広葉樹(白)   

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2008年1月-2008年5月文献タイトル
「ピロリ菌で胃がん」確認 北大グループがマウス実験で
気の弱い男性、心臓発作の危険大…米の研究チーム
4つの習慣で14年長生き 英の2万人調査で判明
心臓を丸ごと再生 ラットで成功−米チーム
子供の幼少期に母親に精神的苦痛があると、小児喘息のリスクが上昇する可能性がある
加齢を遅らせるには、身体を動かすこと
いびきが慢性気管支炎に関連
たばこで年間800万人死亡 WHO、2030年までに
がん細胞の分裂、色で追跡…理研が新技術
脳卒中の死亡リスク、周囲の支えが少ない人は1・5倍
カルシウム拮抗薬がPDのリスク低下と関連
認知症発症後の生存期間は4.5年――イングランド/ウェールズの場合
不眠不休は脳にダメージ 大阪市大、ラットで確認
高BMIが肥満の過体重男性の脳卒中死と関連
ウイルス撃退タンパク発見 新型インフルにも有効?
今世紀にはタバコによる死亡が10億人か?
緑茶たっぷり、胃がん撃退 喫煙者には効果なし
酒で憂さ晴らしは逆効果?東大教授がラットで実験
緑藻で視力回復 網膜に遺伝子注入、ラットで実験成功
寝過ぎ、寝不足で糖尿病増 肥満の予防にも睡眠重要
老人斑なくてもアルツハイマー病発症 大阪市大発見、治療法開発も
イソフラボン血中濃度、高いほど乳がん発症の危険減--厚労省研究班調査
より幸福になるには、自分のためにお金を使うよりも他者のためにお金を使う方が良いことが、研究で明らかになった
「コレステロール値、低いと危険」富山大調査で死亡率高め
iPS細胞の治療実験成功 パーキンソン病ラットで
マラリア受精に不可欠なたんぱく質特定 ワクチン開発に期待
放射線から身を守る薬 細胞死を抑制、米チーム
飲酒と喫煙はアルツハイマー病の早期発症を促進
褒められたときの脳を撮影 金銭もらうのと同じ反応
アルツハイマー治療に光 さい帯血注射で有効?
尿酸はパーキンソン病の進行を緩徐化
鳥インフル感染、新診断法を開発…国立国際医療センター
認知症の予防のためには体重に注意 肥満はアルツハイマー病のリスクを80%上昇させるが、低体重も認知症の可能性を押し上げる
男性ホルモンの低下と生活習慣病 認知症の関連が明らかに
乳がん家系は前立腺に注意 リスク4倍、豪チーム確認
音楽を聴いてリラックスすると血圧が下がる
エネルギー消費の異常解明 東大、肥満薬開発に期待
卵の消費量と心不全のリスク

「ピロリ菌で胃がん」確認 北大グループがマウス実験で
 胃の中に感染したヘリコバクター・ピロリ菌が作り出す「CagA」というたんぱく質が、胃がんや小腸がんを発症させることを、北海道大の研究グループがマウスを使った実験で証明した。

 ピロリ菌とがんとの関連は、生体から取り出した細胞を使った実験などでは認められていたが、CagAによる発症を生きた動物で確認したのは世界で初めて。

 CagAは、胃粘膜の細胞を異常増殖させて胃がんを引き起こすたんぱく質として、最重要視されていた。300匹以上の遺伝子改変マウスの発がん率を調べた結果、生後1年半以内に約5%が胃がんや小腸がんを発症したほか、約10%は白血病やリンパ腫(しゅ)を発症した。正常なマウスはがんを発症せず、ピロリ菌が発症の原因となっていることが明確に表れた。

読売新聞 2008-1-8

気の弱い男性、心臓発作の危険大…米の研究チーム
 心配性の男性ほど心筋梗塞になりやすいという分析結果を、米南カリフォルニア大などの研究チームが発表した。

 研究は、心臓発作歴がない平均60歳の男性735人を対象に1986年からスタート。心理テストで、「内向的」「不安感」「怖がり」など、心配性の度合いを点数化。3年ごとに健康状態を追跡調査した。

 その結果、2004年までに75人が心筋梗塞を発症。心配性の点数が上位15%の人たちは、点数が最も低い人たちに比べ、心臓発作に襲われる危険性が30〜40%も高かった。
読売新聞 2008-1-9
4つの習慣で14年長生き 英の2万人調査で判明
 たばこを吸わず、飲酒はほどほど、野菜と果物を十分に取り、適度な運動をする人は、そうした習慣のない人よりも14年長く生きられるとの調査結果を、英ケンブリッジ大の研究チームが発表した。

 どれも健康に良いとされる生活習慣だが、具体的な利益をはじき出した点で意義があるという。

 チームは、英南東部の45-79歳の健康な住民約2万人を対象に、1993年から97年にかけて健康調査を実施、2006年までの死亡率と生活習慣との関係を解析した。

 その結果(1)喫煙しない(2)飲酒はワインなら1週間にグラス14杯まで(3)1日に最低こぶし5つ分程度の野菜、果物を取る(4)1日30分ほどの軽い運動をする-の習慣がある人は、4つともない人より、同年齢で病気による死亡率が4分の1と低く、14年分の寿命に相当することが分かった。
m3.com 2008-1-9
心臓を丸ごと再生 ラットで成功−米チーム
 死んだラットの心臓を型枠にして、別のラットの細胞を植え付けて拍動する心臓を丸ごと再生するのに米ミネソタ大の研究チームが成功した。

