狭山丘陵1998年

1998年、気候の影響か秋が遅い。
11月の初めというのに、まだ、紅葉には遠い。
しかし、朝の光が射す度に
それは近づいていることを間違いなく伝えている。
丘陵の朝は静かだ。

雑木は微妙に葉の色を変えて
そこまで来ている季節の変わり目を伝える。
葉達の触れ合う音が乾いている。
そして、風が一瞬、静寂を破って、パラ・パラと音を立てて、肩に当たるように
ドングリが落ちる。

今年のドンぐリは光沢があって実が堅い。
葉が青いうちに実を落とすのは
何の知恵なのだろう。

日だまりの下草が冬支度を終えて
早々と色を変える。
季節はずれのシジミ蝶が舞っていたが
帰る家はあるのだろうか。
山桜が一番早く紅葉になる。
次いで楓類が後を追う。

これらの木の下は
個性を持った葉達が、一足先に降りた葉達とにぎやかな会話を交わす。
紅葉は次の芽生えの先駆けか
色とりどりの中に、驚くほどしっかりとした準備をしている。

江戸時代なら、もうとっくに薪炭になって江戸へ馬に運ばれていただろう雑木が
成長し放題で、見上げるばかりになっている。
その紅葉は美しいが、このままで、将来
この林はどうなるのだろうか?
やっぱり
武蔵野の雑木林は一定のところで切って
新しい芽出しを更新し続けるところに、その特徴があるのではないか?

この道の向こうに、武蔵野が続き、街がある。
本格的秋はいつになるのだろう。
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