悪いことしましョ! ★☆☆
(Bedazzled)

1967 UK
監督:スタンリー・ドーネン
出演:ピーター・クック、ダドリー・ムーア、エレノア・ブロン、ラクエル・ウエルチ

左:ダドリー・ムーア、右:ピーター・クック

ラクエル・ウエルチ出演ということで期待して見た人は、がっかりするかもしれません。お約束のビキニ姿で登場するとはいえ、中盤及び終盤のごく僅かの間しか出演していません。いずれにしても、「悪いことしましョ!」は、いかにもイギリス的であり、そもそもラクエル・ウエルチがフィットするような作品ではありません。監督のスタンリー・ドーネンはアメリカ人であるとはいえ、主演二人はイギリス出身であり、何よりもブラックなテーマがいかにもイギリス的な趣味の悪さで料理されています。普通の人間の姿をした悪魔(ピーター・クック)が、お人良し(ダッドリー・ムーア)と魂と交換に7つの願いを実現する契約をしますが、前者が後者の人の良さにつけこんでさんざん意地悪をします。たとえば、「俺は女ばかりの世界で暮らしてみたい」などという至極当然なお願いをお人良しカスタマーがすると、意地悪悪魔は彼を修道女に変えて修道院に出現させるのです。「俺まで女にしろとは言わなかったぞ」とクレームをつけると、「お願いは、その点に関して明確でなかった」などと悪魔はのたまうのです。これでは、まるでソフトウエア屋が客の要望とは違うシステムを開発してしまった時にする言い訳そのものですが、いずれにしてもカスタマーのお願いはことごとく叶えられずに終わってしまうにも関わらず、契約は履行されていると見なされるのです。誰でも、どこかで、似たような光景を見掛けたことがあるのではありませんか?また、ピーター・クック扮する悪魔の底意地の悪いいたずらは、一人暮らしの老女を騙して金を巻き上げるとか、人が歩いている頭上から鳩の糞を落とすなどのおよそイギリス人以外は考え付かない、或いは考え付いたとしてもわざわざ映画の1シーンとして挿入したりはしないような種類のものばかりです。因みに、上掲画像にあるシーンでは、警官の姿をしてゴミ箱に火をつけたり、魔法で通行人の買い物籠の底をブチ抜いてそこいら中に品物が散らばる様子を見て二人してニタニタ笑ったりという、考えようによっては実にくだらないギャグが炸裂します。そのようなわけで、イギリス流の捻くれたユーモアセンスに馴染んでないオーディエンスにとっては、後味が悪い或いは馬鹿らしいことこの上ない作品であるように思われること必定でしょう。それでも、そのような趣向が好きなオーディエンスには、たとえばダッドリー・ムーアがハエにされるシーンやトランポリンで尼さんが跳ね回るシーンなど、楽しめるのは確かです。一度はこの作品を見て、この手の映画に対する自分の耐性度を試してみるのも良いかもしれません。なんじゃこりゃと思った向きは、以後この手の作品は避けた方が良いでしょう。ダドリー・ムーア&ピーター・クックというペアは、「悪いことしましョ!」以外にも数多くの作品に出演していますが、日本の漫才でいえば前者がぼけで後者がつっこみという役回りが多いようです。尚、ダドリー・ムーアは作曲家でもあり、「悪いことしましョ!」を含めかなりの作品で音楽を担当しています。


2002/09/08 by 雷小僧
(2008/11/06 revised by Hiroshi Iruma)
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