リトルショップオブホラーズ ★★☆
(Little Shop of Horrors)

1986 US
監督:フランク・オズ
出演:リック・モラニス、スティーブ・マーティン、エレン・グリーン、ビンセント・ガーデニア

左:リック・モラニス、右:吸血植物オードリーII

1960年代後半あたりからミュージカルの凋落が始まるわけですが、しかしながら勿論完全に絶滅するわけではなくて「ザッツ・エンタテインメント」シリーズのようなカタログ的に過去の作品を集めた作品が受けたり、或いは伝統的なミュージカルの題材とはおよそかけ離れた題材をテーマとしたミュージカルが受けたりするようになります。後者にはたとえば既に紹介している「夢のチョコレート工場」(1971)であるとか「ロッキー・ホラー・ショー」(1975)或いは私目はまだ一度も見たことがないのですが反戦をテーマとする「ヘアー」(1979)などが挙げられるでしょう。しかしながらきわめつけは何と言ってもオードリーIIと命名された吸血植物が歌い踊りまくるというケッタイな映画「リトルショップオブホラーズ」であり、この作品を挙げないわけにはいかないでしょう。基本的に私目は、正統的なミュージカルを好んで見る輩ではないのですが、こういうケッタイなミュージカルは結構好きなのです。というのも、このタイプのミュージカルにおいては歌を聞かせる為にストーリーがあるというよりは、ストーリーの進展を面白可笑しく味付けするのが歌であるという観点の方がより重視されているように思われるからです。まあ歌は一種のBGM的効果と思って見ることが出来るということです。そう思って見ていると、勿論素晴らしい歌がつまっている方が望ましいに決まっているのですが、そうでなかったとしても大して気にはならないのですね。しかしそれにしてもこの「リトルショップオブホラーズ」は奇妙奇天烈な映画です。いわばハマー映画的に安っぽいホラー映画(これは悪口では決してなく、いわば正統的ホラー映画のある一種のパロディをハマー映画などには見出すことが出来るわけです)のパロディ(従ってパロディのパロディです)、どこかイギリス的にブラックなユーモア(吸血植物が欲の皮の突っ張った人間をうまそうにパクリとするシーン等)及びスティーブ・マーティンに代表される(他にジェームズ・ベルーシ、ジョン・キャンディ、ビル・マレーがわずかの間ですがゲスト出演しています)アメリカ的に脳天気なスラップスティックの混交である上に、ご丁寧にもそれがミュージカルなのです。それを聞いただけでも1度は見なければという気になるのではないでしょうか。それからセットがなかなかよくて、ブルックリンの下町か何かの様子がよく出ているのも強みの1つでしょう。しかしながらやはり最大の見物は人間ではなくて、奇怪な吸血植物オードリーIIでしょう。DVDバージョンにはメイキングが付加されていて、この吸血植物がどうやってコントロールされていたのかが分かるのですが、驚いたことに舞台下に配置された何十人という人間がワイヤを引っ張りながらこの吸血植物を歌ったり踊ったりさせたということだそうです。まあ発音に合わせた唇の動きまで考慮されているのには恐れ入るというか、アメリカ映画恐るべしといわざるを得ないでしょう。全体的には題材にも関わらず非常に楽しい映画であると言えるでしょう。


2002/07/21 by 雷小僧
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