マーメイド作戦 ★☆☆
(The Glass Bottom Boat)

1966 US
監督:フランク・タシュリン
出演:ドリス・デイ、ロッド・テイラー、ジョン・マクギヴァー、エドワード・アンドリュース

左:ドリス・デイ、右:ロッド・テイラー

50年代末から60年代中盤までにかけて、ロマコメジャンルなどで、のどかさを全開にした独自のモノカルチャーが形成されていたように個人的には考えていますが、その時代の終盤に製作された何でもないコメディをここに取り上げるのには1つの理由があります。それは、そのような時代に最も適合したスターとして君臨していた2人の俳優さん、すなわちドリス・デイとロッド・テイラーが主演しているからです。ドリス・デイやロッド・テイラーがいかにその時代を代表する存在であったかは他の様々なレビューで述べているのでここでは繰り返しませんが、この独自の時代の掉尾を飾る「マーメイド作戦」でこの両者が共演している事実は、これ以後両者とも映画界から遠のくことを考え合わせてみると(ロッド・テイラーは最近でも時々チョイ役で映画出演していますが第一線からは60年代後半に退いています)、今となってはかなり意味深であったようにも思われます。そのことは、主演二人に限ったことではなく、脇を固めるジョン・マクギヴァー、エドワード・アンドリュース、ポール・リンドなどにも等しくあてはまります。いわば「マーメイド作戦」は、多少スラップスティック度が高すぎるとはいえ、60年代中盤までのおっとりとした良き時代の惜別的な作品の1つなのです。スパイ映画を徹底的に茶化したストーリー展開には、屈託のない無邪気さが冒頭からラストまで浸透しており、ベトナム戦争が本格化してからのアメリカ映画に滅多に見られなくなってしまったゆとりを感じ取ることができます。同年代のエバ・ガードナーやローレン・バコールがこの頃は既にどちらかというとおばさん的雰囲気が濃厚になっていたのに比べ、若干太めになられたとはいえ40才を越えてもまだまだ元気で、あどけなさすら時折垣間見せる童顔ドリス・デイは、たとえば間抜けスパイ(ドム・デ・ルイーズ)と一緒にバケツに片足がはまって抜けなくなるなど、相変わらずドリス・デイらしいおっちょこちょいパフォーマンスを繰り広げてオーディエンスを楽しませてくれます。また、作品中で得意の歌を何曲か歌っており、その中にはヒッチコックの「知りすぎた男」(1956)で彼女自身が歌っていた有名な「ケ・セラ・セラ」も含まれます。加えて、当作品の主題歌もなかなか楽しい曲です。なくもがなのつまらぬスラップスティックギャグも多く、作品自体のでき栄えは必ずしも素晴らしいとはいえませんが、以後、ロマコメも含めたコメディは、カウンターカルチャーの影響を受けるようになり、色合いがかなり変わってしまうので、一時代の終わりを画す作品として見る価値はあります。


2001/09/01 by 雷小僧
(2008/11/03 revised by Hiroshi Iruma)
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