幽霊と未亡人 ★★★
(The Ghost and Mrs. Muir)

1947 UK
監督:ジョセフ・L・マンキーウイッツ
出演:ジーン・ティアニー、レックス・ハリスン、ジョージ・サンダース、エドナ・ベスト

左:ジーン・ティアニー、右:レックス・ハリスン

最近の映画を見ていると、どんな映画にしろ寓話性がほとんどないことにいやでも気付かざるを得ません。最新映画一口評のコーナーに最近私目が映画館で見た映画に関する評を書いていますが(※)、この中(2001年7月1日迄)で寓話性があるように思えたのはただ「ショコラ」(2000)のみであり、それ故この映画に対する評価がかなり高くなっているのです。たとえば確かに現代の麻薬問題を取り扱った「トラフィック」のような映画が一般的に好評価を得るのは分からないでもありませんが、おとぎ話的魅力に溢れているか或は夢があるかと問えば、とてもYesと返答することは出来ないでしょう。勿論、映画=おとぎ話でないことは確かですが、40年代後半から70年代前半(それ以前の映画はそれ程たくさん見ていないのではっきりとは分からない為含めていません)の映画には見られ、それ以後の映画にはほとんど見られなくなってしまった要素、それが寓話性、おとぎ話性であるように考えています。では寓話性、おとぎ話性とは何かということが次に問題になりますが、それは言葉であれこれ述べるよりも、具体的に1本タイトル名を挙げて実際に見て頂いた方が手っ取り早いように思われます。そこで挙げたいのが、この「幽霊と未亡人」です。レックス・ハリスン演じる幽霊が出没する海辺の一軒家を借りたジーン・ティアニーと船乗り幽霊との交流を描く言わばロマンティックコメディですが、実に語り口が見事で、単なるラブストーリーでもなければ単なるコメディでもなくまた現代の映画に多い単なる個人/家庭レベルでの息の詰まりそうなドラマでもないのです。見た後で得もいわれぬ余韻を残すのがおとぎ話性の高い映画(或は物語)の特徴であると考えられますが、この映画にはそれが十二分にあります。後半、時間の流れが急速に速くなりますが、このような時間構成は、フラットな時間ハンドリングに比較すれば、おとぎ話性を高めることに大きく貢献しているものと見なすことができます。またこの映画は、海辺の風景が見事にカメラに収められている上に、その風景にバーナード・ハーマンの何やら神秘的な音楽が素晴らしくよくフィットしていて独特の雰囲気を醸し出しており、これがまたこの映画のおとぎ話的な側面を強化しているように思われます。最後に一言付け加えておくと、当時まだ10才にもなっていない子役時代のナタリー・ウッドがジーン・ティアニーの娘役で出演しています。

※このコーナーは、諸般の事情の為、クローズしました。


2001/07/01 by 雷小僧
(2008/10/06 revised by Hiroshi Iruma)
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