まだまだ未熟者なのに、こんなエラソウなページ作っちゃていいのだろうか? f^_^;
でも自分の気付いたこと、考えていること、心がけていることを誰かに伝えたい。
それが航空写真撮影という飛行作業における安全とスムーズな進行の一助になれば、、、

また、これからプロパイロットや航空カメラマンになろうと思っている人、アマチュアで楽しんでいる人、どんな世界か覗いてみたい人にも何かヒントになればいいなぁ、、、と思いここに綴ります。
ここを読んで感じた事があれば掲示板なりメールなりでどんどんご意見ご指摘をください!少しずつ改定し育てて生きたいと思っています。 m(_*_)m



はじめに

ぜひプロの方にも一度目を通して頂きたい。
たいした学はないので、最新の航空力学で理論検証したわけでもないし、考えや感覚を出来るだけ解ってもらうために初歩の物理や航空力学の用語は使わなくてはいけないけれど、中学校の授業で習った程度にとどめるつもりです。 (^^ゞ

カメラマンからの視点
撮影理論というより、パイロットとのコミュニケーションに対する考え方を書きます。だから絞り値や被写界深度、レンズやカメラの特性や色のラチュードなんて話は出てきませんしわかりません。(エラソーに書くほど知識ないし)
カメラマンに伺った話で共通しているのは、出来るだけ速いシャッタースピードで、できるだけ絞り込んで撮影するということです。それは移動体からの撮影であること、振動や揺れが予測されること、一部の撮影を除き、たいていのレンズではピントは無限遠で撮るものの画面の手前から奥まで出来るだけピントを合わせたいからです。そのせめぎ合いの中でそれぞれの設定値も機材もフィルムも選択しているようです。

プロパイロットとしては、、、
カメラマンの話の受身側になるのですが、すべてに共通しているのは「こちらから引き出してあげる姿勢が必要」ということです。三次元を自在にポジショニングする感覚や知識や経験は「飛ぶ者」として持っているのですから。


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フライト前
まず撮影地点の見取り図(物件の形が判る程度の略図でも可)と詳しい地図(出来れば1/25000以下)を用意しましょう。
カメラマンは撮影したい様子やイメージを出来るだけ共有できるように話しましょう。それは抽象的な話でもいいし、絵コンテのようなイラストでもいいし、地図や図面上に撮影する向きを(方位がわかるように)書き込んで説明してもいい。とにかく撮影に望む前に「なにを求めているのか」を伝えましょう。これは雑談の中でもいいので出来るだけたくさん話します。パイロットは少しでも頭の中に?があったら、それを解消できるように会話の中から情報を引き出します。
撮影の向き(上下左右)または画角に入れたい物、その色や影の配置までカメラマン自身の中でも出来るだけ煮詰めておく必要がありますが、パイロットとの会話の中でも出来ること出来ないことが分かって来てどんどん煮詰められていきます。

撮影地点が複数ある場合は、時間の経過で変化する要素、日照角度と方位、光線の色、予想される気象条件を加味し、それぞれの地点を高度差も含め効率よく回れるように順番を決めます。
パイロットは大体のプランが出来たら、巡航速度や搭載燃料や航続時間、点検までの残時間など機体の条件を加味して給油の手配や関係管制機関への連絡調整を行います。



フライト中
フライト前に完璧に現場をイメージできることはまずありません。
それに気象、航空交通などの条件が加わってきて、カメラマン側もパイロット側もそれぞれの立場から不安や問題が発生したりすると思います。フライト中はそれを出来るだけ伝え合い、聞き出しましょう。
時には視程や雲影の状況、管制機関による待機時間など、それぞれの要素が許容範囲を外れ撮影が不可能な場合もあるでしょう。その場合は次の予定が変化する事も含め再度予定の組み直しが必要になることもあります。お互いに相談し、パイロットはだいたいの時間変更を算出します。また管制機関や所属会社などに無線連絡が必要になる場合いは速やかに連絡します。
現場上空についてから天候条件で中止する場合いは一枚だけはシャッターを押すというのはよくカメラマンが言っています。いわゆる証拠写真ってやつですね。 (^_ー)b

撮影飛行中は、パイロットは操縦しますが、カメラマンは口でパイロットを通して機体を操縦するくらいのつもりでどんどん注文しましょう。現場に着く前に最初の進入高度や方位などを話してあれば効率が上がります。
現場に着いたら必要があれば撮影する対象を一巡しよく観察してみます。撮影作業に入ったら対象に寄りたいのか離れたいのか?左右の見え角はどうか?もっと見下ろすようにしたいのか低いアングルがいいのか?遠慮はいりません。それが可能か不可能かは専門家のパイロットが即座に検討し修正しますから。 p(^ー^)q
この場合の指示は我流で構いませんから一定に統一すべきです。対象に対して距離を「近づける」を「寄る」といってもいいし,撮影方向を東西南北で表したり時計の文字盤で「何時方向から」表してもいいし単純に「向かって右(左)」と表現してもいい。一定の言い方で統一していれば、いろんなカメラマンと
飛んでいるパイロットは二、三確認したら「この人はこうして欲しい時はこう言うんだ」と把握しますから。
そのようにしてパイロットとカメラマンのコミュニケーションは作り上げていくべきです。


