黙示録の四騎士 ★★☆
(The Four Horsemen of the Apocalypse)

1962 US
監督:ビンセント・ミネリ
出演:グレン・フォード、イングリッド・チューリン、シャルル・ボワイエ、カール・ベーム

左:イングリッド・チューリン、右:グレン・フォード

「黙示録の四騎士」は、ルドルフ・バレンチノが出演した1921年公開の同名作品のリメイクであり、リメイク映画の常として評判はオリジナルバージョンよりも芳しくないようです。第二次世界大戦(オリジナルでは第一次世界大戦)中、移民アルゼンチン人の孫達が、片や連合国側(グレン・フォード)、片や枢軸国側(カール・ベーム)に分かれて争い、最後は悲劇的な結末を迎えるというストーリーが繰り広げられます。一家の没落というエピック的なマテリアルが扱われている為、ハンドリングに失敗すると、いとも簡単に駄作に終わる可能性がある作品だと考えられます。監督のビンセント・ミネリは、ミュージカルを中心としたファンタジー作品が多く、ドラマの監督実績もあるとはいえ、エピックドラマを得意としていたとはとても思えず、見る前から不安を覚えたとしても何の不思議もないかもしれません。あまつさえ、彼のミュージカルの代表作の1つである「ブリガドーン」(1954)を思わせる冒頭のおとぎ話調のシーンによって、その不安は見事に的中したかに一瞬思われます。が、不安を覚えるのはそこまでで、冒頭のシーン以後はエピックストーリーが、大過なくハンドリングされています。しかしながら、ミネリが監督であるということで一番注目すべき点は、ストーリー展開そのものではなく、やはり色彩のハンドリングに関してです。カラー映画の申し子たるミネリは、決して彼の得意分野であるとは思えない「黙示録の四騎士」においても、彼独自の色彩感覚を惜しげもなく披露しており、殊に室内シーンのゴージャスさは彼の作品ならではです。たとえば、ミネリには赤系統の色を多用する傾向がありますが、この作品でも派手な赤ではなくてビロードのようなシックな赤が多用されており(上掲画像参照)、それによってエピックドラマには必須の大時代的な雰囲気が醸し出されています。ここで話が180度変わります。グレン・フォードの相手役を務めているイングリッド・チューリンに関してですが、最初に見た時、彼女にしては随分英語が流暢なので驚きました。なぜ驚いたかというと、「黙示録の四騎士」のほぼ15年後に公開された「カサンドラ・クロス」(1976)では、彼女はおそろしく重たい英語を喋っているからです。15年経って英語能力が退化したのかと思いましたが、実は真相は違うようです。「黙示録の四騎士」では、アンジェラ・ランズベリーが彼女の吹き替えをしているようです。そう言われて聞いていると、時々これはアンジェラ・ランズベリーの声だなと思い当たるシーンがあります。最後にキャスティングに関してですが、主演のグレン・フォードはシリアスなこの作品には軽すぎ、少し浮いて見えます。また、リー・J・コッブが瞬間湯沸し的な家長を演じていますが、いつものように少しオーバーアクティング気味に見えます。グレン・フォードのいとこでSS(ヒトラー親衛隊)高官を演ずるカール・(ハインツ)・ベームは彼自身ドイツ人であり、かの大指揮者カール・ベームの息子さんです。丸顔は親父さんに似たのでしょう。ということで、エピックドラマが好きな人には、まずまずお薦めできる作品です。


2001/10/06 by 雷小僧
(2008/10/20 revised by Hiroshi Iruma)
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