山の上の第三の男 ★★☆
(Third Man on the Mountain)

1959 UK
監督:ケン・アナキン
出演:ジェームズ・マッカーサー、マイケル・レニー、ジャネット・マンロー、ジェームズ・ドナルド

左:マイケル・レニー、右:ジェームズ・マッカーサー

昨年ディズニーは、1950年代から1970年代までの過去の自社製作作品をDVDバージョンで大挙してリリースしましたが、「山の上の第三の男」もその中に含まれます。大挙してリリースした作品の中には、当作品やフレッド・マクマレー、ジェーン・ワイマンが主演した「パリよこんにちは!」(1962)、ロバート・テイラー、リリ・パルマーが主演した「白馬奪回作戦」(1963)、ブライアン・キース、ベラ・マイルズが主演した「われらキャロウェイ」(1964)などの個人的にはそれまでビデオで所有していなかった作品もあり嬉しい限りです。ただ残念なことに、ディズニーのDVDは画像のクオリティがDVDとしてはイマイチなものが多く、この「山の上の第三の男」も製作年が1959年であるという事実を割り引いて考えたとしても、画像クオリティがイマイチです。しかしながら、作品としてはディズニーの子供向け作品とはいえなかなか面白く、登山がテーマになっている映画の中ではドラマとして最も良い出来に仕上がっているように思われます。映画のテーマとして山が取り上げられると、山は征服されるべき対象とされるのが普通ですが、他の山をテーマとした作品と比べてこの作品をドラマとして興味深いものにしている要素は、主人公(ジェームズ・マッカーサー)が、山岳ガイドになることを目指している点にあります。従って、彼にとって山とは、征服すべき対象であるには変わらないとしても、彼にとって重要な任務は、citadel(要塞)と呼ばれるア・ラ・マッターホルンな難航不落の山キラーマウンテンを自分自身の力だけで攻略することにあるのではなく、ガイドとして他の人々がそのような難行を達成するのを手助けすることにあるのです。そのような前提が、「山の上の第三の男」のドラマ的側面をより興味深いものにしており、ネタをばらさない為に詳細は述べませんが、ラストシーンがより大きな意味を持つのもこの前提があるからこそです。ところで、この作品はディズニー産なので肝心の登山シーンはきっと山ではなく丘を登るハイキングのように見えるのではないかと心配される向きもあるかもしれません。が、心配は杞憂であり、他の登山映画と比べてもそれ程ひけを取らないような迫力ある登山シーンが見られます。但し、マイケル・[クラトゥ・]レニー演ずる高名な登山家がネクタイを締めて登山している様は、いくらなんでもそれはなかろうと思わざるを得ず、そのあたりに子供相手の映画であるような印象があることは否めないところです。子供向けのディズニー作品に対してあまり適当ではない言い方かもしれませんが、作品の花としてジャネット・マンローが出演しています。当時、彼女は英国ディズニー作品への出演がほとんどであったようで、丸顔で柔和な顔立ちが子供向けの映画に合っていたということでしょう。他作品のDVDの音声解説によると、マンロー本人は、ディズニー作品に出演すると、子供向け作品なので胸が目立たないようにコルセットのようなものでいつも締め付けていなければならないのが不快であったと吐露していたそうです。また、いつもは戦争映画で温厚な士官というような役どころの多いジェームズ・ドナルドが、主人公の厳格な叔父を演じていてこれがなかなか素晴らしく、ドラマ的側面をピリリとスパイスアップしています。付け加えておくと、ジェームズ・マッカーサーの実のお袋さんであった大女優のヘレン・ヘイズがリゾート客としてちらりとカメオ出演しています。目元がそっくりで親子であることがすぐに分かります。


2005/02/13 by 雷小僧
(2008/10/14 revised by Hiroshi Iruma)
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