弾丸特急ジェット・バス ★★☆
(The Big Bus)

1976 US
監督:ジェームズ・フローリー
出演:ジョセフ・ボローニャ、ストッカード・チャニング、ジョン・ベック、ルース・ゴードン

左:ストッカード・チャニング、右:ジョセフ・ボローニャ

70年代はパニック映画の年代と考えられていますが、どんなジャンルであれ必ずパロディが出現するもので、一言で云えば「弾丸特急ジェット・バス」はパニック映画をパロった作品なのです。有名パニック映画のパロディシーンは別としても、ノンストップ豪華原子力バスがハイウエイを突っ走るという「弾丸特急ジェット・バス」のアイデアそのものが、当時流行ったパニック映画のパロディなのです。威風堂々としたジェットバスの威容は、それがバスであるだけに実にケッタイに見えます。惜しむらくは、パニック映画につきもののソープオペラ的なヒューマンドラマのパロディを是非いろいろと盛り込んでほしかったところです。たとえば、パニック映画に関して個人的にいつも不思議に思っていることの1つとして、パニックに陥った乗物や建物の中でなぜ決まって赤ん坊が生れるのかという疑問が挙げられますが、バスの中での出産シーンなどはパニック映画のパロディとしては最高ではなかったかと思われます。崖に宙吊りになったバスが崖下に転落しないようバランスを取る為に、後部の調理室をコーラやルートビアで水びたしにするアイデアはまだマシな方であるとしても、その中に閉じ込められたヒロイン(ストッカード・チャニング)が溺れ死にそうになるシーン(上掲画像参照)など馬鹿馬鹿しさの極北に達しています。溺れかけた彼女の廻りにドーナツがプカプカ浮いているのには笑えますが、いずれにしても、いくら超大型バスであるとはいえ、人が溺れるほどのコーラを、誰が何の為にどこに貯蔵していたのかなどという野暮な問いは口にしないようにしましょう。要するに、「弾丸特急ジェット・バス」は、そのような徹底的な馬鹿馬鹿しさがギリギリのところで裏返って、茶化しの精神が最大限に発揮されるようなタイプの作品なのです。またデビッド・シャイアの誇張された音楽もパロディ的に響きます。そのようなパロディ精神が満喫できることは別としても、当時のパニック映画同様、相応の豪華キャストを誇り、主演のジョセフ・ボローニャ、ストッカード・チャニングの他にも、ホセ・フェラー、ルース・ゴードン、リン・レッドグレーブ、ハロルド・グールド、ネッド・ビーティ、サリー・ケラーマン、ラリー・ハグマンなどが続々と登場し、エンターテインメント性もそれなりに考慮されており、見て楽しめる作品であることには間違いがありません。ということで、パニック映画をパロった作品としては秀逸な一品であると評価できます。


2001/09/08 by 雷小僧
(2008/11/29 revised by Hiroshi Iruma)
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