問題5-1-2 解説
(1) 238U と 235U の存在度をそれぞれ \(C^{^{238}\mathsf{U}}\) と \(C^{^{235}\mathsf{U}}\),単位質量当たりの発熱量を \(H^{^{238}\mathsf{U}}\) と \(H^{^{235}\mathsf{U}}\) と表わすとき, U の単位質量当たりの発熱量 \(H^\mathsf{U}\) は次式で計算されます. \[ H^\mathsf{U} = C^{^{238}\mathsf{U}}H^{^{238}\mathsf{U}} + C^{^{235}\mathsf{U}}H^{^{235}\mathsf{U}}. \] 同様にして, Th や K についても,放射性同位体の発熱量に同位体の存在度を掛けることで計算します.結果を同位体の発熱量も含めて次表にまとめます.
同位体 | 存在度 [%] | 発熱量 [W/kg] | 元素 | 発熱量 [W/kg] | |
---|---|---|---|---|---|
238U | 99.28 | 9.46×10-5 | U | 9.80×10-5 | |
235U | 0.71 | 5.69×10-4 | |||
232Th | 100 | 2.64×10-5 | Th | 2.64×10-5 | |
40K | 0.0119 | 2.92×10-5 | K | 3.47×10-9 |
(2) 岩石中の U, Th, K の含有量を \(C^\mathsf{U}\), \(C^{\mathsf{Th}}\), \(C^\mathsf{K}\), (1) で求めた発熱量を \(H^\mathsf{U}\), \(H^{\mathsf{Th}}\), \(H^\mathsf{K}\) とすると,各岩石の単位質量当たりの発熱量 \(H\) は次式で求まります. \[ H = C^\mathsf{U}H^\mathsf{U} + C^{\mathsf{Th}}H^{\mathsf{Th}} + C^\mathsf{K}H^\mathsf{K}. \] また,単位体積当たりの発熱量は岩石の密度 \(\rho\) を単位質量当たりの発熱量 \(H\) に掛けて, \[ \rho H, \] となります.結果を次表にまとめます.
岩石 | U | Th | K | 密度 | 単位質量当り発熱量 | 単位体積当り発熱量 |
---|---|---|---|---|---|---|
[ppm] | [ppm] | [%] | [kg/m3] | [W/kg] | [W/m3] | |
花崗岩 | 4 | 15 | 3.5 | 2700 | 9.1×10-10 | 2.5×10-6 |
玄武岩 | 0.1 | 0.4 | 0.2 | 2900 | 2.7×10-11 | 7.9×10-8 |
かんらん岩 | 0.006 | 0.04 | 0.01 | 3200 | 2.0×10-12 | 6.4×10-9 |
この測定例では,単位体積当たりの発熱量は玄武岩が花崗岩の30分の1,かんらん岩が玄武岩の12分の1となりました.一般には,玄武岩質の海洋地殻や大陸下部地殻の発熱量は花崗岩質の大陸上部地殻の10分の1,かんらん岩質のマントルはさらにその10分の1と考えられています.