あまり褒められた話ではありませんが、あるカメラマンとコミュニケーションがほぼ確立していて、だいたい同じようなパターンが毎回あるような撮影飛行が続いたときがありました。
その時はお互いが何を求めどうしてくれるのかが手に取るように解ったので、離陸前に撮影地点の順番を話し、フライト中はそれぞれの撮影の区切りの開始と終わりを確認する掛け声をかけただけで、「そういえば着陸するまでいっさい余計な声を出さなかったね」と笑い合った事がありました。
意思の疎通という面ではほぼ理想的だったかもしれません。(会話がないなんて人間的にどうかと思うけれど (^^ゞ)


パイロットは安全を確保するのは言わずもがなです。
その上で効率を追求せねばなりません。時間の経過は気象条件の変化と光線の移動を招きます。全ての地点で撮影条件から外れることがなく無事フライトを終えるのが機長の判断として求められるのです。
そして刻々と変わるそれぞれの条件を観察し、時には情報を集めることに気を配ります。

パイロットはフライト中の全ての行為が効率に関わってくると考えます。
選択した進路や高度や速度の設定は機体の動きという面で見ても無駄を排することを求めるべきです。
たとえば、現地に向かう移動中の高度選択にしても風向風速のばらつきを情報を集め感じ取り判断することで到着時間が変わるでしょうし、進路や経由地を地形や天候の変化を加味して設定しなければ引き返したり急角度の針路変更で効率を損なうでしょう。(場合によっては命を危険にさらします)

そして、全てにおいてできるだけ角が立たないように操作したり設定したりを心掛けると、運動エネルギーを効率よく使い回すことができ、時間や燃料消費の節約に繋がると意識すべきです。(たとえそれがごく僅かだとしても)
これは正確に検証していませんが、例えば離陸して上昇し巡航から降下するまでを一連の放物線に近づければエンジンパワーを効率的に使用でき燃料を節約できるはずです。また高度を高く取っていた現場を終え次の現場に向かう際に撮影の最初の高度が低くてよいなら一定の坂を下るように高度を処理すれば高度エネルギーをも利用している事になるでしょう。(もちろん空気との摩擦でロスはあります)
また、巡航速度から撮影速度に落とす際も、巡航高度を撮影予定高度よりやや低く設定して減速の際に上昇しながら行えば速度エネルギーを高度エネルギーに変換することにもなるはずです。
これは狭い半径で旋回しなければならない状況に陥った時に高度の余裕があれば上昇旋回(シャンデル)や上昇反転降下離脱(レージーエイトの片側、ウイングオーバー)で速度を処理して回避するという非常時の知恵としても使えるのでプロパイロットに限らず頭の隅に置いてても損はないと思います。

これらはフライトテクニックの極意のように思われるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、それぞれのレベルで緩やかにでも行うように心掛けるだけでも何かが得られると思います。



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セスナ172の失速特性について
斜め航空写真撮影で最も多く使われている米国セスナ社の名機です。
おそらく国内ではL型以前の機体に乗ることは少ないでしょうからここでは自分が所有するC172Mラム型以降C172P型までを中心にお話します。(C172R、C172Sは未体験だし、、、)
172L型以前は垂直尾翼前のドーサルフィンが小さく、もしかしたらヨーイングやロールの際の安定に関わるかもしれませんし、境目ははっきりしませんが、G,H型M型以降と主翼の翼型(断面形)も違っていたと記憶します。ほかにはフラップの最大下げ角がM型は40度でP型は30度という違いはありますが、撮影飛行中は使用しないので無視します。

これは経験を基にしか言い表せないのですが、172の失速特性はとても穏やかなうえ回復が早いのが特筆されます。失速状態に入れる時もはっきりとアクセントをつけた、いわゆる急激な操作をしなければ明確な失速状態にはなりませんし、失速中もその状態を維持しようと操縦桿を引き続けなければすぐに回復してしまいます。これは訓練生が最も苦労するところでもあります。
きっと気流が剥がれにくい粘り強い翼なのでしょう。
ですから「なかなか失速に入らない」と言え、これは「安全な機体である」と言えると思います。
まして片翼のみ失速させるスピン(きりもみ)を一発で入れることが出来て維持できるパイロットはかなり乗れていると言えるでしょう。たいていは一瞬入ったとしてもすぐに失速が回復して螺旋降下になってしまします。
ただし!マニュアルではセスナ172はスピン状態で2旋転半を超えると機種上げに移行し回復不能な水平スピンになるとのことですから気をつけてください!(ま、たいていはそこまで回す気にはなれないでしょうが)