 皮膚や軟骨などの組織や、ぼうこうの再生はこれまでも行われているが、本格的な臓器再生につながる成果として注目を集めそうだ。

 チームによると、取り出したラットの心臓を特殊な溶剤で処理して細胞を除去し、心室や心臓弁、冠状動脈といった3次元構造がそのまま残ったコラーゲンなどからなる細胞外基質の塊を作製。

 この基質を型枠として、生まれたばかりのラットの心臓の細胞を注入して培養すると、心臓の細胞が増殖。4日後に心筋の収縮が起こり、8日後には全体が拍動し始め、血液を押し出す力は大人のラットの2%になった。

 チームは、人間の心臓の大きさや形に近いブタの心臓でも細胞の除去に成功。骨髄から採取する幹細胞や、皮膚から得られる万能細胞を使えば、拒絶反応の起こりにくい移植用の心臓がつくれる可能性がある。
m3.com 2008-1-15
子供の幼少期に母親に精神的苦痛があると、小児喘息のリスクが上昇する可能性がある
 子供の幼少期における母親の精神的苦痛が、小児喘息の発症に何らかの役割を果たし、特に産後期以降に続いている場合に顕著であるという長期研究の結果が報告されている。

 「幼少期に精神的苦痛のある母親と接することが、小児喘息の発症原因に何らかの役割を果たすというエビデンスが明らかになりつつある」とマニトバ大学(カナダ)のAnita L. Kozyrskyj, PhDらは記述している。「われわれの研究の主目的は、喘息素因の有無を問わない全小児集団において、子供の幼少期における母親の精神的苦痛と小児喘息の発症との間に関連があるかどうかを検討することであった」

 本研究では、マニトバ大学の医療・処方データベースを利用して、小児13,907例からなる1995年の出生コホートにおいて、生後1年間とその後の母親の精神的苦痛と7歳時点での喘息との関係が評価された。

 「子供の幼少期における母親の精神的苦痛が小児喘息の発症に何らかの役割を果たし、特に産後期以降も持続している場合に顕著である」と本研究の著者らは記述している。「われわれの研究で特に強調したいのは、本研究が喘息のリスクが高い集団に限定したものではなく、都市部および農村部の代表となる全小児集団において、広範囲に及ぶ母親のストレッサーについて検討した点である」
m3.com 2008-1-23
加齢を遅らせるには、身体を動かすこと
 新しい研究によれば、身体をよく動かすことによって、生物学的年齢を10歳若くできるかもしれないという。

 著者らは、この知見は定期的な運動のアンチエイジング効果についての「強力なメッセージである」と記述し、次のCDCガイドラインを支持している。

・週5日以上の1回30分以上の中強度の運動(早歩き等)または週3回以上の1回20分以上の激しい運動(ジョギング等)を行う。

 Cherkasらは、英国の成人の双生児2,400例を対象とした試験を実施した。これらの双生児は血液検体を提供し、身体活動、喫煙、病歴に関する調査票への記入を行った。研究者らは血液検体を用いて被験者の全血球におけるテロメア(染色体の末端部)の長さを測定した。

 テロメアは細胞が分裂するたびに少しずつ短くなることから、加齢のマーカーとなる可能性がある。

 この試験から、年齢、性別、喫煙、BMI(肥満度指数)または社会経済的地位にかかわりなく、よく身体を動かす人はあまり身体を動かさない人よりもテロメアが長いことが明らかになっている。
m3.com 2008-2-5
いびきが慢性気管支炎に関連
 いびきは慢性気管支炎に関連があるという前向き試験の結果が報告されている。

 「慢性気管支炎患者では、慢性気管支炎がない人よりもいびきが多くみられる」とKorea University and Ansan Hospital(韓国)のInkyung Baik, PhDらは記述している。「いびきが慢性気管支炎に及ぼす影響を検討した試験は少ない。われわれは、いびきと慢性気管支炎発症との関連を前向きに検討した」

 Korea University Ansan Hospitalにおいて、2001年6月25日潤オ2003年1月29日の間に、年齢40〜69歳(開始時)の韓国人男女5015例を対象として、包括的な健康診断と施設での面接(いびきに関する情報を含む)が行われた。開始時に、咳や痰が1年に3ヵ月以上、ほとんど毎日あると訴えた被験者は除外された。

 「この前向き試験では、いびきと慢性気管支炎との関連が認められた」と著者らは記述している。「われわれの知見は、いびきが慢性気管支炎の発症に影響を及ぼすという仮説を裏付けるものである。.... いびきと慢性気管支炎とのこの関連を確認し、この関連の根底にあるメカニズムを解明するにはさらなる研究が必要である」
m3.com 2008-2-7
たばこで年間800万人死亡 WHO、2030年までに
 世界保健機関(WHO)は、たばこに関連する世界の死者数が2030年までに年間800万人に上り、その約80%が発展途上国だけで占められる恐れがあると警告する報告書を発表した。先進国で喫煙の規制強化などを受け、たばこ会社が途上国に販路を拡大するためと指摘している。

