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前回は「素晴らしきヒコーキ野郎」(1965)を取り上げましたが、同様にケン・アナキンが監督し、カーレースバージョンの「素晴らしきヒコーキ野郎」とも見なせる「モンテカルロ・ラリー」を今回は取り上げました。実際に、内容的にも「素晴らしきヒコーキ野郎」の飛行機レースをカーレースに置き換えただけのように見え、その意味では余計にハンナ=バーベラプロダクションの「チキチキマシン猛レース」に近い展開が期待されます。またテリー・「ブラック魔王」・トーマスと、エリック・「ケンケン」・サイクスのコンビが復活し、またゲルト・フレーベも再登場します。但し、今回はエリック・サイクス演ずる召使は、テリー−トーマス演ずる主人に必ずしも従順ではないようです。全体的には、前作に比べ更にスラップスティック度が増し、また「素晴らしきヒコーキ野郎」では飛行機レースがスタートするまで実に80分もかかったのに比べると、今回は30分過ぎから早くもカーレースがスタートし、アクション色が濃くなったように見えます。ケン・アナキンが競技媒体だけを変えて似通った作品を再び手掛けた理由は、ひょっとすると前回目玉のレースシーンが短か過ぎたので、今回はカーレースシーンでたっぷりとスラップスティックしてみようと思い立ったからではないかとすら思わせます。しかし、「モンテカルロ・ラリー」が前作に比べ色褪せて見えるのはまさしくこの点に関してであり、「素晴らしきヒコーキ野郎」では、スラップスティックシーンが巧みに挿入されることによって空を飛ぶという人類の壮大な夢が初めて実現した頃の熱気が伝わってきたのに対し、「モンテカルロ・ラリー」では、単なるダサギャグにしか見えないスラップスティックシーンがほとんどです。また「素晴らしきヒコーキ野郎」では各国のお国柄がギャグの対象になっていましたが、「モンテカルロ・ラリー」ではそのような趣向があるわけでもなく、折角のインターナショナルなキャストも宝の持ち腐れに見えざるを得ません。悪いことばかり書き連ねてしまいましたが、それでもやはり今回も、色とりどりの個性的な俳優さんを揃えて頓珍漢なギャグが連発されるので、楽しく見られる点では「素晴らしきヒコーキ野郎」と大きな変わりはありません。基本的に、オールスターキャストがウリで、各登場人物がそれぞれ好き放題をする作品は、極めて大味になりがちですが、その代りに屈託のない楽しさを味わえることもしばしばであり、「モンテカルロ・ラリー」もまさにその範疇に分類されるべき作品です。ブロンドヘアに漆黒の瞳という風変わりなコンビネーションがチャーミングなスーザン・ハンプシャーが、トニー・カーティスと共に主演格で出演しており、彼女の出演作はなかなか見られないこともあり、その意味でも価値のある作品です。