The Reluctant Debutante ★★☆

1958 US
監督:ビンセント・ミネリ
出演:レックス・ハリスン、ケイ・ケンダール、サンドラ・ディー、ジョン・サクソン

左:ケイ・ケンダール、中:レックス・ハリスン、右:ジョン・サクソン

ビンセント・ミネリが監督したアメリカ映画であるとはいえ、ロンドンの社交界に舞台が設定されており、イギリス出身のレックス・ハリスンとケイ・ケンダールが主演しています。ケイ・ケンダールは、当時実生活においてもレックス・ハリスンの奥さんでしたが、「The Reluctant Debutante」が公開された翌年に白血病で惜しくも亡くなっています。それにしても、「The Reluctant Debutante」では、社交界の絢爛豪華さがうまく捉えられています。それもそのはず、監督が色彩の魔術師ビンセント・ミネリであり、画面を染め上げる赤を基調としたゴージャスな色彩が、上流階級の持つ過剰な色合いを見事に醸し出していると評してもあながち言い過ぎではありません。イギリスは現在でも階級的意識が強く残る国であると言われますが、それが画面を通してよく分かります。とはいえ、「The Reluctant Debutante」にはコメディ的な要素もあり、イギリスの階級社会を批判したり、或いは世紀末的なデカンダンスを賛美したりすることがその目的ではなく、富裕な上流階級に属する人々がたむろする社交界がテーマになっているにも関わらず、貧乏根性丸出しの嫌味が感じられないところに好感が持てます。ビンセント・ミネリならではの絢爛豪華なカラー絵巻きとでもいうべきこの作品の持つ鮮やかな色彩のファンタジーにウットリと見入っているだけでも、自分も社交界の名士になった気分に浸れるとまで言えば、さすがに言い過ぎでしょうか。また、レックス・ハリスンとケイ・ケンダールは、イギリスの上流社会というかなり特殊な舞台を背景としながらも、態度、振舞い、出立ちが極めて自然に見え、殊に前者のソフィスティケートされたパフォーマンスは、同じくイギリス出身のケーリー・グラントやレイ・ミランドあたりを除けば恐らく他の誰にも真似ができないことでしょう。但し、アメリカで暮らす娘を演じているサンドラ・ディーは、確かにチャーミングであるとはいえ、ロンドンの社交界という背景には若干フィットしていない印象を受けます。とはいえ、だからこそ、(作品中の)本人もそう考えていて「The Reluctant Debutante」というタイトルが付けられているわけではあります。


2001/12/22 by 雷小僧
(2009/01/21 revised by Hiroshi Iruma)
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