 WHOによると現在、世界で推定約500万人が死亡。マーガレット・チャン事務局長は、途上国でのたばこ消費拡大は「病気や死者を増加させ、労働力の減少や医療費の増加につながる」と強調。報告書では、たばこ税の引き上げや禁煙支援の拡充、健康被害の警告強化など6項目の抑制策を提言した。

 報告書によると、世界の喫煙者は10億人以上。約3割が中国で、インド、インドネシア、ロシア、米国、日本が続いた。

 代表的な27カ国の規制の現状も紹介。日本では通常、たばこ1箱の値段が約300円なのに比べ、英国では5ポンド23ペンス(約1090円)と高額だと指摘した。日本と米国の間では大きな差はなかった。
m3.com 2008-2-8
がん細胞の分裂、色で追跡…理研が新技術
 がん細胞を、分裂のたびに、信号が点滅するように「赤」と「緑」に変色させる新技術が開発された。

 理化学研究所が、サンゴの蛍光物質を利用して成功した。がん細胞が体内でどのように活動しているかが一目でわかり、患者に最適な治療法を選ぶのに役立つという。

 細胞は、〈1〉分裂直後の休止期〈2〉DNAが複製されて分裂する増殖期――を繰り返して、増えている。

 理研は、休止期と増殖期の各段階で、細胞内にたくさん作られる特有のたんぱく質があることに着目。休止期のたんぱく質に「赤」、増殖期のたんぱく質には「緑」の蛍光物質が発色するようにがん細胞の遺伝子に蛍光遺伝子を組み込んだ。

 ガラス皿で培養して高感度カメラで見ると、赤と緑が交互に現れる様子が連続して観察できた。マウスの腹に移植した実験でも、赤と緑がまざって広がっていく様子が追跡できた。
読売新聞 2008-2-8
脳卒中の死亡リスク、周囲の支えが少ない人は1・5倍
 周囲に心身を支えてくれる家族や友人らが少ない人は、脳卒中で亡くなるリスクが1・5倍に高まることが、厚生労働省の研究班の大規模調査で分かった。

 研究班は、40〜69歳の男女約4万4000人を、1993年から約10年間追跡。自分の周囲に心身を支え安心させてくれる人がいるかどうかをアンケートで質問、その後の脳卒中や心筋梗塞の発症・死亡リスクを比較した。

 調査期間中、1057人が脳卒中を発症し、327人が死亡。心筋梗塞は301人が発症し、191人が死亡した。解析の結果、周囲の支えが「少ない」グループは「とても多い」グループに比べ、脳卒中で死亡するリスクが1・5倍(男性1・6倍、女性1・3倍)になった。
読売新聞 2008-2-9
カルシウム拮抗薬がPDのリスク低下と関連
 ある大規模なケースコントロール研究で、カルシウム拮抗薬の使用はパーキンソン病(PD)リスクの有意な低下と関連するが、その他の降圧薬は関連しないことが分かった。

 Meier博士らは、アンジオテンシンII拮抗薬、ベータ遮断薬、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬などの降圧薬とパーキンソン病と一次診断されるリスクの関係を調べるレトロスペクティブなケースコントロール解析を実施するため、イギリスの一般開業医に登録されている500万人以上の情報が入ったGeneral Practice Research Databaseのデータを利用した。

 症例は1994年から2005年の間に偶然PDと診断された40歳以上の患者であった。対照とPD症例は、データベースの年齢、性別、一般診療、診断日、前疾患の期間で一致していた。合計3637例の症例が見つかり、同数の対照と比較された。40%は女性であった。

 Meier博士らは、カルシウム拮抗薬を長期使用中(30日以上の処方と定義)の場合、全く降圧薬を使用していない場合と比べてPDの発症リスクが低下することを見出した。しかし、その他の評価した降圧薬ではこのような関連はみられなかった。

 なぜカルシウム拮抗薬にPD予防効果があるのか、これは実際に因果関係なのか、なぜ他の降圧薬では同じようにリスクが低下しないのかを明らかにするには、さらに研究が必要である、とMeier博士は述べた。
m3.com 2008-2-14
認知症発症後の生存期間は4.5年――イングランド/ウェールズの場合
 Jing Xie氏(ケンブリッジ大学)によれば、認知症は死亡リスクを増大させるが、イングランド/ウェールズ地方における認知症患者の生存期間は明らかにされていない。同氏らの研究グループは、認知症発症後の生存期間を推計し、さまざまな背景因子ごとに解析を行った。その結果、フォローアップ期間14年における認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年であり、性別、発症年齢、機能障害が生存期間に有意な影響を及ぼした。

 農村部の2施設および都市部の3施設に65歳以上の1万3,004人登録された。登録後2年、6年、8年、10年に認知症の評価を行い、フォローアップ期間14年(2005年)の時点における生存期間を推計した。

 認知症の発症年齢中央値は女性84歳、男性83歳であり(p=0.001)、死亡年齢中央値はそれぞれ90歳、87歳であった(p=0.001)。認知症発症後の推計生存期間中央値は女性が4.6年、男性が4.1年で、全体では4.5年であった。
CareNet.com 2008-2-15
不眠不休は脳にダメージ 大阪市大、ラットで確認
 ラットをほとんど眠らせないようにして5日間活動させると、脳内にあってホルモン分泌にかかわる下垂体の細胞の一部が死んでしまうことを、大阪市立大の木山博資教授らが実験で確かめた。

