女房の殺し方教えます ★★☆
(How to Murder Your Wife)

1965 US
監督:リチャード・クワイン
出演:ジャック・レモン、ビルナ・リージ、テリー−トーマス、クレア・トレバー

左から:ビルナ・リージ、ジャック・レモン、クレア・トレバー、エディ・メイエホフ

何とも物騒なタイトルです。と言っても、ジャック・レモン演ずる主人公が、酔った勢いで結婚したイタリア娘(ビルナ・リージ)を、厄介払いに実際に殺してしまうわけではなく、人気アニメ作家の彼はアニメ上でそれをシミュレートするのです。けれども、「女房の殺し方教えます」がタイトル以上に物騒な点は、実際には殺してもいない女房を殺したと偽って、野郎ばかりの裁判で強引に無罪を勝ち取ってしまうシーンに典型的に見られるような、女性蔑視と明らかに取れるシーンが散見されることです。最初に見た時、女性がこの作品を見れば必ずや怒り心頭に発するのではないかと思ったものです。それにしても、フェミニストに総スカンを食らいそうな、ということは少なくともオーディエンスの半分からクレームを浴びそうな作品を涼しい顔をして撮るなど、リチャード・クワインならではかもしれません。クワインが女性蔑視の常習者であると主張したいのではなく、彼の作品はいつもどこかユニークで変わっているからです。とにかく、クワインの手さばきが軽やかで、サラリと済ませて何事もなかったように見せかけてしまう手並みは、ほとんど名人の域に達した詐欺師並みの鮮やかさと言えるでしょう。しかしながら、見方によっては、女性蔑視的な側面は、そのような時代遅れなことを嬉々としてやっている野郎どもの子供っぽさを逆に嘲笑っているのかもしれません。たとえば、くだんの裁判シーンもそうですが、男だけのスポーツクラブにイタリア娘が乗り込んできて、上を下をの大騒動になるシーンなどは、いかにも男社会のカルカチュアといった風情があります。このような奇矯さがクワイン作品の大きな特徴であり、個人的にもそこが気に入っているのです。また、それに見合ったケッタイな登場人物が次々と登場します。文字通りウエディング・ケーキの中から飛び出すビルナ・リージは、この人らしく実にチャーミングです。前歯の隙間とイギリス訛りを誇示するテリー−トーマスがいつものように実に珍妙且つ可笑しいですね。それから、怪しげな薬が調合されたシャンペンを飲んで悪酔いし、机の上で踊りまくるクレア・トレバーと、その旦那で無能な弁護士を演じているエディ・メイエホフが実に傑作です。特に後者のとぼけた味は何とも言えないおかしさがあります。ニール・ヘフティの音楽が、更にコミック調の軽快な印象を与えていることを付け加えておきましょう。


2001/06/03 by 雷小僧
(2008/10/29 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp