問題5-3-1 解説
- 角周波数 \(\omega\) は 2π を秒単位の周期で割って求めます.
- スキンデプス \(d_\omega\) は本文の式 (16) を計算します. \[ d_\omega = \sqrt{2\kappa/\omega}. \]
- 熱拡散の特徴的距離スケール \(\ell\) は本文の式 (5) で \(\tau\) に周期を代入します. \begin{eqnarray*} \ell & = & \sqrt{\kappa\tau} = \sqrt{\kappa(2\pi/\omega)}, \\ & = & \sqrt{\pi}d_\omega. \end{eqnarray*}
- 振幅が 1/10 に減少する深さ \(d_1\) は本文の式 (15) の振幅の項から計算します. \begin{eqnarray*} e^{-d_1\sqrt{\omega/2\kappa}} & = & 0.1, \\ d_1 & = & -\log_e(0.1)\sqrt{2\kappa/\omega}, \\ & = & 2.30 d_\omega. \end{eqnarray*}
- 位相が 180 度遅れる深さ \(d_2\) は本文の式 (15) の位相を表わす項から計算します. \begin{eqnarray*} d_2\sqrt{\omega/2\kappa} & = & \pi, \\ d_2 & = & \pi\sqrt{2\kappa/\omega}, \\ & = & \pi d_\omega. \end{eqnarray*}
これらの手順に従い, \(\kappa\) = 1×10-6 m2/s として計算した結果は次表の通りです.
周期 | \(\omega\) [1/s] | \(d_\omega\) [m] | \(\ell\) [m] | \(d_1\) [m] | \(d_2\) [m] |
1日 | 7.272×10-5 | 0.166 | 0.294 | 0.382 | 0.521 |
1年 | 1.992×10-7 | 3.17 | 5.62 | 7.30 | 9.95 |
1万年 | 1.992×10-11 | 317 | 562 | 730 | 995 |
1日周期の結果からは,地表温度の日変化の地下への影響はせいぜい数十センチであることが分かります.1年周期の結果では,位相が 180° 遅れる深さが約 10 m です.このことから,深さ 10 m 付近の地下水は夏は冷たく,冬は温かいことが考えられます.周期1万年の結果からは,氷期-間氷期などの気候変動の影響を受けない地殻熱流量や地下温度の測定には,随分と深い観測井戸を掘削する必要があることが分かります.深さ 730 m でも地表温度の変動幅の影響が 10% 残っていることになります.