The Detective ★★★

1954 UK
監督:ロバート・ハマー
出演:アレック・ギネス、ピーター・フィンチ、ジョーン・グリーンウッド、セシル・パーカー

左:ジョーン・グリーンウッド、中:アレック・ギネス、右:ピーター・フィンチ

アレック・ギネスとピーター・フィンチが主演していると聞いただけで、そこはかとなく渋さが伝わってきますが、少なくとも「The Detective」においては、彼らはむしろチャーミングであると形容した方が適当であるかもしれません。当作品では、アレック・ギネスは、サイドビジネスとして私立探偵を営む神父いう風変わりな役回りを演じています。また、ピーター・フィンチは、怪人二十面相のごとく神出鬼没な美術品強盗を演じていますが、この美術品強盗は、それでしこたま儲けようとする意図は全く持っておらず、盗んだ美術品を密かに自分の隠れ場所に飾って愛でる高尚な趣味を持っています。かくして、ア・ラ・怪人二十面相な美術品強盗の後者と、それを捕らえようとする前者の知恵比べが繰り広げられますが、必ずしもコメディではないとはいえ、その様子が実にユーモラスなタッチで描かれており、演ずる二人が実にチャーミングなのです。加えて、彩りを添えるジョーン・グリーンウッドが二人以上にチャーミングであることは、指摘するまでもありません。彼女の魅力は、瓜実顔の古典的美人であるにもかかわらず、低くディープな声を持っているところにあり、「The Detective」でもそのようなアンバランスな特徴が効果的に活かされています。「The Detective」は、50年代の映画であり、やはりモラリスティックな側面が垣間見られ、たとえばアレック・ギネス演ずる神父が私立探偵を副業にしているのは、捕まえた罪深き悪党どもを更正させるためなのです。彼は、ピーター・フィンチ演ずる美術品強盗がかつて盗んだ美術品を、全て取り戻し当局に引き渡すことができても、盗んだ当人を捕まえて更正させることができない限り目的は半分しか果たせていないと考えており、最後に当人が教会に現れた時初めて自分の目的が達成されたと実感できるのです。そのような仕方でモラリスティックな要素が散りばめられている点については、泥棒が最後に笑い、悪事の成功がスタイリッシュであるかのようなハンドリングが施される現代の泥棒映画とは全く対照的な、悪くいえば極めてダサイ印象を今日では与えることは確かであるとはいえ、むしろアレック・ギネスとピーター・フィンチの洒脱なやり取りが際立っている為、モラリスティックな側面が説教臭くなるほどまでに突出することはありません。地味ではあるけれども洒脱なユーモアも決して忘れられてはいない、いかにもイギリス的な作品です。


2002/05/25 by 雷小僧
(2008/12/30 revised by Hiroshi Iruma)
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