「百物語」のスダマ

佐藤和美

 古代にはいろいろなものに魂があると考えられていた。

 言葉にも魂がある。「言霊」(ことだま)という言い方があるが、これが言葉の魂である。 「霊」(たま)とは「たましい」のことである。

 宮崎駿の「もののけ姫」に「コダマ」というのがでてくる。この「コダマ」は漢字で書くと「木霊」で、「木のたま」、つまり樹木に宿る精霊のことである。

 「魑魅魍魎」(ちみもうりょう)という言葉がある。これは「さまざまなばけもの」というような意味である。「魑魅」というのは音読みだが、これを訓読みではなんと読むだろうか。訓読みは「すだま」である。

 「広辞苑」では「すだま」(魑魅)について、「山林・木石の精気から生ずるという人面鬼身の怪物」と書いている。

 「すだま」もまた、「たま」の一つであったろう。

(1999・02・28)


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