 強いストレスが過剰なホルモン分泌を呼び、細胞が働きすぎて死んでしまうらしい。木山教授は「人間にも同じホルモン分泌細胞がある」と指摘。「徹夜勤務が続くなど過労が原因で起きる病気に関係しているかもしれない」としている。

 木山教授らは、ラットが水を嫌うのに着目。浅い水を張った箱に入れて興奮状態にし、ほとんど眠れない状態で5日間放置した。すると脳下垂体の中央付近で特定のホルモンを分泌する組織のうち数%が細胞死を起こしていた。

 ただラットを2、3日休ませると、分泌細胞は元通り近くに再生。木山教授は「早めに休み、疲れをため込まないことが肝心だ」と話している。
m3.com 2008-2-18
高BMIが肥満の過体重男性の脳卒中死と関連
 肥満度指数(BMI)が高く収縮期血圧が高値の男性は脳卒中死のリスクが高いことを新規の研究が示唆している。

 中国人男性を対象としたこの大規模な住民対象研究から、過体重か肥満のみられる人ではBMIが脳卒中死を予測することが示唆される。

 死亡率について検討したこの前向き研究には、中国全土のサーベイランスセンター145カ所から、試験組み入れ時に既知の心血管疾患が認められなかった40-79歳の中国人男性211,946人が登録された。

 研究者らが10年間の追跡調査を行ったところ、BMIと収縮期血圧、収縮期血圧と脳卒中死には強力な正の相関がみられるものの、BMIと脳卒中死には線形相関が認められないことが明らかとなった。
m3.com 2008-2-18
ウイルス撃退タンパク発見 新型インフルにも有効?
 ウイルスの感染から体を守るために作られる「インターフェロン」を、体内で増産させるタンパク質を理化学研究所の渡会浩志上級研究員らのチームが発見した。

 チームは、マウスでこのタンパク質の働きを高め、感染したウイルスの撃退に成功。将来、人間に応用できれば、ワクチンが存在しない新型インフルエンザなどの有効な治療法開発につながる可能性もあるという。

 これまで、感染初期に大きな役割を果たす「樹状細胞」と呼ばれる免疫細胞で、ウイルスを認識するとインターフェロンが作られることは分かっていたが、詳しい仕組みは謎だった。

 チームは樹状細胞の表面で、ウイルス感染時にだけできるタンパク質「PDC-TREM」を発見。このタンパク質の働きを高めるとインターフェロンが増え、働きを抑えると減少することを突き止めた。
m3.com 2008-2-19
今世紀にはタバコによる死亡が10億人か?
 世界保健機構(WHO)は7日、「緊急対策」を講じなければ、今世紀には世界中で10億人がタバコ関連の原因により死亡する可能性があると警告した。

 WHOの報告書には次のようなタバコによる死亡に関する全体統計が掲載されている。

 * 20世紀にはタバコ関連の原因により1億人が死亡した。
 * 現在、年間540万人がタバコにより死亡する。
 * 喫煙すると、世界の8大死因(心疾患、脳卒中、癌など)のうち6つが起こりやすくなる。

 「現在生きている10億人を超える喫煙者のうち、約5億人はタバコにより死亡するであろう」と2008年WHO世界的タバコ流行に関する報告書(WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008)に記されている。

 介入しなければ2030年までに毎年800万人以上の人がタバコによって死亡し、そのうち80%は発展途上国で発生するだろうとWHOは予測している。
m3.com 2008-2-20
緑茶たっぷり、胃がん撃退 喫煙者には効果なし
 緑茶の渋味成分であるポリフェノールの一種の血中濃度が高い女性は低い女性に比べ、胃がんになる危険性が約3分の1だとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班が発表した。緑茶を習慣的に多く飲んでいると、血中濃度も上がるとみられる。

 男性も含めて喫煙との関係をみると、ポリフェノールの血中濃度が高い非喫煙者は胃がんの危険性が低いが、血中濃度が高い喫煙者は、危険性がやや上がる傾向も判明。

 研究員は「たばこと緑茶の組み合わせが悪いのではなく、緑茶をたくさん飲んでも、喫煙で効果が打ち消されてしまうためではないか」と分析している。
m3.com 2008-2-22
酒で憂さ晴らしは逆効果?東大教授がラットで実験
 憂さ晴らしに、酒の力を借りるのは無駄かも。東京大学の松木則夫教授(薬品作用学)らが、そんな研究結果を発表した。

 ラットを使った実験で、薄れかけた恐怖の記憶をアルコールが鮮明にする役割を示したという。

 松木教授らは、ラットをふだんの飼育環境と違う箱に移し、電気ショックを与えた。いったん通常の飼育環境に戻し、翌日、恐怖を与えた箱に戻した。ラットが箱の中でじっと動かない時間の長さから、「恐怖記憶」の度合いを測った。

 再び箱に入れて恐怖記憶を呼び覚ましたラットを2グループに分け、片方にアルコールを飲ませた。すると、酔ったラットは、しらふのグループより、箱の中でじっとしている時間が長くなった。恐怖記憶が、アルコールによって強められたと考えられるという。

