Inoue's Wall paintings at the Ghibli Museum


return

2001年10月に開館したジブリ美術館に、イバラードの絵が飾られています。遠くから見ると、額に入った絵が壁に掛けられているように見えるかもしれません。しかし、近づいてよく見ると、額に特有の厚みがありません。まるで壁に貼られたポスターのようです。さらによく見ると、それは貼られたものでもありません。何と、絵は額ごと直接壁に描き込まれています。イバラードの絵はジブリ美術館の"壁画"だったのです。

"壁画"の元絵になっているのは「上昇気流」。イバラードの中でも特に有名な傑作の一つです。この絵は、井上直久氏と宮崎駿氏を結びつけた絵でもあります。1994年2月、東京・青山で開催された井上氏の個展の初日に宮崎氏がふらりとギャラリーを訪れ、「上昇気流」を購入しました。両氏とも、以前より互いの世界は承知していましたが、実際に出会ったのはこの時が始めてだったそうです。この機会が縁となって、当時宮崎氏が構想中だった「耳をすませば」の世界が大きく膨らみ、井上氏も参加するようになったことはよく知られています。この時に宮崎氏が購入した「上昇気流」は現在スタジオジブリに飾られており、ジブリ美術館で井上氏が描くことになった最初の"壁画"のモチーフもまた、「上昇気流」が選ばれました。今回、ジブリ美術館で描かれている作品は、「上昇気流U」になるとのことです。

「上昇気流U」にはさりげなくバロンが登場しているほか、煙突の煙が絵からはみ出していたり、虫が額縁にとまっているかように描かれていたりなど、"壁画"ならではの遊び心が随所に埋め込まれています。さらに、別の場所にも新たな"壁画"が出現しており、描き込みが進みつつあります。これらの"壁画"がどのように変化していくかを確かめることが、ジブリ美術館を訪れる楽しみの一つになるかもしれませんね!

美術館の壁を測定する井上直久氏
(2001年12月12日)


採寸済みの壁 ここに「上昇気流」が描かれる
(2001年12月12日)


描き始めて翌月の様子 まだ大まかな輪郭が描かれている段階
(2002年1月)


描き始めて半年後の様子 描写が細かくなった
(2002年8月1日)


左の絵の拡大図 バロンが歓迎している
(2002年8月1日)


いつの間にか新たな壁画が!
(2002年8月1日)


うしろで見守る子どもたち
(2002年8月1日)

関連リンク: 
ジブリ美術館の壁画制作のその後(イバラード公式サイト)
イバラード・ワールドを旅しよう(ミルるんさん)

このページで紹介した写真はイバラード公式サイトより転載の許可をいただいています。
撮影者:フクオカさん(2001年12月,2001年1月)、マヤさん(2002年8月) 
※撮影者は井上氏の関係者であり、ジブリ美術館より撮影許可を受けています。



return