99%でポリ塩化ビフェニル(PCB)とDDT農薬の分解産物が検出された。
 この結果について,WWFの専門家は「1970年代に英国で使用が禁止された毒性の強い化学物質にすべての被験者が汚染されており,健康上の未知のリスクにさらされ続けている」と述べている。
Medical Tribune 2004-1-15
ニコチンパッチへの過度な期待は禁物 長期禁煙成功率はわずか5%
 オックスフォード大学プライマリ・ヘルスケア学のPatricia Yudkin博士らは「ニコチンパッチを使用して禁煙を試みた1,686例中1,532例に対して 8 年後にフォローアップを行った結果,1 年間禁煙を継続できた者は 9 %で,うち 4 %はその後喫煙を再開し,8 年間禁煙できた者は 5 %にすぎなかった」と発表。
 「禁煙を成功に導くには,現在使用されているニコチンパッチより効果的な方法が強く望まれる」と指摘している。
Medical Tribune 2004-1-15
食物中のマグネシウムは、2型糖尿病の発症予防に有効な可能性
 男女とも、食物中のマグネシウムによって2型糖尿病の発症を予防しうる、という大規模コホート試験の結果が『Diabetes Care』の1月号に掲載された。同号に掲載された別のコホート試験では、同様の効果が、特に過体重の女性にあることが示唆されている。論説執筆者は、現時点で無作為化比較対照試験を実施するに足る説得力のある根拠が揃っているとの考えを示している。
 「われわれの試験結果は、マグネシウム摂取量と糖尿病リスクに、有意な逆相関があることを示唆する」とハーバード大学医学部のRuy Lopez-Ridaura, MDらは記している。「この試験結果は、マグネシウムの主要な栄養源(ナッツ、全粒粉、緑色葉野菜など)の摂取を増やすようにという食事に関する勧告を支持するものである」。
m3.com 2004-1-15
ビタミンEとCの併用者はアルツハイマー病の罹患率、新規発症率が低い
 米国Utah州Cache郡の住民を対象に行われた横断研究で、ビタミンEとCの両方を服用している人に、アルツハイマー病患者が少ないことがわかった。さらに、横断研究が行われた時点でアルツハイマー病に罹患していない人を追跡したところ、ビタミンEとCの服用者では、アルツハイマー病の発症リスクも低いことがわかったという。
 ビタミンEやビタミンCは抗酸化ビタミンとして知られ、疫学研究などで神経変性に対し予防的に作用することが示唆されているが、大規模な調査でアルツハイマー病の「罹患率」と「発症率」の両方に影響することが示唆されたのは初めて。なぜ高用量を併用した人でのみ予防的な作用が期待できるのかは不明だが、研究グループは、十分量の抗酸化ビタミンを用いた介入試験で、アルツハイマー病の一次予防効果を評価すべきと論じている。
medwave 2004-1-27