 松木教授は「記憶はいったん不安定になり、徐々に固定していくとされる。嫌なことを忘れる奥の手は、おぼろげなうちに、楽しい記憶で上書きしてしまうこと」と酒に頼らない忘れ方を勧めている。
読売新聞 2008-2-28
緑藻で視力回復 網膜に遺伝子注入、ラットで実験成功
 東北大先進医工学研究機構の富田浩史准教授らの研究グループが、緑藻の遺伝子を失明したラットの網膜に注入し、視力を回復させる実験に成功した。視野が狭まったり、視力が急に落ちる「網膜色素変性症」や「加齢黄斑(かれいおうはん)変性症」の治療に応用できるという。

 網膜色素変性症は4000人に1人、加齢黄斑変性症は50歳以上の約1%の割合で発症するとされる。原因が分からず、特に網膜色素変性症は根本的な治療法が見つかっていない。

 研究グループは、ミドリムシのように光合成をし、動く緑藻類が光を認識できることに着目した。水田などにすむ緑藻類の一種「クラミドモナス」から遺伝子「チャネルロドプシン2」を取り出し、網膜色素変性症で失明したラットの網膜に注入した。光によって神経細胞を活動させるたんぱく質を生成する性質がこの遺伝子にあり、6週間後にラットの周囲で物を動かす実験をして首の動きから視力回復が実証された。

 脳波検査でも視力回復が確認され、注入後1年以上たっても効果は持続している。
m3.com 2008-3-6
寝過ぎ、寝不足で糖尿病増 肥満の予防にも睡眠重要
 睡眠が長すぎても短すぎても糖尿病になりやすく、1日5時間未満では肥満になる確率が高いなど、睡眠と生活習慣病が関連するとの研究結果を兼板佳孝日本大講師(公衆衛生学)らがまとめた。

 睡眠時間が短い人と長い人は死亡の危険が高いことは知られているが、生活習慣病の予防にも健やかな眠りが重要なことを示した形だ。

 兼板講師らは、地域の健診データ(約1000人)や職場の健診データ(約2万2000人)などを分析。

 糖尿病は、睡眠が6時間以上8時間未満で最も少なく、6時間未満や8時間以上だとその3-5倍だった。
m3.com 2008-3-13
老人斑なくてもアルツハイマー病発症 大阪市大発見、治療法開発も
 アルツハイマー病の確定診断の指標の一つで、患者の脳に必ず見られるとされてきた老人斑(アミロイド斑)がなくても、発病する場合があることを大阪市立大などの研究チームが発見した。こうした患者からは、これまで知られていなかった遺伝子の変異が見つかり、発症メカニズム解明や治療法開発につながる可能性がある。

 老人斑は、アミロイドβというたんぱく質が数珠状につながってできる。脳に蓄積すると、神経細胞が死んでしまい、記憶障害などアルツハイマー病の症状が出るとされる。

 富山貴美・大阪市立大准教授(脳神経科学)らが、若年性アルツハイマー病患者の遺伝子を調べたところ、アミロイドβを作る遺伝子の一部が欠損している例を発見。この患者の脳に老人斑は見つからず、アミロイドβ分子が数個結合した重合体だけがあった。

 研究チームの森啓・同大教授によると、多くのアルツハイマー病患者の脳には、老人斑とともにアミロイドβの重合体が見られる。ラットを使った研究では、この重合体が神経細胞同士の情報伝達を阻害し、認知症のような症状を起こす例が報告されているという。

 森教授は「アルツハイマー病は、アミロイドβの重合体があるだけで発症する可能性がある。老人斑にターゲットを絞った現在の診断や治療法を見直す必要性があるかもしれない」と話している。
m3.com 2008-3-16
イソフラボン血中濃度、高いほど乳がん発症の危険減--厚労省研究班調査
 大豆などに含まれるイソフラボンの血中濃度が高い女性は、低い女性に比べて乳がんになる危険性が約7割低いことが、厚生労働省研究班の大規模調査で分かった。特定保健用食品などによる過剰摂取の問題も指摘されているが、研究班は「食事から摂取する限り、多い方が乳がんの危険が低下すると考えられる」と説明している。

 研究班は、90年と93年に登録した9府県の女性約2万5000人を02年まで追跡。このうち、乳がんを発症した144人と、発症しなかった288人(発症したグループと年齢構成や居住地域の分布がほぼ同じになるように選定)の計432人を対象に、イソフラボンの成分のうちの「ゲニステイン」と「ダイゼイン」の血中濃度と発症の危険性を分析した。

 ゲニステインの血中濃度別に4グループに分けたところ、濃度が最も高いグループの乳がん発症の危険性は、最も低いグループの0・34倍だった。閉経前の女性だけで比較すると、最も高いグループは最も低いグループの0・14倍だった。

 研究班の岩崎基・国立がんセンター予防研究部室長によると、ゲニステイン濃度が最も高いグループは、食事でイソフラボンを1日当たり46・5ミリグラム、豆腐に換算すると約100グラム摂取していたという。
m3.com 2008-3-25
より幸福になるには、自分のためにお金を使うよりも他者のためにお金を使う方が良いことが、研究で明らかになった
 もっと幸せだと感じたい?それなら自分のために散財するよりも他者または慈善のためにお金を使うと、より良い気持ちになれる可能性がある。

