二十歳の火遊び ★★☆
(Parrish)

1961 US
監督:デルマー・デイビス
出演:トロイ・ドナヒュー、コニー・スティーブンス、カール・マルデン、ディーン・ジャガー

左:トロイ・ドナヒュー、右:クローデット・コルベール

「二十歳の火遊び」という邦題は、内容との整合性を問題にしなければ実に見事な命名だと言えます。けれども残念ながら、内容とはあまりマッチしていません。「二十歳の火遊び」という邦題と、トロイ・ドナヒュー及びコニー・スティーブンスが主演(但しスティーブンスは後半はほとんど登場しない)していることを考え合わせると、浜辺でサーフィンをしながら親の反対を押し切ってラブラブの関係になるというようなこの当時流行っていた青春映画がどうしても想像されます。が、予期に反して、この作品はパワーポリティクスがはびこるタバコ会社の経営をテーマとした社会ドラマの色合いが濃く、相当シリアスな映画なのです。勿論、ラブロマンス的側面もないわけではなく、コニー・スティーブンス、ダイアン・マクベイン、シャロン・ヒューゲニーなど続々とドナヒューのお相手が登場します。余談になりますが、最後に名前を挙げたシャロン・ヒューゲニーを知る人はあまりいないかもしれないので簡単に紹介しておくと、実は彼女は、この作品を撮影したあと、後にパラマウントを牛耳る山師的プロデューサーのロバート・エバンスと結婚します。その顛末に関しては、エバンスの自伝でもある「くたばれ!ハリウッド」(文藝春秋)に書かれています。全体的な印象からすれば、「二十歳の火遊び」は、邦題にも関わらず、ラブロマンスがメインではなく、社会ドラマの方が際立っていると見なすべきでしょう。何しろ、タバコの裁培がいかに困難であるかがよく分かるくらいです。あれだけ苦労して育てるくらいなら、「みんなで禁煙すればいいじゃん」などとノンスモーカーの小生は思わず呟いたほどです。配役に関してですが、主演のトロイ・ドナヒューはやはり一本調子なイメージが避けられず、セリフを棒読みしているように見えるシーンが多々あります。とはいえ、社会ドラマの色合いが濃いだけあって、サポートはしっかりしています。ディスタフ系は前述した3人のお人形さん達の他に、トロイ・ドナヒューの母親役を演じているクローデット・コルベール(彼女のラスト)、少々エキセントリックなシルビア・マイルズ、リチャード・ブルックスがよく起用する女優さんで火星人(なんていないか)のように頭が小さいマデレーン・シャーウッドが出演しています。、男優ではカール・マルデンとディーン・ジャガーの二人がさすがにベテランらしく独自の存在感があり、実に素晴らしい。社会ドラマと青春映画が奇妙にミックスされ、焦点が絞りにくいところがあるとはいえ、見応えは相当あります。少なくとも、当時流行っていた単なる「浜辺でサーフィン映画」でないことは間違いがありません。


2001/10/20 by 雷小僧
(2008/10/17 revised by Hiroshi Iruma)
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