雨を降らす男 ★★☆
(The Rainmaker)

1956 US
監督:ジョセフ・アンソニー
出演:バート・ランカスター、キャサリン・ヘップバーン、ロイド・ブリッジス、アール・ホリマン

左:バート・ランカスター、右:キャサリン・ヘップバーン

主演の一人であるバート・ランカスターは、1960年に製作された「エルマー・ガントリー」でアカデミー主演男優賞に輝いていますが、それと類似した役を既にこの「雨を降らす男」で演じています。「エルマー・ガントリー」では、山師的な説教師を演じていましたが、「雨を降らす男」では、まさに山師的な山師を山師的に演じています。何しろ太鼓だの、竜巻をそよ風に変える杖だの、奇妙な道具を使って雨乞いをしながらおゼゼを稼ぐという、まるで未開社会のシャーマン(彼らはおゼゼは稼がないかもしれませんが)のような人物を演じています。とはいえ、未開社会のシャーマンが、特定の共同体の中で1つの役割を果たすのに対して、バート・ランカスター演じる山師は、馬車に乗って絶えず町から町へと移動する放浪シャーマンなのです。ストーリーは、そのような山師が、雨が降らず困惑困窮している、とある農場にやってくるところから始まります。この農場には、キャサリン・ヘップバーン、ロイド・ブリッジス、アール・ホリマン演ずる3人の兄弟姉妹が住んでいます。キャサリン・ヘップバーンは、当時彼女の役の多くがそうであったように、オールドミスを演じており、しきりに美人でないことを気にしています。この作品は、これらの登場人物の間で交わされる会話が上映時間のほとんどを占め、オーディエンスを選ぶタイプの映画であるとも考えられますが、当時のバート・ランカスターが得意としていた爆発的なキャラクターと、オスカー(主演女優賞)にノミネートされたキャサリン・ヘップバーン演ずるキャラクターとの間で交わされる強烈なやりとりが見所の映画です。特にランカスター演じるデラシネ(根無し草)的なキャラクターには、一方では特定の伝統やしきたりに縛られないフリーな存在のように見えながら、他方ではある特定の堅固な地盤に根差さないが故の脆さを時折り露呈するアンビバレントな性格付けがなされており、バート・ランカスターの熱演もあって一味違う人物造形を見出すことができます。


2001/05/13 by 雷小僧
(2008/10/08 revised by Hiroshi Iruma)
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