 研究者らは最初に632名の米国人に、自分が全般的にどのくらい幸福かを評価し、収入と支出(請求書、他者への贈り物、自分自身への贈り物、および慈善のための寄付を含む)を報告するよう要請した。

 最も幸福であった人々は最も多くを与えた人であり、収入の額には関係なかったと、研究を行ったブリティッシュコロンビア大学(カナダ)心理学部門のElizabeth Dunn, PhDらは述べている。

 「各人がどれだけ多くの収入を得たかには関係なく、他者のためにお金を使った人々は、より大きな幸福を報告したのに対して、自分自身のためにより多くのお金を使った人々はそうではなかった」と、Dunn博士は述べている。
m3.com 2008-3-25
「コレステロール値、低いと危険」富山大調査で死亡率高め
 総コレステロール値が低めの人は高めの人に比べて、死亡率が高くなることが、富山大学の浜崎智仁教授(脂質栄養学)らの研究でわかった。

 一般市民の健康状態を追跡した5件の研究結果(計17万人)を詳しく分析した。

 「コレステロールが高いと危険」という“健康常識”を覆す結果で、これだけ大規模な調査で示されたのは初めて。

 調査によると、血液100ミリ・リットル中の総コレステロール値が160以上〜200ミリ・グラム未満を基準とすると、それより総コレステロール値が低い人の死亡率が男性で1・6倍、女性で1・4倍になることが判明。200ミリ・グラム以上の人では死亡率は変わらなかった。

 研究チームによれば、別の研究でコレステロールのうち、動脈硬化を促して「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロール値についても、低い人で死亡率が高い傾向だったという。
読売新聞 2008-3-28
iPS細胞の治療実験成功 パーキンソン病ラットで
 万能細胞の人工多能性幹細胞(iPS細胞)からつくった神経細胞を移植して、パーキンソン病のラットの症状を軽減させる実験に、米マサチューセッツ工科大などのチームが成功した。

 チームは、ラットの皮膚に複数の遺伝子を組み込んでつくったiPS細胞を、ドーパミンを分泌する神経細胞に成長させた後、パーキンソン病の症状を再現したラット計9匹の脳に移植した。

 その結果、8匹のラットで、特有の異常な動きが治まり、症状が改善した。ただし、iPS細胞の作製には、がん化の危険があるウイルスを使っていることなどから、チームは「安全面の課題はまだ多い」としている。
m3.com 2008-4-9
マラリア受精に不可欠なたんぱく質特定 ワクチン開発に期待
 自治医大は、産業医科大などと共同で、マラリアの病原体の受精に不可欠なたんぱく質を特定したと発表した。

 マラリアは、感染者の血液を吸った蚊を媒介して伝染し、現在でもアフリカなどを中心に、年間3億人の患者を出している。

研究グループは、感染したネズミが持つ病原体「マラリア原虫」の生殖細胞を調べ、雄側にだけ「GCS1」と呼ばれるたんぱく質が存在することを発見。GCS1を取り除いた原虫を観察した結果、ネズミの体内では成長するものの、その血液を吸った蚊の体内では、成長や受精が完全に停止していたことが判明した。
読売新聞 2008-4-10
放射線から身を守る薬 細胞死を抑制、米チーム
 放射線による急性障害を防ぐ薬を開発しマウスなどの動物実験で効果を確認したと、米ロズウェルパークがん研究所などのチームが発表した。

 正常細胞だけを保護するため、がんの放射線治療での副作用を緩和するのに有効なほか、原発事故や核攻撃などの緊急事態にも活用できる可能性があるとしている。

 チームによると、食中毒の原因となるサルモネラ菌の成分が、放射線の影響を受けやすい骨髄や胃腸の細胞の死を抑制するとともに組織の新生を促す性質を持つことに着目。この成分を使って薬を開発した。

 致死量の放射線13グレイを数十匹のマウスに照射する実験で、薬を投与しないと13日目までに全部が死んだが、照射30分前に投与すると30日後でも8割以上が生き残った。9グレイの照射では7%しか生存できなかったが、照射一時間後の投与でも40%が生き残った。

 アカゲザルでの実験でも生存率の向上が確認されたという。

 チームは、放射線治療を受けるがん患者を対象に、早ければ年内に臨床研究を始めるという。
m3.com 2008-4-11
飲酒と喫煙はアルツハイマー病の早期発症を促進
 1日1箱以上のタバコを吸う人は、そうでない人よりも数年早くアルツハイマー病を発症し、また、大量の飲酒はリスクをさらに上昇させるという。

 マウント・シナイ医療センターのWienアルツハイマー病センターに所属する研究者のRanjan Duara, MDは、大量の飲酒と大量の喫煙が重なるとアルツハイマー病が早期発症することを確認した。

 「発症を5年間遅らせることができれば、アルツハイマー病患者の総数は50%近く減少すると予想されている」とDuara博士は述べている。「大量の喫煙と飲酒を抑制または排除できれば、アルツハイマー病の発症を大幅に遅らせ、いずれかの時点でアルツハイマー病の患者数を減らすことが可能である」。

 大量の喫煙は、1日1箱以上のタバコの喫煙と定義した。大量の飲酒は、1日3杯以上の飲酒と定義した。また、研究者らは、アルツハイマー病のリスクを上昇させるアポリポタンパクE-4(ApoE-4)遺伝子変異をもつかどうかによって被験者をグループ分けした。

* 大量飲酒者はそうでない人よりも4.8年間早くアルツハイマー病を発症した。
* 大量喫煙者はそうでない人よりも2.3年間早くアルツハイマー病を発症した。
* 遺伝子変異によって発症年齢が3歳若くなった。

 3つのすべてのリスク因子をもつ人は、リスク因子をもたない人よりも8.5年間早くアルツハイマー病を発症した。
m3.com 2008-4-23
褒められたときの脳を撮影 金銭もらうのと同じ反応
 褒められるのは脳へのごほうび?
 自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘教授(神経科学)らのグループが世界で初めて、褒められた時の人の脳内画像を撮影し発表した。

 定藤教授らは、金銭のような報酬を得ると脳内の線条体という部位の活動が活発になることに着目。19人の男女を対象に、カードゲームで勝って賞金を得たときと、「信頼できる」などと褒められたときの脳を磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影。両方の場合で平常時と比較し、同じ部位で血流が平均0・3%増加していることが確認されたという。

 同教授は、今回の実験で他人から評価されることも報酬として認識され、線条体が活発になることが裏付けられたとし「『褒められると伸びる』とも言われる人間の社会的活動の解明への第一歩。教育などへの応用も可能かもしれない」と話した。
m3.com 2008-4-25
アルツハイマー治療に光 さい帯血注射で有効?
 へその緒の血液(さい帯血)を静脈に注射する手法で、アルツハイマー病の原因物質を脳内で蓄積しにくくすることに、埼玉医科大総合医療センターの森隆准教授と米国・南フロリダ大のチームが成功した。

 アルツハイマー病は、脳にアミロイドベータ(Aβ)と呼ばれるたんぱく質が異常に蓄積することで神経細胞が死に、認知障害が出る病気。そのため、Aβの蓄積を抑える薬の開発が世界中で進められている。

 研究チームは、生まれつきAβが蓄積しやすいマウス10匹の静脈に、2〜4週間おきに人のさい帯血細胞を10万個ずつ計8回注射した。すると、さい帯血細胞を注射しなかったマウスに比べ、脳内のAβ量は約7割減少した。
読売新聞 2008-4-29
尿酸はパーキンソン病の進行を緩徐化
 ヒトの体内において自然に発生する代謝物で、かつ主要な抗酸化物質である尿酸はパーキンソン病(PD)の進行を遅らせる可能性があるため、同疾患の有効な治療薬となり得ると研究者らは結論している。

 同研究では、血清中尿酸濃度が高値の早期PD患者は、ドーパミン作動薬を必要とする段階まで進行する速度が、同濃度が最低の人たちの約1/2であることが認められている。こうした関連性は(女性より)男性の方がはるかに強かった。

 長年にわたり尿酸は尿中に排泄されるだけの重要でない代謝産物と考えられていた。しかし、これらの研究結果は、男性において最高の血清尿酸値とPD発現のリスク低下とが関連するという早期研究の結果と重なって、こうした尿酸に対する見方を変更させた。

 現在、尿酸は「健康を維持するのに重要な役割を果たしている」という考え方がますます受け入れられつつある。
m3.com 2008-5-1
鳥インフル感染、新診断法を開発…国立国際医療センター
 国立国際医療センターは9日、高病原性の鳥インフルエンザウイルス(H5型)に患者が感染したかどうか迅速に診断できる方法を開発したと発表した。

 同ウイルスは、新型インフルエンザに変異して、大流行することが懸念されており、早期に感染状況を確認することで、被害拡大を防ぐことができると期待される。

 新診断法は、患者の肺などから採取した試料から、鳥インフルエンザに特異なたんぱく質を検出する。これまでの検査は、ウイルスを分離して遺伝子を調べるため6時間程度かかったが、15分ほどで結果が出る。

 同センターがベトナムで今年1〜2月に感染の疑いがある患者3人に対して診断法を試したところ、陽性2人、陰性1人を正確に判定できた。
読売新聞 2008-5-10

認知症の予防のためには体重に注意 肥満はアルツハイマー病のリスクを80%上昇させるが、低体重も認知症の可能性を押し上げる
 健康体重を維持している高齢者は、同時に知性と記憶を保護しているのかもしれない。
 ジョンズホプキンズ大学の研究者らが、肥満者は標準体重の人々と比較してアルツハイマー病のリスクが80%上昇していることを見出した。

 しかし低体重でもそのような認知障害が発現する可能性が36%高くなる。

 科学者らは肥満と認知症の関連について長い間、議論してきた。同誌に掲載された報告の情報によると、以前の知見は「種々雑多であり決定的ではなかった」。

 今回の研究に関して、研究者らは、様々な種類の認知症患者を含む1995 - 2007年の10件の国際的な研究(米国、フィンランド、スウェーデン、フランス、日本)のレビューと解析を行った。研究開始時の各被験者の年齢は40 - 80歳であり、3 - 36年間追跡調査を行った。
m3.com 2008-5-13
男性ホルモンの低下と生活習慣病 認知症の関連が明らかに
 女性ホルモンの低下によって,さまざまな生活習慣病のリスクが上がることは知られているが,男性ホルモンの本格的な研究は国内ではほとんど行われていなかった。しかし,男性ホルモン(アンドロゲン)の低下が,身体機能や認知機能の低下,骨粗鬆症,動脈硬化性疾患に関連することがわかってきた。

