問題6-1-2 解説

(1) 読取り結果は下表の通りです.

(緯度,経度)伏角 (°)偏角 (°)全磁力 μT)
経線73°W上の2地点(30°N,73°W)57-1145
(30°S,73°W)-30124
経線163°W上の2地点(30°N,163°W)471038
(30°S,163°W)-511845
73°Wの子午面内で自転軸から10度ほど傾けた地心双極子

(2) 読取り値を概観すると,経線 73°W では,北半球の地点の伏角(絶対値)と全磁力が南半球の倍近くになっていますが,経線 163°W では大差はないようにみえます.また,偏角は前者ではほぼ北向きか西向きですが,後者では東向きです.

実は地磁気北極は 73°W の子午線上で北極点から約 9° 離れた地点にあり(80.7°N,72.7°W),右図のように経線 73°W 上では北半球の地点は地磁気北極に近く,南半球の地点は地磁気南極から遠いことになります.そのため,磁極に近い北半球の地点では伏角が深く全磁力も大きいが,南半球の地点ではその逆の傾向となります(図は経線 163°W を正面に見た地球の断面です).

地磁気をより良く近似するモデルとしては,磁気双極子を 73°W の子午面内で自転軸から 9° ほど傾けたモデルとなります.伏角がゼロの地点からなる曲線を磁気赤道といいますが,このモデルでは経線 73°W 上で地理的赤道と磁気赤道の差が最も大きくなります.一方,経線 163°W では磁気赤道と地理的赤道が一致するため,南北の対象性は良好となります.偏角についても大雑把に見れば,経線 73°W 上ではほぼ北向き,経線 163°W では東寄りとなります.

地球外部起源の地磁気変動を研究する分野では,地磁気極や磁気赤道を基準として観測値を扱う必要があり,地理座標ではなく地磁気北極を基点とした地磁気座標を使用することが多いようです.