イルカの日 ★☆☆
(The Day of the Dolphin)

1973 US
監督:マイク・ニコルズ
出演:ジョージ・C・スコット、トリッシュ・バン・ディバー、ポール・ソルビノ、フリッツ・ウェバー

左:ジョージ・C・スコット、右:トリッシュ・バン・ディバー

前半は主人公(ジョージ・C・スコット)と2頭のイルカとの交流、後半はイルカの知能を利用して悪漢どもが大統領を暗殺しようとするストーリーが繰り広げられ、着想は面白そうであり、他にも良い点があるにも関わらず、見終わった後、どうにも気の抜けたドクターペッパーのような味気なさを覚えざるを得ないのが残念です。動物映画とサスペンス映画とSF映画と政治ドラマとメロドラマが全て中途半端にごった煮になった感があり、今一つピリッとしません。無器用で手のこんだジョーク映画であるとする評を読んだことすらあります。それでは、そのような作品をなぜここに取り上げるかというと、実は「イルカの日」には個人的な想い出があるからです。すなわち、「イルカの日」の音楽は知る人ぞ知るジョルジュ・ドルリューが担当していますが、個人的にこの作品の音楽が非常に気に入り、それ以後映画音楽のサントラ盤を収集する道をひた走ることになるのです。のみならず、中学校の文化祭でクラス劇(ユゴーの定番「レ・ミゼラブル」だったはずです)を上演した際小生が音楽を担当し、当時封切られた「イルカの日」の音楽を使用し、なかなかの好評を得た覚えがあります。従って、作品内容そのものよりも音楽に大きな思い出が残っているのです。ということで、少なくともドルリューの素晴らしい音楽を聞くためのみであっても見るに値すると個人的には思っています。勿論、音楽ばかりが取り得の作品であると言い切るのは不当であり、他にも優れた点はあります。筆頭はやはり2頭のイルカ、アルファとビーの演技でしょう。イルカが片言の英語をしゃべるシーンは明らかに音声を合成しているはずですが、水槽の中を2頭が揃って泳いでいるシーンや水槽の仕切りを飛び越そうとするシーンなどはなかなか楽しめます。イルカ博士と呼ばれたジョン・C・リリーのような人によれば、イルカの伝達能力は人間よりもはるかに優れているそうですが、まさか英語は喋らないでしょう。いずれにしても、動物が登場する映画が好きな人にはかなり楽しめるはずです。さらに、イルカのアルファとビーに匹敵するのがジョージ・C・スコットです。彼は、どんな時でもフルパワーで演技する人のようであり、最近の俳優さんには見られない強烈さがあります。見てくれはただのおっさんのようですが、作品にマッチしているか否かは別としても、実に素晴らしい俳優さんです。「パットン大戦車軍団」(1970)や「ホスピタル」(1971)の時ほどには爆発的ではないとはいえ、彼の持つ個性は「イルカの日」でも際立っています。パワフルなイメージを持つ彼であるからこそ、殊に前半の2頭のイルカとの交流シーンが生きるのです。監督はマイク・ニコルズであり、彼ならばもう少しまとまりのある作品になって良かったように思われるのは確かであるとはいえ、それなりに楽しめる要素が見出せる作品であると評価できます。最後に一言付加えると、題材が題材であるだけに、あからさまで強引な動物愛護メッセージが伴うことが十分に予想されますが、個人的にそのような印象は受けませんでした。


2001/11/10 by 雷小僧
(2008/11/20 revised by Hiroshi Iruma)
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