トマシーナの三つの生命 ★★★
(The Three Lives of Thomasina)

1964 UK
監督:ドン・チャフィ
出演:パトリック・マクグーハン、スーザン・ハンプシャー、カレン・ドートリス



<一口プロット解説>
獣医を営むパトリック・マクグーハンの娘カレン・ドートリスは、トマシーナという名前の猫を飼っているがある日トマシーナは瀕死の重傷を負ってしまう。父のマクグーハンになんとか救ってくれと頼むが、獣医でありながら動物の生命にはそれ程関心がない彼は処置なしとして娘に突き返してしまう。そこで、子供達だけでトマシーナの葬儀を行うが、実はまだ死んではいなくて、村人に魔女として敬遠されているスーザン・ハンプシャーが拾ってきてトマシーナを治療する。娘の信頼を失ったマクグーハンは、それを何とか取り戻そうとするが・・・。
<雷小僧のコメント>
ディズニーの映画でまあ言ってみればお子様向けの映画であると言えるのですが、お子様向けであるということで見ないでいることはない映画であるように思います。確かに、プロット解説でも書いたように、獣医でありながら動物のことは何も考えていないパトリック・マクグーハンが、魔女の存在を通して心を入れ替えていくというような何か教養小説的というか小学校の道徳の教科書的なところがあることは否めないわけであり、今更お説教など聞きたくないわいという向きには、そういう点が邪魔くさく思えないことはないかもしれません。けれども、そのように考えて見ないでいると(この言い方は若干矛盾していますね。見なければそういうことは分からないでしょうから)、この映画のエンターテイニングな側面を見逃してしまいます。まあ、1960年代前半の映画なので、現在のようにSFXを駆使した映画とは異なるわけですが、面白く見せようという工夫をあちらことらで散見することが出来ます。まず、何と言っても猫のトマシーナがキュートで可愛らしく、猫好きの人であれば恐らくまずこの映画を気に入るのではないかと思います。このトマシーナが死にかけて猫の天国へ召されていくシーンは、コンピュータやSFX技術のなかった当時のことを考えてみると、非常にうまくというかファンタジックに撮られているように思います。それから、スコットランドの風景がいいのですね。冒頭で湖べりの村の俯瞰が写し出されるのですが、騙され易い私目はこの辺りでもうコロッとこの素朴で美しい構図に魅了されてしまいます。またこの風景と、これまた素朴で美しい主題歌がよくマッチしています。こういう映画を見ているとエンターテイニングな映画というのは何も金をかけて作ればいいというものではないということがよく分かります。
さてしかしそれは別としても、この映画で私目が最も関心したのは俳優さん達なのですね。まず第一に挙げなければならないのは魔女(というか村の人々が魔女だと思っている)を演じるスーザン・ハンプシャーです。いやはやしかし、こんなに透明感があってお美しい女優さんがいたのかとびっくりしてしまいました。あちらの人にしては珍しく漆黒の瞳をしていて、ブロンドの髪と漆黒の瞳というコンビネーションが実に魅力的な人です。また、声に関しても恐ろしく透明感があり且つ暖かいというように実に素晴らしいものがあります。この人は、イギリス映画への出演がメインであり且つ映画出演本数自体も少ないので、イギリス映画の入ってくる本数が少ない日本ではあまり知られてはいないかもしれませんが、この映画を見た限りでの印象は素晴らしいの一語に尽きます。こんな魔女なら何人いても私目はいいですけどね。きっとあまりにお美しいので村人は皆嫉妬して魔女呼ばわりしているのでしょう。それからくだんの獣医を演じるパトリック・マクグーハンですが、実は私目はこの普段は脇役の俳優さんが非常に気に入っているのですね。独特の声とぶっきらぼうなしゃべり方を持っていて、よく官僚的な人物や悪漢を演じているのですが、どこか憎めないところがあります。そういう人物を演じていてもどこかユーモラスなのですね。もう一人マクグーハンの娘を演じるカレン・ドートリスですが、この映画と同年製作の「メリー・ポピンズ」(1964)にも出演しており、恐らくジュリー・アンドリュースが面倒を見る子供達の一人を演じていたのではないかと思いますが、最近この「メリー・ポピンズ」は見ていないので確認していません。
ということでこの「トマシーナの三つの生命」は、家族揃って楽しめる映画であると思いますが、残念ながら国内でこれのビデオ等を見たことはありません。是非とも復刻させて欲しいものです。最近のSFX的な映画ばかり見ていると、こういう映画は驚く程新鮮に思えること請合いですね。

2000/07/09 by 雷小僧
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