A Man Called Peter ★★★

1955 US
監督:ヘンリー・コスター
出演:リチャード・トッド、ジーン・ピータース、マージョリー・ランボー、ドリス・ロイド

上:リチャード・トッド

主演のリチャード・トッドは個人的に好きな俳優の一人ですが、いかんせん彼の出演作を入手することは、少なくとも現在のところは極めて困難なようです。アイルランドはダブリンの生まれであり、堅固な意志が明瞭に伝わってくる力強いしゃべり方は、どこかリチャード・バートンを思わせるところがあり、またバートンの場合には、どちらかといえばどこかふてくされ気味なところがあるのに比べ、トッドにはそのようなネガティブな響きがなく、バートンのようにどこか屈折した人物を演ずるよりは、よりストレートな人物を演ずる方が合っていました。その意味では、情熱的な牧師を演じている「A Man Called Peter」は、彼の特徴が最もよく活かされている作品であると見なせます。ところで、彼の出演作の1つであり「A Man Called Peter」と同じくヘンリー・コスターが監督した「あの日あの時」(1956)を先日たまたま見ましたが、なぜ彼を主演に据えなかったのか疑問に思いました。というのも、「あの日あの時」がイマイチな作品に終っている理由の1つは、ノルマンディー上陸作戦という激動の舞台を背景としながら、ペースがあまりにも遅い点に見出せますが、リチャード・トッドが顔を見せているシーンだけはペースを取り戻すからです。その点に鑑みれば、確かに主演のロバート・テイラーはトッドに比べれば遥かにポピュラーなビッグネームであったとはいえ、トッドを主演に据えた方が結果は良かったのではないかと思われます。「A Man Called Peter」では、リチャード・トッドは、スコットランド生まれでありながら、アメリカの上院専属牧師(という言い方で良いのかよく分かりませんが、英語で「Chaplain of the U.S. Senate」と呼ばれる職です)にまで指名されるピーター・マーシャルを演じています。作品の見所は、何と言ってもピーター・マーシャルの力強いスピーチ(説教)シーンにあり、リチャード・トッドの印象的なしゃべり方は、ピーター・マーシャルという情熱的な人物のパワフルなスピーチにはまさにうってつけです。そのような彼の素晴らしいスピーチが「A Man Called Peter」には随所に埋め込まれており、またスピーチの内容も、映画の中であるとはいえども決しておざなりなものではなく、映画であることを忘れて純粋なスピーチとして聞いていても十分に迫力と説得力のあるスグレものです。「A Man Called Peter」は、ある一人の牧師に関する伝記映画であり、下手をすると説教臭く退屈な作品に終ってしまう可能性もありますが、リチャード・トッドのパワフルなスピーチとパフォーマンスは、オーディエンスに必ずや強烈な印象を与えるはずです。尚、「A Man Called Peter」出演後、世紀の奇人の誉れ高いハワード・ヒューズと結婚するジーン・ピータースは、残念なことに当作品を最後に映画界から引退してしまいました。


2003/03/15 by 雷小僧
(2009/01/02 revised by Hiroshi Iruma)
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