Same Time, Next Year ★★★

1978 US
監督:ロバート・マリガン
出演:アラン・アルダ、エレン・バースティン

左:アラン・アルダ、右:エレン・バースティン

どうやらこの映画は日本未公開のようですし、国内のレンタルビデオ屋、中古ビデオ屋でも一度も見かけたことがないので、日本語版(字幕、吹替え含めてですが)のビデオも発売されていないのではないでしょうか。余りそういう映画を日本語のレビューに登場させるのはどうかとも思ったのですが、この映画は大変素晴らしいので出してしまいました。実際、70年代の映画の中では私目の最もお気に入りの映画の一つです。国内で入手不可能であるとすると大変残念なことです。実を言えば、過去数人の日本人が、多分Yahooか何かの検索エンジンでサーチしたのだと思うのですが、この映画について尋ねてきたことがあります。やはり、この映画の評判をどこかで聞いて検索をしたらしいのですね。そういうわけで、日本にもこの映画を見たいと思っている人はかなりいるのではないかと思います。いつか、少なくとも日本語ビデオ化されることを切に望む一本です。ところで、この映画はもともと舞台劇であったものの映画化なのですが、舞台劇を映画化するとともすると焦点がぼけて生煮えになってしまうことがあるのですが、この映画は最もうまく映画化されたものの内の1つなのではないでしょうか(尤も舞台版は見たことがありませんが)。舞台劇が元になっている為か、この映画の主要登場人物は二人だけ(アラン・アルダとエレン・バースティン)です。この二人が、毎年1日だけ海辺のリゾートで七夕様のように出会うのを、5年毎に違ったエピソードで描くのですが、要するにこの二人の会話がこの映画の全てであると言ってもいいと思います。従って、映画全体がまさにこの二人の力量にかかっていると言っても過言ではありません。アラン・アルダは、基本的にコメディアンの部類に入るかと思いますが、不思議なのはコメディをやっていてもこの人はいつも張詰めています。いつも張詰めているコメディアンというのは、矛盾しているようであまりいないように思いますが(ジャック・レモンがときどきそう思わせることがありますが、あれはむしろ神経質といった方がよいでしょう)、それこそがまさにアルダの特徴だと言えます。一方のエレン・バースティンは、逆に弛緩の極致を行くような女優で(だらしないとか蓮っ葉とかいう意味ではありません)、最も女性らしい女優さんの1人であると言えます。最近の女優さんは、どうも中性的なイメージの強い人が多いので(たとえばシャロン・ストーン、デミ・ムーア、ジョディー・フォスターなど皆そういう印象を持っています。あの悪名高き脚の組替えをやっていたストーンがなんで中性的なんだと思われるかもしれませんが、女性的なものというのは何もそういうレベルだけの話ではないのですね。ボイテンディクという動物学者だったか生理学者だかが書いた「女性」(みすず書房)という本辺りを読むと、女性性の現象学というかそういうことがよく分かります)、バースティンの存在が逆にフレッシュに感じられます。ところで、余談ながらこのバースティンは映画女優としては大変遅咲きの人で、オスカーを取った「アリスの恋」(1975)や「ハリーとトント」(1974)、「ラスト・ショー」(1971)、「エクソシト」(1973)(実はこの有名なオカルト映画を私目はまだ1度も見たことがありません)等は全て70年代に制作されています。彼女は、1932年生まれなので、ほとんど40歳を過ぎてからということになるわけです。これが女優としてどれ程遅咲きかというと、同年生まれの女優にはあのエリザベス・テーラーがいますし、ヒチコックの「めまい」(1958)等で有名なキム・ノバクは彼女よりも年下ということになります。彼女らが基本的には1950年代の女優(今でもたまにカメオ出演しますが)であることを考えてみればバースティンがどれだけ遅咲きであるかが分かると思います。いずれにしても、この緊張のアラン・アルダと弛緩のエレン・バースティンのやりとりは、見ている人を飽きさせることがなく、内容ははっきり言ってしまえばソープオペラ的な不倫の物語の一種なのですが、そういう内容よりもこの二人のやりとりの妙味が全てであるといっても過言でありません。従って、この類の演劇的な映画が苦手な人には、この映画は向いていないということは言えるかもしれません。それから、海辺の風景が美しく、それに加えてマービン・ハムリッシュによる音楽がこれまた大変に素晴らしいですね。この人は、例の「追憶」(1973)の主題歌を作曲した人で、ここでもその才能を遺憾なく発揮しています。彼は、1973年に「追憶」で2つ更に「スティング」でもう1つと、音楽関係のオスカーを一人で独占してしまうという快挙を成遂げた人です(年に3つオスカーを獲得した人は他にはいないんではないでしょうか?)。この映画が、もし国内で入手不可能であるとすると気長にテレビ放映されるのを待つか海外から取り寄せるしかありませんが(私目はいつもそうしていますが)、それだけの価値のある映画であると私目は考えています。


2001/02/25 by 雷小僧
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