The Anniversary ★☆☆

1967 UK
監督:ロイ・ウォード・ベイカー
出演:ベティ・デイビス、シーラ・ハンコック、ジャック・ヘドレー、エレイン・テイラー

左から:エレイン・テイラー、クリスチャン・ロバーツ、ベティ・デイビス、
ジャック・ヘドレー、シーラ・ハンコック

ベティ・デイビスは、60年代に入ると、たとえば「何がジェーンに起こったか?」(1962)や「ふるえて眠れ」(1965)などにおいてのように、グロテスクで凄まじい役を演じることが多くなりますが、その極北ともいうべき作品が「The Anniversary」です。何しろ、いきなり奇妙な赤いアイパッチ(上掲画像のように途中から黒くなります)をして登場し、あいているもう一方の目でギョロリと相手を睨むのです。アイパッチをしている理由は、その昔自分の息子が誤って彼女の片目を空気銃で打ち抜いたからであることが、やがて分かります。支配欲旺盛な母親(ベティ・デイビス)の結婚記念日(旦那はとうの昔に死んでいる)に、3人の息子とその家族(或いは恋人)が集まるところから、ストーリーは始まります。ところが、この3人の息子達は、揃いも揃って支配欲旺盛な片目の母親に頭が全くあがらないのです。結婚記念日に息子全員が集まるのも、実は、3人の骨無し息子達に対する自分の支配を確認し、さらにそれを強化しようとする母親の強欲の現れなのです。しかしながら、今回の結婚記念日は、例年と異なり、次第に骨無しであったはずの息子達が母親に反旗を翻すようになります。作品は、舞台劇が元になっているだけあり、ほとんどのシーンは、この強欲な母親が住む屋敷の一室を舞台とし、従って、母親と3人の息子(及びその家族)の凄まじい言葉の攻防戦を楽しむというようなところが、作品の正しい見方であることになります。それにしても、ベティ・デイビスの舌鋒には、毒舌をもって知られる彼女にしても、かつてなかったほどの凄まじさがあります。たとえば、一番下の息子の恋人のジュディ・ギースン似のカワイ子ちゃん(エレイン・テイラー)を、自分の方で呼んでおきながら、彼女の鼻先で「体臭が気になるからあっちへ行け」などというとんでもない暴言を吐くのです。また、下着ドロの常習犯である長男を一人では面倒が見切れなくなるので警察に引き渡すなどと言いながら嚇すことによって、カナダに移住したいと思っている2番目の息子を引き留めようとします。実は、「The Anniversary」は、カルト的なホラー作品で有名な、イギリスはハマー・プロダクションの作品であるにも関わらず(因みに、当時のベティ・デイビスは何本かイギリス映画に出演しています)、ホラー映画ではなくブラックコメディなのです。とはいえ、ベティ・デイビスの態度と舌鋒があまりにもおぞましいので、ある意味ではモンスターホラー映画であるとも見なせるかもしれません。確かにBクラス映画ではあるとしても、監督しているのが、「SOSタイタニック」(1958)や「アサイラム」(1972)のロイ・ウォード・ベイカーであるだけあって、ベースは堅実であり、下手をするとハチャメチャな展開になりそうな素材が、ギリギリのところでそうはならないように巧みにコントロールされている印象を受けます。いずれにせよ、当作品に関して1つ確実に言えることは、60年代以降のベティ・デイビスの毒舌を存分に楽しみたいオーディエンスには、これほど相応しい作品はないということです。


2002/10/19 by 雷小僧
(2009/03/17 revised by Hiroshi Iruma)
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