失速は時々訓練や査察、耐空検査などのテスト飛行で行いますが、その時の高度損失の数字を冷静に観察してみてください。つまり「失速に入ってから回復し水平飛行が出来るようになる高度までどれぐらい落ちるか?」です。
様々な条件がありますが、それでもおそらく500ftも必要ないのではないでしょうか?
つまり、「地表の物件に対して500ftもあれば全然OK!」なわけです。 (^-^)y
いや、訓練のシラバスや実地試験要綱、航空法の最低安全高度云々を言っているのではなく、それを頭に入れておけば比較的高度が低い撮影でも十分安全マージンがあるという気持ちのゆとりが出来ると言いたいのです!いざとなったらその高度を使い切って回復し上昇できるという心の余裕は大きいものです。
訓練生の時は「失速させるな、落ちるぞ」という様なニュアンスで教育されたり思い込みがちなのですが、それが「戒め」になるだけでなく「恐怖心」となり操作の硬直を招くのではないかと危惧されます。
そして「もしかしたらそうだったのではないか?」と思われる低速旋回中の事故が散見されるのです。
これは実に惜しいことです!悔しいことです!
実際に国内でも世界的に見ても最も機数が多いセスナ172は事故を起こした機体の数でもダントツでしょう。しかし分母を「機体製造数x飛行時間」にして分子を「事故機数」にしたらどうなのか興味が尽きないところです。たぶん驚くほど少なくなるのではないでしょうか?それほど飛ぶことについて機体としては安全だという意味でも「名機」といって差し支えないと思います。



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管制機関などとの交渉術
航空交通の混雑しているところではしばしば待機させられることがあります。
もちろん指示に従ったポジションと高度で旋回しながら指定されたトランスポンダ(高度情報などの応答波を発信する装置)を指定されたコードに合わせてスタンバイし、無線も混雑するので呼び出されるまでこちらからあまり呼び出しをしないことが原則です。
しかし管制官やレーダーマンも人の子です。忙しさに追われこちらを忘れていることもたまにはあるでしょうし、面倒な事は後回しにしてしまうかもしれません。
また、管制官は無線と肉眼だけ、レーダーマンに至っては画面上の光点と無線だけでこちらを知るしかないのです。

そこでやはりここでも必要になることはコミュニケーションです。管制機関側にしてみれば頭の中は「?」だらけです。「なにをしたいのか?どれぐらいの時間が掛かるのか?他の航空機は視認出来ているのか?またはし続けられるのか?いったいなにを考えているのか?」そんな存在を自分が責任を持って守っている所に受け入れるには不安だらけのはずです。
パイロットはそれを出来るだけ簡潔な言葉で伝える努力をすべきです。また変更があった場合やこちらの都合や希望も、無線の空き具合をみながら伝えましょう。
それは出来るだけ具体的である方が望ましく、例えば同じ10分の撮影作業でも「現地点から進入に1分、作業に10分、離脱に1分掛かると思われます。なお、作業は連続でなくてかまいませんし、指示を受けてから10秒以内に離脱体制に入れます。」というように伝えるとずいぶん不安は解消されるのではないでしょうか?たとえ10分の連続した時間が取れない場合でも時々離脱はさせられるけれど何とか終えることが出来る可能性も出てくるわけです。
これは作業そのものの効率は下がるかもしれないけれど、ひたすらスタンバイさせられたり、千歳一隅の気象条件を逃すことになったら、そちらの方が遥かに損失は大きいと思います。



フライト後
出来ればカメラマンは直後の手応え、撮影結果が出た後の話をパイロットに伝えてあげてください。
パイロットはどういう懸念があったかなどをお茶を出しながら話してみましょう。その積み重ねがコミュニケーションを育てることになり、将来的にはスムーズで的確な作業進行に繋がり、ひいては飛行時間の節約と安全マージンの更なる上乗せになるのですから。



さいごに

パイロットはもちろん、カメラマンも三次元の眼を持つように心がけることが大事です。日頃からテーブルの上のカップや書物などが視点の移動でどう変化するのかを観察するようにしていると、感性はどんどん磨かれていきます。できれば光源を移動させて、影がどのように変化するのかまで時々やってみることもお勧めします。

自分がまだ駆け出しの頃、先輩パイロットが言った言葉は今でも残っています。
「パイロットの上手い下手は技術じゃなく考え方だ」もちろん技術の差がないとは言いません。
しかしライセンス取得段階でフライト試験をパスして一定のレベルにはあるわけで、パイロットになった段階でその差は微々たるものであるはずです。
問題なのはその先にどういうフライトを重ねるか?漫然と飛ぶのか、何かにこだわって求め続けるのか?
技術を使うのは練り込まれた思考である気がします。そしてそれは「飛ぶこと」に対する姿勢であり、とりもなおさず全てに顕われてくるのかも知れません。
大袈裟に言えば、そのひとの人生にさえも、、、

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