ミクロの決死圏 ★★☆
(Fantastic Voyage)

1966 US
監督:リチャード・フライシャー
出演:スティーブン・ボイド、ラクエル・ウエルチ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス

上:ウイリアム・レッドフィールド
下左から:アーサー・ケネディ、ドナルド・プレザンス、スティーブン・ボイド

外見に比して中身がスカスカであるようにしか見えない作品が多過ぎることもあり、SFXテクノロジーを駆使した最近の映画は個人的には好きではありませんが、そのような最新技術を利用してリメイクして欲しいと願っている作品がいくつかあり、「ミクロの決死圏」はその中の1つです。「ミクロの決死圏」は、特殊効果部門でオスカーを受賞した作品で、子供の頃TVで見た時分には「おお!素晴らしい!」と思った記憶はあるにせよ、さすがに現在の目から見ると原始的なビジュアルである印象を受けざるを得ません。従って、是非とも最新の技術を駆使してリメイクして欲しいと思っているのであり、また人間の体内を冒険するというアイデアは題材として最新の技術が最も効果的に活かせるジャンルだと考えられます。いずれにせよ、オスカーを受賞した程なので、製作された当時は「ミクロの決死圏」には、大きなインパクトがあったことは間違いありません。何しろ、原題の「Fantastic Voyage」が、製作者の自信を物語っているようにも思われます。「ミクロの決死圏」は、スパイ物要素を合わせ持つSF冒険映画であり、ストーリー自体に即したタイトルをつけるとすれば、たとえば「Dangerous Voyage」とされるべきところを、実際には「Fantastic Voyage」とされているのです。「Fantastic」という表現は誰の目から見ての「Fantastic」かといえば、登場人物の目からというよりも、オーディエンスの目からと見なされるべきでしょう。すなわち、「Fantastic」な映画であるという自負があったればこそ、そのようなタイトルがつけられているということです。オーディエンスの目から見た作品印象がタイトルに含められているという意味においては、「ミクロの決死圏」は、まさに「見る」映画の典型であったと言ってよいかもしれません。また、SF映画といえば宇宙人の襲来というイメージが強かった50年代からそれほどの時間が経過していない当時にあっては、人間の体内を冒険するというアイデアは極めて斬新であったはずです。或いは、アイデアはあってもそれまでは技術的に撮影不可能であったということかもしれません。いずれにしても、大袈裟な言い方をすれば、当作品によってSFXテクノロジーを駆使する現在の映画への道が切り開かれたと見なせる内容を有しており、その斬新さにおいて当時は画期的な作品であったことは、何度も指摘されて然るべきでしょう。それから、あまり指摘されませんが、「ミクロの決死圏」は、実は「真昼の決闘」(1952)同様リアルタイム映画なのです。というのも、主人公達がミクロ化されたままでいられる時間は60分であるという設定ですが、実際の上映時間上でも主人公達がミクロ化されている時間はほぼ60分間だからです。但し、途中経過を丹念に追うと途中で時間は若干ずれますが、最後は帳尻を合わせて60分で主人公達が元のサイズに戻ります。ということで、テクノロジー的に現在ではかなり色褪せて見えることを差し引いたとしても、今でも見る価値は十分にある作品です。


2003/01/18 by 雷小僧
(2008/11/04 revised by Hiroshi Iruma)
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