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雑感

12月2日 刑事裁判傍聴記、「先生」という敬称

 この欄、久しぶりの更新になります。この3か月の間に、引っ越し、司法試験合格、横浜ベイスターズ優勝と、いろんなことがありました。その度ごとに更新していけばよかったんですが、何か知りませんがばたばたとしていて・・。受験時代を振り返ってみようかとも思ったのですが、それはまた別の機会にまとめて記すことにします。


 一昨日(11月30日)、弁護士会主催による裁判傍聴に出席して来ました。弁護士会の建物は地下鉄丸の内線霞ヶ関駅の日比谷公園よりの出口を出てすぐのところです。立派なビルです。公務員時代、このビルを横目で見ながら、早く合格したいと思いつつ通勤していたのが思い出されました。

 傍聴に先だって弁護士会の人からのあいさつ、そして今回の研修の趣旨説明、刑事裁判についての説明がありました。

 さて、いよいよ傍聴です。場所は東京地方裁判所。この日見学した裁判は2件ですが、2件とも刑事事件です。1件は覚醒剤所持の事案、もう1件は常習窃盗の事案です。

 2件の公判を傍聴して感じたのは、やっぱり犯罪って自由な意思の産物というよりは何らかの法則に導かれて生じるという説明になじむのではないか、また、社会的環境が犯罪に大きく影響するんだなあということです。また、不景気が犯罪の増加をもたらし、また犯罪者の再起更生を難しくしているということをも感じました。このような見方は被告人に甘いのかも知れません。でも、自分が被告人と同じ境遇に立ったら本当に何も罪を犯さないのだろうかという問に対して、絶対に否と答えきる自信は私にはありません。社会政策は最良の刑事政策というのは言い得て妙だと思いました。

 ところで、2件の公判は同じ法廷で傍聴したのですが、その2事件とも裁判官と検察官は同じ人でした。傍聴後の質疑応答の時間に聞いたところ、通常は同じ法廷では1日を通じ同じ裁判官と同じ検察官でその日の事件を担当するということです。うーん、これだと、裁判官と検察官の間に不適切な関係があるとの疑念が一般国民に生じないのでしょうか・・。


 上で述べたように、傍聴に先だって弁護士会の人から刑事裁判の進行について説明がなされたました。この事前説明のおかげで、刑事訴訟法を受験科目としていなかった私も、何も分からずにただ傍聴という事態をまぬがれることができました。その意味で事前説明がなされたのはよかったと思います。また、傍聴から戻った後に質疑応答の時間が設けられ、昼食をごちそうになりながら弁護士の方に裁判のことや弁護士会のことについて疑問に思ったことを聞くことができたのは、有益でした。

 ただ、気になったのは、司会進行役の弁護士の人が、他の弁護士を紹介するとき、「○○先生」と呼んでいたことです。弁護士は学校の教師じゃないんだから、先生呼ばわりは変です。まあ、「先生」という文字面からすれば、自分よりも目上の人や世話になったお頭弁護士(ボス弁)を先生と呼ぶのはまあ納得できないではありません。しかし、それほど歳の違わない弁護士同士で「先生」と呼び合うのは、正直のところ気持ち悪く感じます。お互いを先生呼ばわりするのって、何か、閉鎖的な世界の仲間内で、なんというか、浮き世を忘れて仲間意識に酔っている人たちの行動という感を強く受けます。

 同じように長らく「先生」と呼ばれてきた国会議員については、「先生」と言われるのが嫌だという若手議員がかなり出てきています。弁護士の世界でもそういう潮流は現れていないんでしょうか。「さん」づけで十分でしょう。法曹改革が叫ばれている昨今、まず呼称から、という気がするのですが。些末なことでしょうか。


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