The Night Visitor ★★☆

1971 SW/DEN/US
監督:ラスロ・ベネデク
出演:マックス・フォン・シドー、リブ・ウルマン、ペール・オスカーソン、トレバー・ハワード

左:マックス・フォン・シドー、右:トレバー・ハワード

1970年代には、出来のよい小品ホラー映画が数多く製作されていたということは他のレビューでもしばしば書いているのですが、この作品もそれに該当します。唐突なのですが、実はこの手の作品というのは上映時間自体がかなり重要になってくるのです。たとえば2時間であるとキリリと引き締まった小品ホラーとしてはだれてしまうのですが、かと言って90分を切ると物足りなさがどうしても残ってしまいますので(下手をすると入場料を損した気になる)、だいたい90分から105分に収めることが必要になってくるわけです。その時間範囲内で適度な緊張感(適度なというのはたとえば手に汗握るとか、強烈なインパクトがあるとかというのとは違って、見る者に大きなストレスは要求しないけれども常にこの先どのような展開になるのかという期待感或いは不安感を惹起させるモーメンタムを持つ程度のという意味です)をそれが過度になることなく常に維持出来るような作品は、珠玉の小品ホラー映画になる条件の1つを充たしていると言えるわけです。この作品もこの条件に関してはクリアされていると言えるでしょう。まず、北欧のどこかで撮影されたようなのですが、荒涼とした雪景色が、いかにも何か良くないことが起きそうな期待感(見るものにとっての期待感ということですね)を醸し出していて、バックグラウンドは申し分ないと言えるでしょう。殺人容疑を着せられその上精神病院に送られたマックス・フォン・シドー演ずるセイラムは、その復讐をする為一見すると難攻不落に見える精神病院を夜中にこっそりと抜け出し、次々に関係者を殺していくというストーリーなのですが、面白いのは視点が襲われる側よりも襲う方のシドー演ずるセイラムに置かれていることが多く、見ている方は殺人者であるセイラムがトレバー・ハワード演ずる刑事等に見つからないでいかにうまく事を運べるか否かにハラハラさせられるのですね。その辺りの展開はなかなか面白く見る側の興味が常に維持されるように巧妙に構成されているように思われるのですが、この映画ラストが少し頂けませんね。まあネタをばらすつもりはないので詳細は述べませんが、これではまるで下手な落語のオチのように思えてしまうのです(そもそもまさかそんなことに気が付かなかったなどということはあるまいにと言いたくなってしまいます)。折角小気味のよいホラーストーリーが突然駄洒落で終ったような落差があるのですね。それからセイラムが難攻不落の精神病院から抜け出しまた事を達成した後にそこに戻るシーンはこの映画のハイライトでもあるのですが、少し都合が良すぎて論理的にも無理が多いように思われます。勿論「大脱走」ではないのでいかに巧妙に難攻不落の精神病院から抜け出すかがこの映画のメインポイントではないのですが、その点が私目にはどうしても気になってしまいます。というような欠陥があるので★が3つではないのですが、しかしながら雰囲気といい全体的な緊張感の維持といいホラー小品としては相当に出来の良い映画であると思われますので、それだけにそのような欠陥が余計に残念に思えてきます。それから音楽はヘンリー・マンシーニが担当しているのですが、いつもの彼のメロディアスな音楽ではなく、ホラー映画という雰囲気に合わせた音響効果主体イメージ重視のなかなか興味深い音楽を付けています。尚、トレバー・ハワードを除く主演3人すなわちマックス・フォン・シドー、リブ・ウルマン、ペール・オスカーソンは皆スエーデン出身の名優ということでバックグラウンドと合わせて北欧的なイメージが強い映画であると言えるでしょう。


2003/04/05 by 雷小僧
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