クレオパトラ ★☆☆
(Cleopatra)

1963 US
監督:ジョセフ・L・マンキーウイッツ
出演:エリザベス・テイラー、リチャード・バートン、レックス・ハリスン、マーティン・ランドー

左:エリザベス・テイラー、右:リチャード・バートン

うむむ!長い!長すぎますね。240分といえば普通の映画の2本分、短い映画であればほとんど3本分に相当します。1本分の値段で2本分に相当する映画が楽しめるのだから2倍お得であると言えないこともありませんが、この長さは尋常ではないでしょう。しかも、製作した20世紀フォックスの母屋が傾きかけるほどの大金が注ぎこまれたにしては、一般にあまり評判がよろしくないようです。このとんでもない大作を今回久々にレンタルして根性で最後まで通して見直してみましたが、なぜ評判がよろしくないのか理解できるような気がしました。歴史劇にはドラマティックな展開を期待する向きが多いはずであり、しかもクレオパトラといえば歴史的に余りにも著名なビッグネームの一人なので、そんな彼女の波瀾万丈の生涯がタイトル通りドラマティックに描かれているはずだと大いに期待されるにも関わらず、このマンモス作品を実際に見ると、歴史劇としてのメリハリに欠け、あまつさえ4時間という化け物サイズでもあり、途中でだれるなという方がそもそも無理であることは一目瞭然なのです。たとえば、歴史劇というとド派手な戦闘シーンを期待する向きも多いはずですが、4時間という上映時間にも関わらず、これ見よがしの戦闘シーンがほとんどありません。確かに、ラスト近くアントニウス(リチャード・バートン)とクレオパトラ(エリザベス・テイラー)の連合軍が、オクタビアヌス(ロディ・マクドウォール)の艦隊に敗れるアクティウム海戦のシーンはあるとはいえ、それすら海戦であって剣と剣が歯切れ良く音を立てる陸上における白兵戦のド迫力とは違ってかなりスローな印象を受けます。このようなハンドリングには、監督がジョセフ・L・マンキーウイッツであることも関係しているかもしれません。彼には、「ジュリアス・シーザー」(1953)により、丁度「クレオパトラ」の前半に相当する歴史イベントの映画化を既に行った実績があります。「ジュリアス・シーザー」でも戦闘シーンはほとんど存在しないとはいえ、そちらはもともとド派手な歴史劇が意図されていたわけではなく、舞台劇的な会話がウリの作品であったので、アクションシーンがほとんどないのはむしろ当然でした。しかし、エンターテイニングな大パノラマ史劇が期待される「クレオパトラ」は、確かにビジュアル面では、関連するオスカー4部門に輝き、期待に応えてくれるとはいえ、いかんせんストーリー展開があまりにもスロー過ぎ、その点が歴史劇としては大きな致命傷になっているように見えます。すなわち、50年代から60年代にかけて製作されていた他の大作史劇に対してと同様な期待を「クレオパトラ」に対しても抱くと、見終わったあと肩透かしを食わされた印象を受けざるを得ないということです。しかしながら、これは裏を返すと、「クレオパトラ」は、「動」と「密」に特徴がある活劇調の歴史劇としてではなく、「静」と「疎」に特徴があるドラマ調の歴史劇として鑑賞されるべきことを示しているのです。従って、最初からそのように心して見れば、映像のゴージャスさと、スローとはいえそれなりにしっかりとしたドラマ構成を持つ故に、4時間の間眠りに落ちることなく見続けることができる作品であるはずです。殊に映像のゴージャスさは印象的であり、その意味でも是非ともDVDで見るべきでしょう。DVDの時代になった今日、もう一度再評価されるべきではないかと思われます。


2003/05/10 by 雷小僧
(2008/10/21 revised by Hiroshi Iruma)
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