 現在わが国では,明らかな性腺機能低下症を除いて,男性に対するアンドロゲン補充療法はほとんど行われていない。秋下准教授は,高齢者におけるアンドロゲン低下とその治療法の意義を解明するため,心療内科,もの忘れ外来,老年病科,泌尿器科,内分泌代謝科,産婦人科,介護施設など各分野の協力を得て本格的な研究を開始した。

 3年間にわたる研究は,(1)アンドロゲンと老年期の関連を検討する横断・縦断観察研究(2)アンドロゲン補充療法・代替療法の効果を検討する介入研究(3)アンドロゲンの作用機序に関する基礎研究―の3つの柱から成る。

 これまでの研究ではテストステロン濃度が、超音波装置による上腕動脈の血流依存性血管拡張反応検査(FMD)やメタボリックシンドロームと関連していた。そこで,さらに年齢,BMI,高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,FMDを共変量とした比例ハザード解析を行ったところ,総テストステロンが低いグループではイベント発生の相対リスクが2.9倍と高くなることがわかった。

 同准教授は「生活習慣病外来や男性更年期外来を訪れる患者では,テストステロンの低下を念頭に置いた検査を行い,低下が認められる場合には高リスク例として血圧,血糖,脂質などの管理やアンドロゲン補充療法の適応を考慮することが必要になってくる」と指摘した。
Medical Tribune 2008-5-15
乳がん家系は前立腺に注意 リスク4倍、豪チーム確認
 乳がんの多い家系に生まれた男性は前立腺がんの発症リスクが高いことをオーストラリアなどの研究チームが突き止めた。家族性乳がんのリスク因子として知られるBRCA2遺伝子の変異が前立腺がんの因子でもあることが確認でき、2つのがんの関連が初めて分かった。

 BRCA2遺伝子に変異を持つ男性の前立腺がん発症リスクは、変異がない男性の4倍になるという。

 チームは「乳がんの多い家系に生まれた男性は検査を。BRCA2遺伝子変異による乳がんを克服した女性は、兄弟や息子に注意を呼び掛けてほしい」としている。
m3.com 2008-5-20
音楽を聴いてリラックスすると血圧が下がる
 血圧が少し高い? それなら1日に30分間、音楽を聴きながらゆっくりと呼吸するのが役に立つかもしれない。

 これは、軽症高血圧をコントロールするために薬剤を服用している28例の成人を対象にしたイタリアの新規研究で実際に起きたことである。

 まず、患者に24時間血圧を記録する装置を装着させた。次に患者にクラシック、ケルトまたはインドの音楽のCDを渡した。CDの中の曲はすべて、同様のゆっくりしたリズムであった。

 1カ月間、1日に30分間CDを聴き、音楽を聴きながら、息を吐く時に吸う時の2倍の時間をかけてゆっくり呼吸するよう、患者に指示した。1カ月後に患者に再び血圧モニターを装着させた。

 患者の血圧は研究期間中に改善した。試験終了時に患者の平均収縮期血圧(血圧値の最初の値)は3mmHg低下しており、平均拡張期血圧(血圧値の2番目の値)は4mmHg低下していた。

 比較のために、別の20例の患者は音楽を聴いたりゆっくりとした呼吸法を実践したりしなかった。それらの患者の血圧は研究期間中に変化しなかった。
m3.com 2008-5-20

エネルギー消費の異常解明 東大、肥満薬開発に期待
 筋肉でエネルギー消費の異常が起きる仕組みを、東京大の永井良三教授らのグループがマウスを使った実験で解明し発表した。

 エネルギー消費の異常は肥満やメタボリック症候群の原因となることから、これらを治療するための新たな薬の開発につながると期待される。

 肥満は、食事によるエネルギーの摂取と消費のバランスが崩れた場合や、筋肉でエネルギーの消費がうまくできなくなった場合に起きるとされる。

 グループは、血管や心臓の病気に重要な役割を果たしているタンパク質「KLF5」に注目し、働きを弱めたマウスを使って実験した。

 その結果、このマウスは食べるえさの量が多いのに太りにくく、KLF5は筋肉で脂肪酸の燃焼(分解)やエネルギー消費を進める遺伝子の働きを調節していることが分かった。
m3.com 2008-5-26
卵の消費量と心不全のリスク
 食事からのコレステロールの摂取を減らすことは、心血管系疾患の予防において広く推奨されている。卵はコレステロールや他の栄養素の重要な摂取源であるが、卵の消費量と心不全(HF)のリスクとの関係はよくわかっていない。

 被験者21,275例を対象としたプロスペクティブコホート試験において、卵の消費量とHFのリスクとの関係を検討した。

 以上のデータから、卵消費量は、消費頻度が少ない場合はHFのリスクに相関しないことが示された。しかしながら、米国の男性医師では卵消費量が1日1個以上の場合はHFのリスクが上昇することが示された。
Circulation. 2008;117:512-516