オー!ゴッド ★★☆
(Oh! God)

1977 US
監督:カール・ライナー
出演:ジョージ・バーンズ、ジョン・デンバー、テリー・ガー、ポール・ソルビノ

左:ジョージ・バーンズ演ずる神様、右:ジョン・デンバー

ジョージ・バーンズの姿を借りて神様が実体化したという設定は、それだけでも結構笑えます。あちらではかなり人気のある作品のようであり、人気の秘訣は、内容の面白さによりもキャスティングの妙味にあると見なせるかもしれません。主演のジョージ・バーンズについては「Going in Style」(1979)のレビューで述べたのでここでは詳述しませんが、元ボードビリアンで長いブランクの後70年代に復活したいわばプロ中のプロの芸人でした。「オー!ゴッド」出演時には既に80才になっていたはずです。この人の持つ独特な皺枯れ声だけを聞いていると天から神様が喋っているかのように聞こえないこともないとはいえ、神様がもし一人の人間の姿を借りて本当に実体化したならばかくあろう期待とは180度異なる出で立ちで彼が天から地上に降臨するのがこの作品の妙味の1つなのです。しかしながら、かくしてケッタイな神様を演ずるジョージ・バーンズ以上に驚きなのが、スーパーマーケットの店員を演じているジョン・デンバーです。ジョン・デンバーとは勿論シンガー・ソング・ライターのジョン・デンバーのことであり、彼は「オー!ゴッド」に出演する以前に映画に出演した実績はないにも関わらず、いきなり実質的な主役を演じており、しかもこれが実にナチュラルで悪くはありません。彼を主演に据えようと最初に考えた人は凄い!彼は、「Take Me Home, Country Roads」や「Sunshine on My Shoulders」などで、ポピュラー音楽の世界では既に世界的なスーパースターだったのであり、当時C&Wを夢中で聞いていた小生も彼のアンソロジーを持っていました。しかしながら、彼は、抜群の知名度にも関わらずスーパースター然とした態度や風貌を持つ人ではなく、誰でもが親近感を持てるいわばお隣さんタイプのスターだったのであり、「オー!ゴッド」でもそのような親しみ易さが滲み出ています。彼が歌手として歌う曲のテーマは、田舎でのシンプルライフなどの時代性にマッチしたものであったように記憶していますが、それは同時に彼のキャラクターそのものでもあったのでしょう。「オー!ゴッド」は、下手をすると社会風刺が意図された皮肉や嫌味が含まれるかに取られかねない内容を持っているにも関わらず、彼のそのようなパーソナリティを反映してか、むしろシンプルでストレートである印象を受けます。彼が飛行機事故で亡くなってからもう10年近く経つとは、月日が流れるのが矢鱈に速い!また、ジョン・デンバーの奥さんを演じているテリー・ガーも、映画スターとしてのオーラよりも親近感の方が遥かに勝るタイプの女優さんであり、ジョン・デンバーと絶妙のコンビを組んでいます。主演3人の他にも脇役としてよくぞここまで集めたと思わせるメンバーが揃っており、ポール・ソルビノ、ドナルド・プレザンス、ラルフ・ベラミー、バーナード・ヒューズ、ジェフ・コーリー、バリー・サリバンなどの曲者がずらりと顔を並べています。ジョージ・バーンズをも含めたこれら曲者達には、おらが町の隣の夫婦といった印象のあるジョン・デンバー+テリー・ガーとは全く反対の、いかにも百戦錬磨のつわものというイメージがあり、要するに「オー!ゴッド」には、ジョン・デンバー+テリー・ガーによって代表される「日常」と、ジョージ・バーンズ+その他の芸人による「非日常」の織り成す対立的な構図が見て取れるということです。殊に、まるでポン引きのような牧師を演ずるポール・ソルビノ(ミラ・ソルビノの実のお父っつあんで彼女は彼に似なくて良かった!良かった!)の意図的なオーバーアクティングは秀逸です。尚、監督はコメディアンでもあるカール・ライナーであり、そういえば彼は昨日見た「オーシャンズ12」(2004)にも80才を越えているにも関わらず元気に顔を見せていました。


2005/03/13 by 雷小僧
(2008/12/01 revised by Hiroshi Iruma)
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