SVA東京市民ネットワークNEWS LETTER「里程標」第6号

マレーシアからの手紙2

マレーシアの旧正月

佐藤真紀


 さびしさにつぶされそうだった前回の手紙を読み返すに、これはいけないとペンをとります。

 今年は、36年ぶりに、イスラムの正月と、中国の正月が重なります。

 ちょうど、正月3ヶ日は東京が空っぽになるように、今、首都クアラルンプールは、空っぽです。

 私は今、2ヶ月お世話になったイスラムのお家からはぬけだし、大学内の寮に住んでいます。この正月休み、99%の学生が、いなかへ帰ってしまい、学校も、空っぽ。私も中国系の学生のひとりの家へ、お正月に遊びに行きました。
 クアラ・ルンプールからバスで2時間半程のスレンバンという町です。今年開通した通勤電車で、大学駅から30分程。お正月の1日目とあって中心街もひっそり。ムスリムの正月の色のみどりと中国正月の赤で、謹賀新年大売り出しといった文句が、書き連ねてあるので、町はクリスマスのようでもあります。

 個人のお宅におじゃまするのは初めてで、正月かざりなんかのおもしろさも、神棚のお供えから説明すると1冊本が書けそうです。例えば、春と書かれた半紙が逆さに貼られてあったりします。これは、倒(さかさ)と到(到達)が、かけてあるのです。福を逆さにすれば、福、来る、という意味になるそう。

 忘れられないのは、「發財魚生」という食べもの、というより儀式のようなもので、お正月、2日目に、みんなで食べます。
家で作れないので、お店で、お持ち帰りを作ってもらうことが多いようです。

 まず、冷やし中華の具みたいなものが、7から10色、くらげや赤く染めたそうめん、はるさめなどなど、が、きれいに盛られた皿に、たれ、薬味などをふりかけ、最後に、その魚生である、鯉のさしみを、数切れちらします。お皿を囲んだめいめいに箸が渡され、さあ!とお皿の具をみんなで混ぜるのです。混ぜながら、「財が積めますように」といった意味の四字熟語を唱えつつ、その、中華の具のミックス+鯉のおさしみを上へ上へと積み上げます。混ぜ上がったところで、食べはじめます。みんなで、今年も力を合わせて、上へ上へと生きていきましょうという儀式なのです。

 「中国人は、お金のことばっかり考えて」と、マレー系のマレーシア人はときどき考えるらしいのですが、これは、こうして新年の初めに向上心を奨励しあう習慣から、結局のところ、得られた成果なのかもしれません。

 一家での「發財魚生」に参加させてもらって、私も、がんばろうっと、と、すっかり励まされたのでした。

 日本では別の習慣があるから、ちょっと、まねできませんね、残念。

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